169 / 307
第2部
番外編 〈魔国創士〉は、はじめてのおつかいを見守る2
しおりを挟む
〈魔国創士バニラ〉
「…ん?何か…」
我が家が見えてきた辺りで異変を察知した。
猛スピードで接近する何かを感じ、警戒を強める。
【シールドスフィア】
ココアの判断は早かった。大事な娘を守る為だろう。姿を隠すのをやめ、防御魔法を展開した。
かなり使い込んだ様子の牽引車が現れ、子供たち目掛けて飛んで来た。
「特攻か!?」
【アドミニストレーション・インターセプト】【チェーンバインド・ロック】
埋設されたリレーを駆使し、牽引車の背後で魔法を展開して牽引車を引っ張る。
「バニラ、お前じゃ無理だ!」
「無理でもぉっ…やるんだよぉっ!!」
凄まじい勢いでMPが削られる!
僅かでも良い、時間を稼げれば…!
牽引車が一瞬止まるが、一瞬だけ。あっという間に岩の鎖に亀裂が入り、ジリジリと動き始める。
「たりないっ…!くそっ…!くそぉっ!」
未完成である事を今ほど悔しく思ったことはない。魔法が万能だとは思わない。だが、大抵の事は出来るはず。そう信じてきた。
だが、わたしの生み出した鎖は梓の作った物に全く及ばない。恐らく、三流職人レベルだ。
だが、ここは我が家の目と鼻の先。気付いた皆の行動も早かった。
リナ母さんとユキが、子供たちを影に連れ込み姿を消した。
「バニラ!もういい!」
「だめだぁっ!ひとがおおいぃっ!!」
シールドスフィアを解除するココア。
目標を見失った事で、妨害したわたしたちに目標を変えた。
魔法を発動した事で、人がわたしたちから離れている。こっちに墜ちるならそれでも良い…!
『また…また、おまえか!チビヒュマス!いつもいつもいつも邪魔をして!』
念話?いや、わたしが拾ってしまったのか。
「バニラ、今の…」
「それよりなにかっ…!」
もう限界だっ…!
【ハードインパクト】
虹色に輝く天からの一撃が、牽引車を大地に叩き落とした。
その衝撃でチェーンバインドが砕け散る。
「うちの弟達に手を出すとは良い度胸じゃないか。」
柊が潰れた牽引車の上に佇んでいた。
父さんのバフを受けた柊は、虹色の粒子を撒き散らしているように見えている。
その姿に安堵と、少しの悔しさのタメ息が漏れた。
柊が天井だった部分を引き剥がし、乗っていたヤツを引き出すが…
「…もう、聞こえてないか。」
その物体を車体の陰に放り出した。
もう、ただの物体である。
事態を、死を、痛みを認識した思念は全く無く、わたしを殺せる、その一心を抱いたままの哀れな最期だった…
「やっと終わったか…長い付き合いだったな性悪女…」
「バニラ、髪がミルクになっている。」
「あぁ…またか…」
疲れ果て、わたしはその場にへたり込むのであった…
後始末は衛兵や警務員に任せ、柊に抱き上げられて帰宅すると、顔を青くする男子と泣き続ける女子に分かれていた。
ジェリーは父さんに抱き付いて泣いている。
父さんではなく、柊が来たのはそういう事か…
「ジェリー、怖い思いをしてしまったな…」
「おかーしゃん…」
震えながら泣くジェリーを、ココアが父さんと交代して抱き締めた。
「バニラは抱き締めなくて良いか?」
「いったいわたしを何歳だと思っているんだ。」
父さんにそう言い返すと、子供たち以外が吹き出した。
「さて、とんだトラブルが舞い込んだが、お使いは無事に終了だな?」
「はい。ちゃんと揃っていますよ。」
アクアがマジックバッグから、買ったものを出して確認する。
持っていたカボチャも無事なようだ。
「みなさん、お使いご苦労様でした。とんでもない事態に巻き込まれましたが、立派ですよ。」
リナ母さんが、震えるレオンの手を握りながら言う。
「アレク、今日は要所で活躍していたな。もう少し、普段からそういう姿を見せて欲しい。」
「はい…でも…やっぱり魔法も訓練も怖くて…」
「そうだな。魔法は便利だが怖いものだ。わたしにとって、体を鍛える訓練は今でもそうだよ。」
「……」
「やっぱり、痛いのは嫌だからな。」
限界の体を引き摺って、アレクの頭を撫でてやった。
「アレク、どれだけ時間が掛かっても良い。ちゃんと、これだけは負けたくないというものを見つけるんだぞ。」
「はい…」
余計なプレッシャーになるかも知れないが、男の子はこれくらいやっても良いだろう。
「きちんと対応するレオン、しっかりと妹たちの手を引くビクターもカッコ良かった。悠里は…次は気を付けような。」
『はい…』
「みんな、大した事ない失敗や怪我を恐れるな。お姉ちゃんはそんなの100回じゃ足りないくらい乗り越えてきたからな…」
「バニラ様。」
限界なのを察してくれたメイプルが、わたしの体を抱き上げる。
「…ごめん。まだ言いたいことがあったが、限界だ。ココア、任せるよ…」
それだけ言って、わたしの意識は闇へと沈んでしまったのだった。
目が覚めると、既に日が暮れていた。
あぁ…今日も半日無駄にしてしまったな…
横になったまま腕を伸ばそうとし、ようやく右腕に何か絡み付いている事に気が付いた。
「おお…ジェリーじゃないか…」
部屋を間違えたのだろうか?
起こさないように抜け出すと、テーブルに紙が一枚あることに気が付き、つまみ上げる。書き置きか。見慣れた文字で可愛いことが書いてあった。
『ジェリーが一緒に寝ると言って聞かないので貸しておく。
半日だと思っているだろうが、二日経っているからなネボスケ。』
二日…やはり、出し尽くしてしまっていたか。
喉が乾いて仕方ないので、イグドラシル水をグラスに注いで飲むと、不足していたものが補われていくのを感じる。こういう時はこれに限る。
トイレに行こうと立ち上がると、ジェリーがわたしの指を掴んでいた。
「おかーしゃん…ジェリーも…」
おかーしゃんをもらってしまった…!
おお、可愛い…どう呼べば良いか分からない娘よ!今からわたしとおまえは母娘だ!
「ああ、一緒に行こうか。」
ジェリーを連れてトイレに行き、ジェリー、わたしの順で済ませる。
目が冴えて来たらお腹も空いて来たが、ジェリーに食べさせる訳にはいかないだろう。どうしたものか。
「バニラ、起きたのか。」
音に気付いたのか、娘がいなくて寝付けなかったのか、ココアもやって来た。
「ああ。寝過ぎたよ。」
「フェルナンドさんから感謝状が届いている。後で見ておくと良い。」
「そうする。」
暗くてどこにあるか分からないしな。
「サンドイッチで良いか?」
「ああ、頼む。」
「少し、待っててくれ。」
懐かしい言葉に頷き、トイレを経由してキッチンに向かうココアを見送る。
わたしも食卓へ移り、灯りを一つだけ灯した。
膝の上でジェリーが船を漕ぐ。深く椅子に座り直し、ジェリーの体を横向きにさせるとあっという間に眠ってしまった。かわいい。
「おねーしゃまが起きるのを待つー、って頑張ってたんだよ。」
「そうか。嬉しいよ、ジェリー。」
かわいい娘の頭を撫でつつサンドイッチを食べる。こちらじゃプレストーストとして出回っており、しっかり焼いたものしか見てなかったな。あれも美味しいが。
「久し振りのサンドイッチだ。すごく美味しいよ。」
「わたし秘蔵のハムだ。特別な時しか振る舞わないからよく味わうと良い。」
「ありがたやありがたや。」
サンドイッチを置き、手を合わせて拝むとココアが吹き出し、わたしも釣られて笑う。
「あれをよく堪えたな。わたしはもう諦めていたよ。」
「なんとしても守らなきゃいけなかったからな。英雄の長女として、〈魔国創士〉として、発明者として…」
「そうか…これまでがおまえを支えたんだな。」
「わたしから見たわたしはどうだった?」
「カッコ良かった。酷い顔、酷い声だったが、とてもカッコ良かったよ。」
「必死だったんだ。言わないでくれ。」
だが、こんな髪になってしまった甲斐はあったというものだ。
「姉としてはどうだろうか?」
「ちゃんと英雄の娘だったよ。一番、体現してみせてるじゃないか。」
「いや、わたしより先に遥香や柊の方がやっている。」
「でも、子供たちに見せたのはお前だよ。長子のお前が見せた事は、この子たちにとって良かったと思う。
この子たちは魔法の力をそれほど信じていなかったからな。悲しいが。」
ああ、だから魔法の訓練は適当だったのか…
体を使った方が早いならそうだろう。
魔法に特別な憧れのあるわたしたちとは違い、当たり前にあるものなのだから。
「その意識が払拭されたと思うよ。少なくともジェリーからは。
おねーしゃまのようなまどうしになりゅ、って言ってたからな。」
「そうか…」
「…何か言ってくれないと恥ずかしい。」
「ん?ああ、似てたよ。似てた。」
「…二度とやらない。」
その表情を見て思わず吹き出し、大笑いをしてしまう。ココアも釣られるように笑い始めていた。
「一番大事な後始末がやれなかったのが心残りだよ。」
「大事なのが1つある。とても大事な仕事だ。」
「なんだ?」
ココアの言葉がどういう事なのか分からず、再びサンドイッチをモグモグしながら尋ねる。
「全てのライトクラフトがただ怖いものだという思い込みを払拭する必要がある。子供からも、住民からも。
これはそれを狙った二重の作戦だと考えている。」
「そうか…じゃあ、一家総出で手伝ってもらうとしよう。ライトクラフトのデモンストレーションだ!」
後日、わたしの作戦は見事に成功し、一家からだけでなく、東部からも事件によるライトクラフトへの忌避感は払拭される。
特に、柊とフィオナによる空中テニスが好感触で、後に地域を代表するスポーツへと昇華される事になる。
テニスとは呼ぶが、革のボールを木の板で打ち合うパワフル羽子板だ。
空中であることから、打ち返しにくい所へ打ったらペナルティというルールもあり、もしそれを打ち返されたらスコアが倍のシビアさ、真っ向勝負感がわりと武闘派な東方エルフにウケてしまったようである。
「お姉様、もう一勝負お願いします!」
「ああ、来い!何度でも打ち返してやる!」
訓練場では日々、わたしと悠里、時にはアリスとの熱い戦いが繰り広げられていた。
「今日もおねーちゃんたち頑張ってるねー」
「よく飽きないなぁって思うよ… 」
下で話す梓と遥香。
飽きるはずがないだろう。一打打ち返せれば必ずスコアになる。こんな楽しいことは他にない!
「あぁー!…今度は私の出番ですよ!」
「ぉわぁっ!…くそ!次は返すからな!」
下で二人が大きなタメ息を吐く。
「一発でも打ち返せた方が勝ちのレベルだよね…」
「まあ、本人達が楽しんでるから…」
今日も可愛い妹とスポーツで汗を流す。
今までなかった経験に最高の充実感を得ていた。
わたしは今、最高に青春している気がする!
連日の筋肉痛だけはいただけないがな…
「…ん?何か…」
我が家が見えてきた辺りで異変を察知した。
猛スピードで接近する何かを感じ、警戒を強める。
【シールドスフィア】
ココアの判断は早かった。大事な娘を守る為だろう。姿を隠すのをやめ、防御魔法を展開した。
かなり使い込んだ様子の牽引車が現れ、子供たち目掛けて飛んで来た。
「特攻か!?」
【アドミニストレーション・インターセプト】【チェーンバインド・ロック】
埋設されたリレーを駆使し、牽引車の背後で魔法を展開して牽引車を引っ張る。
「バニラ、お前じゃ無理だ!」
「無理でもぉっ…やるんだよぉっ!!」
凄まじい勢いでMPが削られる!
僅かでも良い、時間を稼げれば…!
牽引車が一瞬止まるが、一瞬だけ。あっという間に岩の鎖に亀裂が入り、ジリジリと動き始める。
「たりないっ…!くそっ…!くそぉっ!」
未完成である事を今ほど悔しく思ったことはない。魔法が万能だとは思わない。だが、大抵の事は出来るはず。そう信じてきた。
だが、わたしの生み出した鎖は梓の作った物に全く及ばない。恐らく、三流職人レベルだ。
だが、ここは我が家の目と鼻の先。気付いた皆の行動も早かった。
リナ母さんとユキが、子供たちを影に連れ込み姿を消した。
「バニラ!もういい!」
「だめだぁっ!ひとがおおいぃっ!!」
シールドスフィアを解除するココア。
目標を見失った事で、妨害したわたしたちに目標を変えた。
魔法を発動した事で、人がわたしたちから離れている。こっちに墜ちるならそれでも良い…!
『また…また、おまえか!チビヒュマス!いつもいつもいつも邪魔をして!』
念話?いや、わたしが拾ってしまったのか。
「バニラ、今の…」
「それよりなにかっ…!」
もう限界だっ…!
【ハードインパクト】
虹色に輝く天からの一撃が、牽引車を大地に叩き落とした。
その衝撃でチェーンバインドが砕け散る。
「うちの弟達に手を出すとは良い度胸じゃないか。」
柊が潰れた牽引車の上に佇んでいた。
父さんのバフを受けた柊は、虹色の粒子を撒き散らしているように見えている。
その姿に安堵と、少しの悔しさのタメ息が漏れた。
柊が天井だった部分を引き剥がし、乗っていたヤツを引き出すが…
「…もう、聞こえてないか。」
その物体を車体の陰に放り出した。
もう、ただの物体である。
事態を、死を、痛みを認識した思念は全く無く、わたしを殺せる、その一心を抱いたままの哀れな最期だった…
「やっと終わったか…長い付き合いだったな性悪女…」
「バニラ、髪がミルクになっている。」
「あぁ…またか…」
疲れ果て、わたしはその場にへたり込むのであった…
後始末は衛兵や警務員に任せ、柊に抱き上げられて帰宅すると、顔を青くする男子と泣き続ける女子に分かれていた。
ジェリーは父さんに抱き付いて泣いている。
父さんではなく、柊が来たのはそういう事か…
「ジェリー、怖い思いをしてしまったな…」
「おかーしゃん…」
震えながら泣くジェリーを、ココアが父さんと交代して抱き締めた。
「バニラは抱き締めなくて良いか?」
「いったいわたしを何歳だと思っているんだ。」
父さんにそう言い返すと、子供たち以外が吹き出した。
「さて、とんだトラブルが舞い込んだが、お使いは無事に終了だな?」
「はい。ちゃんと揃っていますよ。」
アクアがマジックバッグから、買ったものを出して確認する。
持っていたカボチャも無事なようだ。
「みなさん、お使いご苦労様でした。とんでもない事態に巻き込まれましたが、立派ですよ。」
リナ母さんが、震えるレオンの手を握りながら言う。
「アレク、今日は要所で活躍していたな。もう少し、普段からそういう姿を見せて欲しい。」
「はい…でも…やっぱり魔法も訓練も怖くて…」
「そうだな。魔法は便利だが怖いものだ。わたしにとって、体を鍛える訓練は今でもそうだよ。」
「……」
「やっぱり、痛いのは嫌だからな。」
限界の体を引き摺って、アレクの頭を撫でてやった。
「アレク、どれだけ時間が掛かっても良い。ちゃんと、これだけは負けたくないというものを見つけるんだぞ。」
「はい…」
余計なプレッシャーになるかも知れないが、男の子はこれくらいやっても良いだろう。
「きちんと対応するレオン、しっかりと妹たちの手を引くビクターもカッコ良かった。悠里は…次は気を付けような。」
『はい…』
「みんな、大した事ない失敗や怪我を恐れるな。お姉ちゃんはそんなの100回じゃ足りないくらい乗り越えてきたからな…」
「バニラ様。」
限界なのを察してくれたメイプルが、わたしの体を抱き上げる。
「…ごめん。まだ言いたいことがあったが、限界だ。ココア、任せるよ…」
それだけ言って、わたしの意識は闇へと沈んでしまったのだった。
目が覚めると、既に日が暮れていた。
あぁ…今日も半日無駄にしてしまったな…
横になったまま腕を伸ばそうとし、ようやく右腕に何か絡み付いている事に気が付いた。
「おお…ジェリーじゃないか…」
部屋を間違えたのだろうか?
起こさないように抜け出すと、テーブルに紙が一枚あることに気が付き、つまみ上げる。書き置きか。見慣れた文字で可愛いことが書いてあった。
『ジェリーが一緒に寝ると言って聞かないので貸しておく。
半日だと思っているだろうが、二日経っているからなネボスケ。』
二日…やはり、出し尽くしてしまっていたか。
喉が乾いて仕方ないので、イグドラシル水をグラスに注いで飲むと、不足していたものが補われていくのを感じる。こういう時はこれに限る。
トイレに行こうと立ち上がると、ジェリーがわたしの指を掴んでいた。
「おかーしゃん…ジェリーも…」
おかーしゃんをもらってしまった…!
おお、可愛い…どう呼べば良いか分からない娘よ!今からわたしとおまえは母娘だ!
「ああ、一緒に行こうか。」
ジェリーを連れてトイレに行き、ジェリー、わたしの順で済ませる。
目が冴えて来たらお腹も空いて来たが、ジェリーに食べさせる訳にはいかないだろう。どうしたものか。
「バニラ、起きたのか。」
音に気付いたのか、娘がいなくて寝付けなかったのか、ココアもやって来た。
「ああ。寝過ぎたよ。」
「フェルナンドさんから感謝状が届いている。後で見ておくと良い。」
「そうする。」
暗くてどこにあるか分からないしな。
「サンドイッチで良いか?」
「ああ、頼む。」
「少し、待っててくれ。」
懐かしい言葉に頷き、トイレを経由してキッチンに向かうココアを見送る。
わたしも食卓へ移り、灯りを一つだけ灯した。
膝の上でジェリーが船を漕ぐ。深く椅子に座り直し、ジェリーの体を横向きにさせるとあっという間に眠ってしまった。かわいい。
「おねーしゃまが起きるのを待つー、って頑張ってたんだよ。」
「そうか。嬉しいよ、ジェリー。」
かわいい娘の頭を撫でつつサンドイッチを食べる。こちらじゃプレストーストとして出回っており、しっかり焼いたものしか見てなかったな。あれも美味しいが。
「久し振りのサンドイッチだ。すごく美味しいよ。」
「わたし秘蔵のハムだ。特別な時しか振る舞わないからよく味わうと良い。」
「ありがたやありがたや。」
サンドイッチを置き、手を合わせて拝むとココアが吹き出し、わたしも釣られて笑う。
「あれをよく堪えたな。わたしはもう諦めていたよ。」
「なんとしても守らなきゃいけなかったからな。英雄の長女として、〈魔国創士〉として、発明者として…」
「そうか…これまでがおまえを支えたんだな。」
「わたしから見たわたしはどうだった?」
「カッコ良かった。酷い顔、酷い声だったが、とてもカッコ良かったよ。」
「必死だったんだ。言わないでくれ。」
だが、こんな髪になってしまった甲斐はあったというものだ。
「姉としてはどうだろうか?」
「ちゃんと英雄の娘だったよ。一番、体現してみせてるじゃないか。」
「いや、わたしより先に遥香や柊の方がやっている。」
「でも、子供たちに見せたのはお前だよ。長子のお前が見せた事は、この子たちにとって良かったと思う。
この子たちは魔法の力をそれほど信じていなかったからな。悲しいが。」
ああ、だから魔法の訓練は適当だったのか…
体を使った方が早いならそうだろう。
魔法に特別な憧れのあるわたしたちとは違い、当たり前にあるものなのだから。
「その意識が払拭されたと思うよ。少なくともジェリーからは。
おねーしゃまのようなまどうしになりゅ、って言ってたからな。」
「そうか…」
「…何か言ってくれないと恥ずかしい。」
「ん?ああ、似てたよ。似てた。」
「…二度とやらない。」
その表情を見て思わず吹き出し、大笑いをしてしまう。ココアも釣られるように笑い始めていた。
「一番大事な後始末がやれなかったのが心残りだよ。」
「大事なのが1つある。とても大事な仕事だ。」
「なんだ?」
ココアの言葉がどういう事なのか分からず、再びサンドイッチをモグモグしながら尋ねる。
「全てのライトクラフトがただ怖いものだという思い込みを払拭する必要がある。子供からも、住民からも。
これはそれを狙った二重の作戦だと考えている。」
「そうか…じゃあ、一家総出で手伝ってもらうとしよう。ライトクラフトのデモンストレーションだ!」
後日、わたしの作戦は見事に成功し、一家からだけでなく、東部からも事件によるライトクラフトへの忌避感は払拭される。
特に、柊とフィオナによる空中テニスが好感触で、後に地域を代表するスポーツへと昇華される事になる。
テニスとは呼ぶが、革のボールを木の板で打ち合うパワフル羽子板だ。
空中であることから、打ち返しにくい所へ打ったらペナルティというルールもあり、もしそれを打ち返されたらスコアが倍のシビアさ、真っ向勝負感がわりと武闘派な東方エルフにウケてしまったようである。
「お姉様、もう一勝負お願いします!」
「ああ、来い!何度でも打ち返してやる!」
訓練場では日々、わたしと悠里、時にはアリスとの熱い戦いが繰り広げられていた。
「今日もおねーちゃんたち頑張ってるねー」
「よく飽きないなぁって思うよ… 」
下で話す梓と遥香。
飽きるはずがないだろう。一打打ち返せれば必ずスコアになる。こんな楽しいことは他にない!
「あぁー!…今度は私の出番ですよ!」
「ぉわぁっ!…くそ!次は返すからな!」
下で二人が大きなタメ息を吐く。
「一発でも打ち返せた方が勝ちのレベルだよね…」
「まあ、本人達が楽しんでるから…」
今日も可愛い妹とスポーツで汗を流す。
今までなかった経験に最高の充実感を得ていた。
わたしは今、最高に青春している気がする!
連日の筋肉痛だけはいただけないがな…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる