趣味に全力!森の魔女は勝手気ままに生きたい 〜気になる漫画の続きが読みたいので、弟子を取りました〜

蒼烏

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第20話 グレンのお留守番2日目1

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「さて、とりあえずグレンの部屋に必要な物を倉庫から漁ってこようか」
「んにゃ、その前にレイアウトを決めよう。そうすれば必要な物も分かるだろ」
「じゃあメモするね」

 朝食を終え、グレンの部屋にやってきた3人は部屋のレイアウトを考えていた。

「今あるのは……ベッド、タンス、勉強机と本棚、椅子……なあクレア、なんで机がもう1個あるんだ?」
「あっ、それ?それはね漫画を書くための机だよ?前々から目をつけてたんだよね~いいでしょ!」
「きのうからありました」

 グレンが言うにはどうやら昨日から既に設置されていたらしい。

「にゃ!いつの間に……」
「きのうはこれで、えのれんしゅうをしました!」
「クレア……まさか、抜け駆け?」
「ち、違うよ!?そ、そんなことないよーちょっと気晴らしにお絵描きとかした方がいいかな~って思って練習用に置いてみただけだよ?ほっ、ホントだから!嘘じゃないから!インディアン嘘付かない!」

 クレアは抜け駆けして絵描き専用の机を用意し、紙に鉛筆、どこから用意したのか色鉛筆やクレヨン、絵の具に筆が置かれている。
 更には、ペン軸、ペン先、インク、原稿用紙、雲型定規、ホワイト、トーンまで用意されている。

「そもそもインディアンが嘘だから……しかしこんな道具、よくあったな……」
「いろいろつかってみたいです!」

 グレンは寅吉に自ら描いた絵を見せる。
 そこには寅吉の姿が描かれており、6歳の子供が描いたとは思えない、写実的な絵が描かれていた。 
 
「む……上手いじゃないか……本当に初めてか?」

 寅吉は絵を手に取り、繁々と眺める。
  
「はい!なんか、こう、よくわからないけど……よくみえるんです!まりょくをつかうと、うまくかけるんです!」

 グレンはうまく説明できないようだが、どうやら魔力を使うと上手く描けるようになるらしい。
 
「ね、凄いよね!まずは人とか動物と描いて練習してみて。ゆくゆくは漫画も!」
「まずはデッサンからだろ、とりあえずこの絵に色を着けてみないか?」

 寅吉は自分の絵が描かれた紙を見せながら、カラーイラスト化を依頼する。

「ズルい!私も描いて欲しいんだけど!」
「グレン、この絵は色を着けてカラーイラストにすると格段に良くなると思うんだが、どうだ?やってみないか?」
「クレアさんのえもありますよ」

 グレンは机の引き出しを開け、中からクレアの姿が描かれた絵を取り出す。
 そこにはクレアの姿絵が描かれていた。

「わっわっ!やった!私も描いてくれたんだ!ねぇえねぇ、これもカラーにしてみない?」
「んにゃ!俺の方が先にお願いしたんだぞ、クレアは後だろ」
「この道具を準備したのは私ですーだから私の方が優先だと思いますー」
「せっかくなのでいろをつけるのは、れんしゅうしてからにします」

 グレンの最もな言葉にクレアと寅吉はハッとなり、お互いに目を合わせて押し黙る。
 さすがに興奮していた2人も気が付いたのだった、グレンがまだ絵を描き始めて1日しか経っていないことに。
 ましてや、色を塗ったことはないのだ。

「ごめん、練習しようね……」
「すまん、興奮し過ぎた……」
「がんばってれんしゅうして、きれいなえをかけるようにします!」

 クレアと寅吉は自身の姿が描かれた絵を、期待を込めた目で見つめている。
 グレンはそんな2人を見て、これからも練習を頑張らねばと決意を新たにする。
 ここに来てまだ数日、目まぐるしく変化していく日常に振り回されている。

(でも……すごく、たのしい!おえかきもまりょくもからだをうごかすのも!ぜんぶ、たのしい!)

 グレンは貰ったばかりの原稿机を見て、欲張りにもそう感じているのだった。 
 ◆◆◆

 夜も更けてきた魔女の家のダイニングにクレアと寅吉がお互いに向き合って話をしている。
 魔力の異常放出というハプニングを乗り越え、クレアと寅吉の顔をみて安心したグレンを先に休ませ、お茶を飲みながらクレアと寅吉はお互いの情報を交換していた。

「――とまあここまでが樹海の状況になるか?腐海にもならず、今のところ安定してるよ。いやーホントギリギリダッタケドネ……」
「にゃ、ギリギリでも腐海にならなければセーフだ。アウトよりのセーフだ」
「アウトじゃなきゃOK」

 クレアはOKマークを作りながら笑顔で答える。
  
「で、どうだった?村の方は」
「うむ……ひどい状態だった……」

 先程までとは打って変わって真剣な表情でクレアが寅吉に問いかける。 
 クレアは樹海の腐海化を防ぐため、安定させる魔法を行使してきた。
 寅吉は更に奥まで進み、グレンの故郷の村まで足を伸ばしてきたのだ。
 そこで見た、村の状況は酷いものだったようだ。
 寅吉は顔をしかめながらゆっくりと語り出す。
 
「まず……生き残りはいなかった……」
「そう……」
「それと、グレンの父親と思われる者も見つけた……既に事切れていたがな……」
「はぁ~……そっか……グレンには、伝えないといけないけど……今じゃないよね?」

 クレアは半ば分かっていたことだが、その事実を何時グレンに伝えるかを悩み、両手で頬杖をついてため息を吐く。

「あぁ、そうだな……この話はしばらく俺達の中だけにしておこう……」
 
 寅吉も同じ考えのようで、伏目がちに答える。
 尻尾はダラリと下がり、左右に揺れることもない。
  
「せめて、もう少しここに慣れて余裕ができてからかな……きっとグレンなら受け止めてくれると思うけど……」
「今は、子供らしくしていて欲しいか……」
「うん……」

 “伝えるべきは今ではない”これは2人の結論であった。
 恐らく、グレンも薄々は分かっているだろうし、覚悟もしているだろう。
 だが、事実として突きつけられた時、受け止めきれるかは別問題だ。
 妹のこともある、この事実を受け止めるにはグレンの心の成長が待たれる。

「ご遺体は?」
「埋葬してきた。簡単だが墓も作ってある」
「他の村人は?」
「全員を埋葬する時間がなかったからな……もう1日欲しいところだ」
「じゃあ明日2人でやろうか」
「助かる」

 明日の予定を立てつつ、更に状況報告を続ける2人。

「村を襲撃したのは魔獣で間違いないだろう。周囲に魔獣はいなかったが、もう少ししっかりと確認をしたいところだな」
「そっか……妹ちゃん……アイラちゃんは?」

 クレアはグレンの妹、アイラの行方について尋ねる。

「……いや」

 寅吉は首を横に振り行方は掴めていないと言う。

「そっちも明日探してみようか、川沿いに下れば何か分かるかもしれないからね」
「そうだな、グレンには悪いが明日も留守番していてもらおう」
「仕方ないか……魔力の操作は一応止めとこうか」

 もう1日グレンに留守番をしてもらう事に罪悪感を覚えるが、やらねばならないことは早めに済ませたい。

「それもそうだが、グレンの魔力……知覚、覚醒、解放まで、たった1日でやってのけたんだぞ。相当魔力適正がありそうだな」
「そうだね、どう覚醒してるか分からないけど、魔力の解放と抑制もできてるし、本格的に教えれば凄い事になりそうだね。いや~将来が楽しみだね~」
「森の魔女の弟子か……本当にそうなりそうだな」

 寅吉はグレンの魔力について、魔女に届きえる得るものとして認識しているようだ。
 それはクレアも同じようで、グレンに期待を寄せているようだった。

「弟子か~、まさか私が弟子を持つとはね……ただの家族のつもりだったんだけどな……」
「弟子として扱うときはそうすればいい。でも家族なんだ、普段は好きにすればいい」
「そうだね
「ぐふっ……武術はまず、体力作りと身体の動かし方からだな。料理にも興味がありそうだったし、これは鍛え甲斐がありそうだな」

 寅吉は先生と呼ばれて若干のダメージを受けながらも自身の趣味である料理仲間ができるかもしれないことにワクワクが止まらないようだ。
 
「ホントだね、素直で器用だし……何より楽しそうだからね」
「にゃ、何事も“好きこそ物の上手なれ”だからな」
「ふふ、なんか家族と言っても、私達の子供みたいだね」
「確かに……親ってのはこんな感じなのかね」
「まぁ、親が自分の趣味で子供を染めようとしてるのはどうかと思うけどね?」 
「どの口が言ってるんだか……」
「お互い様でしょ?」

 軽口を言い合うクレアと寅吉。

「そうだ、カリラはお酒も好きだったよね?」
「にゃ、大酒飲みだな。うちにはあんまりないからな……俺は飲めないし、クレアもそんなに飲まないからな。料理酒とワイン位しかないぞ?どうする調達するか?」

 ふとカリラがお酒が好きなことを思い出し、饗しのためのお酒がない事に気が付く2人。
 2人は唸りながら考え込む。
 
「うーん……あんまり詳しく無いんだよね……でもこの辺で有名なお酒あったよね?」
「あー、蒸留酒か。料理にはあんまり使わないから忘れてた。それも探しにいくか」

 この辺りで作られている蒸留酒のことを思い出し、カリラの為に調達することにする。
 
「そうだね、食材の調達と一緒に取りに行こうか。その時はグレンも連れてってあげたいね」
「にゃ、殆ど村から出たことないだろうしな。旅行だな」
「いいね旅行!ちゃんと旅行って思って出かけるの何時以来だろ?なんかもうワクワクしてきた!」
「ふ、旅行の準備はしっかりしないとな。いい日旅立ちだ」
「え~計画しないでフラフラ行こうよ~、旅人になろうよ~さすらうよ~」
「何時までも帰ってこれないだろそれ……それなら俺はイージュー★ライダーしたい」
「バイクないじゃん、乗れないじゃん」
「いけるだろ」
「いけないでしょ。足届かないでしょ」
「……気合いで」

 寅吉の足は長くないらしい。
 寅吉は足をピンッと伸ばしていけると言い張る。
 
「着物で?」
「……か、革ジャン着るし」
「いいね!サングラスもしよう!早速見たいからやろう!」
「ちょ!罠だろそんなの!」
「じゃあ部屋行って着せ替え大会だ!」
「おい!俺は着せ替え人形じゃないんだぞ!」
「ふふ、案外似合うかもよ?」
「何だその目は!」

 クレアらじっくりと寅吉を観察するような目で見つめる。
  
「恋しちゃう?」
「だから俺は海夢ちゃんじゃねぇ!」
「じゃあ私が若菜くんで!」
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