趣味に全力!森の魔女は勝手気ままに生きたい 〜気になる漫画の続きが読みたいので、弟子を取りました〜

蒼烏

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第22話 グレンのお留守番2日目3

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「にゃ、じゃあ俺からも課題を伝えておこう」
「はい!」

 グレンは早速魔力を知覚しながら寅吉の方へを向き直って寅吉を見る。
 そこには澱みなく魔力が体の隅々まで流れている寅吉の姿があった。

「――すごい」
「にゃ、早速魔力を見たか。そう、これが体の中を巡る魔力だ。体の隅々、指の先までいつでも巡らせるのがコツだ――こんな風に、動かしたい所に多く流すと力強くなったり、早く走れたり、高く飛べたりする」

 寅吉は体内を巡る魔力を腕や足に動かし、魔力の使い方を実際に見せてみる。

「グレンにはこうなってもらう為に、まずは魔力を知覚したまま体を動かしてもらう。今日はこの家の敷地内をぐるっと一周魔力を知覚したまま散歩してみてくれ。勿論、意識できれば手足の指の先まで魔力を行き渡らせるんだ」
「はい……やってみます……」

 グレンは早速手の指先に魔力を持ってこようとするが、中々上手くいかない。

「あはは、難しいよね。私も寅吉ほど上手くできないけど、これができると身体強化に繋がるから色んな作業が捗るんだよね~部屋の片付けとか、野菜の収穫とか」
「もっと有効活用できるだろ……狩りをするとか、魔獣と戦うとか……」
「私は魔法で戦うし……」

 寅吉はなんとも言えない表情のままクレアを見つめ、暫くして何もなかったかのように説明を再開する。

「と言うわけで、やってみてくれ。あと回ってくるついでに牛乳と卵を持ってきてくれないか?今朝ので牛乳が無くなってしまったからな」
「牛の乳搾りはやったことある?」
「はい、むらでもやってました」
「卵はこのカゴを、牛乳を入れる容器は放牧場に用意しといたからそれを使ってくれ。入れすぎると重いから気をつけろ」
 
 本日のグレンに与えられた課題は2つ。
 1つ、魔力の知覚をし続けること。
 2つ、魔力を知覚したまま体を動かすこと。
 そのなかで牛乳と卵の回収だ。

「それと、今日は私達もいないから魔力の解放はしないでね。多分大丈夫だと思うけど、もしもの何かあったら大変だからね」
「わかりました!」
「残りは自由にしてるといい、夕飯までには帰るつもりだ。昼食にまた冷蔵庫に用意してある」

 寅吉は冷蔵庫を指差して悪戯っぽく笑う。

「せんせい、メニューはなんですか?」
「お昼までのお楽しみだ」

 ニヤリと笑いながら答える寅吉。

「あとスープはまた昨日みたいにお湯を入れて作ってね」
「――!、はいっ!」

 グレンは昨日のお昼に飲んだ黄金のスープを思い出し、元気よく返事をする。
 グレンはあの黄金のスープを想像するだけで涎が出てきそうになる。

「あのスープ、そんなに気に入ったのか?」
「はい!あんまりおいしくて、びっくりしました!」
「そ、そうか……今度夕飯に作るかな……」
「ぼくも、いっしょにつくりたいです!」
 
 料理を直球で褒められた寅吉は恥ずかしそうにそっぽを向きながら、尻尾をブンブンと振り回している。
 料理を作るものにとって、なんの忖度もなく直球で褒められると言うことは、この上なく嬉しいことなのだ。
 更に料理に興味も持ってくれているとなると、寅吉の頭の中は何のメニューを一緒に作るのがいいか、どれが喜んでもらえるかと言うことで一杯になっていた。

「寅吉ーそろそろ準備して行くよー、そろそろ帰ってこーい」
「――はっ! まずは出汁の取り方から!えっ、あ、はい今行くよ……」
「どこまで想像してたんだか……ちょっと準備してくるねー」
「はい」
 
 ◇◇◇

 2階で準備をするクレアと寅吉。
 クレアは自分の準備を終えると、グレンの部屋へとやってきた。

「クレアさんもういきますか?」
「まだだよ、寅吉待ち。ちょっと時間があったからこれを置いておこうと思ってね……」
「?」

 クレアはそう言うと倉庫を開き、頭から体を突っ込む。

(どうなってるんだろう?)

 グレンは倉庫に頭を突っ込むクレアを見て、驚きよりも不思議に思う気持ちの方が大きかった。
 ジッとクレアの動きを見つめていると、クレアの体が帰ってきた。

「あったあった、これをね、置いておこうと思ってさ。いつ使おうと準備しといたんだよね」

 そう言うクレアは一抱えほどの箱を持っていた。

「なんですかこれ?」
「これはね……よっと、絵を描くための道具だよ。色々集めといたんだよね~結構貴重な物だよ?遺跡から発掘してきた物もあるからね。これを君にあげようと思ってね」
「え……ぼくがつかっていいんですか?」

 貴重だという品物を突然渡され、グレンは困惑した表情で箱の中を覗いている。
 だが困惑しながらも、何があるのか興味津々な様子だ。

「ふふーん、興味出てきたかな?これは練習用の紙でしょ、これは鉛筆、これはクレヨン、これは色鉛筆にマジック、これは曲線を引くための定規で、これはインクを着けて絵を描くためのペン軸とペン先。これこれ、これなんかレアものでトーンって言うんだけどさ、中々綺麗なものが残ってなくてね~――」

 クレアが嬉しそうに箱の中身を紹介していく。
 その表情は溢れんばかりの笑顔であり、本当に楽しそうだった。

「クレアさんはつかわないんですか?」
「うっ……私は……絵が下手でね……ダメなんだよ……私が描くと……キャラが死んでしまうんだよ……」
「そう……なんですか……?」

 今にも血涙を流しそうな表情で、必死に何かに耐えながらグレンに事情を説明するクレア。

「だから……これをグレンに託す……私の代わりに……絵を……漫画を描いて欲しいんだ!」
「ぼくが……えを……かく?」

 クレアにはゆくゆくは漫画を描いて欲しい等と言われていたが、改めてその道具を見るとどうすればいいか分からず、グレンの思考は停止してしまう。

「大丈夫!ちゃんと教材は用意してあるから!まずは絵を描く練習から初めてくれたら私は嬉しい!ちょっと描いてくれるだけで物凄く嬉しい!興味を持ってくれたら更に嬉しい!どうだろう!グレンくん、どうだろうか!?」

 今度は鬼気迫る勢いでグレンの鼻先まで顔を近付けて迫ってくるクレア。

「ぼく……やってみたいです!うまくできるかわからないけど、やってみたいです!」
「っ!……あ゛り゛がどう゛……わ゛だじも゛がん゛ばっでお゛じえ゛る゛がら゛……」

 グレンに縋りつき、涙を流して喜びを爆発されるクレア。
 グレンは紙と鉛筆を手に取る。

(ぼくに……できるかな……ししょうたちのために……かきたい……)

 グレンの鉛筆を握る力が、一段強くなる。
 
「ぐすっ……グレン……これも使って……」

 クレアはもう一度倉庫に体を突っ込み、今度は大きな机を取り出す。

「おっとと、さすがに重いね……」
「これはなんですか?」

 クレアが持ち出してきたのは勉強机と似たような机だった。
 だが、勉強机と違い机の真ん中がガラスで出来ている。
 グレンが不思議に思いながら見ていると、クレアが説明を始める。
 
「これは絵を描くための作業机だよ。ちゃんとトレースとかできるやつだよ。まぁ今は使わないと思うけど、絵を描く道具なんかはこっちに閉まっとけば整理できるから使ってみて」
「はい!」
「あっあと、これは寅吉にはまだ内緒にしといてね。驚かせたいからね」
「わかりました!おどかせたいです!」
「「ふふふふ」」

 2人いい笑顔で笑い合った。
 
 ◇◇◇
 
 準備を終えたクレアと寅吉は昨日と同じ探索者姿で家の前にいた。
 
「それじゃあ行ってくるね」
「課題は無理しなくていいからな」
「はい、いってらっしゃい」

 杖を掲げ、宙に浮き上がっていくクレアと寅吉。
 グレンは遠くへと飛び去っていく2人を見送り、家の中へと戻っていく。

「きょうももじとすうじのべんきょうからやろう
 !」

 グレンは勉強机に向かう。
 隣には作画机があるが、まずは勉強だ。

「やることいっぱい!がんばるぞ!」

 グレンは大きく伸びをして勉強を始めた。
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