最後の魔女は目立たず、ひっそりと暮らしたい

アイイロモンペ

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第3章 魔法使いの弟子

第36話 魔法の基礎を教えていたら…

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 さて、アリィシャちゃんに対する指導ですが、文字の読み書きばかり教えている訳ではありません。
 代わり映えがしないとアリィシャちゃんも退屈してしまいます。

「これからアリィシャちゃんに魔法の基礎を教えるわ。」

 午前中の読み書きの学習が一段落ついたので、私はアリィシャちゃんに伝えました。

「魔法は魔法書を読んで覚えるんじゃないの?」

 アリィシャちゃんが尋ねてきました。ええ、最初にそう教えましたからね。

「基本的にはそうだけど、逆に幾ら魔法書を読んでも感覚的に掴めないことがあるのよ。」

「感覚?」

「そう、実際に体で感じ取らないとわからないことがあるの。
 それはね、体内に流れる魔力の流れよ。」

「魔力の流れ?」

「そう、魔力の流れ。
 私たち魔法使いは体の中を流れる魔力を使って魔法を発動させているの。
 だから魔力がどんなものか分からないと魔法の使いようがないでしょう。
 こればっかりは本を読むよりも実際に体で感じた方が早いのよ。」

 そう言って私はアリィシャちゃんの手を取ります。

「良い?
 これからアリィシャちゃんに私の手から魔力を流します。
 大地の力を感じ取れるアリィシャちゃんなら、すぐにわかると思います。
 私が流した魔力が体の中を流れていくのを感じ取ってください。
 それが、魔力の流れです。」

「あっ、わかった、これが魔力の流れ……。
 ロッテお姉ちゃんの手から温かい流れを感じる。
 うん、体の中を川のように流れている。
 なんか、体の中をぐるぐると回っているみたい。」

 さすが、地脈の流れを感じ取ってあの丘にいた子です。
 すぐさま、自分の中を流れる魔力の流れが知覚出来たようです。

「そう、今でもその流れははっきり分かるかな?」

「うん、ちゃんと分かるよ。」

 本当に優秀です。実は私はもう魔力を流し込むのを止めているのです。
 今、アリィシャちゃんが感じているのは、まさにアリィシャちゃん自身の魔力の流れなのです。

「じゃあ今度は、その魔力の流れの中から魔力を意識的に指先に集めることが出来るかな。
 体の中を流れる大きな魔力の流れの中から指先に向かって魔力の流れを枝分かれさせるの。」

「う~ん。難しい…、こうかな…。
 あっ!出来た!」

「そう、じゃあ、魔力を指先に集めたままで私を見ていてね。
 指先に集めた魔力を光の玉に変えるイメージで指先が放出してあげるの。」

 私は指先に小さな光の玉を生み出しました。

「アリィシャちゃん、この光の玉を見て同じ物を作るイメージで魔力を指から出してみて。」

「えっと、光の玉よ出て来い!」

 アリィシャちゃんが掛け声を出して魔力を放出するとその指先に仄かな光の玉が現われました。
 なんと、一回で成功させてしまいました。
 私が幼い頃、これを一回で成功させたら母が飛び上がって喜んだのを覚えています。
 魔力を感知できるようになって、すぐにこれが出来る子供は極めて稀なのだそうです。
 アリィシャちゃんはとても才能溢れる子のようです。

「で、出来たー!」

「ええ、ちゃんと出来ているわ。
 一回で出来るようになるなんてえらいわ。
 おめでとう、アリィシャちゃん。これでアリィシャちゃんも魔法使いの仲間入りよ。」

「わーい!今日から私も魔法使いだー!」

 私の言葉にアリィシャちゃんアリィシャちゃんが歓喜の声を上げました。
 上手く出来たのが余程嬉しかったのでしょう。
 それからアリィシャちゃんは、指先に光を灯したり、消したりを何度も繰り返していました。

 私がそんなアリィシャちゃんの微笑ましい様子を眺めていると玄関のドアノッカーが来客を告げました。


     **********


 私が玄関の扉を開くと目の前に現われたのは勿論リーナです。
 ここを訪ねて来る人はリーナとハンスさんしかいませんものね。
 ハンスさんは十月の下旬に冬越しの物資を仕入れてきてくれることになっています。
 今、ここを訪れるのはリーナの他にはいないのです。

「こんにちは、ロッテ。
 思ったより仕事が溜まっていて、中々遊びにこれなかったの。
 今はお邪魔じゃないかしら?」

「ようこそ、リーナ。
 大丈夫よ、リーナなら何時でも歓迎するわ。」

 私がリーナをリビングルームまで迎え入れると、リーナは目敏くアリィシャちゃんが魔法を使っているのに気が付きました。

「あっ、アリィシャちゃんが魔法を使っている。
 すごい!良いな~、羨ましいな~!
 ねえ、ねえ、リーナ、私も使えないかな?魔法?」

「別に、リーナが魔法を使える必要はないでしょう。
 リーナにはシアンが付いているから、身の安全は図られているわ。
 それに、魔法なんか使えたら聖教の異端審問官に目を着けられるわよ。」

「ええっ、だって素敵じゃない魔法使い、お伽噺みたいで。
 別に人前で使わなければ良いのでしょう。
 いま、アリィシャちゃんが使っている魔法、とても素晴らしいわ。
 夜中におトイレに行きたくなったときに、すぐに灯りが使えるのが良いわ。
 頼りないランプの明かりで、薄暗い廊下を歩くのって凄く怖いの。」

 あっそ、そんな理由で魔法が使いたいのね。
 リーナの大きな館で夜中にトイレですか、確かに心細いですね。

「いいわ。でも、魔法を使えるかどうかは生まれ持っての資質に依存するの。
 それは、最初に会った時に教えたわよね。
 今から試してあげるから、資質が無ければ諦めてね。」

「やったー!」

 私が折れると、リーナが子供のように喜びました、まだ使えるとは限らないのに…。

 先程のアリィシャちゃんの時と同じです。私はリーナの手を取りました。

「これからリーナの体に私の手から魔力を流します。
 私が流した魔力が体の中を流れていくのを感じ取ってください。
 それが感じ取れれば、魔法を使えるかも知れません。」 
 
「魔力を感じ取るのね、わかった。
 じゃあ、流してみてください。」

 やる気満々のリーナに促されて私はリーナの手に魔力を送り込みます。

「なにこれ、くすぐったい。あはは。
 わかった、わかったから、ちょっと止めて。」

 予想外の反応が返ってきました…、どうもリーナは魔力に敏感な体質のようです。

「それで、魔力の流れは感じ取れたの?」

「はあ、はあ、うん、バッチリわかった。
 今でも、自分の中の魔力の流れは感じ取れているわ。
 ロッテに魔力を流されたときは、体の中をくすぐられるようでこそばゆかったの。」

「あっ、そう…。
 じゃあ、その魔力の流れから枝分かれさせるつもりで、指先に魔力を集めてみて。
 出来るかしら?」

「うんと、こうかな?なんとなく出来た感じ?」

 いや、感じ?とか疑問形で答えられても困ります。

「じゃあ、ちゃんと出来ているか試してみるわね。
 私の指先を見ていて。
 こうやって指先に光の玉を浮かび上がらせるイメージを持って魔力を放出するの。」

 私がお手本に指先に光の玉を作るとリーナはそれを凝視して、「光の玉、光の玉」と呟いています。

 やがて……。

「えい、いでよ光の玉!」

 リーナが気合を入れて掛け声を発しました。
 するとどうでしょう、リーナの指先に眩い光の玉が浮き上がったのです。
 気合入れすぎです、不必要に眩しいです……。

「やった!これで夜中のトイレも怖くない!」

 そうですか……。
 どうやら、リーナは真っ暗な廊下を明るく照らすことをイメージして光の玉を作ったようです。
 だから、こんなに明るいのですね。

 どうやら、リーナにも魔法使いになる資質があるようです。
 しかしこれで、リーナが結界を越えて迷い込んできた理由が分かりました。
 
 この土地はアリィシャちゃんと出会った丘と同じで、大地を流れる力が集まって吹き出る場所となっています。
 勿論偶然ではありません、二百年前に聖教に村を滅ぼされたご先祖様が力の溢れる土地を求めてここに流れ着いたのです。

 そして、リーナも大地を流れる力を感じ取れる資質があり、無意識のうちにこの地に引き寄せられたのでしょう。アリィシャちゃんがあの丘に引き寄せられたのと同じですね。

 こうして、私に二人目の魔法弟子が出来たのです。
 全く予想外の結果になりました……。


     **********

 お読みいただき有り難うございます。

 *お願い
 9月1日から始まりましたアルファポリスの第13回ファンタジー小説大賞にこの作品をエントリーしています。
 応援してくださる方がいらっしゃいましたら、本作品に投票して頂けるととても嬉しいです。
 ぶしつけにこのようなお願いをして恐縮ですが、よろしくお願いします。
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