最後の魔女は目立たず、ひっそりと暮らしたい

アイイロモンペ

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第7章 できることから始めましょう

第164話 なんと温泉付きの宿舎です

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 工房開設の目途も立ったことだし、シューネフルトの町にあの二人と十人の見習いが住む家を用意しようかと考えていた時のことです。
 
 私の後ろに控えていた侍女のカーラが言ったのです。

「あの二人が住む場所は、工房の敷地の中に建てた方が良いと思います。
 あの二人のことですし、作業に没頭したら工房内に寝泊まりしてしまいます。
 きっと、シューネフルトの町までは帰らないと思いますよ。」

 カーラの指摘はもっともですね。
 あの機械バカ共ならやりかねないです。
 工房の機械設置作業の際に寝食を忘れて作業に没頭したあげく、こと切れるように倒れ伏していたのですから。
 
 私はカーラの提案を採用し、工房の敷地内にそこで働く人達の住居を建てることにしました。
 オークレフトさんとジョンさんの住居、それに見習い十人の分も必要ですね。

 それと、アレも作らないといけないでしょうね。

 ここは、またあの子達の協力を仰ぎますか。
 そう考えていると、カーラからまた別の提案が出されます。

「あの人達に自分の生活の管理が出来るとは思えません。
 また、空腹で倒れるのが目に見えるようです。
 それに、住む部屋の掃除もしないでしょう。
 誰か世話をする人が必要だと思います。
 その役を私がやりたいと思います。」

「あら、私の専属侍女が不満だったのかしら?
 男共の世話は大変よ。」

「いいえ、シャルロッテ様の侍女をさせて頂くのに不満はございません。
 こんなに良くして頂いて不満など持とうものならバチがあたります。
 ただ、この家のことはブラウニー達があらかたやってくれます。
 シャルロッテ様のお世話もベルタさんが嬉々としてなされるものですから。
 率直に言って私のやることが無いのです。 
 幸い、村暮らしで悪ガキ共のあしらいは慣れています。
 見習いもまとめて面倒を見るのに私が適任ではないかと。」

 たしかに、おじいさま同様、私のことを溺愛するベルタさんにカーラの仕事が取られている気がします。
 カーラが自発的にやりたいと言うのであれば、ここは任せてみましょうか。

「じゃあ、お願いしようかしら。
 でしたら、カーラの住む場所も作らないといけませんね。」

 こうして、カーラは私の専属侍女から工房のお世話係にシフトすることになりました。


     **********


 そして、十日ほど時間が過ぎて…。
 工房の敷地の隅、今、私達の前にあるのは、大小のログハウス(丸太小屋)です。
 もちろん、植物の精霊ドリーちゃんにお願いして建ててもらいました。

 二件並んで建つ小さなログハウスの横に建つ大きなログハウスが一件。
 そして、少しは離れた場所に建つ、小さなログハウス二件を併せたような大きさの、中ぐらいのログハウス。

 小さなログハウスは、オークレフトさんとジョンさんが住む家です。
 それぞれ、ワンルームにベッドと机が設えてあります。

 大きなログハウスは、見習い工の寄宿舎、広い一つの部屋にベッドが十台並んでいます。
 また、大きなログハウスの中は仕切られて、厨房と食堂のスペースがあります。

 そして、中ぐらいのログハウスが、紅一点のカーラの住居です。
 居住スペースはジョンさん達と同じなのですが、浴室が付けられた分だけ大きいのです。

 そう、この住居スペースには浴場を作ったのですが、男女一緒と言う訳には行きません。
 そのため、カーラの住居には専用の浴室を作ったのです。


「これが、アクアちゃんが言っていた温泉というものですか?
 地の底から自然にお湯が湧いてくるって不思議ですね。」

「ええ、これがよろしいでしょう。
 これなら、年中お湯が湧きだしているので、何時でも体を清めることができますわ。」

 私の呟きに答えるように水の精霊アクアちゃんが言いました。

 私達が今立っているのは、ジョンさん達の住居と見習い工の寄宿舎の間に設けた殿方用の浴場です。
 浴場がないと、彼らはまた生ゴミのような臭いをさせるかもしれません。
 とは言え、お湯を沸かすのも大変です。男共に任せてたらきっと入浴しなくなるでしょう。

 頭を悩ませていた私にアクアちゃんが知恵を貸してくれたのです。
 工房の敷地の地下深くに、お湯の水脈があるからそこから引いてしまおうと。

 是非もなく、私はその話に飛びつきました。
 一年中枯れることなく湧き出すお湯、薪がいらないのも有り難いです。

 アクアちゃんの言った通り、目の前のにある大きな浴槽にはいっぱいのお湯が張られています。
 ゆうに十人以上は入れる浴槽を自然に満たしてくれるのですからとても有り難いです。

 もちろん、カーラの住居にある浴室のお湯もこの温泉というものです。

「このお湯、お肌に良い成分が含まれていますの。
 お肌が、ツルツル、スベスベになりますのよ。」

 アクアちゃんの言葉にカーラは嬉しそうです。
 屋内なので悪ガキ共に覗かれる心配も無くて良いですね。


    **********


 そして、工房で働く人達の住居が完成したこの日、工房は十人の少年を見習いとして迎えることになりました。
 年齢は十四、五歳で、いずれも貧しい農家の二男、三男です。
 今年傭兵として村を出て行く予定にしていた子供ばかりだそうです。

 今回も、リーナ自らが村々を回って見習い工の募集をしたそうです。
 一つ一つの村で、命の危険に晒される傭兵に行かなくても働く場があると説明をして回ったそうです。 

 私が採用された少年たちを眺めていると、一人の少年のボヤキ声が聞こえました。

「あーあ、俺は傭兵に行って、一山当ててやろうと思っていたになぁー。
 金持ちになって、いい女を両腕で抱えるのが夢だったのに。
 お袋が危ないマネはしないで、堅実に生きろなんて言うんだぜ。
 こんな、時化た工房で見習いをしろだなんて、やってられるかよ。」

 ああ、確かにカーラが言うように、一筋縄ではいきそうもない悪ガキがいますね。
 親の心、子知らずとはよく言ったものです。
 子供に死んで欲しくないから、この工房を勧めたというのに…。

 傭兵で一山あてられるのは、千人に一人もいないのですよ。

 でも、十四、五の少年の夢が『いい女を両腕で抱える』ことですか、小さいですね。
 もっと、大きな夢を持って欲しいものです。 
 
 こんな悪ガキ共を、あの機械バカ二人で御せるのか不安になりましたが…。
 こうして、見習い工も迎えて工房は動き出したのです。


     *********

*予定が変更になりました。
 明日以降も投稿を続けますので、よろしくお願い致します。
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