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第18章 冬、繫栄する島国で遭遇したのは
第556話 これをいきなり紹介するハメになるとは…
しおりを挟む精霊の存在に興味津々のマーブル青年。
そんな青年に、水の精霊アクアちゃんは私にくっついていれば良いなどと勝手に勧めてしまいました。
「アクアちゃん、何を言っているのですか。
そんなに親密でもない方に、精霊のことを易々と教えられませんわ。
精霊の力を良からぬことに利用しようと考えられたら困ります。」
常日頃なら、こんなことを言わなくてもわかっているはずなのに。
アクアちゃんはいったいどうしたのでしょうか。
「そんな心配しなくても平気ですわ。
数日前にフェンスをよじ登って侵入しようとした時からずっと見てましたが。
この方に、邪気は感じられませんわ。
ただただ、不思議なことに関心があるだけです、子供のように無邪気に。
私達精霊のこと、ただ知りたいというだけみたいですし。
教えて差し上げても良いのではないですか。」
普段なら、アクアちゃんはマーブル青年くらいの歳の男性には警戒を示すことが多いのですが。
私に悪い虫が付くといけないと言って。
青年にはそんな警戒感は全く目見せませんでした。
精霊に関心を示す様子がそんなにおかしかったのか、終始にこやかに笑みを湛えています。
「そうだわ、ロッテさん。
みんなも紹介して差し上げたらいかがかしら。」
それだけではなく、アクアちゃんは他の精霊も紹介しろと促してきました。
すると、青年はいきなり私の手を取り…。
「アクアさんが、『みんな』もと言うことは。
アクアさん以外にもここには精霊がいると言うことですか。
それは、是非ともお目に掛りたいです。」
凄い喰い付きで、他の精霊にも会わせて欲しいとせがんできました。
近い、近いです。
顔が近いし、鼻息が荒くてキモいですから、そんなに興奮しないでください。
「あの…、手を放してくださいませんか。
私、一応、未婚の女性ですから、そんな風に手を握られると困ってしまうのですが。」
「あっ、これは、失礼しました。
ボク、子供の頃から興味があることがあると見境が無くなっちゃいまして…。
少しは落ち着きなさいと周囲からよく注意されるのです。」
私に注意され手を放した青年は、恥かしそうに謝罪してきました。
本当に子供の頃から変わっていないのですね。
**********
まあ、確かに無邪気過ぎるくらい無邪気なので、紹介しても実害は無いでしょう。
いざとなれば、『言霊』の魔法を使って口止めしてしまえば良いことです。
私がアクアちゃんの言葉を受け入れて精霊達を呼ぼうとした時です。
お忘れかもしれませんが。
この時、私は保護した女の子をスノーフェスティバルの会場から館に連れ帰ってきたところで。
私の両側には、サリーとエリーを連れています。
二人共私達の会話に口を挟むことなく、大人しくしていてくれたのですが…。
青年に精霊達を紹介しようとしているのを察したらしく。
「まま、せいれいさん、よぶの?
じゃあ、さりー、にっしーをよぶね!」
「あっ、ダメ!」
不意にサリーがそう言うと、止める間もなくニッシーを呼んでしまいました。
いきなり、ドラゴン(もどき)を紹介するなんて刺激が強すぎます。
すると、間もなく。
「うん? 何だ、また背中に乗せて欲しいのか?」
セントバーナードくらいに縮小したニッシーが、浴場の方からふよふよと飛んで来ました。
この館に来て以来、天然温泉のお風呂が気に入った様子で大概湯船の中に浮かんでいます。
女風呂に…。
そして、大型犬サイズになったニッシーの背中に乗せてもらうのが、最近のサリーのマイブームなのです。
背中に乗せてもらい湯船の中でぷかぷか浮かんでいたり、宙をふよふよと浮かんで行き来したりと。
「うん、のる!」
目の前に着地したニッシーに、サリーは嬉しそうによじ登りました。
ニッシーの背に乗り、宙に浮かぶと。
「おにいちゃん、にっしーだよ。にしこでひろってきたの。」
サリーは得意げにニッシーを紹介しました。
いや、そんな犬を拾って来たみたいに…。
「ニシ湖のニッシーって。
この島の三大ミステリーの一つではないですか。
北の果てにあるニシ湖に、巨大なドラゴンが住んでいると言う。
ですが…、ドラゴン?
ボクには犬くらいの大きさに見えるのですが…。」
サリーを乗せて宙に浮かぶ存在を目にして呆気に取られていたマーブル青年ですが。
サリーの言葉を反芻して、そんな素朴な疑問を口にしました。
「ええ、その水竜のような姿をした生き物は間違いなくニシ湖のニッシーですよ。
メアリーさんと一緒にニシ湖にいって連れて来たのです。
言いましたでしょう。
ハイランド地方へ行った帰りに、小アルビオン島から飢饉を逃れてきた少女に遭遇したと。
ハイランド地方へ行った目的は、ニッシーの調査のためだったのです。
ニシ湖にいる時は小島くらいの大きさがありました。
もっとも、ニッシーはドラゴンではなく、水の精霊ですけど。」
『ナショナルトラスト』がハイランド地方のニシ湖一帯を自然保護のために買い取りました。
その調査のために調査団を派遣したものの、ドラゴンが出たと怯えて帰ってきてしまったのです。
調査を放り出して。
メアリーさんはアルムハイムの館の裏にある聖獣の森を知っていますから。、
ドラゴンが水の精霊ではないかと相談を受けて、私達はニシ湖へ確認に出向くことになりました。
案の定、ニッシーは水の精霊だったのですが、ここで想定外の事が起こります。
一人ぼっちは寂しかろうと、エリーがうちに来ないかと誘ったのです。
その結果が今の状況です。
ニッシーはニシ湖から我が家の風呂場に住処を移しました…。
そんな事情を青年に伝えると。
青年はわなわなと震えながら…。
「ニシ湖のニッシーが本当にいたとは…。
こうして目にする事が出来るなんて感激です。
しかも、伝承のドラゴンの正体が精霊だったなんて。
二重の驚きです。」
オカルトマニアの間では、この国最大のミステリーとまで言われているニシ湖のニッシー。
実際に目にして、その正体を知り、マーブル青年はとても興奮していました。
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