242 / 848
第十一章 小さな王子の冒険記
第242話 ウサギを飼うのが流行ったよ
アルトに害虫駆除をしてもらって、お風呂で奇麗に汚れを落としたラビはこの日から一緒に寝ることになったんだ。
二人でラビに寄り添って寝てるのだけど、そのモフモフの体は温かくて、柔らかくて心地良い眠気を誘うんだ。
おかげで、ラビが来てから寝付きが良くなったよ。
ラビは一人取り残されるのが心細いようで、何処へ行くのにも付いて来るの。
おいらとオランが歩く横をピョンピョンと跳ねながら付いて来る様は、可愛いと評判なんだ。
「あっ、ラビだっ! わーい!」
ゴハンを買いに広場に行くと、小さな子供がラビに向かって一目散に駆けて来た。
町を歩いてると、こんな風に子供が寄って来て飛びつくことなどしょっちゅうだよ。
臆病なラビは、最初のうち子供に飛びつかれてビクついていたけど。
今じゃすっかり慣れちゃって、子供がモフモフの毛に頬ずりするとラビも気持ち良さそうしてるの。
「あらまあ、すっかり人気者になったもんだね。
魔物がそんな風に懐くなんて、たまげたもんだよ。」
子供にじゃれつかれて、されるがままになっているラビを見ながらオバチャンも感心してたよ。
何処にでも付いて来るということは、当然狩りにもついて来る訳で…。
その頃になるとオランも一人でトレントを退治することが出来るようになっててね。
おいらやオランが容易くトレントを狩るものだから、ラビでも狩れると勘違いしたようなんだ。
おいらが目を離した隙に、不用意にトレントに近付いたみたいでね。
「ウキュキュ!」
変な鳴き声を耳にして振り返ると…。
ラビは、向かってくる槍のような枝を躱そうと必死になって跳ねてたよ。
でも、中々安全な場所まで退避することが出来なくて助けを求めてたんだ。
まあ、戦闘経験もないレベルゼロのラビが、レベル四のシュガートレントに勝てる訳もなく。
と言うより、前歯で噛み付くくらいしか攻撃手段のないウサギが、トレントの大木を倒せる訳が無いんだけど。
「ラビ、大丈夫?」
おいらはすぐに、ラビを攻撃しているトレントを倒してあげたんだ。
トレントの攻撃が余程怖かったんだろうね。
「ウキュ! ウキュ!」
怯えたような鳴き声を上げながら、おいらにしがみ付いてブルブルと体を震わせてたよ。
「こんなに憶病なら、成長しても人を襲うことは無いかしら。
いえ、まだ安心するのは早いわね。
成長するにしたがって、獰猛になるかもしれないしね。」
アルトは怯えているラビを眺めてそんな呟きを漏らしていたの。
いつ、野生が牙を剥くか分からないから油断しちゃダメだって。
**********
そんな感じで、すっかり町の人気者になったラビだけど。
ラビがやって来てしばらくすると町に変化が現れたんだ。
それは子供がいる家を中心にウサギを飼う人が出てきたこと。
勿論魔物のウサギじゃなくて、小動物のウサギね。
ラビの人気に目を付けた冒険者ギルドがウサギの捕獲に動いたの。
ヘタレな冒険者でも小動物のウサギくらいなら捕獲できるだろうってね。
おいら、小動物のウサギなんて見たこと無かったんだけど。
冒険者ギルドのオッチャンが言うには、近くの農村には普通に生息しているらしいよ。
ただ、おいらが狩場にしている西の草原は魔物が闊歩する弱肉強食の世界だからね。
小動物のウサギなんか格好の餌食になっちゃうんで棲んでないらしいの。
もしかしたら、昔はいたけど絶滅しちゃったのかもしれないって。
それはともかく、今まで冒険者は小動物のウサギなんか目もくれなかったらしいの。
ウサギはあくまで食材で、ペットとして飼うなんて誰も考えてなかったから。
食材としてなら、町の近くの草原にウサギの魔物が幾らでもいるからね。
ウサギ一匹からとれるお肉の量が、動物と魔物では桁違いだもの。
食材としてのウサギ(動物)は、小さ過ぎて二束三文でしか売れないそうなんだ。
だから、冒険者たちは誰も狩ろうとしなかったみたい。
小動物のウサギをチマチマ狩るより、ウサギの魔物を何人かで一匹狩った方が稼ぎ良いって。
小動物のウサギを狩るくらいなら、町の人にゴロ巻いて金を巻き上げていた方がましだったって。
ギルドのオッチャンは、そんなしょうもない事を言ってたよ。
でも、ラビがやって来て町の人気者になると話が違って来たの。
可愛いモフモフのウサギを子供が欲しがるようになったんだ。
ラビのようなウサギの魔物なんか、普通は獰猛で飼えないからね。
勢い小動物のウサギが注目されるようになったんだ。
ウサギを欲しがるのはもっぱら子供だからね。
大きさ的に言っても小動物の方がちょうど良かったみたい。
傷つけないように捕まえたウサギを、良く洗ってノミやダニを駆除すると高く売れるんだって。
冒険者ギルドではちょっとした稼ぎになったみたいだよ。
町の広場で子供がウサギとじゃれているのを見てたら。
「ああやってウサギを飼うことが出来るのも、この町が豊かになった証拠よね。」
おいらの肩に座っていたアルトがそんなことを言ったんだ。
「豊かになった証拠?」
「そうよ、今までのこの町じゃ、食べて行くのが精一杯だったでしょうからね。
ウサギなんて、食材としてしか扱われなかったと思うわ。
とても愛玩用にウサギを飼うなんて考えられなかったと思う。」
この町は、ダイヤモンド鉱山が閉山になってから寂れちゃったからね。
大した仕事もなくて食べて行くのがやっとだから、みんな、慎ましい生活をしていたんだ。
ウサギだって、飼うからには餌だって必要なんだから。
お金の面でも、心の面でもそんなゆとりは無かっただろうって。
ここ最近、『STD四十八』の興行を始めとして色々な変化があって、他所から人が集まるようになったでしょう。
おかげで、宿屋が復活したり、酒場が増えたりで町が活気を取り戻してきたんだ。
それに伴って、町に住む人達も稼ぐ機会が増えて少しずつ懐が温かくなってきたみたい。
ウサギをペットとして飼えるのは、そのくらいのゆとりが出て来たということで。
取りも直さず、町の人達が豊かになってる証拠だって。
そう言えば、一年前のこの広場は人通りも疎らで閑散としてたっけ。
その時は広場がこんなに賑わうなんて思いもしなかったよ。
この先、もっと、もっと、町が賑わうようになればいいね。
二人でラビに寄り添って寝てるのだけど、そのモフモフの体は温かくて、柔らかくて心地良い眠気を誘うんだ。
おかげで、ラビが来てから寝付きが良くなったよ。
ラビは一人取り残されるのが心細いようで、何処へ行くのにも付いて来るの。
おいらとオランが歩く横をピョンピョンと跳ねながら付いて来る様は、可愛いと評判なんだ。
「あっ、ラビだっ! わーい!」
ゴハンを買いに広場に行くと、小さな子供がラビに向かって一目散に駆けて来た。
町を歩いてると、こんな風に子供が寄って来て飛びつくことなどしょっちゅうだよ。
臆病なラビは、最初のうち子供に飛びつかれてビクついていたけど。
今じゃすっかり慣れちゃって、子供がモフモフの毛に頬ずりするとラビも気持ち良さそうしてるの。
「あらまあ、すっかり人気者になったもんだね。
魔物がそんな風に懐くなんて、たまげたもんだよ。」
子供にじゃれつかれて、されるがままになっているラビを見ながらオバチャンも感心してたよ。
何処にでも付いて来るということは、当然狩りにもついて来る訳で…。
その頃になるとオランも一人でトレントを退治することが出来るようになっててね。
おいらやオランが容易くトレントを狩るものだから、ラビでも狩れると勘違いしたようなんだ。
おいらが目を離した隙に、不用意にトレントに近付いたみたいでね。
「ウキュキュ!」
変な鳴き声を耳にして振り返ると…。
ラビは、向かってくる槍のような枝を躱そうと必死になって跳ねてたよ。
でも、中々安全な場所まで退避することが出来なくて助けを求めてたんだ。
まあ、戦闘経験もないレベルゼロのラビが、レベル四のシュガートレントに勝てる訳もなく。
と言うより、前歯で噛み付くくらいしか攻撃手段のないウサギが、トレントの大木を倒せる訳が無いんだけど。
「ラビ、大丈夫?」
おいらはすぐに、ラビを攻撃しているトレントを倒してあげたんだ。
トレントの攻撃が余程怖かったんだろうね。
「ウキュ! ウキュ!」
怯えたような鳴き声を上げながら、おいらにしがみ付いてブルブルと体を震わせてたよ。
「こんなに憶病なら、成長しても人を襲うことは無いかしら。
いえ、まだ安心するのは早いわね。
成長するにしたがって、獰猛になるかもしれないしね。」
アルトは怯えているラビを眺めてそんな呟きを漏らしていたの。
いつ、野生が牙を剥くか分からないから油断しちゃダメだって。
**********
そんな感じで、すっかり町の人気者になったラビだけど。
ラビがやって来てしばらくすると町に変化が現れたんだ。
それは子供がいる家を中心にウサギを飼う人が出てきたこと。
勿論魔物のウサギじゃなくて、小動物のウサギね。
ラビの人気に目を付けた冒険者ギルドがウサギの捕獲に動いたの。
ヘタレな冒険者でも小動物のウサギくらいなら捕獲できるだろうってね。
おいら、小動物のウサギなんて見たこと無かったんだけど。
冒険者ギルドのオッチャンが言うには、近くの農村には普通に生息しているらしいよ。
ただ、おいらが狩場にしている西の草原は魔物が闊歩する弱肉強食の世界だからね。
小動物のウサギなんか格好の餌食になっちゃうんで棲んでないらしいの。
もしかしたら、昔はいたけど絶滅しちゃったのかもしれないって。
それはともかく、今まで冒険者は小動物のウサギなんか目もくれなかったらしいの。
ウサギはあくまで食材で、ペットとして飼うなんて誰も考えてなかったから。
食材としてなら、町の近くの草原にウサギの魔物が幾らでもいるからね。
ウサギ一匹からとれるお肉の量が、動物と魔物では桁違いだもの。
食材としてのウサギ(動物)は、小さ過ぎて二束三文でしか売れないそうなんだ。
だから、冒険者たちは誰も狩ろうとしなかったみたい。
小動物のウサギをチマチマ狩るより、ウサギの魔物を何人かで一匹狩った方が稼ぎ良いって。
小動物のウサギを狩るくらいなら、町の人にゴロ巻いて金を巻き上げていた方がましだったって。
ギルドのオッチャンは、そんなしょうもない事を言ってたよ。
でも、ラビがやって来て町の人気者になると話が違って来たの。
可愛いモフモフのウサギを子供が欲しがるようになったんだ。
ラビのようなウサギの魔物なんか、普通は獰猛で飼えないからね。
勢い小動物のウサギが注目されるようになったんだ。
ウサギを欲しがるのはもっぱら子供だからね。
大きさ的に言っても小動物の方がちょうど良かったみたい。
傷つけないように捕まえたウサギを、良く洗ってノミやダニを駆除すると高く売れるんだって。
冒険者ギルドではちょっとした稼ぎになったみたいだよ。
町の広場で子供がウサギとじゃれているのを見てたら。
「ああやってウサギを飼うことが出来るのも、この町が豊かになった証拠よね。」
おいらの肩に座っていたアルトがそんなことを言ったんだ。
「豊かになった証拠?」
「そうよ、今までのこの町じゃ、食べて行くのが精一杯だったでしょうからね。
ウサギなんて、食材としてしか扱われなかったと思うわ。
とても愛玩用にウサギを飼うなんて考えられなかったと思う。」
この町は、ダイヤモンド鉱山が閉山になってから寂れちゃったからね。
大した仕事もなくて食べて行くのがやっとだから、みんな、慎ましい生活をしていたんだ。
ウサギだって、飼うからには餌だって必要なんだから。
お金の面でも、心の面でもそんなゆとりは無かっただろうって。
ここ最近、『STD四十八』の興行を始めとして色々な変化があって、他所から人が集まるようになったでしょう。
おかげで、宿屋が復活したり、酒場が増えたりで町が活気を取り戻してきたんだ。
それに伴って、町に住む人達も稼ぐ機会が増えて少しずつ懐が温かくなってきたみたい。
ウサギをペットとして飼えるのは、そのくらいのゆとりが出て来たということで。
取りも直さず、町の人達が豊かになってる証拠だって。
そう言えば、一年前のこの広場は人通りも疎らで閑散としてたっけ。
その時は広場がこんなに賑わうなんて思いもしなかったよ。
この先、もっと、もっと、町が賑わうようになればいいね。
あなたにおすすめの小説
無能な悪役に転生した俺、10年間で集めたハズレスキル4000個を合成したら最強になっていた
向原 行人
ファンタジー
十八歳になると神様からスキルを授かる世界を舞台にした、アポカリプス・クエスト……通称アポクエというゲームの悪役に転生してしまった。
俺が転生した悪役アデルは、この世界では珍しいスキル無し……神様から加護を授けられなかった。
そのため無能呼ばわりされた挙句、辺境に追放されてゲーム序盤に死んでしまう。
幸い、ゲーム開始の十年前……八歳のアデルなので、そんな運命を変えるべく、剣や魔法の腕を磨く。
更に、無能呼ばわりされない為に、ゲーム知識で隠しアイテムを手に入れてスキルを授かるのだが……授かったのは「ハズレスキルガチャ」というスキル。
一日一回ガチャでハズレスキルが貰えるらしい。
いや、幾らハズレスキルがあっても意味がないと思うのだが、もしかしたらレアスキルが当たるかも……と、十年間ガチャを回す。
そして約四千ものハズレスキルが貯まったが、一つもレアなスキルは出なかった。
だが、二つ目の隠しアイテムで、「スキル合成」というスキルを授かり、四千個のハズレスキルを組み合わせ、新たなスキルを作れるようになった。
十年間の努力とスキル合成……この二つを使って、末永く暮らすんだっ!
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。
イコ
ファンタジー
堪え性もなく、気楽に道楽息子を気ままにやっていたら、何やら色んな人に尊敬されていた。
そんなお気楽転生もありかな?
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。