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第1章 人間の街へ
第12話【閑話】少女の回想
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ある日突然お父さんとお母さんがいなくなってしまった。
朝はあんな元気に出かけたのに、早く帰ってくると言ったのに。
盗賊に襲われたんだって、すぐ近くの村まで行っただけなのに。
お父さんとお母さんのお葬式を済ませてすぐに、叔父さんという人が現れて私に酒場へ手伝いに行けと言った。
私は、酒場の仕事を紹介してくれるのかと思ったら、この家から出て行けという。
ここは、お父さんとお母さんと私の家なのに。
嫌だといったら、無理やり引き摺られて酒場に連れて行かれた。
隣近所の人が、何事かと思って見に来たけど誰も助けてくれなかった。
みんな、私がいなくなってホッとした様な顔すらしている。
私は、『色なし』と言われて周りから気味悪がられている。
魔法は誰もが使える神様からのギフトだと言われているけど、稀に使えない者が生まれてくる。
人々は魔法が使えない者を神様から見放された呪われた人間だと言う。
魔法が使えない者は、みな体全体の色が薄いのだ、髪の色が、瞳の色が、体の色が。
だから、魔法が使えない者は、『色なし』と蔑まれ気味悪がられる、私のように。
私は、おじさんの友達がやっているという酒場の下働きをさせられた。
水汲みや調理場の火起こしなんか、魔法が使えれば簡単かも知れないが、魔法が使えない私には大仕事だ。
掃除、水汲み、調理場の下働きと一日中働いても貰えるのは、僅かばかりの固いパンと薄い塩のスープだけ、まるで奴隷のようだ。
その朝も、町の共同井戸に行き重い水桶を引き摺るようにして帰ってきたら、どうやら昼の仕込みに少し遅れたらしい。
烈火のごとく起こった酒場の主人が、水桶を抱えた私を蹴飛ばした。
まだ小さな私が大人の蹴りに堪えられるわけもなく、水桶と一緒しに倒れこみ、びしょ濡れになってしまった。
そんな時だった、
「お迎えに参りました。あなたには、是非わが主人と友人になっていただきたいのです。
もう少し早く来れれば、こんな辛い思いしなかったのに、申し訳ございません。
詳しい説明をさせていただきたいのですが、その前にあなたの家を取り戻しに行きましょう。」
と優しく声をかけてくれた凛々しい女性が現れた。
『お迎えに参りました。』とか、『わが主人と友人に』とか、何を言っているのかわからなかったけど、どうやら私を助けてくれるみたいだ。
私が見上げた先には、お姫様がいた。この女の子が目の前の凛々しい女性の主なんだろう。
まっすぐ腰まで伸びた光沢のある銀髪は、日の光を浴びてきらきらと輝いている。
卵形の小さな顔に鼻筋の通った形の良い鼻、小さな口、そして大きな目には薄く碧い瞳が燦然と輝いていた。
どこまでも白い肌に着けた、見たこともない光沢を持つゆったりとした衣装もあって、全身が輝いて見えた。
私は、事情の飲み込めないまま自宅に向かっていたが、その間少女が自己紹介してくれた。
ティターニア様というお名前らしい、ターニャと呼べと言われたがそんな恐れ多い事できません。
ティターニア様は、私が足を怪我しているのを見て、魔法で治してくれた。
私は、心の底から驚いた。
ティターニア様は、『色なし』の典型と言って良いくらいの特徴を兼ね備えている。
そんな、ティターニア様が魔法を使ったこと、しかも使えれば『聖女』と呼ばれるほど使える人の少ない治癒魔法を使ったことは、私が今まで大人たちから聞かされてきた常識を根底から覆した。
しかも、ティターニア様は、魔法は使っていないと言い、私にもすぐ出来るようになると言った。
**********
ティターニア様たちは、本当に私の家を取り戻してくれた。
その後聞かされた話は、驚くことばかりだった。
お伽話の中にしかいないと思っていた精霊が実際にいて、目の前の人たちがティターニア様以外みんな精霊であること。
私にも、精霊が見えて、精霊に力を借りられるかもしれないこと。
何よりも嬉しかったのは、精霊と話ができて、精霊とお友達になれること。
ティターニア様は、精霊の森で育てられて、今回初めて森から出て人間社会の勉強をしにきたそうだ。
一緒に勉強していく友達を探していたそうで、ティターニア様から
「ミーナちゃん、わたしと友達になろう!!」
といわれて。
「私でよければ喜んで、ターニャちゃん。」
私は、迷わず返事を返した。
私も、今まで忌子と言われて誰も友達になって貰えなかったので凄く嬉しかった。
**********
ターニャちゃんのお世話をしている精霊のリーダー格のソールさんによると、私もターニャちゃんと一緒に王都のオストマルク王立学園で学ぶらしい。
私も、両親が生きていれば今度の春から初等国民学校へ通うはずだったけど、酒場に働きに出されたので学校へ通うのは諦めていたんだ。
衣食住は、ソールさんたちが後見人として負担してくれることになった。頭が、上がらないよ。
ソールさんのおかげで、両親の残したくれた家は手放さずに済んだし、なんとご領主様御用達の服屋で服装一式を揃えてもらった。
ターニャちゃんは、私が両親が残した思い出の品々に未練があるのを察して、時空を操る大精霊のクロノスさんを呼んで、家の中のものをターニャちゃんのお家に送って預かってくれた。
凄く嬉しかった、後で知ったのだけど時空を操るのは代償に凄い量のマナが必要でターニャちゃんは倒れる寸前だったらしい、それを聞いて申し訳なくなった。
***********
こうして、私は、ターニャちゃん達の一行に加わって、王都に行くことになった。
旅の間も驚きの連続だった、まず魔導車にびっくり。
全然揺れないの。街の中の乗合馬車に乗ったときは座席は硬いし、凄く揺れるしでもう二度と乗らないと思ったんだけど、魔導車は違った。
それに、凄く速いの。王都までは馬車で一月かかると聞いていたけど、六日で着くんだって。
魔導車の中では、ターニャちゃんから精霊さんに力を借りる方法を習って、ずっと練習した。
本当に怪我を治せるようになったよ。
それと精霊さんとお友達になって、名前を付けてあげたの。
ターニャちゃんの周りの精霊さんも名前を欲しそうにしてたけど、ターニャちゃんは精霊さんが多すぎるからダメと言ってた。
それから、魔獣を退治したり、野盗を退治したり、お貴族様を拾ったり、色々ありました。
そして、本当に、王都まで六日で到着した。
これから、王都での生活が始まる。
ターニャちゃんと一緒ならきっと楽しいことがあると私は思う。
朝はあんな元気に出かけたのに、早く帰ってくると言ったのに。
盗賊に襲われたんだって、すぐ近くの村まで行っただけなのに。
お父さんとお母さんのお葬式を済ませてすぐに、叔父さんという人が現れて私に酒場へ手伝いに行けと言った。
私は、酒場の仕事を紹介してくれるのかと思ったら、この家から出て行けという。
ここは、お父さんとお母さんと私の家なのに。
嫌だといったら、無理やり引き摺られて酒場に連れて行かれた。
隣近所の人が、何事かと思って見に来たけど誰も助けてくれなかった。
みんな、私がいなくなってホッとした様な顔すらしている。
私は、『色なし』と言われて周りから気味悪がられている。
魔法は誰もが使える神様からのギフトだと言われているけど、稀に使えない者が生まれてくる。
人々は魔法が使えない者を神様から見放された呪われた人間だと言う。
魔法が使えない者は、みな体全体の色が薄いのだ、髪の色が、瞳の色が、体の色が。
だから、魔法が使えない者は、『色なし』と蔑まれ気味悪がられる、私のように。
私は、おじさんの友達がやっているという酒場の下働きをさせられた。
水汲みや調理場の火起こしなんか、魔法が使えれば簡単かも知れないが、魔法が使えない私には大仕事だ。
掃除、水汲み、調理場の下働きと一日中働いても貰えるのは、僅かばかりの固いパンと薄い塩のスープだけ、まるで奴隷のようだ。
その朝も、町の共同井戸に行き重い水桶を引き摺るようにして帰ってきたら、どうやら昼の仕込みに少し遅れたらしい。
烈火のごとく起こった酒場の主人が、水桶を抱えた私を蹴飛ばした。
まだ小さな私が大人の蹴りに堪えられるわけもなく、水桶と一緒しに倒れこみ、びしょ濡れになってしまった。
そんな時だった、
「お迎えに参りました。あなたには、是非わが主人と友人になっていただきたいのです。
もう少し早く来れれば、こんな辛い思いしなかったのに、申し訳ございません。
詳しい説明をさせていただきたいのですが、その前にあなたの家を取り戻しに行きましょう。」
と優しく声をかけてくれた凛々しい女性が現れた。
『お迎えに参りました。』とか、『わが主人と友人に』とか、何を言っているのかわからなかったけど、どうやら私を助けてくれるみたいだ。
私が見上げた先には、お姫様がいた。この女の子が目の前の凛々しい女性の主なんだろう。
まっすぐ腰まで伸びた光沢のある銀髪は、日の光を浴びてきらきらと輝いている。
卵形の小さな顔に鼻筋の通った形の良い鼻、小さな口、そして大きな目には薄く碧い瞳が燦然と輝いていた。
どこまでも白い肌に着けた、見たこともない光沢を持つゆったりとした衣装もあって、全身が輝いて見えた。
私は、事情の飲み込めないまま自宅に向かっていたが、その間少女が自己紹介してくれた。
ティターニア様というお名前らしい、ターニャと呼べと言われたがそんな恐れ多い事できません。
ティターニア様は、私が足を怪我しているのを見て、魔法で治してくれた。
私は、心の底から驚いた。
ティターニア様は、『色なし』の典型と言って良いくらいの特徴を兼ね備えている。
そんな、ティターニア様が魔法を使ったこと、しかも使えれば『聖女』と呼ばれるほど使える人の少ない治癒魔法を使ったことは、私が今まで大人たちから聞かされてきた常識を根底から覆した。
しかも、ティターニア様は、魔法は使っていないと言い、私にもすぐ出来るようになると言った。
**********
ティターニア様たちは、本当に私の家を取り戻してくれた。
その後聞かされた話は、驚くことばかりだった。
お伽話の中にしかいないと思っていた精霊が実際にいて、目の前の人たちがティターニア様以外みんな精霊であること。
私にも、精霊が見えて、精霊に力を借りられるかもしれないこと。
何よりも嬉しかったのは、精霊と話ができて、精霊とお友達になれること。
ティターニア様は、精霊の森で育てられて、今回初めて森から出て人間社会の勉強をしにきたそうだ。
一緒に勉強していく友達を探していたそうで、ティターニア様から
「ミーナちゃん、わたしと友達になろう!!」
といわれて。
「私でよければ喜んで、ターニャちゃん。」
私は、迷わず返事を返した。
私も、今まで忌子と言われて誰も友達になって貰えなかったので凄く嬉しかった。
**********
ターニャちゃんのお世話をしている精霊のリーダー格のソールさんによると、私もターニャちゃんと一緒に王都のオストマルク王立学園で学ぶらしい。
私も、両親が生きていれば今度の春から初等国民学校へ通うはずだったけど、酒場に働きに出されたので学校へ通うのは諦めていたんだ。
衣食住は、ソールさんたちが後見人として負担してくれることになった。頭が、上がらないよ。
ソールさんのおかげで、両親の残したくれた家は手放さずに済んだし、なんとご領主様御用達の服屋で服装一式を揃えてもらった。
ターニャちゃんは、私が両親が残した思い出の品々に未練があるのを察して、時空を操る大精霊のクロノスさんを呼んで、家の中のものをターニャちゃんのお家に送って預かってくれた。
凄く嬉しかった、後で知ったのだけど時空を操るのは代償に凄い量のマナが必要でターニャちゃんは倒れる寸前だったらしい、それを聞いて申し訳なくなった。
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こうして、私は、ターニャちゃん達の一行に加わって、王都に行くことになった。
旅の間も驚きの連続だった、まず魔導車にびっくり。
全然揺れないの。街の中の乗合馬車に乗ったときは座席は硬いし、凄く揺れるしでもう二度と乗らないと思ったんだけど、魔導車は違った。
それに、凄く速いの。王都までは馬車で一月かかると聞いていたけど、六日で着くんだって。
魔導車の中では、ターニャちゃんから精霊さんに力を借りる方法を習って、ずっと練習した。
本当に怪我を治せるようになったよ。
それと精霊さんとお友達になって、名前を付けてあげたの。
ターニャちゃんの周りの精霊さんも名前を欲しそうにしてたけど、ターニャちゃんは精霊さんが多すぎるからダメと言ってた。
それから、魔獣を退治したり、野盗を退治したり、お貴族様を拾ったり、色々ありました。
そして、本当に、王都まで六日で到着した。
これから、王都での生活が始まる。
ターニャちゃんと一緒ならきっと楽しいことがあると私は思う。
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