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第2章 オストマルク王立学園
第15話 入学式
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今日はいよいよ入学式、抜けるような青空に春の風が清々しい。
入学式は、学園の敷地のほぼ真ん中にある講堂でするんだって。
寮からは子供の足で歩くのは大変なので、魔導車を使って行くらしい。
今回は一台の魔導車で講堂まで行く。
三人掛けのソファーにウンディーネかあさんを真ん中に挟んでわたしとミーナちゃんが座った。
ウンディーネかあさんは、わたし達に囲まれていつも以上にご機嫌な様子だ。
「ターニャちゃんも、ミーナちゃんも新しい制服良く似合ってるわ。いつも以上に可愛いわよ。
輝いて見えるわ。」
オストマルク王立学園には、制服があるのだ。
女の子は上半身はブラウスにジャケット、下はスカートだ。
制服代金は入学金に含まれていて冬服二着、夏服二着が支給されるらしい。
さすがに、貴族が通う学校だけあって制服も吃驚するくらい良い物だ。
今着ているのは、冬服で腰丈のジャケットとプリーツスカートはウールで、シックな茶色の共布となっている。とっても手触りがよくて軽いのに保温性が高いという高級品だ。
ブラウスは、白のシルクで襟にはレースの付け襟をつけるようになっている。
で、実際に輝いているんだこれが。
魔法を使える人は、普段気が付かないうちに人が魔力と呼んでいる穢れたマナ(=瘴気)を僅かに発散しているらしい。穢れたマナは光らないから体から零れている事に気が付かない。
わたしとミーナちゃんも同様に清浄なマナを僅かに発散している。この清浄なマナ、困ったことに光が当たると輝くのだ。
なので、わたしは、小さいときから体から零れるマナを薄く身に纏う練習をさせられた。
そうすると、輝いて見えるのではなく、光沢があるように見えるんだって。
だから、みんなと同じ生地なのに表面に薄いマナを纏ったわたしの制服は光沢がある高級品に見えるのだ。
もちろん、ミーナちゃんにも出会った日から練習してもらっている。
**********
講堂の車寄せに停まり、わたし達は魔導車を降りた。ソールさんが運転する魔導車はそのまま講堂横の駐車場へ向かった。
わたし達が、魔導車を降りると一瞬周囲にざわめきが起こった。
それが、ウンディーネかあさんが放つ神々しさによるものか、『色なし』の集団が現れたことによるものか、王族ですら持っていない状態のよい魔導車で現れたことによるものかは、わたしには判らなかった。
入学式の受付を済ませると、わたしとミーナちゃんは新入生席へ、ウンディーネおかあさん達は保護者席へと分かれた。
私達の席は、特別クラスの一番、二番だそうだ。ゲッ、会場のど真ん中の最前列だ。
これじゃあ、ウンディーネかあさんから見えないじゃないか。保護者席は、新入生席の後ろなのだ。
せっかく来てくれたのに残念と思っていると、会場の二階の両サイドにある個室の席の一つにウンディーネかあさんが現れた。わたし達を見つけて手を振っている。
あそこからならわたし達のことが良く見えるねとミーナちゃんと話していると、
「王族しか入れない貴賓席に人がいますわ。」「まあ、素敵なドレス。」「きっと、他の大陸の王族の方だわ。」「でも、あの方、『色なし』ですわよ。」
という周囲の囁き声が聞こえてきた。
そっか、あそこは貴賓席なんだ。
王様、わたし達は特別扱いしないって約束したけど、ウンディーネかあさんを特別扱いしないとは言ってなかったもんね。
**********
正面の舞台の上に、偉そうな人たちが勢揃いすると会場がシーンと静まり返った。
どうやら入学式が始まるらしい。
式次第には、最初は校長の挨拶となっている。
進行役らしき人が前に出てきて言った。
「これより、今年度のオストマルク王立学園初等部の入学式を始めます。
はじめに、国王陛下よりお言葉を賜ります。国王陛下よろしくお願いいたします。」
あれ、校長挨拶どうした?国王挨拶は二番目のはずだけど。
昨日会ったヴァイゼさんが、演壇に上がって話し始める。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとう。また、保護者の皆さん、ご子息が無事成長し今日この入学式を迎えることができた事を心よりお祝い申し上げる。
さて、この場で披露するのは心苦しいのであるが、この学園の校長に不正があり本日付けで解任したことから、校長挨拶がなくなり私がこの式の最初に話す事となった。
わが国では、髪の色、瞳の色、肌の色で人を差別してはいけないとしております。これは国是であり、法律でもそう定めています。
これを率先垂範して子供達に教えていく立場の校長が、これを破ったのです。
この入学式では、入試で一番だった者が新入生挨拶をすることになっています。
校長は、今年の入試一番の者が銀髪、碧眼というだけで、新入生挨拶から外したばかりか、試験結果を細工して不合格にしようとすらしていました。
何故判ったかといえば、校長はさも良い事をしたと言わんばかりに、私に報告したのです。
私は校長の感性を、いや人間性を疑いました。
校長は今日付けで懲戒解雇すると共に貴族籍を剥奪しました。
なぜ、こんな話をここでしたかというと、今日ここに集まった小さな子供達には将来、髪や瞳や肌の色で人を差別するような偏狭な心の持ち主には育って欲しくないからです。
そして、わが国には、そんな偏狭な心を持った貴族は不要です。
ここに集った新入生と保護者の皆さんには、このことを改めて認識しておいてください。」
そうか、本当はわたしが新入生の挨拶をするはずだったのか、そういう面倒なのはパスだな。
しかし、昨日ウンディーネかあさんに会ったばかりの王様に、そんな事を言ったのか校長は。
結局、不正で決まった新入生代表に挨拶させるわけに行かず、校長挨拶なし、新入生挨拶なしという異例の入学式となった。
国王のお言葉の後の進行は、来賓の挨拶や教員の紹介があり特に変わったこともなく終った。
入学式は、学園の敷地のほぼ真ん中にある講堂でするんだって。
寮からは子供の足で歩くのは大変なので、魔導車を使って行くらしい。
今回は一台の魔導車で講堂まで行く。
三人掛けのソファーにウンディーネかあさんを真ん中に挟んでわたしとミーナちゃんが座った。
ウンディーネかあさんは、わたし達に囲まれていつも以上にご機嫌な様子だ。
「ターニャちゃんも、ミーナちゃんも新しい制服良く似合ってるわ。いつも以上に可愛いわよ。
輝いて見えるわ。」
オストマルク王立学園には、制服があるのだ。
女の子は上半身はブラウスにジャケット、下はスカートだ。
制服代金は入学金に含まれていて冬服二着、夏服二着が支給されるらしい。
さすがに、貴族が通う学校だけあって制服も吃驚するくらい良い物だ。
今着ているのは、冬服で腰丈のジャケットとプリーツスカートはウールで、シックな茶色の共布となっている。とっても手触りがよくて軽いのに保温性が高いという高級品だ。
ブラウスは、白のシルクで襟にはレースの付け襟をつけるようになっている。
で、実際に輝いているんだこれが。
魔法を使える人は、普段気が付かないうちに人が魔力と呼んでいる穢れたマナ(=瘴気)を僅かに発散しているらしい。穢れたマナは光らないから体から零れている事に気が付かない。
わたしとミーナちゃんも同様に清浄なマナを僅かに発散している。この清浄なマナ、困ったことに光が当たると輝くのだ。
なので、わたしは、小さいときから体から零れるマナを薄く身に纏う練習をさせられた。
そうすると、輝いて見えるのではなく、光沢があるように見えるんだって。
だから、みんなと同じ生地なのに表面に薄いマナを纏ったわたしの制服は光沢がある高級品に見えるのだ。
もちろん、ミーナちゃんにも出会った日から練習してもらっている。
**********
講堂の車寄せに停まり、わたし達は魔導車を降りた。ソールさんが運転する魔導車はそのまま講堂横の駐車場へ向かった。
わたし達が、魔導車を降りると一瞬周囲にざわめきが起こった。
それが、ウンディーネかあさんが放つ神々しさによるものか、『色なし』の集団が現れたことによるものか、王族ですら持っていない状態のよい魔導車で現れたことによるものかは、わたしには判らなかった。
入学式の受付を済ませると、わたしとミーナちゃんは新入生席へ、ウンディーネおかあさん達は保護者席へと分かれた。
私達の席は、特別クラスの一番、二番だそうだ。ゲッ、会場のど真ん中の最前列だ。
これじゃあ、ウンディーネかあさんから見えないじゃないか。保護者席は、新入生席の後ろなのだ。
せっかく来てくれたのに残念と思っていると、会場の二階の両サイドにある個室の席の一つにウンディーネかあさんが現れた。わたし達を見つけて手を振っている。
あそこからならわたし達のことが良く見えるねとミーナちゃんと話していると、
「王族しか入れない貴賓席に人がいますわ。」「まあ、素敵なドレス。」「きっと、他の大陸の王族の方だわ。」「でも、あの方、『色なし』ですわよ。」
という周囲の囁き声が聞こえてきた。
そっか、あそこは貴賓席なんだ。
王様、わたし達は特別扱いしないって約束したけど、ウンディーネかあさんを特別扱いしないとは言ってなかったもんね。
**********
正面の舞台の上に、偉そうな人たちが勢揃いすると会場がシーンと静まり返った。
どうやら入学式が始まるらしい。
式次第には、最初は校長の挨拶となっている。
進行役らしき人が前に出てきて言った。
「これより、今年度のオストマルク王立学園初等部の入学式を始めます。
はじめに、国王陛下よりお言葉を賜ります。国王陛下よろしくお願いいたします。」
あれ、校長挨拶どうした?国王挨拶は二番目のはずだけど。
昨日会ったヴァイゼさんが、演壇に上がって話し始める。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとう。また、保護者の皆さん、ご子息が無事成長し今日この入学式を迎えることができた事を心よりお祝い申し上げる。
さて、この場で披露するのは心苦しいのであるが、この学園の校長に不正があり本日付けで解任したことから、校長挨拶がなくなり私がこの式の最初に話す事となった。
わが国では、髪の色、瞳の色、肌の色で人を差別してはいけないとしております。これは国是であり、法律でもそう定めています。
これを率先垂範して子供達に教えていく立場の校長が、これを破ったのです。
この入学式では、入試で一番だった者が新入生挨拶をすることになっています。
校長は、今年の入試一番の者が銀髪、碧眼というだけで、新入生挨拶から外したばかりか、試験結果を細工して不合格にしようとすらしていました。
何故判ったかといえば、校長はさも良い事をしたと言わんばかりに、私に報告したのです。
私は校長の感性を、いや人間性を疑いました。
校長は今日付けで懲戒解雇すると共に貴族籍を剥奪しました。
なぜ、こんな話をここでしたかというと、今日ここに集まった小さな子供達には将来、髪や瞳や肌の色で人を差別するような偏狭な心の持ち主には育って欲しくないからです。
そして、わが国には、そんな偏狭な心を持った貴族は不要です。
ここに集った新入生と保護者の皆さんには、このことを改めて認識しておいてください。」
そうか、本当はわたしが新入生の挨拶をするはずだったのか、そういう面倒なのはパスだな。
しかし、昨日ウンディーネかあさんに会ったばかりの王様に、そんな事を言ったのか校長は。
結局、不正で決まった新入生代表に挨拶させるわけに行かず、校長挨拶なし、新入生挨拶なしという異例の入学式となった。
国王のお言葉の後の進行は、来賓の挨拶や教員の紹介があり特に変わったこともなく終った。
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