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第2章 オストマルク王立学園
第19話 サロンにて ①
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魔法実技の授業のあとアデル侯爵家のエルフリーデちゃんに声をかけられたわたしとミーナちゃんは、そのままサロンエリアに招かれた。
サロンエリアって、学年ごとに個室が十室あって、五人以上のグループで申し込むと個室一部屋を一年間グループ専用の部屋として使用できるんだって。
室内にはソファーとローテーブルの応接セットの他、丸テーブルとチェアのセットも置いてある 。
個室は誰でも申し込めるけど平民の生徒で五人以上のグループを作ることは稀なので、基本的に利用するのは貴族の子だとエルフリーデちゃんは教えてくれた。
その代わりという訳ではないだろうが、談話室というソファーとローテーブルがいくつも並べてあるスペースがあって、そちらはもっぱら平民の生徒が利用しているようだ。
サロンも談話室も、お茶とお菓子のサービスが受けられて、同じものが無料で出されているんだって。全然知らなかった。
***********
今日招かれたのは、エルフリーデちゃんのグループの子を紹介してくれるためだ。
サロンルームに行くと、既に四人の女の子が待っていた。
グループはリーダーのエルフリーデちゃんを含めて五人なんだって。
「みなさん、今日はティターニアさんとミーナさんをお招きしました。
同じクラスですのに今まで話すきっかけがつかめなかったのですが、この機会に親交を深められたらと思います。」
エルフリーデちゃんに紹介されて、わたしとミーナちゃんが軽い挨拶をすると、四人の方から自己紹介が始まった。
「こうしてお話させていただくのは初めてですね。ベデヒティヒ伯爵家のマイヤーですわ。
よろしくお願いしますね。
ティターニアさんとミーナさんの使われていた魔法は、わたし達のものとは系統が違うようで興味深いですわ。ぜひ、その点をお聞かせいただきたいですわ。」
マイヤーちゃんは、癖のないストレートの茶色い髪で眼鏡をかけた知的な雰囲気のお嬢さんだ。
「毎日教室で顔をあわせているのに初めましてはおかしいかしら?
ルーイヒ子爵家のレーネと申します。よろしくお願いしますね。
お二人ともとても可愛らしいので、もっと早くお近づきになりたかったのですが。」
レーネちゃんは、穏やかな笑顔の可愛い子だ。この子も茶色い髪だね。ふんわりとした髪質で肩甲骨くらいまでの長さだ。
「初めまして。アドレット子爵家のリリーと申します。
あまり、人と話すのが得意ではないのですが、よろしくお願いします。」
リリーちゃんは、線が細く深窓のお嬢様と言った雰囲気で少し人見知りするみたい。腰まで伸びた栗毛色のストレートヘアは光沢があって綺麗だ。
「アルムート男爵家のルーナだよ。よろしくね。
ボクは、見た目どおり強力な魔法は使えないから、二人みたいに魔法を使いこなせるのがうらやましいよ。」
ルーナちゃんは、飾らない雰囲気で親しみやすい子だ。
たしかに、鮮やかな金髪に、濃い碧眼、やや白い肌という魔法を使えるぎりぎりの姿をしている。
そうそう、エルフリーデちゃんは、緩やかにウェーブしたボリューム感のある栗毛の髪を腰まで伸ばしている。茶色の瞳の大きな目は少し釣り目がちで気が強そうに見えるかな。
四人の自己紹介が終ったタイミングで給仕の方が、お茶とお茶請けを持ってきてくれた。
お茶請けは、甘い焼き菓子と果物だった。
甘い焼き菓子は、ふんわり柔らかくて凄く美味しかった。
しまった、談話室へ行けばこれがもらえたのか、知らなくて損をした感じがする。
精霊さんは、物を食べないから料理に無頓着で、人の世界の食べ物の方が数段美味しいんだよね。精霊さんは殺生を嫌うから、お肉を初めて食べたのもつい一ヶ月ほど前だしね。
**********
わたしが、焼き菓子の美味しさに感動していたら、
「え、ミーナさんって、魔法が使えるようになってまだ一ヶ月なんですの?」
八歳児とは思えないほど落ち着いた雰囲気のあるマイヤーちゃんが年相応の驚きの声を上げた。
ああ、さっきわたし達の魔法に興味があるっていってたもんね。
「はい、私が魔法を教えてもらったのはターニャちゃんとターニャちゃんのお世話係の方ですから。
ターニャちゃんと出会ってからまだ一ヶ月経っていないんです。」
そうか、精霊と意思の疎通が出来れば使えるようになるわたし達と違って、魔法が使えるようになるには色々な訓練が必要なんだね。
「じゃあ、ターニャちゃんに教えてもらえれば私達も魔法が上達するのかしら。」
マイヤーちゃんの質問に、ミーナちゃんがどう答えればよいのか迷っている。
そうだよね、精霊の話は現時点では他言無用になっているもんね。
どう説明すればよいのか分からないよね。
「さっき、マイヤーちゃんが言ってたように、私とミーナちゃんが使う魔法はみんなが使う魔法とは系統が違うの。マイヤーちゃんは良く気が付いたね。
それで、わたし達二人の使う魔法は、練習方法も違うからわたしは教えられないと思うよ。」
わたしは、ミーナちゃんに助け舟を出すことにした。
「そうなんですか、残念ですわ。でもターニャちゃん達の魔法と私達の魔法って何が違うのですか?」
「うんとね、なんでわたし達『色なし』と呼ばれている人が魔法が使えないか考えたことあるかな。」
わたしの質問に、マイヤーちゃんは即座に解答した。
「それは、『色なし』と呼ばれている方が、魔力を持っていないからではないですか。」
そのとき、今まで黙って話を聞いていたエルフリーデちゃんが、会話に入ってきた。
「それはおかしいですね。
わたくしも家庭教師からそう習いましたが、今考えると辻褄が合わないのです。
だって、現に目の前の二人は魔法を使えますし、そもそも、王祖様はターニャちゃんと同じ特徴を持っていたと伝えられていますわ。
王祖様は、奇跡のような魔法が使えたと伝わっています。
そう考えると『色なし』と呼ばれる方は魔力がないのではなく、魔力の質が違うのではなくて。
だから、わたし達の魔法の使い方では発動しないのではないですか?」
「エルフリ-デちゃん凄いです。ほぼ完璧な解答です。
魔力のことをわたし達はマナと呼んでいるのですが、マナの色が違うのです。
わたしやミーナちゃんのマナは無色透明でほぼ純粋なマナなんです。
マナは森で生まれその時は無色透明なのですが、空気の中にあるものを取り込んで徐々に色がついてきます。
みんなの体にあるマナは、この色がついたマナなのです。
マナは空気中から体に取り込まれ、体の中で濃縮されて蓄積されます。
マナは濃縮されるほど黒い色に近づくのです。
だから、一般的に魔力の多いといわれる人は、その蓄積されたマナの影響で黒髪や黒い瞳になるのです。
今の魔法は、色のあるマナの制御を前提に研究されたものなので『色なし』には使えないのです。
純粋なマナの方が取り扱いが難しいみたい。」
「そうでしたの、勉強になりましたわ。そうすると、新たな疑問ができましたわ。
二千年前に途絶えた『色なし』の魔法をなぜお二人が使えるのかということですわ。」
「それは、途絶えたのではなく、わたしの家で秘かに伝えられていたからだよ。
その証拠をお見せしましょうか。これから見ることは、ここにいる方だけの秘密にしてくださいね。」
わたしは、そう言って、テーブルの上の花瓶に挿された一輪のバラを指差す。うまい具合に開きかけの蕾である。
(木のおチビちゃん、このマナをあげるから、花瓶の花を咲かせて。)
「えい!」
わたしの掛け声と共に、蕾がゆっくりと開花していく。
「「「「「ええぇ!!植物魔法?」」」」」
さすがに、これにはみんなが驚愕したみたいだ。
伝承の世界にしかなかった植物の生育に干渉する魔法を見たのだから。
「ええ、これが太古の魔法を伝えてきたという証です。いかがですか?」
みんな狼狽して首を縦に振っていた。
*次は今日20時に投稿しますので、よろしくお願いします。
サロンエリアって、学年ごとに個室が十室あって、五人以上のグループで申し込むと個室一部屋を一年間グループ専用の部屋として使用できるんだって。
室内にはソファーとローテーブルの応接セットの他、丸テーブルとチェアのセットも置いてある 。
個室は誰でも申し込めるけど平民の生徒で五人以上のグループを作ることは稀なので、基本的に利用するのは貴族の子だとエルフリーデちゃんは教えてくれた。
その代わりという訳ではないだろうが、談話室というソファーとローテーブルがいくつも並べてあるスペースがあって、そちらはもっぱら平民の生徒が利用しているようだ。
サロンも談話室も、お茶とお菓子のサービスが受けられて、同じものが無料で出されているんだって。全然知らなかった。
***********
今日招かれたのは、エルフリーデちゃんのグループの子を紹介してくれるためだ。
サロンルームに行くと、既に四人の女の子が待っていた。
グループはリーダーのエルフリーデちゃんを含めて五人なんだって。
「みなさん、今日はティターニアさんとミーナさんをお招きしました。
同じクラスですのに今まで話すきっかけがつかめなかったのですが、この機会に親交を深められたらと思います。」
エルフリーデちゃんに紹介されて、わたしとミーナちゃんが軽い挨拶をすると、四人の方から自己紹介が始まった。
「こうしてお話させていただくのは初めてですね。ベデヒティヒ伯爵家のマイヤーですわ。
よろしくお願いしますね。
ティターニアさんとミーナさんの使われていた魔法は、わたし達のものとは系統が違うようで興味深いですわ。ぜひ、その点をお聞かせいただきたいですわ。」
マイヤーちゃんは、癖のないストレートの茶色い髪で眼鏡をかけた知的な雰囲気のお嬢さんだ。
「毎日教室で顔をあわせているのに初めましてはおかしいかしら?
ルーイヒ子爵家のレーネと申します。よろしくお願いしますね。
お二人ともとても可愛らしいので、もっと早くお近づきになりたかったのですが。」
レーネちゃんは、穏やかな笑顔の可愛い子だ。この子も茶色い髪だね。ふんわりとした髪質で肩甲骨くらいまでの長さだ。
「初めまして。アドレット子爵家のリリーと申します。
あまり、人と話すのが得意ではないのですが、よろしくお願いします。」
リリーちゃんは、線が細く深窓のお嬢様と言った雰囲気で少し人見知りするみたい。腰まで伸びた栗毛色のストレートヘアは光沢があって綺麗だ。
「アルムート男爵家のルーナだよ。よろしくね。
ボクは、見た目どおり強力な魔法は使えないから、二人みたいに魔法を使いこなせるのがうらやましいよ。」
ルーナちゃんは、飾らない雰囲気で親しみやすい子だ。
たしかに、鮮やかな金髪に、濃い碧眼、やや白い肌という魔法を使えるぎりぎりの姿をしている。
そうそう、エルフリーデちゃんは、緩やかにウェーブしたボリューム感のある栗毛の髪を腰まで伸ばしている。茶色の瞳の大きな目は少し釣り目がちで気が強そうに見えるかな。
四人の自己紹介が終ったタイミングで給仕の方が、お茶とお茶請けを持ってきてくれた。
お茶請けは、甘い焼き菓子と果物だった。
甘い焼き菓子は、ふんわり柔らかくて凄く美味しかった。
しまった、談話室へ行けばこれがもらえたのか、知らなくて損をした感じがする。
精霊さんは、物を食べないから料理に無頓着で、人の世界の食べ物の方が数段美味しいんだよね。精霊さんは殺生を嫌うから、お肉を初めて食べたのもつい一ヶ月ほど前だしね。
**********
わたしが、焼き菓子の美味しさに感動していたら、
「え、ミーナさんって、魔法が使えるようになってまだ一ヶ月なんですの?」
八歳児とは思えないほど落ち着いた雰囲気のあるマイヤーちゃんが年相応の驚きの声を上げた。
ああ、さっきわたし達の魔法に興味があるっていってたもんね。
「はい、私が魔法を教えてもらったのはターニャちゃんとターニャちゃんのお世話係の方ですから。
ターニャちゃんと出会ってからまだ一ヶ月経っていないんです。」
そうか、精霊と意思の疎通が出来れば使えるようになるわたし達と違って、魔法が使えるようになるには色々な訓練が必要なんだね。
「じゃあ、ターニャちゃんに教えてもらえれば私達も魔法が上達するのかしら。」
マイヤーちゃんの質問に、ミーナちゃんがどう答えればよいのか迷っている。
そうだよね、精霊の話は現時点では他言無用になっているもんね。
どう説明すればよいのか分からないよね。
「さっき、マイヤーちゃんが言ってたように、私とミーナちゃんが使う魔法はみんなが使う魔法とは系統が違うの。マイヤーちゃんは良く気が付いたね。
それで、わたし達二人の使う魔法は、練習方法も違うからわたしは教えられないと思うよ。」
わたしは、ミーナちゃんに助け舟を出すことにした。
「そうなんですか、残念ですわ。でもターニャちゃん達の魔法と私達の魔法って何が違うのですか?」
「うんとね、なんでわたし達『色なし』と呼ばれている人が魔法が使えないか考えたことあるかな。」
わたしの質問に、マイヤーちゃんは即座に解答した。
「それは、『色なし』と呼ばれている方が、魔力を持っていないからではないですか。」
そのとき、今まで黙って話を聞いていたエルフリーデちゃんが、会話に入ってきた。
「それはおかしいですね。
わたくしも家庭教師からそう習いましたが、今考えると辻褄が合わないのです。
だって、現に目の前の二人は魔法を使えますし、そもそも、王祖様はターニャちゃんと同じ特徴を持っていたと伝えられていますわ。
王祖様は、奇跡のような魔法が使えたと伝わっています。
そう考えると『色なし』と呼ばれる方は魔力がないのではなく、魔力の質が違うのではなくて。
だから、わたし達の魔法の使い方では発動しないのではないですか?」
「エルフリ-デちゃん凄いです。ほぼ完璧な解答です。
魔力のことをわたし達はマナと呼んでいるのですが、マナの色が違うのです。
わたしやミーナちゃんのマナは無色透明でほぼ純粋なマナなんです。
マナは森で生まれその時は無色透明なのですが、空気の中にあるものを取り込んで徐々に色がついてきます。
みんなの体にあるマナは、この色がついたマナなのです。
マナは空気中から体に取り込まれ、体の中で濃縮されて蓄積されます。
マナは濃縮されるほど黒い色に近づくのです。
だから、一般的に魔力の多いといわれる人は、その蓄積されたマナの影響で黒髪や黒い瞳になるのです。
今の魔法は、色のあるマナの制御を前提に研究されたものなので『色なし』には使えないのです。
純粋なマナの方が取り扱いが難しいみたい。」
「そうでしたの、勉強になりましたわ。そうすると、新たな疑問ができましたわ。
二千年前に途絶えた『色なし』の魔法をなぜお二人が使えるのかということですわ。」
「それは、途絶えたのではなく、わたしの家で秘かに伝えられていたからだよ。
その証拠をお見せしましょうか。これから見ることは、ここにいる方だけの秘密にしてくださいね。」
わたしは、そう言って、テーブルの上の花瓶に挿された一輪のバラを指差す。うまい具合に開きかけの蕾である。
(木のおチビちゃん、このマナをあげるから、花瓶の花を咲かせて。)
「えい!」
わたしの掛け声と共に、蕾がゆっくりと開花していく。
「「「「「ええぇ!!植物魔法?」」」」」
さすがに、これにはみんなが驚愕したみたいだ。
伝承の世界にしかなかった植物の生育に干渉する魔法を見たのだから。
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