素直になれない幼なじみは、今日も憎まれ口を叩く。

南雲このは

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私だって好きだったのに。

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私、川崎かわさき麗奈は、保健室に美穂と松田くんを残して、1人で教室まで歩いていた。

私が保健室を出る時に、美穂が私に助けを求めるように見てきたけど、私は知らないフリをした。

見ているこっちはじれったくてしょうがなかったんだから、早くくっつけはいいのに。


「しかし、まさか私が保健室を出た瞬間に、松田くんが鍵を閉めるとは……」


あれは思わず、ゾワゾワしてしまった。

美穂、大変な幼なじみに好かれたなあ……。

私が2年生の教室までの廊下を歩いていると。


「うっ、ぐすっ、うう……」


廊下の隅で丸まるようにして座り込んでいる、1人の女子生徒がいた。

あれは……朝川さん?


「どうしたの?朝川さん」


見るに見かねて、つい声をかけた。

朝川さんはキッと私を睨みつけると、それでも涙を隠そうとはせずに、一気に私に言った。


「ゆ、ゆーまぐんが、いぢじょーざんの、ど、どころにい……!!わた、わたじだってずぎだったのにいっ……!!」

「ああ……」


『悠真くんが一条さんのところに。私だって好きだったのに』、か。

朝川さんは朝川さんで、真剣に松田くんのことが好きだったんだね……。

今思えば、朝川さんは人目もはばからず、男の子に盛大にアピールをするけど、姑息な手段を使って相手を落とそうとしたことは1度もなかった。

全部、正々堂々と勝負をしていたのかもしれない。


「ううっ、ぐずっ、ゆ、ゆーまぐんのばかあっ……!!」


何だか、気持ちを全部、素直に吐き出していて、美穂とは正反対だなあ、と私は感じた。

朝川さんを見ていると、ふとあることをに気づいた。

……そういえば、朝川さんと美穂は、背格好がすごく似ている気がする。

松田くんが朝川さんを傍に置いていたのは、これが主な理由だったのかもしれない。

……でも、これは朝川さんに言う必要はないかな。

これを言ってしまったら、朝川さんはもっと傷ついてしまうかもしれないから。


「うっ、うう……」

「……よし、朝川さん!失恋記念に飲みに行こ!おいしいジュースに甘いスイーツ!今日くらい解禁しちゃおっ。私がぜーんぶ奢るから。ね、行く?」

「い、行ぐうう……!」

「よーしよし、そんなに泣かない泣かない。そうと決まったら、ひとまず、今日の授業を全部乗り切ろうね」

「うん……」


グズグズと泣き続ける朝川さんの手を引いて、教室に入った。

廊下の窓から見えた保健室を見る。








……美穂、どうか幸せになってね。



心の中でそう呟くと、朝川さんの頭をポンポンと撫でた。







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