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幻の洞窟その2

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 「だ、誰か......助けて‼︎」
 今までの記憶がぐちゃぐちゃに混ざり合う。これは夢?私は、ニーアス⁇ラティスは私が作った理想の自分なの?
 「ニーアスおいで」
 優しく手を伸ばす陛下を見ていると、何もかもどうでも良くなってしまう。
 「......」
 「ニーアスお姉様」
 「貴方は本当にそれでいいの?」    
 「誰?」
 「私は、ニーアスじゃないと言った。ラティスだと言った」
 なんだろう。何か大事なことを忘れているような気がする。
 「レイセリファはどうしたの?」
 「......レイセリファ⁇」
 聞いた事があるような気がする。でも思い出せない。
 「陛下は本当に私を愛していると思う?」
 なんで言えばいいの?そこに居る人を見ているととても大事なことを忘れている。誰だっけ?誰かを信じようとしたのに......わからない。
 「君は抜け出せる。君を縛る鎖から抜け出せるさ。でも最後のピースが足りない。君は誰かを信じた事がないから何に縋ればいいのかわからない。でも見つけられるさ。君が一番信頼出来る人はすぐそこに居る」
 「何故、魔法を使わないの?こんな洞窟一瞬で抜け出せるはずなのに......」
 魔法?私に魔力なんてないはず⁇あれ?あったっけ⁇魔法⁇風?
 シュル
 「私の名前何?」
 「私の名前は......ラティス」
 「ニーアスはもう死んだ。だから私は、ラティス‼︎」
 「どうした?ニーアス⁇」
 「ニーアスお姉様。早くおいでよ」
 「お前は自分のことも信じられねぇなら俺を信じろ!俺は間違わない。だからラティスお前のことは俺が信じてやるよ」
 「そうだ。なんで忘れていたんだろう。私の信頼出来る人は......」
 「死ね!」
 「マジでこいつらをぶっ殺したい‼︎」
 「駄目だ!そんな事したらラティスがなんて言うか」
 「わかってるよそんなこと」
 「......私は‼︎」
 「ラティスの声?何処から?」
 「何故じゃ⁇なぜ声がする?結界で中の声や外の声を完全にシャットダウンしたはずじゃのに......」
 「ノワールが私を信じている限り、私は前を向いて歩く!ノワールが諦めていないなら私も諦めない‼︎絶対に!」
 「......ラティス」
 ノワールは自分もラティスが頑張るなら頑張れるとこの時思った。
 「なぜそのような事を言う⁇余とアリアスと三人で居れば問題ない⁇そうだろ⁇」
 「うんうん。ニーアスお姉様。一緒に居ようよ」
 「私の目の前から消えて」
 「え?」
 「私の目の前から消えてって言ってるの?わからない⁇マロンもだよ。貴方はマロンじゃない!」
 「キュー!」
 ボォー
 「私は、ラティス.ハンル.モールド‼︎ニーアスじゃない‼︎」
 ドーン
 「なんの音だ!?」
 「ど、洞窟が全部崩壊している」
 「は?」
 シュル
 「風って事は......ラティスの奴相当怒ってるな」
 「そうだね」
 「なんじゃ!?」
 「人の記憶を蒸し返して楽しい⁇人の思い出に勝手に干渉して、嬉しい⁇人を馬鹿にするのは快感?」
 「俺達は逃げた方がいいな⁇」
 「......うん」
 「人を陥れて何がいいの?」
 「お主には関係ないじゃろうが‼︎」
 「人を舐めるのも大概にしなさいよ‼︎」
 バチバチ
 「か、雷!?」
 「私、凄く怒ってるの。だからその矛先はあんた達に行くのよ?残念ね?うふふ」
 「ぎゃ、ぎゃあああああ!?」
 西の都の洞窟の町は、この日を境に壊滅した。一番怒らせていけない人を怒らせて、破滅した。その日は夜中まで悲鳴があがったのであった。
 「ラクス。ううん。ウリス、いい加減に出て来たら?」
 「は?ラティス何を言っ......」
 「いつから気付いてたの?」  
 「うーん。神獣の森当たり?」
 「そんなに前に気付いていたんだ」  
 「うん。なんとなく似てたから」
 「でもこいつの魔力は......」
 「人間の体を借りているからね。そろそろ返してあげなっちゃね」
 「うん」
 「僕は君達と旅をするのは此処まで。ラティスに正体をバレたからね」
 「そうなの?」
 「うん。僕は神に近い存在だから......バレちゃったら干渉しちゃいてないんだ」
 「へぇー。知らなかった」
 「俺だけ気付かなかった」
 「あ、安心して。私も最初は気付かなかったよ」
 「慰めにもなってねぇよ!」
 「この人間を返してから僕は君達を見守ってるよ」
 「うん。ウリスありがとうね」
 「どういたしまして」
 「俺が諦めない限り、お前も諦めないか。面白い事言うな」
 「な、何故それを!?」
 「聞こえていたんだよ。ばっちりな!」
 「は、恥ずかしい」
 その後めちゃくちゃいじられた。こうして、ラクスことウリスは何処かへと消えって行った。私達はまた、二人で旅をする事になり、南へと進んだ。南にあんな化け物が居るんなんて、今の私達は知らない。
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