愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました

共鳴

　「ニア。約束を守る時が来たのよ?」
　「......約束?」　　
　「覚えてないの?ニアにしては抜けている。でも約束をしたんだから貰うよ......をね」
　「......え?」
　なんて言ったの?その部分だけ聞こえない。
　「主人様は、ウリスの所まで逃げろ！」
　「......えっ?カセリは?」
　「俺様はこいつを止める！」
　「あははは‼︎私を止める?あんたに何が出来るの?力を強化するレイセリファ。でも私は癒し。どんなに傷付いても癒してしまえば関係ない。だからあんたは私には勝てない。あははは‼︎」
　「......俺様をみくびってもらっちゃ困るぜ」
　「現に本当のことでしょう?」
　「......」
　確かにあいつは、レイセリファの中では一番かもしれない。だが、主人様が付いている今、あいつに勝てるかもしれない。あいつはあることに見落としている。それは......。
　「主人様は俺様の力を使いこなせるんだぜ」
　「は?魔力が足りないはずじゃ......」
　「主人様はなぁ、お前が思っている以上に魔力量が半端ねぇ」
　「......そう。ニアがそんなに強くなっていたのね。知らなかった。今までは眠っていたようなものだから......でも私の目的は約束を今守ってもらうことじゃない」
　「目的?」
　「えぇ。赤のレイセリファを壊すこと！」
　「なっ！？」
　なんだ?こいつのこの動きはまるで、主人様のようだ。
　あんたは知らないでしょうね。前世のニアの魔力を全部奪ったの事を知らないあんたは勝てない。
　「......」
　う、動かなきゃ。カセリだけを戦わせるわけにはいかない。でもあの子を見ていると足が竦んでしまう。何処かで強い恐怖を植え付けられたみたいにその場から動く事が出来なかった。
　「あんたは強いよ。でもね、主人に執着しているから負けるのよ」
　「は⁇何言って......」
　「......あ！？」
　こ、攻撃がこっちに来る。よ、避けなきゃ。でも怖くて動けない。死にたくない。
　「どうして、お母様を皇后殿下を殺したの！？」
　「......あ」
　忘れていて記憶が少しだけ戻った。なんで忘れていたんだろ。私は彼女に復讐を誓ったのに......。
　「主人様！？」
　ドン　
　「クスクス」
　「か、カセリ⁇」
　「あ、主人様......無事だな?」
　「か、カセリ......レイセリファが......‼︎」
　赤のレイセリファは木っ端微塵になっていた。
　「主人様が無事でよかった......」
　そう言って、カセリは消えた。赤のレイセリファが役目を終えたみたいに色を失う。
　「ニア。何も出来ないのね?がっかりだわ」
　「......」
　何も言えない。彼女の言う通りだ。何も出来なかったんじゃない。何もしかなった。私は傷付かない所に居ただけ。傷付くのを恐れて何もしないで、知らないふり見ないふりをしたんだ。私は、カセリを見殺しにしたんだ。
　「まぁいいや。今日の目的は達した。だから今日は引くけど、次に会った時は是非約束を守ってね。ニア」
　「......」
　何もしない自分は最低だ。カセリが命をかけて守ってくれたのに......私はただ、黙っていただけだ。もう何もかも消えて無くなりたい。そうすれば傷付く事も誰かを犠牲にすることもないのに......。
　「諦めるのか?」
　「だ、誰⁇」
　「この目を見てもわからない⁇」
　「......もしかして、紫のレイセリファ?」
　「うむ。其方は我達を知っておるじゃろ?その者を救いたいのであればゆー通りにするのじゃ。そうすれば、きっと其方のレイセリファは帰って来るじゃろう」
　「お、お願い！言う通りにするから‼︎カセリを友達を助けて！」
　「いいじゃろう」
　紫のレイセリファはそっと私の手を握る。
　「回復魔法を静かに集中してやれ。其方の眠る力が目覚めるかもしれん」
　「わ、わかった」
　ゆっくりと深呼吸をして、回復魔法を発動させた。人間には効くけど、レイセリファには効くのだろうか?今は彼女を信じよう。紫のレイセリファしか頼れる相手は居ない。だから信じよう。
　「......」
　「もっと集中」
　「......」
　心の中で、はいと答えて更に集中した。
　何かを感じる。私の深い所に眠いっている何かを感じる。
　「......っ！」
　レイセリファとレイセリファが共鳴しおったのう。我が思っているよりもラティスは強いのかもしれん。我らの主人に相応しい奴よ。
　カセリ戻って来て！
　「やぁ。お待たせ。宿見つけ......何この状況⁇」
　「うむ。ウリスよ。帰って来るのがちっとばかし遅いのではあるまいか?」
　「君は......紫のレイセリファ⁇どうして君が此処に?」
　「このアホが壊れおったから助けてやろうと思っただけじゃ。悪いかのう⁇」
　「......悪くはないね」
　「そうだろう?」
　この力......今までに感じた事がない魔力だ。魔力が強くなったわけじゃない。でも何か特別な神に近い力を感じる。
　「それは......レイセリファじゃよ。ウリス」
　「僕の心を読むのはやめてくれるか?」
　「其方はよく、ラティスの心を読んでおるじゃろう?我が読んでも同じじゃろ?」
　「そうだね」
　「そろそろ元通りになるはずじゃ。ラティスの力は相当強い。だから失敗はまずあり得ん」
　「信頼しているんだね?」
　「我が認めた相手じゃ。信頼して問題あるのか?」
　「無いね」
　「無論じゃ」
　「......主人様⁇」
　「はっ！？カセリ⁇本当に......カセリなの?」
　「た、多分な」
　「うっ......うぅぅぅ。うわああん‼︎ごめんね！何も出来なくて！何もしなくて、ごめんなさい‼︎」
　「主人様が気に病むことはない」
　「其方、まずはお礼ではなかのう?」
　「主人様サンキューな」
　「......うん」
　あれ?また眠い。凄く眠い。
　「ラティス！？」
　「安心しろ。眠っただけじゃ。あんだけの魔力を使ったんじゃ。眠くもなる」
　「そうだね」
　カセリが戻って来た。でもあのオレンジのレイセリファは何を目的にしているの?わかりそうでわからない。モヤモヤする気持ちはきっと、夢の中でも晴れる事は無いだろう。そう思った。
　「次は約束を......心臓を貰うらかね......ニア」