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神の記憶

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 私なにをしていたんだっけ?そうだ。私は崖から落ちたんだった。じゃあ此処は夢の中?ううん。違う。なんだかとても懐かしい感じがする。そう。とても遠い記憶だと思う。
 「見て見て‼︎ノル!不思議なお花がある」
 「おいおい。ガキじゃ無いんだからはしゃぐなよ」
 「いいじゃん」
 「はぁー。ルークは相変わらずだな」
 「ノルこそ冷たい」
 「うっせ」
 この子なんとかなくだけど、私に似ている。姿が似ているからかなぁ?髪はプラチナブロンド。瞳はオレンジで、瞳の中にお花の模様がある。
 「ルーク。お前、少し変わったな?」
 「......そう⁇」
 「ああ。丸くなった感じか?」
 「もうこの世には居られないからかなぁ?」
 え?この世に居られない?
 「そんなこと言うなよ。方法はあるはずだ」
 「駄目だよ」
 「なにが?」
 「私をこの世に止めようとしないで......お願い」
 「いやだ!俺は諦めねぇぞ!」
 「ありがとう。でも神としての役目はもう終わり。これは罰なんだよ」
 罰?なんの罰なの?
 「お前のせいじゃない!」
 「私のせいだよ」
 「なんでそんな悲しいこと言うんだよ」
 「仕方のないことだよ。私がレイセリファを創らなければこんなことにはならなかった。だから君が悔やむことなんてなにも無い」
 「......」
 この人がレイセリファを創った⁇じゃあこの人は本当に神様なの?
 「もし生まれ変わるなら人間として生きたい。だから魂を二つに割ろうと思う」
 「おい。そんなことしたら......」
 「今の記憶は綺麗さっぱり消えるね」
 「そんなこと俺は許さねぇぞ‼︎」
 「ごめん。でももう決めたことだから」
 「駄目だ!行くな!これからも俺と一緒に居ろ」
 「ごめん無理。私は君と違って不死の力は持っていないからね」
 「......っ‼︎」
 「私は知っているんだよ。君の不死の力を持っていても君が死ぬ方法を......」
 「なんだよ?」
 「セリファを叩き壊すか、君自身死を望むのどちらかだよ」
 「......」
 「私は君の想いに応えられない」
 「なんでだよ?」
 「......」
 「お前はいつもそうだ。感じな時に限って黙り込んで......黙れば解決するなんて思っているんじゃねぇよ!」
 あれ?この台詞。何処かで聞いたような?てか、言われたような。まるで私に言っているかのようだ。
 「今度は人間として生まれるから。だからその時は......君の想いに応えるよ」
 「やめろよ。俺は転生なんてしたくねぇんだよ」
 「ノルはきっと転生する。私を見つけてくれる」
 「そんなこと言うな。俺の側に居ろよなぁ......」
 「私はノルの光になるよ」
 「俺の光なら俺を絶望の淵に立たすなよ」
 「......」
 「ルーク⁇」
 「......さようなら。もうこの世には止まることは出来ない。だからごめんね」
 「行くな。行くな!」
 ノルっていう人の言葉も虚しく神様は消えて行った。
 「ぜってぇお前を捕まえる。次に会った時は必ずお前を守るし離せないからな」
 そう言った彼の表情は何かを決心したような気がした。
 「俺も行くから」
 転生なんてしないって言ったが、お前をひとりになんてさせるかよ。
 「......」
 なにが起きているの?何故私が神様の記憶を見ているの?それにノルっていう人はいきなり倒れてピクリとも動かない。もしかして死んじゃったの?
 「やっと会えた」
 「だ、誰!?」
 「私はルーク。神様さぁ」
 この人との出会いがどうなるかはまだ知らない。
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