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ラティスの希望の光

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 「何故君は闇を落とさない?」
 そうルークが尋ねたときに私は思った。私が影や闇に支配されないのはきっと、今までの思い出と皆んなとの出会い。それがなければとっくに下を向き躓いてひとりで歩くことすら出来なかっただろう。
 「それは私は絶望してないから」
 「えっ......」  
 私がそう答えると、ルークは驚いた顔で私を見つけてくる。
 「私には幸せな思い出や楽しかった思い出がある。嫌なことも苦しいことも全部全部、私の希望の光の道しるべになる」
 「何を言っているの?君が絶望しない理由が思い出?前世の思い出は辛く悲しく虚しいだけの人生だったはず!なのにどうして?君は立ち上がれるの?なんで、前に進めるの?わかんないよ」
 今にも泣きそうな顔で私に問いかける。
 「大好きな人達が私の近くに居てくれるから。だから私は前を向いて歩いていける」
 「......ラティス」
 「確かに前世は幸せだったとは言えない」
 「......ごめん」
 ラティスは何度も自分を叱ってきてんだ。じゃなきゃ、今の関係を作れない。何度も何度も自分を叱って、怒る気持ちを抑えて抑えて抑え続けなんだ。
 「やっぱり私は自分勝手だよね?」
 アリアスがいきなりそんなことを言ったから私は今の気持ちを伝えることにした。
 「そうだね?アリアスも陛下も自分勝手だね?」
 「......」
 返す言葉が見つからない。
 「私もそう。私も自分勝手」  
 「そ、そんなこと......」  
 「ほんとはねぇ、陛下が死んだ時少しだけ嬉しかったの」
 「えっ?」
 驚いたかのように私の顔を見つけてくる。
 「私を縛る鎖が無くなった。そう思ったの」
 「......」   
 ラティスが本音を言おうとしている?いつだって弱音をあまり吐かないラティスが何かを言おうとしている?
 「未だに陛下のことは憎たらしいし嫌いだよ」
 「そう......なんだね?」
 当たり前か?いくら洗脳されてたからと言って、自分を殺した相手をそう安安とは許せない。
 「一度でも私達のところへ来ていたらきっと違った結果だと思う」
 彼は私の本音と弱音。希望を見つけ出すのはいつだって絶望に打ちのめされている時だ。その中からひとつの希望の一人を見つけ出す。それが出来る人は未来に進める人だけ。
 「あの時の私は精神状態も悪かった。いつもイライラしていて、誰かに八つ当たりしたくて、でもそんな勇気も度胸もない。そんな私が嫌いで嫌いで嫌い過ぎていっそ死にたかった」
 「ラティス⁇」  
 「ニーアスの名を捨てた時は本当に嬉し過ぎて涙がこぼれ落ちるかと思ったよ」
 いつだって私は自分勝手に生きている。皆んなを巻き込んでいるのも私だ。だから嫌い。
 でも私の中には皆んなが居て希望を運んでくれる。
 「今の私は幸せでキラキラとした希望がある。だから何者だって、私を支配出来ない。させないから」
 これが私の今出来る精一杯の気持ちだ。どうか、この気持ちをルークに届いてほしい。そう思うのだった。
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