悪党の執着心を舐めてた

2話

　数ヶ月後

　突然だけど、私たちは初めて出会ったあの路地裏から出て、とある小屋に住んでいます。

　なぜかというと、ウィルと出会った数日後に仲良くしてくれている近所のおばさんからもう使わない小屋があるからそこに住んでいいと言われた。

　「本当にいいの?」

　私は半信半疑で問いかけるといいよと微笑みながら言われた。

　「あんたら二人であの路地裏はきついだろ?だから昔あたしが使っていた小屋に住むといいさ」

　おばさんはそう私の頭を優しく撫でた。

　「それにルディはいい子だもんね?そんな子が四歳で路頭に迷うのは嫌だったのよ」

　そう悲しそう言った。

　おばさんはうちで引き取りたかったけど、旦那であるジュンさんは嫌がった。元々子供嫌いということもあり私がここに来る時は決まってジュンさんがいない時だけ。

　鉢合わせすると追い返されて運が悪ければ殴られる。いわゆる亭主関白という人だ。私もあの人は嫌いだ。

　そして月日は流れて数ヶ月が経過した。

　「ウィル！ウィル⁇どこ?」

　今私たちは近くの森にある川や野草や果物や魚時にはウィルと共同作業で狩ってくる動物を食べて生活している。サバイバル生活だ。

　「もしかして森の方?」

　私たちはそれぞれの役割分担を決めていた。私が家事と野草の採取。ウィルは魚や果物の採取だ。

　動物を狩る時は二人でと決めている。

　理由は簡単だ。私もウィルもまだ魔法が使えないから。

　魔法は八歳の時に覚醒して判明する。

　それを調べるためには都市に行く必要があるけど、私はモブだから多分ない。ウィルもモブキャラだから魔力があってもそんなに強くないと思う。

　そんな理由があるから二人で狩りに出た時も役割分担がある。私が罠を作り仕掛けウィルが獲物を引きつけてそのまま落とす。

　ウィルの方が危険な役割のためやめた方がいいと思った。でもウィルは運動神経がとにかくいい。

　私があっと驚くようなことを平気でする。

　ガサガサ

　草むらから音がした。音からして獣だ。

　「クマだったら勝ち目ないよね?」
　　
　いくらここが異世界でファンタジーものでも私は平凡な人間なのでクマには勝てない。

　ガサガサ

　「……」

　音が近づいて来る。

　ガサガサ、バキッ

　枝が折れる音がした。音からするとかなりでかい。

　「ガアアアア！」　

　目の前に現れた獣は身長が二メートルほどあり厚い毛皮に包まれたクマだった。

　「や、やっぱりか！」

　終わった。私はその場から動かずに体を大きく見えるようにして少しづつじりじりと後退した。

　「ガアアアア！！！！！！！」

　「ん?」

　私はふとある疑問が起きた。あれだけ興奮状態なのに私に向かってこない。何かを探しているような?私には眼中もないみたいだ。

　「……」

　でも油断はできない。少しの油断で命を落とすことになるからだ。

　バキッ

　「……っ！！！！！！！」

　今私何を踏んだ?

　音に気づいたのかクマがこっちを睨みつけ突進してくる。

　「いやあああ⁉︎」

　これには思わず声を上げてしまった。

　「た、助けっ！」

　もうだめだと思った。もう死ぬんだって思ったらなんかベトベトとした熱い何かが頬を撫でた。

　ベローン

　「えっ⁇」

　「クゥー」

　私の体をすりすりと擦り付け頭を撫でて撫でてとこっちを見る。

　私が恐る恐る手を伸ばし頭の上に乗せ優しく撫でると気持ちよさそうに耳を動かす。

　「クゥーン」

　「え、えぇと?助かった?」

　私は唖然とするがクマはすりすりと頬で私の腕を擦る。

　これは後から知ったのだが、神力があるものは動物に好かれるケースがある。

　私はクマと戯れるのであった。

　「アールウィルはまだ見つからないのか?」

　「はい。この街は捜索したのですがいませんでした」

　「そうか」

　「隣の村も探してみます」

　「頼む」

　「主人も体をお休みになされ」

　「息子がいなくなったのだぞ?休んでいられるか！」

　「でもこのままでは体が持ちますまい」
　　
　「どうか。どうか無事でいてくれよ。アールウィル」