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輪廻転生

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 わしの名前は高田義秀だ。今年で百四歳になる老耄ジジイじゃ。そして今余生を全うしようとしている。

 「おじいちゃん!」

 「わしが死んだら......あいつを頼むぞ」

 ピー

 その言葉を最後にわしは亡くなった。あいつというのはわしが飼っている犬の健太郎だ。

 あやつはわしによく懐きよる。だから可愛い犬だったなぁ。

 「あなたの名前はアタナシア.ファーストよ」

 ん?わしのことを言っておるのか?わしの名前はそんなじゃないというのに?

 「可愛らしい女の子です」
  
 えっ?今なんと言った⁇可愛らしい女の子⁇わしが⁇私は初心証明の男じゃぞ?
  
 「うー」
  
 あれ?声が出せない?なぜじゃ?

 「アタナシア。私の可愛い娘」

 「母上!僕の妹か弟かどっちが生まれたの?」

 「ええ、とっても可愛らしい女の子よ」

 「妹だ!」

 「......」

 わしは夢でも見とるのか?わしは寝室で余生を全うして死んだはずじゃ?なぜならばあさんが向かいにきたからな。

 「あーう」

 「ちっちゃい手」

 「首をしっかりと支えるのよ。まだ首は据わってないのだから」

 「うん」

 わしは赤ん坊になったのか?これが稀に聞く、転生というやつか?わしは頭がおかしくなりそう見えるのか?

 「アタナシア。僕の可愛い妹。僕の名前はグリだよ。グリお兄様だよ」

 「まだ言葉は話せないわよ」

 バーン

 「はぁはぁ」

 「もう!公爵様!もう少し静かにお入りください」

 「う、生まれたのか?」

 「はい」

 「か、可愛い女の子だ!娘だああ!」

 「......」

 この家族大丈夫か?娘とかなんとか言っておるが、中身男な上にジジイじゃぞ?

 「名前は!名前なんというんだ?」
 
 「アタナシア」

 「アタナシア。俺がお前のパパだぞ」

 「うーうー」

 うるさくてたまらんわ!わしはうるさいのは好かんのだよ。

 「アタナシア!アタナシア!」

 その後しばらくは(二週間の間)わしの生まれの祝いが続いた。

 わしを一人にしておくれ!

 「アタナシア!今日はどんな話をしようかなぁ?」

 「ぶーぶー」

 わしに構うな。わしは老耄のジジイじゃぞ!ジジイが女とか世も末じゃぞ!

 「僕ねぇ、将来は皇帝になりたいんだ」

 は?アホか?お偉いさんになりたがるのはいいことじゃが、皇帝は皆を引っ張り、命も何もかも責任を背負うのじゃぞ?わしはやりたくない。誰か教えてやれよ。

 「アタナシアは僕の皇后様だよ」

 「むーう」

 アホじゃ⁉︎妹を皇后に迎えようとしおる時点で其奴の頭はいかれておる!もうわしに近付くでない‼︎

 赤ちゃんとして輪廻転生をした元おじいちゃん。これからの人生を楽しんでね。

 「いやじゃあああああ⁉︎」
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