新緑の候

みなも・もなみ

文字の大きさ
12 / 12

エピローグ

しおりを挟む
  5分ほど歩いたところの並木通り交差点前のオープンカフェが待ち合わせ場所で、テーブルを囲む弦華さんと、美宵ちゃんと藍澤くんが手を振る。わたしはママの真似をして上品に手を振って応えた。
 手袋を外して、カフェのクラシカルなストーブに手をかざした。
  上品が擬人化して制服を着ているような弦華さんが「朝食は?」と尋ねてきたので、わたしは家で済ませてきました。と言いかけた瞬間、品のない椿くんが「食ってきた。」と簡潔に答えた。「わたしも。」と、付け加えるように答えた。
 海の幸が好きな美宵ちゃんは、先週からクラムチャウダーとクロワッサンのモーニングセットがマイブームらしい。
 焼きたてのパンの香りは、おなかに隙間を空けてくるけれど、カフェモカで通学途中の珈琲時間を過ごすことにした。
 わたしと椿くんは、ここだけの話と前置きをして、土日の出来事を手短に話した。
「ほっとした。」
 美宵ちゃんが想像もしなかった反応をした。
 藍澤くんが賛同する。
「俺もホッとしたよ。二人を見ているとね、なんていうか、早く気づけよって感じがしてね。」
「まるではじめから知ってたような口振りだな。」と、椿くんが軽く笑いながら言った。
「うん、不思議とね、知っていたような気がするんだ。だから兄妹だとハッキリしたことが自分のことのようにうれしいよ!」
 美宵ちゃんはテーブルの上を片づけながら
「そうだね、こういうことは第三者の方が気づきやすいのかもね。」
と言ってトレイを返却口へ戻しに行った。

 8時を告げる学校のチャイムが聞こえてきた。

 弦華さんが横断歩道の方へ一歩進んで
「さぁ、行きましょう。雨か雪が降り出しそうな空になってきたわ。」と空を見上げて言った。
 弦華さんの白い息がふわりと空へ消える。
 そして小さな声で
「迷子になった子供を見つけてホッとした夫婦のようね。」

 新緑の並木道に
 ちらちらと
 空から雪が舞い降りる
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...