人を愛したら魔女と呼ばれていた

トトヒ

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第1章

平和な日常「私の平凡な一日」

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「あ、あのダチュラさん。今晩空いてますか?」

仕事中の私に少し緊張気味に訪ねてきたのは、国家防衛管理局の新人君。
先月行われた入社式を無事に終えた期待の新人。
金髪に青い瞳で顔も整っているため、早くも女性社員の噂の的になっていた。

「お疲れ様です、ブライトさん。私この後用事がありますの」

デートのお誘いだったことは分かり切っている。
下手に繕わず、定型文のように断った。
その方が良い。
長い人生で得た処世術だもの。
正直、坊やの相手をしている程暇ではない。

「あ……、そうなんですね」

明らかにガッカリしている。
少し可愛らしいかもと思ってしまう。

「実は、この前の歓迎会でダチュラさんとお話してとても楽しかったので、またお話できればと思ったんです。迷惑でなければ、空いている日に一緒に食事に行きませんか?」

受付という仕事をしている最中の私に対して、かなりストレートに口説いてきた方だと思う。
見た目は小動物っぽく気弱な感じがする子だと思っていたけれど、自分に自信があるのか堂々としているわね。
まあ、こんな所に就職してくるのはまっすぐな人間だろうとは思っていたけれど。


広いロビーに位置する小さな受付で働く私。
ロビーには行き交う人も若干いるし、私の隣には後輩も座っている。
正直、こっそりと口説いてほしいものね。

「あら、嬉しいです。また皆さんとお話しをしたいですね。よろしければ、男性社員と女性社員でお食事に行きませんか?」

「あ……そうですね! こっちも男性社員集めておきます!」

一瞬の間はあったものの、彼の表情はすぐに明るくなり自分の仕事場に戻って行った。
日時と時間は、また伝えに来るとのこと。

「先輩! 先輩! その合コン、私も行っていいですか?」

口説いてきた子がいなくなったと思えば、今度は食事会に参加したがる子が迫ってくる。
私とブライトの会話に聞き耳を立てていた、隣に座る私の後輩リア。
聞き耳を立てなくても、この距離なら丸聞こえね。
彼女はブライトが入社する少し前に入社した
栗色のボブに同じ色素のくりんとした目のかわいい子。

「合コン? 食事会よ」

「どう考えても合コンじゃないですか! やった! こんなに早くチャンスが巡ってくるなんて!」

隣の後輩は拳をにぎりしめて小刻みに震えている。

「チャンス?」

「そりゃ、ここのエリートをゲットすることですよ! 私、その為にここに就職したんですから~。まあ、ここの受付に募集してくる女の子なんて、皆そうでしょうけどね~」

なるほど理解したわ。
この国の国家防衛管理局は、確かに花形職業で間違いない。
地位と名誉はもちろんのこと、建前上は命をかけて戦っているわけであり給与もそれなりに高い。
きっと彼女のように、そんなエリート男性に養ってもらいたいと考えている女性は多いのだろう。

「それにしても先輩、モテすぎですよ。昨日なんかあのジェイドさんとも親しげに話してたじゃないですか! ジェイドさんからもアプローチされてるんじゃないですか?」

「昔されたことがあったけれど、断ったわ」

「え? うそでしょ? 戦闘課のエースですよ!」

信じられないという表情で、私を見つめるリア。
しかしその直後、何かに気づいたのか急に表情が変わった。
何だか……呆れているようにも見えるし、ガッカリしているようにも見える。

「先輩にとっては、男なんて選り取り見取りですよね。もっと良い物件を狙っているわけですか。羨ましい」

そう言ってうなだれ始めた。

「ここだけの話ですけど。私、自分の容姿に自信あったんです。ここに受かった時も、やっぱり私は可愛いんだなぁ~って思って。でも、先輩を見た瞬間に敗北宣言しました」

そんな宣言受けた記憶はないんだけど。

「先輩! お化粧品何使ってますか?? サロンはどちらですか??」

「……特に何も」

「がはっ」

何かを吐き出すのかと思ったけれど、そう言葉を吐いて彼女は突っ伏してしまった。
みんな仕事中ということを忘れているみたい。
とても良い国ね……平和ボケできて。

突然警報が鳴り響いた。
人の行き来が激しくなる。
うなだれていた隣の彼女は、急に緊張の面持ちで背筋を正した。

「……あはは、やっぱりまだ慣れなくて。大丈夫だろうとは分かっているんですけど、何があるか分からないじゃないですか」

「そうね。みんな命をかけて戦うんですもの、私達も仕事をしましょう」

「はい先輩! やっぱり私達みたいな潜力が低い人は、能力が高い人に守ってほしいですよね? 合コンの約束、絶対ですからね!」

リアはすぐに気持ちを切り替えられたみたい。
そんな彼女に、私は静かに微笑み返した。
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