17 / 26
第16章
葬儀の日「黒は魔女に一番似合う色」
しおりを挟む
本日はとても良い天気。
太陽がサンサンと降り注ぐ。
舗装された街から少し離れ、新緑の芝生が敷き詰められた長閑な広場に私達は集まっていた。
こんな晴れた日は、ピクニックに最適でしょうね。
カラフルなレジャーシートを敷いて、色とりどりの具材が詰まったお弁当を食べるの。
もう私には味覚が無いけれど、目で楽しむだけならできるはずよ。
けれども今日は無理みたい。
右を向いても左を向いても黒一色。
私の服も全身真っ黒。
でも、私には純白なドレスよりも漆黒の喪服の方が似合うわ。
女はお気に入りの洋服を着ると、気持ちが高まるの。
せっかくの晴天なのだから、自分の気持ちだけでも明るくしていなければ。
目の前で、ブライトが眠る棺が土に埋められていく。
国家防衛管理局の職員一同が、今日の葬儀に参加していた。
戦闘課の列にいるトリンの髪も、今日は全く乱れていない。
けれど、顔は涙でボロボロになっている。
せっかく教えてあげた化粧が台無しだわ。
私の隣に立っているリアは、見るまでも無いわね。
きっと目が腫れ上がってしまうわ。
目元用のパックをまた買ってきてあげようかしら。
ルチルはただ出席するだけではなく、葬儀係の人と打ち合わせをしたりなど忙しそう。
ジェイドは……参加していない。
まだ病院のベッドの上。
でも、ブライトが死んだという知らせは聞いているはず。
今頃どう過ごしているかしら。
少しだけ気になるわ。
ブライトの葬儀は無事に終わり、目の前には墓石が鎮座していた。
大丈夫よ、あなたは天国に行けるわ。
ブライトの帰宅経路から近い公園で、彼の死体は発見された。
私がクリスドールに、そこへ捨てろと指示をした。
顔が抉れていた為、親族以外の人間は彼の顔を見て最後のお別れが言えなかった。
ブライトの仲間が次に会った時は、彼は棺の中だった。
でも、その方が良かったのかもしれない。
ブライトの整った顔と無邪気な笑顔だけが記憶に残るのだから。
「僕は仕事に戻ります。お二人はどうされますか? 本日はお休みでも構いませんよ」
葬儀の手伝いを終わらせ、ルチルが私とリアのもとに来た。
相変わらず無表情で、事務的な発言をしている。
「ですが今日は、私とリアちゃんは受付業務があります」
「ダチュラさんが出勤可能でしたら助かります。リアさんは帰宅した方が良いでしょう。トリンさん、ちょっといいでしょうか」
ブライトの墓石を見つめているトリンに、ルチルが声をかける。
トリンが我に返ったように、顔を上げた。
「トリンさん、申し訳ありませんがリアさんを送って行ってもらえませんか? そのまま帰宅していただいて構いませんので」
「え、いえ、送っていくのは構いませんが、私も訓練に戻ります!」
トリンの声はいつもより少しだけ小さかった。
「本日はお休みください。明日からまた宜しくお願いします。ではダチュラさん、行きましょう」
ルチルが歩き出す。
私はトリンとリアに会釈をして、ルチルの後に続いた。
道中ルチルはずっと無言のままだった。
彼なりに落ち込んでいるのかもしれない。
知り合いが亡くなれば、どんな冷たい人間だって多少は落ち込むはずだものね。
受付ではリアの代わりに、別の女の子と業務に就いた。
彼女は以前開かれた合コンがきっかけで、戦闘課職員と付き合っているらしい。
ブライトとはその時しか面識が無かったみたいだけれど、彼女も少し落ち込んでいるようだった。
彼女の恋人は泣いていたという。
少し重苦しい空気の中、私はいつもと同じクオリティーで仕事を終わらせた。
「ダチュラさん、この後空いてますか?」
いつものように帰宅しようとした私に声をかけてきたのは、ルチルだった。
珍しいこともあると思い、私は久しぶりに寄り道をすることにした。
太陽がサンサンと降り注ぐ。
舗装された街から少し離れ、新緑の芝生が敷き詰められた長閑な広場に私達は集まっていた。
こんな晴れた日は、ピクニックに最適でしょうね。
カラフルなレジャーシートを敷いて、色とりどりの具材が詰まったお弁当を食べるの。
もう私には味覚が無いけれど、目で楽しむだけならできるはずよ。
けれども今日は無理みたい。
右を向いても左を向いても黒一色。
私の服も全身真っ黒。
でも、私には純白なドレスよりも漆黒の喪服の方が似合うわ。
女はお気に入りの洋服を着ると、気持ちが高まるの。
せっかくの晴天なのだから、自分の気持ちだけでも明るくしていなければ。
目の前で、ブライトが眠る棺が土に埋められていく。
国家防衛管理局の職員一同が、今日の葬儀に参加していた。
戦闘課の列にいるトリンの髪も、今日は全く乱れていない。
けれど、顔は涙でボロボロになっている。
せっかく教えてあげた化粧が台無しだわ。
私の隣に立っているリアは、見るまでも無いわね。
きっと目が腫れ上がってしまうわ。
目元用のパックをまた買ってきてあげようかしら。
ルチルはただ出席するだけではなく、葬儀係の人と打ち合わせをしたりなど忙しそう。
ジェイドは……参加していない。
まだ病院のベッドの上。
でも、ブライトが死んだという知らせは聞いているはず。
今頃どう過ごしているかしら。
少しだけ気になるわ。
ブライトの葬儀は無事に終わり、目の前には墓石が鎮座していた。
大丈夫よ、あなたは天国に行けるわ。
ブライトの帰宅経路から近い公園で、彼の死体は発見された。
私がクリスドールに、そこへ捨てろと指示をした。
顔が抉れていた為、親族以外の人間は彼の顔を見て最後のお別れが言えなかった。
ブライトの仲間が次に会った時は、彼は棺の中だった。
でも、その方が良かったのかもしれない。
ブライトの整った顔と無邪気な笑顔だけが記憶に残るのだから。
「僕は仕事に戻ります。お二人はどうされますか? 本日はお休みでも構いませんよ」
葬儀の手伝いを終わらせ、ルチルが私とリアのもとに来た。
相変わらず無表情で、事務的な発言をしている。
「ですが今日は、私とリアちゃんは受付業務があります」
「ダチュラさんが出勤可能でしたら助かります。リアさんは帰宅した方が良いでしょう。トリンさん、ちょっといいでしょうか」
ブライトの墓石を見つめているトリンに、ルチルが声をかける。
トリンが我に返ったように、顔を上げた。
「トリンさん、申し訳ありませんがリアさんを送って行ってもらえませんか? そのまま帰宅していただいて構いませんので」
「え、いえ、送っていくのは構いませんが、私も訓練に戻ります!」
トリンの声はいつもより少しだけ小さかった。
「本日はお休みください。明日からまた宜しくお願いします。ではダチュラさん、行きましょう」
ルチルが歩き出す。
私はトリンとリアに会釈をして、ルチルの後に続いた。
道中ルチルはずっと無言のままだった。
彼なりに落ち込んでいるのかもしれない。
知り合いが亡くなれば、どんな冷たい人間だって多少は落ち込むはずだものね。
受付ではリアの代わりに、別の女の子と業務に就いた。
彼女は以前開かれた合コンがきっかけで、戦闘課職員と付き合っているらしい。
ブライトとはその時しか面識が無かったみたいだけれど、彼女も少し落ち込んでいるようだった。
彼女の恋人は泣いていたという。
少し重苦しい空気の中、私はいつもと同じクオリティーで仕事を終わらせた。
「ダチュラさん、この後空いてますか?」
いつものように帰宅しようとした私に声をかけてきたのは、ルチルだった。
珍しいこともあると思い、私は久しぶりに寄り道をすることにした。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる