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第24章
私の魔女裁判「さよならダチュラ」
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どうやらルチルの方が一枚上手だったみたい。
恐らく全戦闘課が私と対峙している。
こんな青二才に出し抜かれるなんて、やっぱり私は詰めが甘いのかしら。
「あら、皆さんお揃いで。地方のゴーレム、いえ、エネミーははどうなさるおつもりですか?」
「地方はボランティア団体にお願いしました」
ルチルが無表情のまま答える。
いえ、表情が硬いだけね。
少し緊張しているみたい。
まあ、当然よね。
「さすがルチル主任。用意周到ですわね」
「おい! 何余裕かましてんだ! てめえが今まで何をやってきたか分かってんのか!」
ジェイドの声が、フロアに響き渡る。
正しく鬼の形相。
また、サンドローザを思い出してしまうわ。
「分かっているわよ。むしろ、あなたの方が分かっていないんじゃなくって?」
馬鹿にされているみたいで、何だか腹立たしいわね。
自分の行いを分かっていないような、馬鹿な女じゃないわ。
私が腕組みをすると、ジェイドの額に青筋が入った。
「分かってるに決まってんだろ! お前はこの国の住民を殺した。俺達の仲間を殺した。そして、ブライトを殺した」
ジェイドの言葉を聞いて、他の戦闘課達も私を睨みつける。
今まで私に色目を使っていた男共も、羨望の眼差しを送っていた女共もみんな同じような表情。
あんなに力になってあげたトリンまで、そんな顔で私を見るのね。
「表面上のことだけね。あなたらしい単細胞な意見だわ」
ちょっと挑発しすぎたかしら。
ジェイドが思わず車椅子から立ち上がりそうになるのを、ルチルが止めている。
「先輩! 何か理由があるんですよね! 私に教えてください!」
リアが甲高い声で叫んだ。
この子だけは、私を睨んでいない。
でも泣きそう。
これじゃまるで私は、可愛い女の子をいじめている悪女じゃない。
「理由があれば、見逃してくれるのかしら?」
私の問いにリアは表情を引きつらせる。
「何馬鹿なこと言ってんだ! 見逃すわけないだろうが! お前は一体何者だ!」
ジェイドが叫ぶ。
まあ、これが正論ね。
何者……私は何者なのかしら。
簡潔に言うならば。
「私は魔女」
「あ? 魔女? どういう意味だ?」
「言葉が通じないのね。そのままの意味よ」
「てめえ、人をおちょくるのも大概にしろよ!」
またしてもジェイドは立ち上がろうとする。
同じことを繰り返すなんて、本当に馬鹿な男。
「賢いルチル主任に問題です。私は何者でしょう?」
私は場違いな程おどけてみせた。
まるで酔っぱらっているみたい、最後にお酒に酔ったのは遥か昔。
自分で何者かなんて分かるものではない。
他者に承認されて、初めて何者かになれるのよ。
決めてもらうなら、この中ならルチルがいいわ。
「あなたは、ハモネーに滅ぼされた国の生き残りですか?」
ルチルの力強い声を最後に、辺りは静まり返る。
ジェイドがルチルに振り向いた。だから表情は見えない。
先程まで今にも飛びかかってきそうな他の戦闘課達も硬直する。
その静寂を破る小さな拍手の音が響いた。
もちろん、拍手をしているのは私よ。
そうだった。
魔女なんてあいまいな表現よりも、とても分かりやすいじゃない。
やっぱりあなたを選んで良かったわ。
「さすがね。正解よ。どうして分かったのかしら?」
「エネミーを創り上げる技術は、ハモネーにはありません。既存の国も調べましたが、存在しませんでした。それならば、残る選択肢は2つです。まだハモネーに存在が知られていない国か、忘れられた国か」
「あら、詩的な表現をしますね。それで忘れられた国、つまり滅んだ国、この国に滅ぼされた国の生き残りではないかと思ったわけですね。私一人だけで戦っているから、生き残りだと」
「その通りです。これからハモネーを攻めようとしている国ならば、もっと大規模な攻撃を仕掛けているはずですからね。けれど、それにしては小規模でしたので」
小規模と言われて、少し傷ついたわ。
一人にしては、よくやっている方だと思うのだけれど。
「じゃあ、先輩は敵討ちのためにハモネーに攻撃していたんですね!」
リアが叫んだ。
私の事をまだ先輩と呼んでいる。
敵にそんな呼び方をしてはダメよ。
「先輩、今ならまだ間に合います! 攻撃を止めて、自首してください! 理由が理由なので、死刑にはならないかもしれませんよ!」
「え?」
思わず間抜けな声を出しちゃったじゃない。
この子は本当にいい根性してるわね。
「リア! お前少し黙ってろ」
ジェイドが苛立っている。
「嫌です! 黙りません! 先輩お願い。このままじゃ、取り返しがつかないことになりますよ!」
リアの可愛い顔が無残に崩れている。
目が潤んでいる。
優しいの? お馬鹿なの?
最後に先輩らしいことを言ってあげなくちゃ、将来が心配。
間違えたわ。将来なんて無いけど。
「リアちゃん。遥かに年上の私が、最後に教えておいてあげるわ。人はね、常に取り返しがつかないことをして生きているのよ。それに私、この国に来てから後悔なんてしていないの。私の意志で自由に生きれたんだもの。ここでの思い出は、全て大切な宝物なの。自首なんてしたら水の泡なのよ小娘。私から宝物を取り上げないでしょうだい」
私はにこやかな表情で優しく話したつもりだけれど、リアは唖然としていた。
まあ、まだ若いし私の言った言葉を全部飲み込むのに時間がかかるのかもしれないわね。
「あなたが滅んだ国の生き残りで良かったです」
ルチルがまっすぐに私を見つめてくる。
その声はとても冷たい。
「なぜ?」
「これからハモネーを侵略しようと考えている国なら、我々には成す術がありませんでした。とっくに殺されているか、捕虜になっていたでしょう。滅んでしまっている国なら、あなたを倒せば終了ですからね」
なるほどね。
でも、ちょっと酷いわ。
「主任、そんな」
「リアさん。これは悪事を働いた人間を更生させるという状況ではありません。戦争です。やるかやられるかです」
戦争……。
敵討ちや仇討ちなんかじゃなくて、戦争と言ってくれた。
私を国代表と認めてくれたのね。
少し元気が出てきたわ。
「ありがとうございます、ルチル主任。では、そろそろお話も飽きた頃だし、始めましょうか。戦争を」
トリンに殴られたゴーレムに指示を送る。
頑丈に創ったから、まだ壊れていないわよ。
むくりと起き上がったゴーレムは、戦闘課目掛けて突進した。
戸惑っていた戦闘課もいたみたいで、対応に遅れた戦闘課を蹴散らしていく。
その間に私は変身よ。
ボロをまとった娘は、魔法で美しいお姫様に変身する。
けれどその正体は魔女なの。
最後は醜い化け物に変身してしまう。
身体の中に折りたたんでいた私の最後の作品、ゴーレムが手足を広げていく。
私の、ダチュラの美しい四肢と顔面を突き破って新しいゴーレムが誕生した。
最後の切り札は、自分自身。
もうこの容姿を取り繕う必要が無いもの。
何だか開放的な気分だわ。
首にかけていたペンダントがはじけ飛んでしまったけれど、今の私には似合わないから仕方ないわね。
「おい、ルチル」
「すみません。ここまでは想定していませんでした」
私の変貌ぶりを見ていたジェイドが珍しく小さな声で呟き、表情が硬いルチルもさすがに驚きの表情を浮かべている。
リアは口元に手を添えて縮こまっている。
上から見下ろすと滑稽だわ。
まずは、何度も殺し損ねているジェイドを私自ら始末しましょうか。
私は車椅子に座り続けているジェイドに突進した。
けれど、私の反応に気づいたルチルがジェイドの車椅子を勢いよく突き飛ばした。
「ルチル!」
車椅子から転げ落ちたジェイドが、自分を庇ったルチルに振り返り絶叫した。
ルチルは床に転がっている。
頭脳は優秀だけれど、運動神経は悪そうね。
ルチルは最後のお楽しみにとっておこうと思ったのに、最初に片づけることになるなんて。
私、好きな物は最後に食べる方なのよね。
けれど、私のフォークじゃなくて、牙はルチルに届かなかった。
強い力で押し返されている。
私の牙を掴んでいる細い手が見えた。
あなたしかいないわよね、トリン。
「ルチルさんのことは、私が守ります!」
私は最終兵器だから、従来のゴーレムより力が強いの。
トリンも負けじと必死の形相で、私を受け止めている。
そんな崩れた顔じゃ、お姫様とは言えない。
しかも女が愛する男を身を挺して守ろうとしているなんて、私の国の物語には無かったわ。
女は守られる者、男性の所有物に過ぎなかった。
けれど、トリンも限界が近いみたいね。
「ルチルさん、もしこの戦いが終わったら、私と結婚してください!」
「……はい?」
トリンの大声に対して、ルチルがポツリと静かに反応した。
やだ、こんな状況でプロポーズするなんて。
その前に、トリンはまだ告白すら済んでいなかったんじゃないのかしら?
でも、その勇気を称えて拍手を送るべきかしら。
残念ながら私にはもう腕も手も無いけれど。
そんな雑念のせいで、周囲に気をつけられなかった私は横から力強い力で殴り飛ばされてしまった。
「トリン! お前、戦闘中に腑抜けたこと言ってんじゃねーぞ! 俺の親友の二の舞になるなよ」
私を殴ったのはジェイドだった。
立ち上がっている。
今までのは演技だったのね。
「邪魔しないでくださいよ、ジェイド先輩。まだ返事聞いてないんですけど」
「言うじゃねーか。腕プルプルしてたくせに。こいつ倒して、また告れ!」
「はい!」
息の合ったトリンとジェイドが、私に立ち向かおうとしている。
本当なら、ここにブライトもいたのでしょうね。
少しだけ残念。
「ルチルさんとリアさんは離れていてください!」
「巻き込まれんなよ!」
トリンとジェイドの言葉を合図に、ルチルとリアは壁際まで走って行った。
そして、あのサンドローザと同じ表情の2人が私に向かってくる。
鈍い音がする。
私の身体が弾き飛ばされる。
けれど、彼らの熱意に答えなければならないわね。
最後に一緒に踊りましょう。
私も応戦して、二人をなぎ払った。
本当に頑丈よね。
また立ち上がってくる。
せいぜい頑張りなさい。
ハモネーはあなた達に懸かっているんだから。
負けたら私の国と同じ末路を辿るわよ。
徐々に二人の動きが鈍くなっていく。
私とあなた達の違いは、痛みを感じないこと。
いくら身体が丈夫で、治癒力に優れていても、痛みが蓄積されれば身体はこれ以上動かないように制御がかかる。
それは防衛本能だけれど、このような状況では邪魔よね。
私は全く痛みを感じないから限界まで動けるの。
あら、私も動きが明らかに鈍いわね。
痛みを感じないから、限界が近いことに気づかなかったわ。
これじゃあお互い様ね。
それに思考が回らなくなってきたかもしれないわ。
私の武器は、この頭脳なのに。
ぼんやりしている私でも、まだ音は拾える。
小さな悲鳴のような声が聞こえた。
この声はリアね。
間違えないわよあの子の声は。
うっかり踏みつぶしてたらどうしようかしら。
けれど、安心。
リアは一点を見つめながら恐怖の表情を浮かべている。生きていたわ。
その横に立っているルチルも険しい表情をしている。
「ジェイドさん、トリンさん。気を付けてください。恐れていた事態が!」
ルチルの声に憔悴しきっているジェイドとトリン、そして私もルチルが指し示す方向を見た。
ああ、バッドタイミングだわ。
「この、似非ヒーローが!」
ジェイドが悪態をついた。
そこに静かに立っていたのは、元純白の英雄。
これだけ騒いでれば、さすがにばれるわよね。
「前からてめえとはやり合いたいと思ってたんだよ。どっちが強いか、この場ではっきりさせてやるよ!」
「ジェイドさん! 冷静になってください!」
ジェイドはクリスドールと戦おうと、肩で息をしながら身構えている。
ルチルは明らかに焦っている。
でも、状況的にまずいのは私なのよね。
クリスドールは私の味方じゃないし、ネタばらししようにも私はもうしゃべれないわ。
とりあえず距離を取ろうと、私は壁際まで身を引いた。
けれど、クリスドールは小走りで私に近寄って来る。
睨んでいるジェイドを完全に無視して。
「お家のお掃除終わったんだけど、それじゃ家に入れないよね」
この緊迫した状況で、何を言っているの。
「もう帰って来ないってこと、だよね」
そうよ。
やっと分かったのね。
「やっと死ぬ気になったの?」
死ぬ……そうね。
死ぬという表現をまだ使えるのか分からないけれど、これで終わりにするつもりよ。
この国諸共ね。
「ダチュラのゴーレムは、オレが破壊するまでもないね」
クリスドールは横を向いて指をさす。
その先には、私のゴーレムが横たわっていた。
もうほとんど動いていない。
他の戦闘課も負傷していたけれど、自分達の仕事を終えてジェイドとトリンに加勢しようと動き始めている。
1匹の力が弱くても、集団で襲われては敵わない。
私のゴーレムはまるで、蟻に捕食されているようだわ。
そして次の捕食対象は私ね。
バラバラにされて、無残に食われるのね。
そんな死に方、嫌よ。
「分かった」
何が分かったの?
「こいつらにダチュラを殺させないから大丈夫」
私は話せないのに、意思が通じているの?
「一緒に煉獄に行くって約束したもんね」
約束なんてしたかしら。
「ハモネーの野蛮人のみなさーん! これから大爆発しまーす! 死にたくない人は、速やかに建物から避難してくださーい!」
クリスドールがいつもの美しい笑顔で、戦闘課に向かって手を振っている。
よく通る明るい声がとても不気味。
そう言われても状況が呑み込めていない戦闘課の面々は、混乱している様子だわ。
「皆さん! 一旦退避!」
ルチルが叫ぶ。
彼がこんなに大声で叫ぶのは、初めて聞いた。
皆ルチルの言う事は聞くみたい。
戦闘課が一斉に身をひるがえして散って行った。
腑に落ちない表情のジェイドを、トリンが首根っこを引っ掴んで連れて行く。
何故か私に手を伸ばしたリアを、ルチルがその腕を引いて連れ去って行った。
そんな情景を眺めていたら、クリスドールが私を抱きしめてきた。
「もう一人にしないで」
ああ、出来損ないなりに出来損ないの感情があったみたいね。
私が置いて行ってしまってから、寂しさでも芽生えたのかしら。
私が与えた頭脳とクリスが与えた命令の狭間で混乱させてごめんね。
私の謝罪が通じたのか、クリスドールは自爆した。
この機能はクリスが与えた最後の切り札だった。
戦時中に敵から逃げられなくなった場合、私とクリスを守るための機能。
まさか、私に使うなんてね。
でも、ハモネーにとってはやっぱりあんたは英雄になったわけね。
クリスも人のために機械人形を創ったわけだから、夢が叶ったじゃない。
『あいつらを殺してやりたかったよ』
頭の中にクリスドールの声が響く。
機械同士、伝達できるのかしら。
『ダチュラの願いを叶えられなくてごめんね』
自爆した影響で、クリスの命令も吹き飛んだの?
『今なら言いたい事が言える。オレもマスターも間違えていた』
そうでもないわよ。
『どうして?』
私はジェイドを殺せなかった。
私はルチルと自分を重ねてしまった。
私はトリンの恋を応援してしまった。
私はリアの演技を見抜けなかった。
私はブライトの死体を処理できなかった。
つまりそういうことよ。
敵に心を奪われてしまった時点で、私の負け。
彼らを守ってくれた、あんたとクリスは正しいわ。
『やっぱり人間は分からない』
大丈夫よ。
私にもよく分からないわ。
『最後に聞きたいことがある。マスターに口止めされていたこと。オレはダチュラに言うべきだと思ったけど、マスターが言ってはいけないと言ったこと』
最後にやめてよ、怖いじゃない。
『ダチュラの旦那さんは、マリアのことが好きだったんだって』
マリア?
誰のこと?
『オレとマスターが大好きだった女だよ。忘れちゃったの?』
ああ。たいして器量が良いわけでもないくせに、知識だけ豊富で頭でっかちな女ね。
王子があの女のことを好きなはずないじゃない。
王子は美女と結ばれる運命なんだから。
最後にそんなでたらめ言わないでちょうだい。
『マスターが言ってた。工房からいなくなったマリアのことを、王子から何度も問い詰められたって。会いたいって何度も言われたけど、その頃にはマリアはダチュラになってたから無理だったって』
そう。
『身分は違うし結婚はできないけど、王子はマリアのことが好きだったに違いないってマスターが言ってた。オレはダチュラに話してあげるべきだと言った。喜ぶと思ったから。でもマスターは絶対にダメだってオレに命令した。オレとマスターどっちが正解?』
どっちも正解よ。
『どっちもってどういうこと?』
どっちも優しいってことよ。
そっか。
マリアを愛してくれた人はいたのね。
もうそれだけで十分でしょ。
ダチュラとしての日常が、いつしかできていた私の居場所が炎に包まれていく。
魔女裁判はこれにて結審。
魔女は火あぶりの刑に処される。
でも、思っていたよりも悪くない。
今は、まあまあ幸せだったと思えるから。
恐らく全戦闘課が私と対峙している。
こんな青二才に出し抜かれるなんて、やっぱり私は詰めが甘いのかしら。
「あら、皆さんお揃いで。地方のゴーレム、いえ、エネミーははどうなさるおつもりですか?」
「地方はボランティア団体にお願いしました」
ルチルが無表情のまま答える。
いえ、表情が硬いだけね。
少し緊張しているみたい。
まあ、当然よね。
「さすがルチル主任。用意周到ですわね」
「おい! 何余裕かましてんだ! てめえが今まで何をやってきたか分かってんのか!」
ジェイドの声が、フロアに響き渡る。
正しく鬼の形相。
また、サンドローザを思い出してしまうわ。
「分かっているわよ。むしろ、あなたの方が分かっていないんじゃなくって?」
馬鹿にされているみたいで、何だか腹立たしいわね。
自分の行いを分かっていないような、馬鹿な女じゃないわ。
私が腕組みをすると、ジェイドの額に青筋が入った。
「分かってるに決まってんだろ! お前はこの国の住民を殺した。俺達の仲間を殺した。そして、ブライトを殺した」
ジェイドの言葉を聞いて、他の戦闘課達も私を睨みつける。
今まで私に色目を使っていた男共も、羨望の眼差しを送っていた女共もみんな同じような表情。
あんなに力になってあげたトリンまで、そんな顔で私を見るのね。
「表面上のことだけね。あなたらしい単細胞な意見だわ」
ちょっと挑発しすぎたかしら。
ジェイドが思わず車椅子から立ち上がりそうになるのを、ルチルが止めている。
「先輩! 何か理由があるんですよね! 私に教えてください!」
リアが甲高い声で叫んだ。
この子だけは、私を睨んでいない。
でも泣きそう。
これじゃまるで私は、可愛い女の子をいじめている悪女じゃない。
「理由があれば、見逃してくれるのかしら?」
私の問いにリアは表情を引きつらせる。
「何馬鹿なこと言ってんだ! 見逃すわけないだろうが! お前は一体何者だ!」
ジェイドが叫ぶ。
まあ、これが正論ね。
何者……私は何者なのかしら。
簡潔に言うならば。
「私は魔女」
「あ? 魔女? どういう意味だ?」
「言葉が通じないのね。そのままの意味よ」
「てめえ、人をおちょくるのも大概にしろよ!」
またしてもジェイドは立ち上がろうとする。
同じことを繰り返すなんて、本当に馬鹿な男。
「賢いルチル主任に問題です。私は何者でしょう?」
私は場違いな程おどけてみせた。
まるで酔っぱらっているみたい、最後にお酒に酔ったのは遥か昔。
自分で何者かなんて分かるものではない。
他者に承認されて、初めて何者かになれるのよ。
決めてもらうなら、この中ならルチルがいいわ。
「あなたは、ハモネーに滅ぼされた国の生き残りですか?」
ルチルの力強い声を最後に、辺りは静まり返る。
ジェイドがルチルに振り向いた。だから表情は見えない。
先程まで今にも飛びかかってきそうな他の戦闘課達も硬直する。
その静寂を破る小さな拍手の音が響いた。
もちろん、拍手をしているのは私よ。
そうだった。
魔女なんてあいまいな表現よりも、とても分かりやすいじゃない。
やっぱりあなたを選んで良かったわ。
「さすがね。正解よ。どうして分かったのかしら?」
「エネミーを創り上げる技術は、ハモネーにはありません。既存の国も調べましたが、存在しませんでした。それならば、残る選択肢は2つです。まだハモネーに存在が知られていない国か、忘れられた国か」
「あら、詩的な表現をしますね。それで忘れられた国、つまり滅んだ国、この国に滅ぼされた国の生き残りではないかと思ったわけですね。私一人だけで戦っているから、生き残りだと」
「その通りです。これからハモネーを攻めようとしている国ならば、もっと大規模な攻撃を仕掛けているはずですからね。けれど、それにしては小規模でしたので」
小規模と言われて、少し傷ついたわ。
一人にしては、よくやっている方だと思うのだけれど。
「じゃあ、先輩は敵討ちのためにハモネーに攻撃していたんですね!」
リアが叫んだ。
私の事をまだ先輩と呼んでいる。
敵にそんな呼び方をしてはダメよ。
「先輩、今ならまだ間に合います! 攻撃を止めて、自首してください! 理由が理由なので、死刑にはならないかもしれませんよ!」
「え?」
思わず間抜けな声を出しちゃったじゃない。
この子は本当にいい根性してるわね。
「リア! お前少し黙ってろ」
ジェイドが苛立っている。
「嫌です! 黙りません! 先輩お願い。このままじゃ、取り返しがつかないことになりますよ!」
リアの可愛い顔が無残に崩れている。
目が潤んでいる。
優しいの? お馬鹿なの?
最後に先輩らしいことを言ってあげなくちゃ、将来が心配。
間違えたわ。将来なんて無いけど。
「リアちゃん。遥かに年上の私が、最後に教えておいてあげるわ。人はね、常に取り返しがつかないことをして生きているのよ。それに私、この国に来てから後悔なんてしていないの。私の意志で自由に生きれたんだもの。ここでの思い出は、全て大切な宝物なの。自首なんてしたら水の泡なのよ小娘。私から宝物を取り上げないでしょうだい」
私はにこやかな表情で優しく話したつもりだけれど、リアは唖然としていた。
まあ、まだ若いし私の言った言葉を全部飲み込むのに時間がかかるのかもしれないわね。
「あなたが滅んだ国の生き残りで良かったです」
ルチルがまっすぐに私を見つめてくる。
その声はとても冷たい。
「なぜ?」
「これからハモネーを侵略しようと考えている国なら、我々には成す術がありませんでした。とっくに殺されているか、捕虜になっていたでしょう。滅んでしまっている国なら、あなたを倒せば終了ですからね」
なるほどね。
でも、ちょっと酷いわ。
「主任、そんな」
「リアさん。これは悪事を働いた人間を更生させるという状況ではありません。戦争です。やるかやられるかです」
戦争……。
敵討ちや仇討ちなんかじゃなくて、戦争と言ってくれた。
私を国代表と認めてくれたのね。
少し元気が出てきたわ。
「ありがとうございます、ルチル主任。では、そろそろお話も飽きた頃だし、始めましょうか。戦争を」
トリンに殴られたゴーレムに指示を送る。
頑丈に創ったから、まだ壊れていないわよ。
むくりと起き上がったゴーレムは、戦闘課目掛けて突進した。
戸惑っていた戦闘課もいたみたいで、対応に遅れた戦闘課を蹴散らしていく。
その間に私は変身よ。
ボロをまとった娘は、魔法で美しいお姫様に変身する。
けれどその正体は魔女なの。
最後は醜い化け物に変身してしまう。
身体の中に折りたたんでいた私の最後の作品、ゴーレムが手足を広げていく。
私の、ダチュラの美しい四肢と顔面を突き破って新しいゴーレムが誕生した。
最後の切り札は、自分自身。
もうこの容姿を取り繕う必要が無いもの。
何だか開放的な気分だわ。
首にかけていたペンダントがはじけ飛んでしまったけれど、今の私には似合わないから仕方ないわね。
「おい、ルチル」
「すみません。ここまでは想定していませんでした」
私の変貌ぶりを見ていたジェイドが珍しく小さな声で呟き、表情が硬いルチルもさすがに驚きの表情を浮かべている。
リアは口元に手を添えて縮こまっている。
上から見下ろすと滑稽だわ。
まずは、何度も殺し損ねているジェイドを私自ら始末しましょうか。
私は車椅子に座り続けているジェイドに突進した。
けれど、私の反応に気づいたルチルがジェイドの車椅子を勢いよく突き飛ばした。
「ルチル!」
車椅子から転げ落ちたジェイドが、自分を庇ったルチルに振り返り絶叫した。
ルチルは床に転がっている。
頭脳は優秀だけれど、運動神経は悪そうね。
ルチルは最後のお楽しみにとっておこうと思ったのに、最初に片づけることになるなんて。
私、好きな物は最後に食べる方なのよね。
けれど、私のフォークじゃなくて、牙はルチルに届かなかった。
強い力で押し返されている。
私の牙を掴んでいる細い手が見えた。
あなたしかいないわよね、トリン。
「ルチルさんのことは、私が守ります!」
私は最終兵器だから、従来のゴーレムより力が強いの。
トリンも負けじと必死の形相で、私を受け止めている。
そんな崩れた顔じゃ、お姫様とは言えない。
しかも女が愛する男を身を挺して守ろうとしているなんて、私の国の物語には無かったわ。
女は守られる者、男性の所有物に過ぎなかった。
けれど、トリンも限界が近いみたいね。
「ルチルさん、もしこの戦いが終わったら、私と結婚してください!」
「……はい?」
トリンの大声に対して、ルチルがポツリと静かに反応した。
やだ、こんな状況でプロポーズするなんて。
その前に、トリンはまだ告白すら済んでいなかったんじゃないのかしら?
でも、その勇気を称えて拍手を送るべきかしら。
残念ながら私にはもう腕も手も無いけれど。
そんな雑念のせいで、周囲に気をつけられなかった私は横から力強い力で殴り飛ばされてしまった。
「トリン! お前、戦闘中に腑抜けたこと言ってんじゃねーぞ! 俺の親友の二の舞になるなよ」
私を殴ったのはジェイドだった。
立ち上がっている。
今までのは演技だったのね。
「邪魔しないでくださいよ、ジェイド先輩。まだ返事聞いてないんですけど」
「言うじゃねーか。腕プルプルしてたくせに。こいつ倒して、また告れ!」
「はい!」
息の合ったトリンとジェイドが、私に立ち向かおうとしている。
本当なら、ここにブライトもいたのでしょうね。
少しだけ残念。
「ルチルさんとリアさんは離れていてください!」
「巻き込まれんなよ!」
トリンとジェイドの言葉を合図に、ルチルとリアは壁際まで走って行った。
そして、あのサンドローザと同じ表情の2人が私に向かってくる。
鈍い音がする。
私の身体が弾き飛ばされる。
けれど、彼らの熱意に答えなければならないわね。
最後に一緒に踊りましょう。
私も応戦して、二人をなぎ払った。
本当に頑丈よね。
また立ち上がってくる。
せいぜい頑張りなさい。
ハモネーはあなた達に懸かっているんだから。
負けたら私の国と同じ末路を辿るわよ。
徐々に二人の動きが鈍くなっていく。
私とあなた達の違いは、痛みを感じないこと。
いくら身体が丈夫で、治癒力に優れていても、痛みが蓄積されれば身体はこれ以上動かないように制御がかかる。
それは防衛本能だけれど、このような状況では邪魔よね。
私は全く痛みを感じないから限界まで動けるの。
あら、私も動きが明らかに鈍いわね。
痛みを感じないから、限界が近いことに気づかなかったわ。
これじゃあお互い様ね。
それに思考が回らなくなってきたかもしれないわ。
私の武器は、この頭脳なのに。
ぼんやりしている私でも、まだ音は拾える。
小さな悲鳴のような声が聞こえた。
この声はリアね。
間違えないわよあの子の声は。
うっかり踏みつぶしてたらどうしようかしら。
けれど、安心。
リアは一点を見つめながら恐怖の表情を浮かべている。生きていたわ。
その横に立っているルチルも険しい表情をしている。
「ジェイドさん、トリンさん。気を付けてください。恐れていた事態が!」
ルチルの声に憔悴しきっているジェイドとトリン、そして私もルチルが指し示す方向を見た。
ああ、バッドタイミングだわ。
「この、似非ヒーローが!」
ジェイドが悪態をついた。
そこに静かに立っていたのは、元純白の英雄。
これだけ騒いでれば、さすがにばれるわよね。
「前からてめえとはやり合いたいと思ってたんだよ。どっちが強いか、この場ではっきりさせてやるよ!」
「ジェイドさん! 冷静になってください!」
ジェイドはクリスドールと戦おうと、肩で息をしながら身構えている。
ルチルは明らかに焦っている。
でも、状況的にまずいのは私なのよね。
クリスドールは私の味方じゃないし、ネタばらししようにも私はもうしゃべれないわ。
とりあえず距離を取ろうと、私は壁際まで身を引いた。
けれど、クリスドールは小走りで私に近寄って来る。
睨んでいるジェイドを完全に無視して。
「お家のお掃除終わったんだけど、それじゃ家に入れないよね」
この緊迫した状況で、何を言っているの。
「もう帰って来ないってこと、だよね」
そうよ。
やっと分かったのね。
「やっと死ぬ気になったの?」
死ぬ……そうね。
死ぬという表現をまだ使えるのか分からないけれど、これで終わりにするつもりよ。
この国諸共ね。
「ダチュラのゴーレムは、オレが破壊するまでもないね」
クリスドールは横を向いて指をさす。
その先には、私のゴーレムが横たわっていた。
もうほとんど動いていない。
他の戦闘課も負傷していたけれど、自分達の仕事を終えてジェイドとトリンに加勢しようと動き始めている。
1匹の力が弱くても、集団で襲われては敵わない。
私のゴーレムはまるで、蟻に捕食されているようだわ。
そして次の捕食対象は私ね。
バラバラにされて、無残に食われるのね。
そんな死に方、嫌よ。
「分かった」
何が分かったの?
「こいつらにダチュラを殺させないから大丈夫」
私は話せないのに、意思が通じているの?
「一緒に煉獄に行くって約束したもんね」
約束なんてしたかしら。
「ハモネーの野蛮人のみなさーん! これから大爆発しまーす! 死にたくない人は、速やかに建物から避難してくださーい!」
クリスドールがいつもの美しい笑顔で、戦闘課に向かって手を振っている。
よく通る明るい声がとても不気味。
そう言われても状況が呑み込めていない戦闘課の面々は、混乱している様子だわ。
「皆さん! 一旦退避!」
ルチルが叫ぶ。
彼がこんなに大声で叫ぶのは、初めて聞いた。
皆ルチルの言う事は聞くみたい。
戦闘課が一斉に身をひるがえして散って行った。
腑に落ちない表情のジェイドを、トリンが首根っこを引っ掴んで連れて行く。
何故か私に手を伸ばしたリアを、ルチルがその腕を引いて連れ去って行った。
そんな情景を眺めていたら、クリスドールが私を抱きしめてきた。
「もう一人にしないで」
ああ、出来損ないなりに出来損ないの感情があったみたいね。
私が置いて行ってしまってから、寂しさでも芽生えたのかしら。
私が与えた頭脳とクリスが与えた命令の狭間で混乱させてごめんね。
私の謝罪が通じたのか、クリスドールは自爆した。
この機能はクリスが与えた最後の切り札だった。
戦時中に敵から逃げられなくなった場合、私とクリスを守るための機能。
まさか、私に使うなんてね。
でも、ハモネーにとってはやっぱりあんたは英雄になったわけね。
クリスも人のために機械人形を創ったわけだから、夢が叶ったじゃない。
『あいつらを殺してやりたかったよ』
頭の中にクリスドールの声が響く。
機械同士、伝達できるのかしら。
『ダチュラの願いを叶えられなくてごめんね』
自爆した影響で、クリスの命令も吹き飛んだの?
『今なら言いたい事が言える。オレもマスターも間違えていた』
そうでもないわよ。
『どうして?』
私はジェイドを殺せなかった。
私はルチルと自分を重ねてしまった。
私はトリンの恋を応援してしまった。
私はリアの演技を見抜けなかった。
私はブライトの死体を処理できなかった。
つまりそういうことよ。
敵に心を奪われてしまった時点で、私の負け。
彼らを守ってくれた、あんたとクリスは正しいわ。
『やっぱり人間は分からない』
大丈夫よ。
私にもよく分からないわ。
『最後に聞きたいことがある。マスターに口止めされていたこと。オレはダチュラに言うべきだと思ったけど、マスターが言ってはいけないと言ったこと』
最後にやめてよ、怖いじゃない。
『ダチュラの旦那さんは、マリアのことが好きだったんだって』
マリア?
誰のこと?
『オレとマスターが大好きだった女だよ。忘れちゃったの?』
ああ。たいして器量が良いわけでもないくせに、知識だけ豊富で頭でっかちな女ね。
王子があの女のことを好きなはずないじゃない。
王子は美女と結ばれる運命なんだから。
最後にそんなでたらめ言わないでちょうだい。
『マスターが言ってた。工房からいなくなったマリアのことを、王子から何度も問い詰められたって。会いたいって何度も言われたけど、その頃にはマリアはダチュラになってたから無理だったって』
そう。
『身分は違うし結婚はできないけど、王子はマリアのことが好きだったに違いないってマスターが言ってた。オレはダチュラに話してあげるべきだと言った。喜ぶと思ったから。でもマスターは絶対にダメだってオレに命令した。オレとマスターどっちが正解?』
どっちも正解よ。
『どっちもってどういうこと?』
どっちも優しいってことよ。
そっか。
マリアを愛してくれた人はいたのね。
もうそれだけで十分でしょ。
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でも、思っていたよりも悪くない。
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