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恋焦がれていた記憶は
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茨城県の海岸付近にある町で俺は生まれた。
森も海もある、自然豊かな場所。
たぶん俺はそんな景色が好きだった。
でも、外の景色が好きだった理由は家の中が嫌いだったからかもしれない。
鏡に映った幼い俺の体は、青あざと切り傷だらけだった。
母親は、俺に暴力を振るっていた。
そうだな、虐待されていたということだ。
地元の小学校にはかろうじて通わせてもらっていたけれど、俺の家について変な噂が立ち、クラスメイトは心無い言葉を投げてくる。
教師は俺から目をそらす。
給食費を滞納していたりする俺の家は、厄介者だったのだろう。
それでも生きる為に、俺の母親は働いていた。
朝から昼、そして夜の水商売まで。
けれど酒に溺れて稼いだ金を使い果たし、そして俺をぶった。
そんな生活が続けられるはずもなく、ある日母親は知り合いから金を稼ぐ方法を教わった。
俺だ。
小さな子供が好きな大人は案外多いようで、俺を数時間貸し出すだけで多少金になったようだ。
馬鹿な俺は、母親の役に立っていると思って喜んで仕事をしていた。
無知というのは恐ろしい。
客は男女問わずいたが、その中に若い頃のホノカがいたことを思い出す。
俺の裸を見て虐待の傷を哀れんでも、その後で奴らは俺に体の表面に現れない傷をつけていく。
自分が何をされているか分かっていなかった当時の俺でも、心の中では意味が分からない悲鳴を上げていたような気がする。
思い出したくないけど、打たれたドラッグのせいで鮮明に思い出されていく。
臭いと感触まで生々しい。
そんな日々が続いていた頃、経緯まで思い出せなかったが大きなお友達ができた。
十代後半から二十代くらいの青年だった。
学校をさぼりがちになり、自分の仕事まで時間がある俺はよくその人と遊んでいた。
友達がいなかった俺は、遊び相手に飢えていて夢中になった。
その人を信頼し、つい自分の母親や仕事のことをべらべらと話してしまった。
きっとそのせいで、母親は児童相談所の職員や警察から目をつけられるようになったのだろう。
母親は警戒するようになり、俺の仕事量は減った。
それでどうなるかというと、お金が稼げず母親はより荒れる。
俺の傷は増えるという悪循環だった。
当時は理解できなかった。
それでも俺は母親のご機嫌を取ろうと必死だった。
幼いながらも掃除や料理をして、母親を楽させようとした。
けれど、あの日がやってくる。
俺は夕飯を作っていた。
何を作ろうとしていたのかは思い出せないけど、包丁で人参やピーマンなどの野菜を切っていた。
母親はいつものように酒をあおっていて、悪酔いして俺に悪態をついてきた。
俺は笑いながら相槌を打ってやり過ごしていたけれど、俺の態度が気に食わなかったのかいつものように手をあげられた。
俺は床に倒れた。
切っていた野菜が散らばる。
またそれに腹を立てて、母親は俺を蹴り始めた。
痛くて悲しい記憶。
うずくまっていた俺の目の前に、ついさっきまで握っていた包丁が見えた。
その時の気持ちはなんだったんだろう。
痛みから身を守ろうとしただけだったのか、それとも遂に母親に対して殺意が芽生えたのか。
俺はその包丁を再び握って立ち上がり、母親に向けた。
次の光景は悲惨だ。
母親は血の海に沈んでいる。
取り落とした包丁が、血だまりに落ちてしぶきを上げた。
母親が帰ってこない理由は、俺が母親を殺したからだった。
森も海もある、自然豊かな場所。
たぶん俺はそんな景色が好きだった。
でも、外の景色が好きだった理由は家の中が嫌いだったからかもしれない。
鏡に映った幼い俺の体は、青あざと切り傷だらけだった。
母親は、俺に暴力を振るっていた。
そうだな、虐待されていたということだ。
地元の小学校にはかろうじて通わせてもらっていたけれど、俺の家について変な噂が立ち、クラスメイトは心無い言葉を投げてくる。
教師は俺から目をそらす。
給食費を滞納していたりする俺の家は、厄介者だったのだろう。
それでも生きる為に、俺の母親は働いていた。
朝から昼、そして夜の水商売まで。
けれど酒に溺れて稼いだ金を使い果たし、そして俺をぶった。
そんな生活が続けられるはずもなく、ある日母親は知り合いから金を稼ぐ方法を教わった。
俺だ。
小さな子供が好きな大人は案外多いようで、俺を数時間貸し出すだけで多少金になったようだ。
馬鹿な俺は、母親の役に立っていると思って喜んで仕事をしていた。
無知というのは恐ろしい。
客は男女問わずいたが、その中に若い頃のホノカがいたことを思い出す。
俺の裸を見て虐待の傷を哀れんでも、その後で奴らは俺に体の表面に現れない傷をつけていく。
自分が何をされているか分かっていなかった当時の俺でも、心の中では意味が分からない悲鳴を上げていたような気がする。
思い出したくないけど、打たれたドラッグのせいで鮮明に思い出されていく。
臭いと感触まで生々しい。
そんな日々が続いていた頃、経緯まで思い出せなかったが大きなお友達ができた。
十代後半から二十代くらいの青年だった。
学校をさぼりがちになり、自分の仕事まで時間がある俺はよくその人と遊んでいた。
友達がいなかった俺は、遊び相手に飢えていて夢中になった。
その人を信頼し、つい自分の母親や仕事のことをべらべらと話してしまった。
きっとそのせいで、母親は児童相談所の職員や警察から目をつけられるようになったのだろう。
母親は警戒するようになり、俺の仕事量は減った。
それでどうなるかというと、お金が稼げず母親はより荒れる。
俺の傷は増えるという悪循環だった。
当時は理解できなかった。
それでも俺は母親のご機嫌を取ろうと必死だった。
幼いながらも掃除や料理をして、母親を楽させようとした。
けれど、あの日がやってくる。
俺は夕飯を作っていた。
何を作ろうとしていたのかは思い出せないけど、包丁で人参やピーマンなどの野菜を切っていた。
母親はいつものように酒をあおっていて、悪酔いして俺に悪態をついてきた。
俺は笑いながら相槌を打ってやり過ごしていたけれど、俺の態度が気に食わなかったのかいつものように手をあげられた。
俺は床に倒れた。
切っていた野菜が散らばる。
またそれに腹を立てて、母親は俺を蹴り始めた。
痛くて悲しい記憶。
うずくまっていた俺の目の前に、ついさっきまで握っていた包丁が見えた。
その時の気持ちはなんだったんだろう。
痛みから身を守ろうとしただけだったのか、それとも遂に母親に対して殺意が芽生えたのか。
俺はその包丁を再び握って立ち上がり、母親に向けた。
次の光景は悲惨だ。
母親は血の海に沈んでいる。
取り落とした包丁が、血だまりに落ちてしぶきを上げた。
母親が帰ってこない理由は、俺が母親を殺したからだった。
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