マスク・ド・ファイヴの憂鬱

長崎優希

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マスクマンは二度死ぬ!の巻

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ヤエガシ興業ご一行様と書かれた座敷の襖を開けると
先に呑み始めていたメンバーの赤ら顔があった。



「まじで、今日はヤバかった」
「てか、デルフィンのチョッパーが切れまくってた」
アステカが日本酒をグラスに注いで来た。
テーブルの上には、赤むつの煮つけや
ヒラメの刺身が並んでいる。



事務所社長のリツコさんがテキーラの瓶を持つと
嬉しそうな顔で立ち上がった。
酒乱だけど、仕事も出来るし
元タカラジェンヌだけあって、立ち姿はさまになる。
長い髪を掻きあげると、よろめきながら言った。



「さっき連絡が入りました。
 なんとですねーーー
 ミシェル・マリアーノのワールドツアーの
 オープニングアクトに抜擢されちゃいました」
そう言うと、テキーラの瓶にキスをした。



「あのミシェルのオープニングっすよ。
 伝説のグラミー賞歌手と同じステージに立てるなんて
 まじで、やばいっすよ」
横に座ったチャボが声を震わせた。



「全米デビューも見えてきたな。
 これで、あの人との約束
 もう一つ果たせるかも知れないな」
アステカが肩を叩く。



僕はグラスを空けながら
3年前のメキシコでの出来事を思い出していた。
そうだ、あの晩から全ては始まったんだ、
音楽を諦めようとした、あの場所から…



「この勢いで、絶対に成功させるわよ東京ドーム公演。
 もう10日しかないんだから、
 みんなの気合い入れていくよ。
 やっと、ここまで来たんだよ。
 あの子をドームのステージに立たせてやるのよ」
リツコさんの叫び声に、僕らは拳を振り上げた。
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