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第一章・俺の価値
運動不足
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脱衣所で、ルカ様が用意した、例のフリフリのブラウスを着させられる。
(…趣味が変ってのは、ロイクに同意だな…)
自分の服に比べると何倍も肌触りがいいので、まあ外に出ないならいいかと文句は言わない。
「キーチ、食事を用意したんだが食べられそうか?」
そこら辺に座ろうとした俺に、こんな脱衣所の椅子はやめろと警告し、
魔法で浮かせた俺に純白の靴下を履かせながら、食事の提案をしてきた。
「…まあ、食べれる」
内心めちゃくちゃ腹が減っていたが、一度食事を断った手前食べたいとは言えずに、妥協した風なそぶりで返事をする。
「そうか、良かった」
心底安心したように俺の頭を撫でた後、俺に紫色の液体を差し出した。
「…な、なにこれ」
「認識阻害の薬だ。飲んで数分、血液全体にこれが行き渡れば周りからは見えなくなる。…私もこの魔法は使えるが、訳あって今は使えないんだ。」
薬で我慢してくれ、と再度液体が渡される。
(ま、不味そう…)
意を決して、まず試験管に入ったそれの匂いを嗅ぐと、なんとも言えない、頭の痛くなる匂いがした。
ビニールを燃やしたみたいな、体に悪そうな匂い…
「ッう"ぇ……」
その匂いだけで気持ち悪くなった俺は、顔を背けて口を塞ぐ。
「…そ、そんなにか?!」
「む、無理ぃ"…」
(無理無理!頭いてェもん…!)
酷い頭痛がして、紫の液体を見るだけで当分は気分が悪くなりそうだ。
「な、ならやめよう…大丈夫だ」
ルカ様は試験管に封をして、空気中に収納する。
すげえ、魔法で四次元ポケットみたいになってんだ…
「しかし…君を3階の部屋から1階の離れまで運ぶなんて…アイツはなんてことをしてくれたんだ…」
誰にも見られていないだろうな…と、ブツブツ言いながら帰るための方法を考えるルカ様。
(ごめん…少なくとも2人には見られてる…)
言えばその2人を口封じに殺しかねないので、一応黙っておいた。
結局、ルカ様が俺を浮かせて走り、なるべく早く3階へ上がるというマジでなんの捻りもない作戦を実行に移したルカ様は、あの魔法さえあれば…とブツブツ言いながら息を切らしていた。
(…なんで使えないんだろ)
ルカ様の横で浮きながらそう思った俺は、移動しているルカ様に話しかける。
「なぁ、なんでその魔法使えねェの?」
「ッそ、それは…ッ、まあ、色々あるんだ…!」
はぁはぁと息を切らしながら、ルカ様は誤魔化した。
(ははーん、その反応は大体こいつが悪いパターンだな…)
きっと誰かのせいで封印されたとかならめちゃくちゃ悪口大会始まりそうだし…
どんなことして使えなくなったんだろうなあ、と妄想を繰り広げているうちに、部屋にたどり着いた。
走りながら魔法で扉を開け、部屋に入る俺たち。
「はぁ…はぁ…ッ」
魔法に頼ってなんでも浮かすし、走る必要もない生活で体力は少ないだろうと思っていたが、汗も出ない程だとは思わなかった。
「全然汗出てないけど大丈夫か…?」
「あ、汗…?」
自力で温度調節できないのはダメだと思って汗が出てないことを指摘したけど、そういう常識はこちらには無いらしい。
「いや、別に…」
説明が面倒だった俺は、ルカ様に降ろしてもらった後に、お疲れ様の意味を込めて背中をさすってやる。
「…気持ち悪くない?」
「へ、平気だ」
完全に虚勢を張っているのが分かるが、大丈夫だと言うならおせっかいか…と
またベッドに座り込む。
視界の横に、自分の鞄が映った。
(あ、ピアス…)
耳たぶのピアスを外していたのを忘れていた俺は、予備のピアスを付けようと鞄を開いた。
半透明の薄い箱に、ゲージ、形状毎に区別されたピアス。
(耳たぶは…16…)
16、と雑にマジックで書かれた場所を覚え、バーベルピアスを一つ取り出す。
ピアス歴、ざっと5年の俺にノールックで付けるなんてお手のもので、鏡がなくとも30秒ほどで装着が完了した。
(…これでよし)
箱を鞄に戻し、また先ほどとは違う箱を開け、ニードルの予備を確認する。
(…5本か~)
こんな事になるならもっと買っておけば良かったと思いながら、その箱も鞄に戻す。
一通り、自分のやりたかった事を終わらせた俺は、またルカ様に視線を移した。
「はぁ……ッはぁ…」
(…まだ息整えてんじゃん)
(…趣味が変ってのは、ロイクに同意だな…)
自分の服に比べると何倍も肌触りがいいので、まあ外に出ないならいいかと文句は言わない。
「キーチ、食事を用意したんだが食べられそうか?」
そこら辺に座ろうとした俺に、こんな脱衣所の椅子はやめろと警告し、
魔法で浮かせた俺に純白の靴下を履かせながら、食事の提案をしてきた。
「…まあ、食べれる」
内心めちゃくちゃ腹が減っていたが、一度食事を断った手前食べたいとは言えずに、妥協した風なそぶりで返事をする。
「そうか、良かった」
心底安心したように俺の頭を撫でた後、俺に紫色の液体を差し出した。
「…な、なにこれ」
「認識阻害の薬だ。飲んで数分、血液全体にこれが行き渡れば周りからは見えなくなる。…私もこの魔法は使えるが、訳あって今は使えないんだ。」
薬で我慢してくれ、と再度液体が渡される。
(ま、不味そう…)
意を決して、まず試験管に入ったそれの匂いを嗅ぐと、なんとも言えない、頭の痛くなる匂いがした。
ビニールを燃やしたみたいな、体に悪そうな匂い…
「ッう"ぇ……」
その匂いだけで気持ち悪くなった俺は、顔を背けて口を塞ぐ。
「…そ、そんなにか?!」
「む、無理ぃ"…」
(無理無理!頭いてェもん…!)
酷い頭痛がして、紫の液体を見るだけで当分は気分が悪くなりそうだ。
「な、ならやめよう…大丈夫だ」
ルカ様は試験管に封をして、空気中に収納する。
すげえ、魔法で四次元ポケットみたいになってんだ…
「しかし…君を3階の部屋から1階の離れまで運ぶなんて…アイツはなんてことをしてくれたんだ…」
誰にも見られていないだろうな…と、ブツブツ言いながら帰るための方法を考えるルカ様。
(ごめん…少なくとも2人には見られてる…)
言えばその2人を口封じに殺しかねないので、一応黙っておいた。
結局、ルカ様が俺を浮かせて走り、なるべく早く3階へ上がるというマジでなんの捻りもない作戦を実行に移したルカ様は、あの魔法さえあれば…とブツブツ言いながら息を切らしていた。
(…なんで使えないんだろ)
ルカ様の横で浮きながらそう思った俺は、移動しているルカ様に話しかける。
「なぁ、なんでその魔法使えねェの?」
「ッそ、それは…ッ、まあ、色々あるんだ…!」
はぁはぁと息を切らしながら、ルカ様は誤魔化した。
(ははーん、その反応は大体こいつが悪いパターンだな…)
きっと誰かのせいで封印されたとかならめちゃくちゃ悪口大会始まりそうだし…
どんなことして使えなくなったんだろうなあ、と妄想を繰り広げているうちに、部屋にたどり着いた。
走りながら魔法で扉を開け、部屋に入る俺たち。
「はぁ…はぁ…ッ」
魔法に頼ってなんでも浮かすし、走る必要もない生活で体力は少ないだろうと思っていたが、汗も出ない程だとは思わなかった。
「全然汗出てないけど大丈夫か…?」
「あ、汗…?」
自力で温度調節できないのはダメだと思って汗が出てないことを指摘したけど、そういう常識はこちらには無いらしい。
「いや、別に…」
説明が面倒だった俺は、ルカ様に降ろしてもらった後に、お疲れ様の意味を込めて背中をさすってやる。
「…気持ち悪くない?」
「へ、平気だ」
完全に虚勢を張っているのが分かるが、大丈夫だと言うならおせっかいか…と
またベッドに座り込む。
視界の横に、自分の鞄が映った。
(あ、ピアス…)
耳たぶのピアスを外していたのを忘れていた俺は、予備のピアスを付けようと鞄を開いた。
半透明の薄い箱に、ゲージ、形状毎に区別されたピアス。
(耳たぶは…16…)
16、と雑にマジックで書かれた場所を覚え、バーベルピアスを一つ取り出す。
ピアス歴、ざっと5年の俺にノールックで付けるなんてお手のもので、鏡がなくとも30秒ほどで装着が完了した。
(…これでよし)
箱を鞄に戻し、また先ほどとは違う箱を開け、ニードルの予備を確認する。
(…5本か~)
こんな事になるならもっと買っておけば良かったと思いながら、その箱も鞄に戻す。
一通り、自分のやりたかった事を終わらせた俺は、またルカ様に視線を移した。
「はぁ……ッはぁ…」
(…まだ息整えてんじゃん)
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