異世界で、男に抱かれる快感に目覚めちまった…!?

海藻

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第一章・俺の価値

食事

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息を整えたルカ様は、

「食事を」

と、いつものようにどこかへ声をかけた。
間髪いれずに、「はぁ~い」と、あの緩い返事が聞こえる。
今度はきちんとノックをして、タレ目の方の狐が部屋に入ってきた。

「お食事ですよォ~、弟は水晶を見てて忙しいので僕だけですがァ~」

そう言いながら、キィ,キィと車輪のついた机を持ってくる。

「ああ、そこに並べてくれ」

2人でも絶対食べきれないだろ、というような量の料理が並ぶ。

「椅子も持ってきましたァ~」

車輪を固定した後、よいしょよいしょと座り心地が良さそうな椅子を持ってくる。

「ふぅ…全く、ルカ様が筋肉嫌いなせいで僕まで筋肉まみれになっちゃいますよぅ…」

文句を言いながら椅子を運び終わり、褒美をもらいにルカ様の前で頭を下げるタレ目の狐。

「フン、筋肉まみれになりたくないなら、早く浮遊の魔法を習得するんだな」

狐の頭を撫でながら、ルカ様が宿題を出す先生のような顔つきになる。

「だからァ!魔力をたーくさん使うアレは庶民には難しいんですってェ~!」

「だから、私が教えてやると言っているだろう」

「だ…ッだからァ~!」

全く!わからずや!と言いながら、狐はまた部屋から出ていった。
(…俺もアイツらと喋ってみたいけど、すぐ消えちゃうんだよな…)
ルカ様が呼べば1秒も待たずにすぐに駆けつけるあの2人のしくみが謎でたまらないが、とりあえず席に着く。

「食べられないものがあれば残していい、好きなものがあるなら私のをやろう」

嬉しそうに隣に座り、俺を見るルカ様。

(…好きなもの、って言ったってな…)

昨日の夕方、ベアルさんの家で食べた見た目はシチュー、味はトマトの料理を思い出す。
見た目通りの味じゃないなら、口に入れるまでギャンブルだ。
なかなか料理に手をつけない俺に、ルカ様はまた困った顔をして、

「…私が、いない方がいいか?」

そう言った。
俺は慌てて訂正する。

「いや、ち、違う…!ただ…その…」

「うん…?」


ルカ様が心配そうに俺を覗く。


「えっと…その…初めて見る料理ばっかりで、どれが好きか嫌いか分からない…」


素直にそう答えた俺は、顔が熱くなるのを感じた。
いや!見たことはあるよ!?並べられてるパンもスープも何もかも!でも味が多分ちがうからって意味で…!!
心の中でだけ、めちゃくちゃに反論する。
チラ、とルカ様の方を伺うと、顔に手を当て俺を見ていた。

「そ、そうなのか…!」

その歳でなんで知らねぇんだとか、そんな感じで引かれたのかと思ったが、声色的には嬉しそうなので、混乱する。
そんな俺を無視して、
ルカ様は続けて、嬉しそうに口を開いた。

「では私が教えよう!」

「あ、ああ…」

そういえばさっき、狐の片割れにも言ってた通り、人に教えるのが好きなのか…?
ルカ様は椅子から立ち上がると、ポッケからゴムを出して髪の毛を結び始める。
(…やる気になった時に髪の毛を結ぶ癖があるのか…)
昨晩、俺のちんぽを舐めていたルカ様を思い出して、ちょっとムラつきながらもルカ様を待つ。
髪を一纏めにしたルカ様は、椅子に座った俺の横に膝立ちになった。
(貴族なのにそんなことしていいのか…?)
そう思いながら、早速気になるものはあるかと問われ、近くにあった半透明の黄金のスープを指さす。

「では…まずこのスープは人によるが、少し辛いかもしれないな…味が濃いので食事の後半に飲むといい。勿論、今すぐ食べたいのなら強制はしない。」

どうする?と、スプーンを持つルカ様。
(…辛いなら、ちょっとやめとこうかな…)

「…じゃあ、後にする」

「分かった、次は?」

スープから攻めたい俺は、また少し奥にある、緑のスープを指刺した。

「アレは…野菜を色々潰したやつだ」

(あれ…味の詳細がないな)

「…甘い?」

「いや…甘くはない」

「じゃあ辛い?」

「いや…」

歯切れの悪いルカ様に
(野菜嫌いなのか…)
と、仮説を立てる。
少し味が知りたくなった俺は、じゃあそれ食べたい、とルカ様に伝えた。

「こ、コレか…?ま、まあいい…」

予想外だという反応を示しながら、スプーンで液体を掬い、フー…と冷ましてくれる。
(マ、ママじゃん…)
長い髪も相まって、聖母のようなその風貌にウッ、目がー!なんて寸劇をしたくなる。
急にそんなことをすればめーちゃ異常者なので、脳内に留めておくが。

「ほら、口を開けなさい」

口元にスプーンを持ってきてもらい、
(別に自分で食えるけど…)
そう思いつつ、何年ぶりかの体験に悪い気はせず、されるがままに口を開ける。

「ん!」

「ん?」

「…美味い!」

口に入ってきたその液体は、見た目通り、ほうれん草のポタージュのような味だった。

「う、美味い!?これが!?」

全く予想外だったのか、スープと俺の顔を交互に見る。

「美味いよ!優しい味がする!」

「ああ…そういえば味付けが少なくて草の味がしたな…」

昔の苦い思い出が蘇ったのか、うえ…とした表情をするルカ様。
スープの味が分かった俺は、ルカ様からスープを受け取り食べ進める。

その間にまた、ルカ様から食事の説明を受けた。


「これは甘くて美味いぞ!」
と言われたパンは甘すぎて、
「こ、これは…まあ…」
と濁されたパンは美味しかったり、

「これは相当美味い!」
と言われたドレッシングは胡椒が効きすぎて舌が痺れ、
「これは…腐った味がする」
と言われたドレッシングは、爽やかな風味で口に合った。

結果、ルカ様と俺の味覚はほぼ真逆という事がわかり、ルカ様が説明できない料理を美味いと食べ、ルカ様が力説した料理を隅へ追いやる俺は、一歩間違えればルカ様の逆鱗に触れていただろう。
(こ、この見た目に感謝だな…)

2人で食事を終えた後、
結局また、ルカ様の苦手な飲み物を態々狐に頼み、レモン風味の爽やかなジュースで喉を潤す俺。

「…そんなに美味しいのか?」

「めちゃくちゃ美味い!」

甘ったるいクリームが乗ったラテを飲んでいたルカ様が
それなら…と味見をし、予想通り顔を青くした時には、面白すぎて死ぬかと思った。
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