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第一章・俺の価値
飯の約束
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ノックの音で起きた俺は、さっきと比べて薄暗くなった部屋を見渡した。
(…てか寒ッ)
日本ともし時間が同じだとしたら、ここの世界も11月。
さっきが4時過ぎくらいだったのを考えて、7時だと多分真っ暗だから、6時くらいかな…
目を擦りながら、扉を開ける。
「よ!」
扉の前には、ロイクが立っていた。
「ロイク!風呂場で転んだの、大丈夫だったか?」
「大丈夫だったか?じゃねえよ!キウチのお陰で散々な目に遭っちまった…」
シクシクとわざとらしく膝を折り、泣き真似をして、チラチラとまた、わざとらしく指の間から俺を見る。
「はいはい、ごめんって」
とんとん赤い頭を、撫でるのは癪なので軽く叩く。
(…原因はお前がルカ様を煽ったからだし)
「で、どしたの?こんな時間に」
頭を叩かれ満足したのか、立ち上がり膝の埃を払っていたロイクに質問する。
「飯、約束してただろ」
そう言うと、後ろからさっきの元気な金髪とセクシーな青髪がひょっこり顔を出した。
(そ、外に出られるってことか…!?)
今日一日、狭い部屋で気が狂いそうなほど暇だった俺は、飛び跳ねる勢いで嬉しくなる。
「えッマジ!?本気で言ってる?!」
「ッハハ!明らかにテンション上がったな!約束しただろ!コイツ…アルバートが飯の約束とお前との約束、両方守らなきゃダメだって聞かなくてな」
「だって風呂場で約束したじゃん!」
金髪の男アルバートが、な!と眩しすぎる笑顔でグッドポーズをしている。
(な、ナイスガイすぎるぜ~…!)
アルバートの後ろから、まるで後光が差している気がする。
「マジで嬉しい…外出たかったんだ…」
寝癖やばいかな、この服もめっちゃフリフリだけど…と頭をさわさわ、服を確認したりながらも、飯に、厳密には外に行きたいのでもうこれでいいかと妥協する。
今から出るのかな、時間があるならちょっと寝癖整えた後に外行きのピアスとかに付け替えたり…心がワクワクで満たされている感覚に、年甲斐もなくニコニコしていると、
「…俺は、ルカ様のお気に入りを外に連れ出すのは危ないと思うが…」
タレ目がセクシーな、髪を後ろに撫で付けた青髪の男が、俺達を怪訝な顔で見つめそう言う。
「おい!お前だって了承しただろ!」
「そ、それは何度説得してもお前がうるさいから…」
アルバートと青髪が言い合っている。
た、確かに…俺といるせいでこいつらが危険になっちゃったら流石にちょっと良心が痛むな…
外に行きたいけど…今どうしても行かなきゃダメなのかと言われれば別に、もうすぐルカ様も来るだろうし…とうだうだしていると
「大丈夫だって!兄さ…ルカも、キウチの事は上に隠したいらしいしな…俺らが外に連れてっても、父さんや上に報告するわけない」
と、ロイクが2人を説得する。
黙った2人に、またこう付け加えた。
「廊下であのルカが、なんで大人しく俺が部屋に行くのに文句を言わず黙ったと思う?こいつを、“ただの庶民”と見下してるお前らににさえ知られないためだぜ?」
話を聞いて5秒ほど黙った後、青髪の男は口を開く
「…そうか」
すまなかったと俺に謝った後、アルバートにポカポカ殴られていた。
(仲良いな、こいつら)
「て事で!飯!行こうぜ!」
ぼふ、
その言葉と共に、何かが俺に投げられた。
「ッな、なにこれ」
「俺が数年前まで来てた服だよ、鍛えて着れなくなったけど、貧乏性で残してて良かったあ~」
貴族で貧乏性て嫌味だろ、そう思いながら投げられた服を見る。
ルカ様とは違って装飾のないシンプルな白いシャツと、ポッケと足先のあたりに少しだけ金色の刺繍が施された紺色のズボン、ベストだった。
「わ、ありがとう!」
ルカ様には悪いが流石にフリフリ女の子みたいな服では外出するにしても居心地が悪そうだったので、素直に感謝する。
しかし、ロイクは顔を手で覆い笑いながら
「でもなあ…身長差があるからなあ…ズボンは裾を折らねェとな」
と、余計なひと言を付け加えた。
(う、うぜえ…)
着替えさせてやろうか、と言うロイクを無視して扉を閉め、電気をつける魔法なんて分からないので暗い部屋で服を着替える。
現代の服の違いといえば、ズボンのチャックが無くてボタンになってるくらいで、着るのに苦労することはなかったが、
ズボン以外にもシャツやベストも肩幅が少し長く、鏡がなくても分かるほど格好が悪い。
あっちの世界じゃ体格的に、似合わない服なんて無かった俺は、初めての感覚に顔が熱いのを感じながら扉を開ける。
「ハハ!いや、似合ってる似合ってる!」
「…俺が後で裾合わせをしようか?」
「馬鹿!そんなの必要ないよ!今のままで充分可愛い!」
心底面白いといった具合で腹を抱えて前のめりになり笑うロイクと、顎に手を置き真面目に提案する青髪、俺を褒めながらまたも青髪を殴るアルバート。
(あ、明らかに似合ってない服を可愛いって言われるのが1番恥ずかしいんだけど…)
悪気はないことは分かっているので
「あ、ありがとう…」
とアルバートに礼を言うと、またもグッ!と指を立てられる。
そのポーズ、好きなんだな。
あはは…と笑っていると、急に青髪の男が挙手をする。
「言い忘れていた、俺の名はレイモンド、こいつはアルバートだ。」
「あ?…ああ、よろしく、キウチだ。」
ス、と手を差し出され、唐突な自己紹介を交わす。
俺はさっきの会話で勝手にアルバートの名前を覚えたけど、食事の前にこうして挨拶を交わす機会をくれるのはありがたい。
現に青髪の男の名前がレイモンドだって知ることができた。
「キウチ。よろしく」
「よろしく!」
2人と握手を交わした後、よし、とロイクが手を叩く。
「じゃあ行こう!…ルカに見つからないようにな」
シー…と俺の口元に指を持ってきて、ウインクをする。
後ろでも、レイモンドがアルバートの口元に
「シー、だぞ」
と指を持って行き、パシッと叩かれていた。
(…仲良いな)
(…てか寒ッ)
日本ともし時間が同じだとしたら、ここの世界も11月。
さっきが4時過ぎくらいだったのを考えて、7時だと多分真っ暗だから、6時くらいかな…
目を擦りながら、扉を開ける。
「よ!」
扉の前には、ロイクが立っていた。
「ロイク!風呂場で転んだの、大丈夫だったか?」
「大丈夫だったか?じゃねえよ!キウチのお陰で散々な目に遭っちまった…」
シクシクとわざとらしく膝を折り、泣き真似をして、チラチラとまた、わざとらしく指の間から俺を見る。
「はいはい、ごめんって」
とんとん赤い頭を、撫でるのは癪なので軽く叩く。
(…原因はお前がルカ様を煽ったからだし)
「で、どしたの?こんな時間に」
頭を叩かれ満足したのか、立ち上がり膝の埃を払っていたロイクに質問する。
「飯、約束してただろ」
そう言うと、後ろからさっきの元気な金髪とセクシーな青髪がひょっこり顔を出した。
(そ、外に出られるってことか…!?)
今日一日、狭い部屋で気が狂いそうなほど暇だった俺は、飛び跳ねる勢いで嬉しくなる。
「えッマジ!?本気で言ってる?!」
「ッハハ!明らかにテンション上がったな!約束しただろ!コイツ…アルバートが飯の約束とお前との約束、両方守らなきゃダメだって聞かなくてな」
「だって風呂場で約束したじゃん!」
金髪の男アルバートが、な!と眩しすぎる笑顔でグッドポーズをしている。
(な、ナイスガイすぎるぜ~…!)
アルバートの後ろから、まるで後光が差している気がする。
「マジで嬉しい…外出たかったんだ…」
寝癖やばいかな、この服もめっちゃフリフリだけど…と頭をさわさわ、服を確認したりながらも、飯に、厳密には外に行きたいのでもうこれでいいかと妥協する。
今から出るのかな、時間があるならちょっと寝癖整えた後に外行きのピアスとかに付け替えたり…心がワクワクで満たされている感覚に、年甲斐もなくニコニコしていると、
「…俺は、ルカ様のお気に入りを外に連れ出すのは危ないと思うが…」
タレ目がセクシーな、髪を後ろに撫で付けた青髪の男が、俺達を怪訝な顔で見つめそう言う。
「おい!お前だって了承しただろ!」
「そ、それは何度説得してもお前がうるさいから…」
アルバートと青髪が言い合っている。
た、確かに…俺といるせいでこいつらが危険になっちゃったら流石にちょっと良心が痛むな…
外に行きたいけど…今どうしても行かなきゃダメなのかと言われれば別に、もうすぐルカ様も来るだろうし…とうだうだしていると
「大丈夫だって!兄さ…ルカも、キウチの事は上に隠したいらしいしな…俺らが外に連れてっても、父さんや上に報告するわけない」
と、ロイクが2人を説得する。
黙った2人に、またこう付け加えた。
「廊下であのルカが、なんで大人しく俺が部屋に行くのに文句を言わず黙ったと思う?こいつを、“ただの庶民”と見下してるお前らににさえ知られないためだぜ?」
話を聞いて5秒ほど黙った後、青髪の男は口を開く
「…そうか」
すまなかったと俺に謝った後、アルバートにポカポカ殴られていた。
(仲良いな、こいつら)
「て事で!飯!行こうぜ!」
ぼふ、
その言葉と共に、何かが俺に投げられた。
「ッな、なにこれ」
「俺が数年前まで来てた服だよ、鍛えて着れなくなったけど、貧乏性で残してて良かったあ~」
貴族で貧乏性て嫌味だろ、そう思いながら投げられた服を見る。
ルカ様とは違って装飾のないシンプルな白いシャツと、ポッケと足先のあたりに少しだけ金色の刺繍が施された紺色のズボン、ベストだった。
「わ、ありがとう!」
ルカ様には悪いが流石にフリフリ女の子みたいな服では外出するにしても居心地が悪そうだったので、素直に感謝する。
しかし、ロイクは顔を手で覆い笑いながら
「でもなあ…身長差があるからなあ…ズボンは裾を折らねェとな」
と、余計なひと言を付け加えた。
(う、うぜえ…)
着替えさせてやろうか、と言うロイクを無視して扉を閉め、電気をつける魔法なんて分からないので暗い部屋で服を着替える。
現代の服の違いといえば、ズボンのチャックが無くてボタンになってるくらいで、着るのに苦労することはなかったが、
ズボン以外にもシャツやベストも肩幅が少し長く、鏡がなくても分かるほど格好が悪い。
あっちの世界じゃ体格的に、似合わない服なんて無かった俺は、初めての感覚に顔が熱いのを感じながら扉を開ける。
「ハハ!いや、似合ってる似合ってる!」
「…俺が後で裾合わせをしようか?」
「馬鹿!そんなの必要ないよ!今のままで充分可愛い!」
心底面白いといった具合で腹を抱えて前のめりになり笑うロイクと、顎に手を置き真面目に提案する青髪、俺を褒めながらまたも青髪を殴るアルバート。
(あ、明らかに似合ってない服を可愛いって言われるのが1番恥ずかしいんだけど…)
悪気はないことは分かっているので
「あ、ありがとう…」
とアルバートに礼を言うと、またもグッ!と指を立てられる。
そのポーズ、好きなんだな。
あはは…と笑っていると、急に青髪の男が挙手をする。
「言い忘れていた、俺の名はレイモンド、こいつはアルバートだ。」
「あ?…ああ、よろしく、キウチだ。」
ス、と手を差し出され、唐突な自己紹介を交わす。
俺はさっきの会話で勝手にアルバートの名前を覚えたけど、食事の前にこうして挨拶を交わす機会をくれるのはありがたい。
現に青髪の男の名前がレイモンドだって知ることができた。
「キウチ。よろしく」
「よろしく!」
2人と握手を交わした後、よし、とロイクが手を叩く。
「じゃあ行こう!…ルカに見つからないようにな」
シー…と俺の口元に指を持ってきて、ウインクをする。
後ろでも、レイモンドがアルバートの口元に
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(…仲良いな)
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