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第一章・俺の価値
空腹だってのに!
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地味すぎる攻防は、肩で息をするロイクと、余裕そうなレイモンド、そしてピッタリと閉じられた足で幕を閉じた。
ロイクが全員分の馬車代を払い、皆親しき中にも礼儀あり、ロイク、そして操縦者にお礼を言いながら馬車を降り、少し街の入り組んだ場所にあるという酒場へ向かった。
ガヤガヤという大勢の声に負けないよう、いつもより少し声を張って会話をする。
「あーあ、毎回レイが勝っちゃうから流石に面白く無くなってきた~」
さっきまでめちゃくちゃ楽しそうに応援していたアルバートが、嘘だというような感想をこぼしながら街中を歩く。
「そ、そんな…!」
明らかにショックを受けたレイモンドは、今度は手加減しようか…と顎に手を置き、
それじゃあ勝負にならないだろ!とまたアルバートに背中を叩かれていた。
ロイクはそれを見て、死ぬんじゃないかというほど爆笑している。
(そ、そんなにおもろいか…?)
まあ、身内ネタほど面白いものはないか…と納得しながら辺りを見渡す。
少し治安が悪そうでビビっていたが、昼間食べた屋敷の食事とは打って変わってジャンキーな香りに、すぐに胃袋を掴まれそうになる。
やっぱり味付けは濃い方が良いもんな~
ここは城下街というより、本当に庶民的な街らしく、屋敷を歩いていた時よりも明らかにゴツい人間が多い。
キョロキョロと人を観察していると、目が合う人間が多いことに気づく。
(…や、やっぱ目立つのか)
魔法は使えないけど、肉体的には似たような遺伝子だと思うロイクでも、俺とはかなり体の厚みが違うし、街ゆく人たちは俺とロイクの差と比べればもっともっと差がある。
身長は俺が少し低いくらいなのに、比べて体が明らかにヒョロっとしているのは、この世界の美意識がまだ芯まで定着していない俺にとっては少し恥ずかしい。
(そ、それにこの服だし…)
肩幅、裾が合わない服を思い出して恥ずかしくなる。
次外出する時のために、レイモンドに裾直し頼もうかな…
いつでもいいから、とお願いしようとして前を向くと
「…あれ」
人混みの中でキョロキョロしていたせいか、完全に3人を見失っていた。
(や、ッやべェ…!!)
焦って周りを見渡しても、俺と同じかそれ以上の身長だらけのこの世界では、遠くから髪の色を判断することもできない。
なにせこの世界の人間は頭カラフルだし…!
焦ってじわ…と汗が滲む。
(もし、こんな所で貴族だって逆恨みに遭ったとして…)
筋肉でも明らかに、そして魔力も0の俺は秒で殺されるだろう。
なんの比喩でも無く、本当に足が震え出した俺は、とりあえずこの状況を誰にも知られてはならないと思った。
(俺が迷子だってバレたら終わり…貴族だって逆恨みにあっても終わり…)
顔面蒼白で、人の流れに任せて道を進む。
どうか道の先で3人が待っているよう願いながら、上を見ると無数の目と目が合うのが怖くてやや下を見て歩く。
(早く、早く俺を見つけてくれ…!)
涙目になりながら歩いていると、
トン、と肩を叩かれた。
(…!)
3人だと思った俺は、安心し切って顔を上げる。
だがそこにいたのは見たこともない大男達だった。
「ッ…ひ、」
1人でも迫力がありそうなのに、そんな男が3人、4人…?人混みでどこまでが仲間か分からないが、とりあえず3人以上はいる。
顔が引き攣り、声が出た。
「はは、可愛いなぁ?こんな所にお使いか?」
「お兄ちゃんの服着てんのかぁ?」
ガハハと見下したような笑い声が周りから上がる。
今のうちに逃げればいいと思うだろうが、この状況になってみろ…!
絶対怖くて足が動かないし、動いた所で絶対追いつかれるから…!
誰にも分からない言い訳をしながら、震えながら下を向いて立ちすくむ。
「おい、何か言え」
リーダー格っぽい、褐色肌に白色の短髪の男が、俺の顎を掴み上を向かせた。
俺の顔をまじまじと見たその男は、ぴゅう、と口笛を吹く。
「見ろ皆!珍しいな、貴族の癖に黒い目をしてる!」
その言葉に、ガヤガヤした周りの音が少しボリュームを落とす。
周りの空気が変わったのは、すぐに分かった。
(き、貴族の癖にってなんだ…?)
知らない常識がまだあるのか、
何を言われるのか震えて待つ。
やっと見つけたぞ、と俺の顎を持つ男は呟きそして
「こいつ、純血だ!」
そう、声高に叫んだ。
ロイクが全員分の馬車代を払い、皆親しき中にも礼儀あり、ロイク、そして操縦者にお礼を言いながら馬車を降り、少し街の入り組んだ場所にあるという酒場へ向かった。
ガヤガヤという大勢の声に負けないよう、いつもより少し声を張って会話をする。
「あーあ、毎回レイが勝っちゃうから流石に面白く無くなってきた~」
さっきまでめちゃくちゃ楽しそうに応援していたアルバートが、嘘だというような感想をこぼしながら街中を歩く。
「そ、そんな…!」
明らかにショックを受けたレイモンドは、今度は手加減しようか…と顎に手を置き、
それじゃあ勝負にならないだろ!とまたアルバートに背中を叩かれていた。
ロイクはそれを見て、死ぬんじゃないかというほど爆笑している。
(そ、そんなにおもろいか…?)
まあ、身内ネタほど面白いものはないか…と納得しながら辺りを見渡す。
少し治安が悪そうでビビっていたが、昼間食べた屋敷の食事とは打って変わってジャンキーな香りに、すぐに胃袋を掴まれそうになる。
やっぱり味付けは濃い方が良いもんな~
ここは城下街というより、本当に庶民的な街らしく、屋敷を歩いていた時よりも明らかにゴツい人間が多い。
キョロキョロと人を観察していると、目が合う人間が多いことに気づく。
(…や、やっぱ目立つのか)
魔法は使えないけど、肉体的には似たような遺伝子だと思うロイクでも、俺とはかなり体の厚みが違うし、街ゆく人たちは俺とロイクの差と比べればもっともっと差がある。
身長は俺が少し低いくらいなのに、比べて体が明らかにヒョロっとしているのは、この世界の美意識がまだ芯まで定着していない俺にとっては少し恥ずかしい。
(そ、それにこの服だし…)
肩幅、裾が合わない服を思い出して恥ずかしくなる。
次外出する時のために、レイモンドに裾直し頼もうかな…
いつでもいいから、とお願いしようとして前を向くと
「…あれ」
人混みの中でキョロキョロしていたせいか、完全に3人を見失っていた。
(や、ッやべェ…!!)
焦って周りを見渡しても、俺と同じかそれ以上の身長だらけのこの世界では、遠くから髪の色を判断することもできない。
なにせこの世界の人間は頭カラフルだし…!
焦ってじわ…と汗が滲む。
(もし、こんな所で貴族だって逆恨みに遭ったとして…)
筋肉でも明らかに、そして魔力も0の俺は秒で殺されるだろう。
なんの比喩でも無く、本当に足が震え出した俺は、とりあえずこの状況を誰にも知られてはならないと思った。
(俺が迷子だってバレたら終わり…貴族だって逆恨みにあっても終わり…)
顔面蒼白で、人の流れに任せて道を進む。
どうか道の先で3人が待っているよう願いながら、上を見ると無数の目と目が合うのが怖くてやや下を見て歩く。
(早く、早く俺を見つけてくれ…!)
涙目になりながら歩いていると、
トン、と肩を叩かれた。
(…!)
3人だと思った俺は、安心し切って顔を上げる。
だがそこにいたのは見たこともない大男達だった。
「ッ…ひ、」
1人でも迫力がありそうなのに、そんな男が3人、4人…?人混みでどこまでが仲間か分からないが、とりあえず3人以上はいる。
顔が引き攣り、声が出た。
「はは、可愛いなぁ?こんな所にお使いか?」
「お兄ちゃんの服着てんのかぁ?」
ガハハと見下したような笑い声が周りから上がる。
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リーダー格っぽい、褐色肌に白色の短髪の男が、俺の顎を掴み上を向かせた。
俺の顔をまじまじと見たその男は、ぴゅう、と口笛を吹く。
「見ろ皆!珍しいな、貴族の癖に黒い目をしてる!」
その言葉に、ガヤガヤした周りの音が少しボリュームを落とす。
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(き、貴族の癖にってなんだ…?)
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