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第一章・俺の価値
家畜
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アレから何度も意識を飛ばしながら、意識がある時間だけでも体感で数時間、俺は男達の欲を受け止めた。
ある程度の知識があるのか、俺が下から漏らす液を見て脱水にならないよう、律儀に水分補給の時間を設けながらの行為は、本当に、冗談抜きで一生、終わらないんじゃないかと思った。
俺に腰を振っていたリーダー格の男は、遅漏もいいところで、あんなに何時間も腰を振ったのに、意識を飛ばしている時のことは分からないが、最低でも3回しか射精しなかった。
そりゃあ、体力が持つはずだ。
依然として体は裸のまま。
この、地下なのか日光の光が入らない冷たい部屋の大きな柱に、腕は頭上に高く上げる状態で手錠と鎖で繋がれていた。
あの豆の効果か、力が入らなかった体はやっと、少しは動かせるようになったものの、逃げる心地には到底ならず、唯一自由が効く足を体の近くで丸め、足先を擦り合わせることしかできない。
高く拘束された腕は、血の巡りが悪いのか氷のように冷え切っていた。
何度もいうが、今の季節はきっと冬で、それなのにこんな状態で放置された俺は、屋敷を出たことを後悔し始める。
(寒い…帰りたい…帰りたい…ッ)
あんなに暇な数時間が、死ぬほど耐えられなかったのに、今ではその暇な時間が恋しくなる。
状況が変わると人は変わるんだと、己の体を使い再確認していた。
「昨日こいつを見た大勢の人間が、今頃噂話で無料の大宣伝だ」
嬉しそうに仲間と話すリーダー格の男は、用が済めば俺に興味はないのか、こっちを見向きもせず食事をしていた。
昨日の昼から何も食べておらず、しかもあんな風に体力を消耗した俺は、食欲は全くないのにも関わらず、数秒に一度腹が鳴る始末。
「なあ、細いしあの子、何か食わせないと死ぬんじゃないか?」
先程ここに帰ってきてから、俺の姿に驚きつつも今しがた説明を受け、リーダー格の男と一緒に食事をしていた、髪をワイルドに掻き上げた茶髪の男が、こちらを見てそう言う。
同じような立場にいるのか、タメ口を聞かれてもリーダー格の男が怒鳴ることはなかった。
「あいつダメだ、俺が行くと震えて飯が食えたような状態じゃねぇ」
「つっても、このまま放置して死んじゃあ勿体ない、もう逃げられねぇことは分かるだろうし、そろそろ服着せて体あっためさせてやろう、俺が行く」
席を立ち、こちらに来る茶髪の男。
やめとけやめとけと、呆れた様子のリーダー格の男を無視し、自分が食べていたパンを、湯気の出る暖かそうなシチューに浸しながらやってくる。白色をしたシチューなのに、匂いがトマトだ。
その髪色とメニューで、優しかったデュランを思い出してまた涙が出た。
「ほら、食えるか?」
俺の近くに、シチューを浸したパンを持ってくる茶髪の男。
お腹は空いて、死なない為に何か入れなくてはならないことを理解していても、恐怖で震える体は吐き気を催すだけで、おぇ、と体が反応するだけだった。
「ほらな、こんなになっても俺ら奴隷の食事は嫌みたいだ」
ハッ、と鼻で笑いながら
リーダー格の男が、先程の茶髪の男の提案を聞いてか大人しく毛布と、ロイクに借りたシャツを持ってくる。
「ああ、ありがとう」
「飯と体を温めることには折れてやるが、手錠を外すことは許さんぞ」
例を言いそれを受け取った男は、俺の拘束された腕を外し、丁寧にシャツを着せてくれた。
「おい!拘束を外すな!」
「分かってる!」
流石に温められてはいないシャツは肌に触れるたび冷たかったが、何もないよりはマシで、再び頭上で腕を拘束された後、前のボタンが閉められる頃には背中側から自分の体温が守られる感覚に安堵した。
下は裸のままだが、尻が冷たくないよう毛布を敷かれ、
「この毛布、あと一つないか?」
と言いながら、ねぇよ!とリーダー格の男から返事をされた茶髪の男は、自分の着ていた硬そうな、革の上着を俺の膝にかける。
これでよし、と呟いた後に、またパンを口に持ってきた。
男の優しさに体の緊張が解けたのか、口に近づけられたパンに、もう吐き気はしない。
食べられる、と思ったが
(こ、これで今俺がパンを食べて、リーダー格の男が気を悪くしたら…)
なんでそいつからのパンは受け取れて俺から渡すパンはダメなんだとか、声を荒げる男が容易に想像でき、どうしていいか分からなくなる。
「ほら、大丈夫、誰も怒らないから。」
俺の考えていることが分かったのか、そう言いながら再度、シチューを浸したパンを、今度は目前に持ってくるだけでなく、ちょんちょんと俺の唇に触れさせる。
「ッあ、」
乾燥した唇が潤う感覚と、このままだとシチューが、茶髪の男が貸してくれた服に落ちることを危惧して口を開ける。
「良い子だ」
そういうと、男はゆっくり、俺のペースに合わせて口に運んでくれる。
喉を通る温かい感覚と、内側から温められる心地に、物凄い安心感を覚えた。
「おい、時間だ」
しかし、後ろから茶髪の男に声をかけたリーダー格の男が、上から俺を見下ろすのがわかり、またも俺の体が震え始める。
食事の続行が不可能だと判断したらしい茶髪の男は、自分の袖でぐい、と俺の口元を拭いた後、リーダー格の男と消えていった。
「お前ら!あいつに触るなよ!」
そう、部下らしき男達に警告して。
ある程度の知識があるのか、俺が下から漏らす液を見て脱水にならないよう、律儀に水分補給の時間を設けながらの行為は、本当に、冗談抜きで一生、終わらないんじゃないかと思った。
俺に腰を振っていたリーダー格の男は、遅漏もいいところで、あんなに何時間も腰を振ったのに、意識を飛ばしている時のことは分からないが、最低でも3回しか射精しなかった。
そりゃあ、体力が持つはずだ。
依然として体は裸のまま。
この、地下なのか日光の光が入らない冷たい部屋の大きな柱に、腕は頭上に高く上げる状態で手錠と鎖で繋がれていた。
あの豆の効果か、力が入らなかった体はやっと、少しは動かせるようになったものの、逃げる心地には到底ならず、唯一自由が効く足を体の近くで丸め、足先を擦り合わせることしかできない。
高く拘束された腕は、血の巡りが悪いのか氷のように冷え切っていた。
何度もいうが、今の季節はきっと冬で、それなのにこんな状態で放置された俺は、屋敷を出たことを後悔し始める。
(寒い…帰りたい…帰りたい…ッ)
あんなに暇な数時間が、死ぬほど耐えられなかったのに、今ではその暇な時間が恋しくなる。
状況が変わると人は変わるんだと、己の体を使い再確認していた。
「昨日こいつを見た大勢の人間が、今頃噂話で無料の大宣伝だ」
嬉しそうに仲間と話すリーダー格の男は、用が済めば俺に興味はないのか、こっちを見向きもせず食事をしていた。
昨日の昼から何も食べておらず、しかもあんな風に体力を消耗した俺は、食欲は全くないのにも関わらず、数秒に一度腹が鳴る始末。
「なあ、細いしあの子、何か食わせないと死ぬんじゃないか?」
先程ここに帰ってきてから、俺の姿に驚きつつも今しがた説明を受け、リーダー格の男と一緒に食事をしていた、髪をワイルドに掻き上げた茶髪の男が、こちらを見てそう言う。
同じような立場にいるのか、タメ口を聞かれてもリーダー格の男が怒鳴ることはなかった。
「あいつダメだ、俺が行くと震えて飯が食えたような状態じゃねぇ」
「つっても、このまま放置して死んじゃあ勿体ない、もう逃げられねぇことは分かるだろうし、そろそろ服着せて体あっためさせてやろう、俺が行く」
席を立ち、こちらに来る茶髪の男。
やめとけやめとけと、呆れた様子のリーダー格の男を無視し、自分が食べていたパンを、湯気の出る暖かそうなシチューに浸しながらやってくる。白色をしたシチューなのに、匂いがトマトだ。
その髪色とメニューで、優しかったデュランを思い出してまた涙が出た。
「ほら、食えるか?」
俺の近くに、シチューを浸したパンを持ってくる茶髪の男。
お腹は空いて、死なない為に何か入れなくてはならないことを理解していても、恐怖で震える体は吐き気を催すだけで、おぇ、と体が反応するだけだった。
「ほらな、こんなになっても俺ら奴隷の食事は嫌みたいだ」
ハッ、と鼻で笑いながら
リーダー格の男が、先程の茶髪の男の提案を聞いてか大人しく毛布と、ロイクに借りたシャツを持ってくる。
「ああ、ありがとう」
「飯と体を温めることには折れてやるが、手錠を外すことは許さんぞ」
例を言いそれを受け取った男は、俺の拘束された腕を外し、丁寧にシャツを着せてくれた。
「おい!拘束を外すな!」
「分かってる!」
流石に温められてはいないシャツは肌に触れるたび冷たかったが、何もないよりはマシで、再び頭上で腕を拘束された後、前のボタンが閉められる頃には背中側から自分の体温が守られる感覚に安堵した。
下は裸のままだが、尻が冷たくないよう毛布を敷かれ、
「この毛布、あと一つないか?」
と言いながら、ねぇよ!とリーダー格の男から返事をされた茶髪の男は、自分の着ていた硬そうな、革の上着を俺の膝にかける。
これでよし、と呟いた後に、またパンを口に持ってきた。
男の優しさに体の緊張が解けたのか、口に近づけられたパンに、もう吐き気はしない。
食べられる、と思ったが
(こ、これで今俺がパンを食べて、リーダー格の男が気を悪くしたら…)
なんでそいつからのパンは受け取れて俺から渡すパンはダメなんだとか、声を荒げる男が容易に想像でき、どうしていいか分からなくなる。
「ほら、大丈夫、誰も怒らないから。」
俺の考えていることが分かったのか、そう言いながら再度、シチューを浸したパンを、今度は目前に持ってくるだけでなく、ちょんちょんと俺の唇に触れさせる。
「ッあ、」
乾燥した唇が潤う感覚と、このままだとシチューが、茶髪の男が貸してくれた服に落ちることを危惧して口を開ける。
「良い子だ」
そういうと、男はゆっくり、俺のペースに合わせて口に運んでくれる。
喉を通る温かい感覚と、内側から温められる心地に、物凄い安心感を覚えた。
「おい、時間だ」
しかし、後ろから茶髪の男に声をかけたリーダー格の男が、上から俺を見下ろすのがわかり、またも俺の体が震え始める。
食事の続行が不可能だと判断したらしい茶髪の男は、自分の袖でぐい、と俺の口元を拭いた後、リーダー格の男と消えていった。
「お前ら!あいつに触るなよ!」
そう、部下らしき男達に警告して。
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