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第一章・俺の価値
交渉
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あの後、1億2000万で例のズボンを落札した俺は、金とズボンの交換の日は明日だと言われ、ちゃちい引換券と共に城へと帰った。
酷い胃痛に顔を青くしながらも、兄様はいつもの体たらくはどこへやら、何やら作戦を考えていたようで、
「早く報告しろ!」
と、俺を怒る時間は無いようだった。
明日の午後3時に、今日オークションが行われた酒場に行って、酒を注文する時に
「トイレを借りたい、このままじゃズボンに大量のしっこを漏らしそうだ」
という合言葉を言えと言われたことを伝える。
俺の隣に座っていたレイモンドとアルバートは、そんな間抜けなセリフを言う俺を想像したのか、グフッと吹き出していた。
多方、貴族への恨みもあったんだろうそのセリフは、俺も兄様がこれを言うなんてことになれば爆笑していただろう。
(…明日これを言うのか…)
汚い字で書かれたメモを見て、重い気分になる。
「酒場なら都合がいい、その場所にお前らが先に行くんだ」
兄様はそう言って、俺が伝えた、オークションが行われた酒場に印をつけた地図を指で叩いている。
「筋肉野郎同士仲良くなって、情報を聞き出せ」
雑すぎる作戦に、自称、キウチの保護者だという初めて見る2人も、口をあんぐり開けていた。
(…自分ができることは他人もできると思い込む癖、やめた方がいいよなあ)
口を出せばお前がやれと殴られそうだったので、俺は一応黙っておく。
「そんなの無理ですよぉ~」
「もっと分かりやすくぅ~」
予想通り、狐の双子が間髪入れずに兄様の両端で頬擦りをしながら訂正した。
「な…!じゃあお前達が考えろ!」
またも予想通りの兄様の口答えに、笑いを堪えながら前を向く。
「ほらぁ、例えば同じ、魔法が使いにくい人種同士、油断しそうだからそこを狙えとかァ~」
「筋肉野郎限定で行われる商売とかもあるかもですよ~?」
「金払いのいい人間には、色々情報をくれるかと!」
そう言って、ねー!と顔を見合わせる双子。
確かにそうだ。
キウチで金を稼ごうとしているだろうアイツらは、きっと何かの商売を始める。
自分たちが制圧できるようにと、その客に魔法使いを含めないのは頷けた。
「ならその売買にこいつらが出向き、得意先になれと?」
「「そういうこと!」」
流石ルカ様~!と兄様を甘やかす双子。
(…大体お前らが考えた作戦だろ)
双子に囃し立てられ、まあな、と得意げな表情をした兄様は、じゃあその作戦で行く、と会議を切り上げた。
「では、私は父上に会いに行く」
そう言って兄様が席を立つ。
「え、父上?」
「そうだ。…キーチを奪還する為、武力行使に出ることもありえる」
そうなると父上に協力してもらうしかない、と言い残して、兄様は部屋を後にした。
(…行き当たりばったりの兄様が、事前に苦手な父上に話をしにいくなんて)
珍しいこともあるもんだと、キウチのことを思い出しながら俺も部屋に戻った。
酷い胃痛に顔を青くしながらも、兄様はいつもの体たらくはどこへやら、何やら作戦を考えていたようで、
「早く報告しろ!」
と、俺を怒る時間は無いようだった。
明日の午後3時に、今日オークションが行われた酒場に行って、酒を注文する時に
「トイレを借りたい、このままじゃズボンに大量のしっこを漏らしそうだ」
という合言葉を言えと言われたことを伝える。
俺の隣に座っていたレイモンドとアルバートは、そんな間抜けなセリフを言う俺を想像したのか、グフッと吹き出していた。
多方、貴族への恨みもあったんだろうそのセリフは、俺も兄様がこれを言うなんてことになれば爆笑していただろう。
(…明日これを言うのか…)
汚い字で書かれたメモを見て、重い気分になる。
「酒場なら都合がいい、その場所にお前らが先に行くんだ」
兄様はそう言って、俺が伝えた、オークションが行われた酒場に印をつけた地図を指で叩いている。
「筋肉野郎同士仲良くなって、情報を聞き出せ」
雑すぎる作戦に、自称、キウチの保護者だという初めて見る2人も、口をあんぐり開けていた。
(…自分ができることは他人もできると思い込む癖、やめた方がいいよなあ)
口を出せばお前がやれと殴られそうだったので、俺は一応黙っておく。
「そんなの無理ですよぉ~」
「もっと分かりやすくぅ~」
予想通り、狐の双子が間髪入れずに兄様の両端で頬擦りをしながら訂正した。
「な…!じゃあお前達が考えろ!」
またも予想通りの兄様の口答えに、笑いを堪えながら前を向く。
「ほらぁ、例えば同じ、魔法が使いにくい人種同士、油断しそうだからそこを狙えとかァ~」
「筋肉野郎限定で行われる商売とかもあるかもですよ~?」
「金払いのいい人間には、色々情報をくれるかと!」
そう言って、ねー!と顔を見合わせる双子。
確かにそうだ。
キウチで金を稼ごうとしているだろうアイツらは、きっと何かの商売を始める。
自分たちが制圧できるようにと、その客に魔法使いを含めないのは頷けた。
「ならその売買にこいつらが出向き、得意先になれと?」
「「そういうこと!」」
流石ルカ様~!と兄様を甘やかす双子。
(…大体お前らが考えた作戦だろ)
双子に囃し立てられ、まあな、と得意げな表情をした兄様は、じゃあその作戦で行く、と会議を切り上げた。
「では、私は父上に会いに行く」
そう言って兄様が席を立つ。
「え、父上?」
「そうだ。…キーチを奪還する為、武力行使に出ることもありえる」
そうなると父上に協力してもらうしかない、と言い残して、兄様は部屋を後にした。
(…行き当たりばったりの兄様が、事前に苦手な父上に話をしにいくなんて)
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