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第一章・俺の価値
ルカ様
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僕達がアルフレヒト家行きの馬車へ乗っていると、突然馬のヒヒンという鳴き声と共に馬車が停車した。
「ッな、なんだ?!」
隣に座っていたベアルが、驚いたような声をあげる。
僕も驚いて窓の外を見るが、賊に襲われたとかそう言うことではなさそうだ。
ギ、と乗り込んだ時と同じ扉が開く。
「この屋敷の近くを通ると、時々あるんですよねえ…多分結界です」
全く…と馬の操縦をしていた男が頭を掻く。
「あと500kmほどなんですが、歩くことはできますか…?」
人なら、少し嫌な感じはしますが全然通れるので、とベアルにお釣りを渡しながら言う。
僕とベアルは早速、馬車から降りて大きな屋敷へ向かった。
屋敷に着いたら門の呼び鈴を押して、この手紙を渡すんだ…先程、王子様の側近に渡された手紙を、ぎゅ、と握る。
「大丈夫、会えるさ」
ベアルも緊張しているだろうに、僕を安心させる為に笑顔で道を歩いていた。
屋敷にやっと着いて、僕達は深呼吸をする。
(…キーチ,無事でいますように…)
意を決して、呼び鈴を押そうとした時
「だから!私のキーチを誰が!どこへやったと聞いているんだ!」
と、門の奥、玄関前の庭で男が怒鳴る声がした。
(き、キーチだって!?)
ベアルと顔を見合わせて、門の呼び鈴を早急に鳴らす。
大きな音がすぐ近くの音を増強させるオブジェから鳴り響き、先程怒鳴っていた男がこちらへ歩いてくる。
後ろには、双子の狐がその男を食い止めようとしてズリズリと引っ張られていた。
「ッあ、あの男だ!」
僕は、ベアルに昨日みた男がアイツだと伝える。何!?と驚くベアルが落ち着く前に、目の前に白い髪を長く垂らした男が立っていた。
「お前…ッ、!」
男も、僕に気付いたらしくおでこに青筋を立てている。
「お前が私のキーチを攫ったのか!」
手に赤い魔力を溜めながら、今にでも僕達を殺しそうな勢いだ。
(…キーチを攫った…?)
白い髪の言動に、頭が混乱する。
ここにキーチはいないってこと…?
ベアルの方を向くと、俺と同じことに気付いたようで、目を見開いて固まっている。
「おい!聞いてるのか!」
イライラが最高潮に達したらしい男が、メラメラと熱を纏い始めたその瞬間、
「「ッルカ様!」」
と、後ろから二人分の声がした。
僕達が歩いてきたのと同じ道を、青色と黄色の髪の男が走ってくる。
「お、お前らは…!まさかアイツの仕業か…!」
犯人が分かったのか、ガン!と大きな音を立て門を開き、外に出てくるルカ様と呼ばれた男。
「おい!アイツは今どこにいる!」
「ッそ、それが…!大変なんです!」
それから2人は、今までに起こったことを全て僕達に話してくれた。
行きつけの店に、キーチを連れて行こうとしたらはぐれて、その上酷い状態の衣服を残して攫われたって…
あまりにも信じられない出来事に、僕は生きた心地がしなかった。
横を見れば、ルカ様と呼ばれた男も顔を手で抑えていた。
「…金なら用意する、父上に話そう」
そう言って、屋敷へ戻ろうとする男に、僕は焦った。
「そ、そんな事したらキーチの存在が…!」
バレる、そう言おうとした俺は、ブゥンと言った音と共に一瞬で拘束された。
「ッデュラン!!ッ、!」
焦ったベアルも同じように隣で拘束され、男はイラついた様子で叫んだ。
「そんなの私が一番よく分かっている!だが考えてみろ!巷ではきっと翌日には純血の話で持ちきりだ!」
馬鹿どもが、これだから筋肉野郎はとブツブツ言いながら、また屋敷に足を進めようとした男は、ひと拍遅れて立ち止まる。
「…そうか」
そう言ってまた、僕達に向き直すと
「君達が、潜入捜査をすればいい」
そう言って俺たちと、ついでに青と黄色の髪の毛の男達も浮かせ、屋敷へ歩いて行った。
「ッな、なんだ?!」
隣に座っていたベアルが、驚いたような声をあげる。
僕も驚いて窓の外を見るが、賊に襲われたとかそう言うことではなさそうだ。
ギ、と乗り込んだ時と同じ扉が開く。
「この屋敷の近くを通ると、時々あるんですよねえ…多分結界です」
全く…と馬の操縦をしていた男が頭を掻く。
「あと500kmほどなんですが、歩くことはできますか…?」
人なら、少し嫌な感じはしますが全然通れるので、とベアルにお釣りを渡しながら言う。
僕とベアルは早速、馬車から降りて大きな屋敷へ向かった。
屋敷に着いたら門の呼び鈴を押して、この手紙を渡すんだ…先程、王子様の側近に渡された手紙を、ぎゅ、と握る。
「大丈夫、会えるさ」
ベアルも緊張しているだろうに、僕を安心させる為に笑顔で道を歩いていた。
屋敷にやっと着いて、僕達は深呼吸をする。
(…キーチ,無事でいますように…)
意を決して、呼び鈴を押そうとした時
「だから!私のキーチを誰が!どこへやったと聞いているんだ!」
と、門の奥、玄関前の庭で男が怒鳴る声がした。
(き、キーチだって!?)
ベアルと顔を見合わせて、門の呼び鈴を早急に鳴らす。
大きな音がすぐ近くの音を増強させるオブジェから鳴り響き、先程怒鳴っていた男がこちらへ歩いてくる。
後ろには、双子の狐がその男を食い止めようとしてズリズリと引っ張られていた。
「ッあ、あの男だ!」
僕は、ベアルに昨日みた男がアイツだと伝える。何!?と驚くベアルが落ち着く前に、目の前に白い髪を長く垂らした男が立っていた。
「お前…ッ、!」
男も、僕に気付いたらしくおでこに青筋を立てている。
「お前が私のキーチを攫ったのか!」
手に赤い魔力を溜めながら、今にでも僕達を殺しそうな勢いだ。
(…キーチを攫った…?)
白い髪の言動に、頭が混乱する。
ここにキーチはいないってこと…?
ベアルの方を向くと、俺と同じことに気付いたようで、目を見開いて固まっている。
「おい!聞いてるのか!」
イライラが最高潮に達したらしい男が、メラメラと熱を纏い始めたその瞬間、
「「ッルカ様!」」
と、後ろから二人分の声がした。
僕達が歩いてきたのと同じ道を、青色と黄色の髪の男が走ってくる。
「お、お前らは…!まさかアイツの仕業か…!」
犯人が分かったのか、ガン!と大きな音を立て門を開き、外に出てくるルカ様と呼ばれた男。
「おい!アイツは今どこにいる!」
「ッそ、それが…!大変なんです!」
それから2人は、今までに起こったことを全て僕達に話してくれた。
行きつけの店に、キーチを連れて行こうとしたらはぐれて、その上酷い状態の衣服を残して攫われたって…
あまりにも信じられない出来事に、僕は生きた心地がしなかった。
横を見れば、ルカ様と呼ばれた男も顔を手で抑えていた。
「…金なら用意する、父上に話そう」
そう言って、屋敷へ戻ろうとする男に、僕は焦った。
「そ、そんな事したらキーチの存在が…!」
バレる、そう言おうとした俺は、ブゥンと言った音と共に一瞬で拘束された。
「ッデュラン!!ッ、!」
焦ったベアルも同じように隣で拘束され、男はイラついた様子で叫んだ。
「そんなの私が一番よく分かっている!だが考えてみろ!巷ではきっと翌日には純血の話で持ちきりだ!」
馬鹿どもが、これだから筋肉野郎はとブツブツ言いながら、また屋敷に足を進めようとした男は、ひと拍遅れて立ち止まる。
「…そうか」
そう言ってまた、僕達に向き直すと
「君達が、潜入捜査をすればいい」
そう言って俺たちと、ついでに青と黄色の髪の毛の男達も浮かせ、屋敷へ歩いて行った。
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