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第一章・俺の価値
看病
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ハ、と意識が浮上して、先ほどと同じ“B7”にいるのが分かった。
しかしさっきと違うのは、俺は少し生地が薄いがきちんと服を着ていて、上半身だけにかけられていたペラペラの毛布とは違い、分厚い毛布が2枚とその上にはダウンの布団がかけられていることだった。
少し硬めの枕を頭に感じながら、少し体を動かすと
「あ、起きたか?」
とクリフが隣に座っていた。
手を俺の顔の方に持ってきて、自分の体温が移り今まで気がつかなかった湿った布を、新しく絞った冷たいものに変えてくれる。
「…あの後意識を失って、酷い熱だってわかったんだ」
無理させてすまないと、俺の頭を撫でる。
「…何か栄養を摂った方がいいと思うんだが、コレ、飲めるか?」
そう言って、目の前で青色の試験管を見せられる。
昨日の昼、ルカ様に渡された認識阻害の薬の、頭が痛くなる匂いを思い出して、う、と声が出る。
「わかる、不味いよなコレ」
そう言いながら、きゅぽ、と栓を開け、自分でそれを嗅いだ後、やっぱり大人になっても苦手だと言って笑った。
「でも、固形物は多分戻すだろ?」
と、俺の上半身を起こしながら口元に持ってくる。しかし、予想していたビニールの匂いではなく、少し紫蘇、梅のような匂いがした。
(…これなら別に、まだいけるかも)
そう思った俺は
「…の、飲めます」
と、クリフに伝えた。
本当に?!とビックリしながら、試験管を俺の口に当てる。
「ゆっくりで良い」
そう言って、少しずつ中の液体を器用に俺の口へ入れた。
紫蘇ジュースみたいな風味のソレは、思っていた以上に飲みやすくて、スラスラと飲んだ後、またベッドに寝かせられる。
「偉いな、俺より偉い」
そう言ってまた、俺の頭を撫でた。
「…2日くらいは休ませていいとチャド…あのこわーい白髪のおっさんが言ってたんだが、少ないよな?」
可哀想にと、俺の腹をトントンしながら話しかけてくる。
「…まあ、君にとっては俺も悪者だよなあ」
ごめん、でも生活が…そう言い訳をしそうになった口を閉じて、また黙って俺の腹をトントンする。
(…悪いことをしてるけど、悪い奴ではない気がする)
そう思いながら、チャドと比べれば幾分かリラックスできる相手に、俺は瞼を閉じた。
「眠っていい、ここには誰も来ないから、俺も、何もしない」
安心させるようにそう言いながら、クリフも眠いのか、地面に座ったまま俺のベッドに頭を置く。
(…二日かあ)
2日でこの体調が回復するかは不安だったが、2日間は身の安全が保証されたのにホッとして、また眠りにつくことにした。
しかしさっきと違うのは、俺は少し生地が薄いがきちんと服を着ていて、上半身だけにかけられていたペラペラの毛布とは違い、分厚い毛布が2枚とその上にはダウンの布団がかけられていることだった。
少し硬めの枕を頭に感じながら、少し体を動かすと
「あ、起きたか?」
とクリフが隣に座っていた。
手を俺の顔の方に持ってきて、自分の体温が移り今まで気がつかなかった湿った布を、新しく絞った冷たいものに変えてくれる。
「…あの後意識を失って、酷い熱だってわかったんだ」
無理させてすまないと、俺の頭を撫でる。
「…何か栄養を摂った方がいいと思うんだが、コレ、飲めるか?」
そう言って、目の前で青色の試験管を見せられる。
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「わかる、不味いよなコレ」
そう言いながら、きゅぽ、と栓を開け、自分でそれを嗅いだ後、やっぱり大人になっても苦手だと言って笑った。
「でも、固形物は多分戻すだろ?」
と、俺の上半身を起こしながら口元に持ってくる。しかし、予想していたビニールの匂いではなく、少し紫蘇、梅のような匂いがした。
(…これなら別に、まだいけるかも)
そう思った俺は
「…の、飲めます」
と、クリフに伝えた。
本当に?!とビックリしながら、試験管を俺の口に当てる。
「ゆっくりで良い」
そう言って、少しずつ中の液体を器用に俺の口へ入れた。
紫蘇ジュースみたいな風味のソレは、思っていた以上に飲みやすくて、スラスラと飲んだ後、またベッドに寝かせられる。
「偉いな、俺より偉い」
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「眠っていい、ここには誰も来ないから、俺も、何もしない」
安心させるようにそう言いながら、クリフも眠いのか、地面に座ったまま俺のベッドに頭を置く。
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