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第一章・俺の価値
宗教
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あれから、いつキウチの情報が来るかわからないという理由で酒場近くに泊まるらしく、ベアルとデュランはそのままにして、俺は屋敷へと帰った。
「なんだ、その気持ち悪い話は」
先程聞いた、白髪の男の話を兄様に伝えると、あからさまに眉間に皺を寄せる。
「俺も分かんねえよ…ただ、その困っている親達の為に、国民は躍起になってるんだ」
ただ珍しいから欲しいとか、そんな単純な話ではない。
「そんなの、明らかに宗教ですよォ~」
「ルカ様もあの子のオチンチンを舐めたけど、なにも起きなかったもん~」
ねー!と、また狐が兄様の両端で顔を合わせて話している。
「…だよなあ」
俺も、キウチの血を吸ったりキスをしたり色々したが、何か体に特別な心地はしなかった。
「多方、何者かが純血の体液の価値を高めて、それを高く売ろうとしてるんだろう」
俺と同じ考えの兄様に頷きながら、チラ、とレイモンドとアルバートを見る。
何か言いたげな2人が気になった。
「…まあ、今は情報を待とうぜ」
そう言って、2人を連れて庭へ出た。
「「…………」」
2人は日頃の騒がしさはどこへやら、気まずそうに後ろをついてくる。
何やら重要な話が聞けそうな雰囲気に、人があまり来ない、遠くのガゼポへ足を進めた。
3人で石の、丸くなった長椅子へ円になって座り、口を開く。
「…なあ、何か心当たりはないか?」
2人は、気まずそうにしながら数秒、口を開けたり閉じたりする。
きちんと伝えようとしてくれているのか、深呼吸をして、口を開いた。
「…その、まずこれは差別とか、そんなんじゃないことを頭に置いて欲しいッス…」
出会った時のように、少し砕けた敬語を使うアルバート。
「…ああ、分かってる」
俺の返事に、また口を開いた。
「…昔、俺らのひいばあちゃん世代は、それはそれは差別がものすごい時代に産まれたんだ」
ひいばあちゃん…貴族の階級がほぼ純血の、魔法を使える人間だけになった世代だ。
「それで、…じ、自分の娘や息子はなるべく差別にあわないようにって、その…」
言い淀むアルバートに変わって、レイモンドが口を開く。
「…魔法使いを特殊な、魔法が使えないようにする呪具を使い拘束し、子を孕んだり孕ませたりしたんだ」
「ッこ、この呪具は貴族に不利なので、この話も、俺ら平民が反乱を企まないよう、文献などでは、きちんと残さないようにしたんだと思う…話しづらい内容だから、親から話されることもないし…」
俺は認知症になった優しい小さなばあちゃんが、私達は被害者だと泣き叫ぶのを聞いて知ったとアルバートが続けた。
「この話がどう繋がるかは分からない…これは俺の予想だが、もし宗教があるとすれば、この話を蒸し返して俺達混血の命は罪だとか、それを産んだ責任を意識させるような話と、純血の体液でそれが浄化されるとかなんとか、そんなシナリオなんじゃないか」
想像以上の酷い話に、俺は頭が痛くなる。
確かに俺も、俺達魔法が使える人間と、肉体強化に特化した人間が発現し別れた時から差別があったなら、どうしてその間に子供が生まれるのかと考えたことはあった。
しかし、俺が筋肉のある奴に惹かれ体を鍛えたように、きっと愛のためだと信じて疑わなかった。
「…そうか、」
話してくれてありがとう、そう言って顔を手で覆う。
国民を守りたい、だけど知らないことがありすぎる。
俺達貴族と国民じゃ、見ている世界が違いすぎた。
明らかに落ち込む俺に、
「おい、こんなの昔話だ、今は混血同士で結婚するし、お前を呪具で拘束する者は誰もいない」
そんな呪具、お前だって見たことないだろうと、少しズレた励ましをするレイモンドに、いつものようにアルバートが頭を叩く。
「…ありがとう」
笑いながら、この話は、2人がみんなに話すまで俺の中だけに留めておくようにした。
「なんだ、その気持ち悪い話は」
先程聞いた、白髪の男の話を兄様に伝えると、あからさまに眉間に皺を寄せる。
「俺も分かんねえよ…ただ、その困っている親達の為に、国民は躍起になってるんだ」
ただ珍しいから欲しいとか、そんな単純な話ではない。
「そんなの、明らかに宗教ですよォ~」
「ルカ様もあの子のオチンチンを舐めたけど、なにも起きなかったもん~」
ねー!と、また狐が兄様の両端で顔を合わせて話している。
「…だよなあ」
俺も、キウチの血を吸ったりキスをしたり色々したが、何か体に特別な心地はしなかった。
「多方、何者かが純血の体液の価値を高めて、それを高く売ろうとしてるんだろう」
俺と同じ考えの兄様に頷きながら、チラ、とレイモンドとアルバートを見る。
何か言いたげな2人が気になった。
「…まあ、今は情報を待とうぜ」
そう言って、2人を連れて庭へ出た。
「「…………」」
2人は日頃の騒がしさはどこへやら、気まずそうに後ろをついてくる。
何やら重要な話が聞けそうな雰囲気に、人があまり来ない、遠くのガゼポへ足を進めた。
3人で石の、丸くなった長椅子へ円になって座り、口を開く。
「…なあ、何か心当たりはないか?」
2人は、気まずそうにしながら数秒、口を開けたり閉じたりする。
きちんと伝えようとしてくれているのか、深呼吸をして、口を開いた。
「…その、まずこれは差別とか、そんなんじゃないことを頭に置いて欲しいッス…」
出会った時のように、少し砕けた敬語を使うアルバート。
「…ああ、分かってる」
俺の返事に、また口を開いた。
「…昔、俺らのひいばあちゃん世代は、それはそれは差別がものすごい時代に産まれたんだ」
ひいばあちゃん…貴族の階級がほぼ純血の、魔法を使える人間だけになった世代だ。
「それで、…じ、自分の娘や息子はなるべく差別にあわないようにって、その…」
言い淀むアルバートに変わって、レイモンドが口を開く。
「…魔法使いを特殊な、魔法が使えないようにする呪具を使い拘束し、子を孕んだり孕ませたりしたんだ」
「ッこ、この呪具は貴族に不利なので、この話も、俺ら平民が反乱を企まないよう、文献などでは、きちんと残さないようにしたんだと思う…話しづらい内容だから、親から話されることもないし…」
俺は認知症になった優しい小さなばあちゃんが、私達は被害者だと泣き叫ぶのを聞いて知ったとアルバートが続けた。
「この話がどう繋がるかは分からない…これは俺の予想だが、もし宗教があるとすれば、この話を蒸し返して俺達混血の命は罪だとか、それを産んだ責任を意識させるような話と、純血の体液でそれが浄化されるとかなんとか、そんなシナリオなんじゃないか」
想像以上の酷い話に、俺は頭が痛くなる。
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しかし、俺が筋肉のある奴に惹かれ体を鍛えたように、きっと愛のためだと信じて疑わなかった。
「…そうか、」
話してくれてありがとう、そう言って顔を手で覆う。
国民を守りたい、だけど知らないことがありすぎる。
俺達貴族と国民じゃ、見ている世界が違いすぎた。
明らかに落ち込む俺に、
「おい、こんなの昔話だ、今は混血同士で結婚するし、お前を呪具で拘束する者は誰もいない」
そんな呪具、お前だって見たことないだろうと、少しズレた励ましをするレイモンドに、いつものようにアルバートが頭を叩く。
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笑いながら、この話は、2人がみんなに話すまで俺の中だけに留めておくようにした。
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