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第7章 神を探せ
第3話 リューク絶体絶命
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「おいみんな来てみろっ、あっちに温泉があるぜ!」
「えっ、ホント!?」
ユフィオの言葉にみんなが驚く。
少し遅い夕食をとったあと、明日に備えて早めに就寝しようとしたところ、何気なく周辺を見回していたユフィオが温泉を見つけて叫んだ。
ユフィオが示す方向を見てみると、少し先の場所から湯気が出ているのが見える。
『スマホ』のマップで確認してみると、確かに小さな池のようなものがあった。
『スマホ』のマップでは水の温度までは分からないため、マップ上ではただの池にしか見えないが、どうやら温泉で間違いないようだ。
ユフィオを先頭に、女性陣が全員温泉のほうに駆けていく。
「……ちょうどいい温度だわ! 水も綺麗だし、ちょっと浸かってみたいわね」
手を入れて湯加減を確認したジーナが、興奮しながら声を上げた。
ほかのみんなも同意のようで、うんうんと嬉しそうに頷いている。
えっ、もしかして温泉に入るつもりなの!?
「ちょっと待てよみんな、明日は『迷いの森』に到着するっていうのに、ここで温泉なんかに入ってる場合じゃ……」
「なんで温泉に入っちゃダメなの? お湯で体を温めれば、疲れもスッキリ取れると思うけど?」
「えっ……いや、その……」
ジーナに反論されて、オレは少々返答に困ってしまう。
確かに、温泉に入ったせいで明日まずい状況になるなんてことはないだろうけど、浮かれた気分が危険を呼びそうな気がして……
さっき、明日のために気を引き締めようと思ったばかりだからな。
とはいえ、疲れを充分に取るためにも、温泉でくつろぐのは悪いことじゃないかもしれない。
『スマホ』の探知でもこの近辺にモンスターはいないし、まあ温泉くらいは問題ないか。
「うーん分かった。じゃあみんな温泉に入ってきなよ。一応、怪我などしないように充分注意してくれ」
「リュークも入れよ! すぐ隣にもう1つ温泉があるから、お前はそっちに入れって!」
「ええっ!? いや、オレはいいよ。ここで待ってる」
ユフィオにオレも入るように勧められたが、特に入りたいとは思わない。
服を脱ぐのが面倒くさいし。
なので、オレは遠慮したかったのだが……
「リューク、あなたも入ったほうがいいわ。この辺りは暖かくてみんな汗をかいたし、あなただけ入らないと、汗臭さが目立つわよ」
少し呆れたような仕草をしながら、キスティーが忠告してきた。
オレって臭いかな……?
体臭を軽く嗅いでみると、まあこの程度はしょうがないよなってくらいの匂いはしている。
うーん……一緒に馬車に乗るし、オレも汗を流しておいたほうがいいのか。
「分かった。オレも温泉で汚れを落としておくよ」
「よっしゃ、じゃあみんなで温泉だ!」
ユフィオのかけ声で、オレたちは温泉に入る準備をした。
☆
女性陣が入る温泉から少し離れた場所に、オレが入る温泉はあった。
2つの温泉の間には高さ5メートルほどの岩山があり、それが上手い具合にちょうど視界を遮っていて、お互いの姿が見えないような状態だ。
これなら女性陣も安心して温泉に浸かれるだろう。
「覗くなよ、リューク」
「はいはい、もちろん了解だ」
岩山の向こうから聞こえてくるユフィオの声に、オレは適当に相槌を打つ。
そういや、前にもこんなやり取りしたっけ。
オレは覗きなんて行為をするつもりはないが、暴れん坊な彼女たちだけに、万が一ということもある。
彼女たちが勝手にこっちに来ないよう、侵入禁止の結界をこの温泉の周囲に張っておいた。
これで余計なことを気にせず、安心して温泉を楽しむことができる。
オレは装備を外したあと服を脱ぎ、そのまま温泉に足から入る。
「おお~っ、入るの面倒だと思ったけど、やっぱ温泉はいいもんだなあ」
大自然に囲まれながら、のんびり湯に浸かる……これほど幸せな時間なんてそうはない。
世界が大変な状況ではあるが、今この瞬間くらい、至福のひとときを満喫してもバチは当たらないだろう。
お湯で顔を洗うと、生き返ったような気持ちよさを感じた。
岩山の向こうからも、女性陣の楽しそうな話し声が聞こえてくる。
そんな感じでくつろいでいると、ふと向こう側が静かになっていることに気付いた。
ひょっとして、みんな温泉から出てしまったんだろうか。あれ、もうそんなに時間経った?
温泉が気持ちよくて、オレもうっかり長湯をしちゃってるのかもしれない。
(そろそろ出るか……みんなよりも温泉を楽しんじゃったかもな)
そう思いながら腰を上げようとすると、水中で何者かにオレの腰を掴まれる。
なっ、まさかモンスターか!?
オレに探知されずに接近できるなんて、ただ者じゃないぞ!?
いったい何が起こったのかと見てみると、オレの腰にレムがしがみ付いていた……素っ裸で。
「おおおおおおまっ、何をして……!?」
そういや、ゴーレムであるレムは探知しづらい存在だった!
しかし、侵入禁止の結界を張ってあったはずなのに、どこから入ってきたんだ!?
「皆さん、大丈夫です! 穴は繋がってましたよ!」
「あ、穴? 穴って何っ?」
突然の出来事にオレがパニックになっていると、水中から続々と女性陣が現れたのだった。
「でかしたレム! やっぱり推測通りだぜ、多分温泉同士が水中で繋がってるってな!」
「結界が張ってあったからリュークのところに行くのは諦めてたけど、こんな抜け道があったなんてツイてるわ! 神様に感謝しなくちゃ」
「結界張ったことで油断してたでしょリューク。アタシたちをナメちゃダメよ!」
水面から姿を現したのは、ユフィオ、キスティー、ジーナだった。
もちろん素っ裸の状態だ。
もしかして、岩山の下に2つの温泉を繋ぐ通路があったのか!?
それを利用して、彼女たちは結界をくぐってこっち側に入ってきたということか!
「お、お前たち、さっきは覗くななんて言ってたくせに、自分たちが来るなんてどういうことだ!?」
「いや、こっそり覗かれるのはシャクだが、あーしたちが来る分には問題ないってことだぜ!」
いつのまにかサクヤまでやってきて、全裸を惜しげもなく晒す。
「おまっ、おまっ、みんななんで隠さないんだっ!? ちょーまって、おふぉっ」
オレはあたふたしながら目を瞑る。
とはいうものの、やっぱり男のサガというか、無意識に彼女たちの裸体をバッチリ見てしまったが……
「隠すも何も、アンタには全裸を見られてるからね。今さらだわ」
ジーナが開き直ったかのような発言をする。
確かに以前裸を見ちゃったけど、だからといって隠さないのはおかしいでしょ!
女性としての恥じらいを持ってくれよ!
オレは温泉でかいた汗以上に全身から汗を噴き出し、必死にこの場から逃げ出そうとした。
しかし、レムが腰にしがみついているうえ、ほかの4人もオレの逃げ場を塞いでいる。
裸の女性たちに至近距離で囲まれ、オレはもうどうしていいか分からなかった。
「王女様っ、グリムラーゼ王女様っ、みんながおかしくなってます、助けてくださいーっ!」
こうなっては、頼りになるのはグリムラーゼ王女しかいない。
こんな状況を見たら、貞淑な王女なら厳しく叱ってくれるはず。
岩山の向こうにいるであろうグリムラーゼ王女に助けを求めると、返事は意外なところから来た。
「やっと通れましたわ! 泳ぎは苦手なので、途中で溺れるかと思いました。さあリューク様、わたくしの体を全て見てくださいませ」
王女も来ちゃったーっ! しかも、もちろん全裸で。
これは見るわけにはいかない、絶対に見るわけにはいかないぞ。
見たら王様に殺される………………………………くそっ、見ちゃった。
だってちらりと目に映った体がめっちゃ綺麗すぎるから!
うっ……鼻の奥が熱くなって血が出そう……
ああヤバイ、なんかもう恥ずかしすぎて思考が停止してる。
こういう場合、どんなスキルを使えば解決できるんだ?
「み、みんな聞いてくれ! オレにはアニスがいるんだ。だからこんなことはやめ……」
「そんなの知ってるって。だからあたいたちも考えたんだ。『剣姫』とリュークが結婚する前に、先に既成事実を作っちゃえばいいんだって!」
「……………………なんだってええええええええっ!?」
彼女たちが何をしようとしているか理解して、オレは思わず大声を上げてしまう。
「幸い『剣姫』アニスはここにいないし、とにかく先にリュークと結ばれちゃえば、アタシたちの勝ちってことよ」
ジーナがにんまりと不敵な笑みを浮かべて言う。
そんなことでアニスに勝ったことにはならないでしょ!
みんなもっとよく考えて!
とにかく、このままここにいたら危険だ。
多分あとでアニスに殺される。
オレは腰にしがみついているレムを力ずくで引き剥がし、逃げ道を塞いでいる彼女たちの包囲網を強引に突破しようとした。
すると……
「逃がさねえぞっ!」
「はぶっ!!!!!!!」
サクヤが素早く回り込みながらジャンプし、オレの顔面目掛けてヒップドロップしてきたのだった。
普段なら難なく避けられるが、惜しげもなく胸を晒したサクヤが上空から迫ってくるのを見て、思わず目を閉じてしまい、そのまままともに喰らってしまう。
ななな何考えてんだお前~っ!
あまりのことにオレが怯んだところ、ジーナたちや王女まで無理やりしがみついてきた。
まてっ、胸が、胸があたるってばあっ!
オレはわけも分からないまま、女性たちに全身をもみくちゃにされる。
みんなを一度冷静にさせたいが、とはいえ殴るわけにもいかないし、有効な手段を思いつかない。
それにしても、いくらなんでも積極的すぎる。どうなってんだ!?
「予想通りです。思案した結果、腰抜けのマスターならこうすれば逃げられないと判断しました」
レムの悪知恵かあっ!
ぐぬぬっ……だが女性に対して強気に出られないオレの性格を見抜いてる。
とりあえず、この状況をどうにかしなくてはと思い、オレは『身体硬化』を発動してみた。
……全然意味がなかった。
ああよく考えろオレ! なんかもう自分が情けなくて涙が出てきたぞ。
「マスター、ここまで来たら覚悟を決めてください」
「そうだぜリューク! 据え膳食わぬはなんとやら。これ以上女に恥をかかせるもんじゃないぜ」
レムとサクヤが、勝ち誇った表情でそう告げる。
ヤバイ、これ以上はもう……
「リューク!」
「リューク!」
「リューク!」
「リューク!」
「マスター!」
「リューク様!」
「ああああみんな後ろを向いて温泉から出るんだ!」
「えっ!? ちょっ、体が勝手に……!」
全員驚きの声を上げるとともに、回れ右して温泉から上がる。
オレが『魔王の囁き』を発動して命令したからだ。
ちなみに、レムはゴーレムなので毒や麻痺、精神汚染などあらゆる状態異常が無効だが、『魔王の囁き』は精神汚染ではなく強制命令効果なのでレムにも効く。
パニックになっていたとはいえ、こんな簡単なことに気付かなかったなんて……
もしも近くに敵がいて、今の隙を突かれていたら、結構ヤバかったかもしれない。
オレもまだまだ未熟ってことか。
「全員そのままうつぶせになって眠るんだ」
「待って、そんな命令ずる……ぃ…………」
オレの言葉を聞いて、女性陣は裸のまま地面にうつぶせになったあと、寝息を立て始める。
服を着せてから眠らせたかったところだが、モタモタしてると思いもよらない事態が起こりそうなんで、速やかに眠ってもらった。
申し訳ないが、このまま大人しく夜を過ごしてもらおう。
裸でも気温は寒くないが、一応彼女たちには毛布をかけたあと、暖かい結界を張ってあげた。
まったく、アニスがいないと思って無茶するんだから……
明日からが本番って注意したのに、この先が本当に思いやられるところだ。
「はああ……疲れた」
オレは独りごちながら温泉をあとにした。
「えっ、ホント!?」
ユフィオの言葉にみんなが驚く。
少し遅い夕食をとったあと、明日に備えて早めに就寝しようとしたところ、何気なく周辺を見回していたユフィオが温泉を見つけて叫んだ。
ユフィオが示す方向を見てみると、少し先の場所から湯気が出ているのが見える。
『スマホ』のマップで確認してみると、確かに小さな池のようなものがあった。
『スマホ』のマップでは水の温度までは分からないため、マップ上ではただの池にしか見えないが、どうやら温泉で間違いないようだ。
ユフィオを先頭に、女性陣が全員温泉のほうに駆けていく。
「……ちょうどいい温度だわ! 水も綺麗だし、ちょっと浸かってみたいわね」
手を入れて湯加減を確認したジーナが、興奮しながら声を上げた。
ほかのみんなも同意のようで、うんうんと嬉しそうに頷いている。
えっ、もしかして温泉に入るつもりなの!?
「ちょっと待てよみんな、明日は『迷いの森』に到着するっていうのに、ここで温泉なんかに入ってる場合じゃ……」
「なんで温泉に入っちゃダメなの? お湯で体を温めれば、疲れもスッキリ取れると思うけど?」
「えっ……いや、その……」
ジーナに反論されて、オレは少々返答に困ってしまう。
確かに、温泉に入ったせいで明日まずい状況になるなんてことはないだろうけど、浮かれた気分が危険を呼びそうな気がして……
さっき、明日のために気を引き締めようと思ったばかりだからな。
とはいえ、疲れを充分に取るためにも、温泉でくつろぐのは悪いことじゃないかもしれない。
『スマホ』の探知でもこの近辺にモンスターはいないし、まあ温泉くらいは問題ないか。
「うーん分かった。じゃあみんな温泉に入ってきなよ。一応、怪我などしないように充分注意してくれ」
「リュークも入れよ! すぐ隣にもう1つ温泉があるから、お前はそっちに入れって!」
「ええっ!? いや、オレはいいよ。ここで待ってる」
ユフィオにオレも入るように勧められたが、特に入りたいとは思わない。
服を脱ぐのが面倒くさいし。
なので、オレは遠慮したかったのだが……
「リューク、あなたも入ったほうがいいわ。この辺りは暖かくてみんな汗をかいたし、あなただけ入らないと、汗臭さが目立つわよ」
少し呆れたような仕草をしながら、キスティーが忠告してきた。
オレって臭いかな……?
体臭を軽く嗅いでみると、まあこの程度はしょうがないよなってくらいの匂いはしている。
うーん……一緒に馬車に乗るし、オレも汗を流しておいたほうがいいのか。
「分かった。オレも温泉で汚れを落としておくよ」
「よっしゃ、じゃあみんなで温泉だ!」
ユフィオのかけ声で、オレたちは温泉に入る準備をした。
☆
女性陣が入る温泉から少し離れた場所に、オレが入る温泉はあった。
2つの温泉の間には高さ5メートルほどの岩山があり、それが上手い具合にちょうど視界を遮っていて、お互いの姿が見えないような状態だ。
これなら女性陣も安心して温泉に浸かれるだろう。
「覗くなよ、リューク」
「はいはい、もちろん了解だ」
岩山の向こうから聞こえてくるユフィオの声に、オレは適当に相槌を打つ。
そういや、前にもこんなやり取りしたっけ。
オレは覗きなんて行為をするつもりはないが、暴れん坊な彼女たちだけに、万が一ということもある。
彼女たちが勝手にこっちに来ないよう、侵入禁止の結界をこの温泉の周囲に張っておいた。
これで余計なことを気にせず、安心して温泉を楽しむことができる。
オレは装備を外したあと服を脱ぎ、そのまま温泉に足から入る。
「おお~っ、入るの面倒だと思ったけど、やっぱ温泉はいいもんだなあ」
大自然に囲まれながら、のんびり湯に浸かる……これほど幸せな時間なんてそうはない。
世界が大変な状況ではあるが、今この瞬間くらい、至福のひとときを満喫してもバチは当たらないだろう。
お湯で顔を洗うと、生き返ったような気持ちよさを感じた。
岩山の向こうからも、女性陣の楽しそうな話し声が聞こえてくる。
そんな感じでくつろいでいると、ふと向こう側が静かになっていることに気付いた。
ひょっとして、みんな温泉から出てしまったんだろうか。あれ、もうそんなに時間経った?
温泉が気持ちよくて、オレもうっかり長湯をしちゃってるのかもしれない。
(そろそろ出るか……みんなよりも温泉を楽しんじゃったかもな)
そう思いながら腰を上げようとすると、水中で何者かにオレの腰を掴まれる。
なっ、まさかモンスターか!?
オレに探知されずに接近できるなんて、ただ者じゃないぞ!?
いったい何が起こったのかと見てみると、オレの腰にレムがしがみ付いていた……素っ裸で。
「おおおおおおまっ、何をして……!?」
そういや、ゴーレムであるレムは探知しづらい存在だった!
しかし、侵入禁止の結界を張ってあったはずなのに、どこから入ってきたんだ!?
「皆さん、大丈夫です! 穴は繋がってましたよ!」
「あ、穴? 穴って何っ?」
突然の出来事にオレがパニックになっていると、水中から続々と女性陣が現れたのだった。
「でかしたレム! やっぱり推測通りだぜ、多分温泉同士が水中で繋がってるってな!」
「結界が張ってあったからリュークのところに行くのは諦めてたけど、こんな抜け道があったなんてツイてるわ! 神様に感謝しなくちゃ」
「結界張ったことで油断してたでしょリューク。アタシたちをナメちゃダメよ!」
水面から姿を現したのは、ユフィオ、キスティー、ジーナだった。
もちろん素っ裸の状態だ。
もしかして、岩山の下に2つの温泉を繋ぐ通路があったのか!?
それを利用して、彼女たちは結界をくぐってこっち側に入ってきたということか!
「お、お前たち、さっきは覗くななんて言ってたくせに、自分たちが来るなんてどういうことだ!?」
「いや、こっそり覗かれるのはシャクだが、あーしたちが来る分には問題ないってことだぜ!」
いつのまにかサクヤまでやってきて、全裸を惜しげもなく晒す。
「おまっ、おまっ、みんななんで隠さないんだっ!? ちょーまって、おふぉっ」
オレはあたふたしながら目を瞑る。
とはいうものの、やっぱり男のサガというか、無意識に彼女たちの裸体をバッチリ見てしまったが……
「隠すも何も、アンタには全裸を見られてるからね。今さらだわ」
ジーナが開き直ったかのような発言をする。
確かに以前裸を見ちゃったけど、だからといって隠さないのはおかしいでしょ!
女性としての恥じらいを持ってくれよ!
オレは温泉でかいた汗以上に全身から汗を噴き出し、必死にこの場から逃げ出そうとした。
しかし、レムが腰にしがみついているうえ、ほかの4人もオレの逃げ場を塞いでいる。
裸の女性たちに至近距離で囲まれ、オレはもうどうしていいか分からなかった。
「王女様っ、グリムラーゼ王女様っ、みんながおかしくなってます、助けてくださいーっ!」
こうなっては、頼りになるのはグリムラーゼ王女しかいない。
こんな状況を見たら、貞淑な王女なら厳しく叱ってくれるはず。
岩山の向こうにいるであろうグリムラーゼ王女に助けを求めると、返事は意外なところから来た。
「やっと通れましたわ! 泳ぎは苦手なので、途中で溺れるかと思いました。さあリューク様、わたくしの体を全て見てくださいませ」
王女も来ちゃったーっ! しかも、もちろん全裸で。
これは見るわけにはいかない、絶対に見るわけにはいかないぞ。
見たら王様に殺される………………………………くそっ、見ちゃった。
だってちらりと目に映った体がめっちゃ綺麗すぎるから!
うっ……鼻の奥が熱くなって血が出そう……
ああヤバイ、なんかもう恥ずかしすぎて思考が停止してる。
こういう場合、どんなスキルを使えば解決できるんだ?
「み、みんな聞いてくれ! オレにはアニスがいるんだ。だからこんなことはやめ……」
「そんなの知ってるって。だからあたいたちも考えたんだ。『剣姫』とリュークが結婚する前に、先に既成事実を作っちゃえばいいんだって!」
「……………………なんだってええええええええっ!?」
彼女たちが何をしようとしているか理解して、オレは思わず大声を上げてしまう。
「幸い『剣姫』アニスはここにいないし、とにかく先にリュークと結ばれちゃえば、アタシたちの勝ちってことよ」
ジーナがにんまりと不敵な笑みを浮かべて言う。
そんなことでアニスに勝ったことにはならないでしょ!
みんなもっとよく考えて!
とにかく、このままここにいたら危険だ。
多分あとでアニスに殺される。
オレは腰にしがみついているレムを力ずくで引き剥がし、逃げ道を塞いでいる彼女たちの包囲網を強引に突破しようとした。
すると……
「逃がさねえぞっ!」
「はぶっ!!!!!!!」
サクヤが素早く回り込みながらジャンプし、オレの顔面目掛けてヒップドロップしてきたのだった。
普段なら難なく避けられるが、惜しげもなく胸を晒したサクヤが上空から迫ってくるのを見て、思わず目を閉じてしまい、そのまままともに喰らってしまう。
ななな何考えてんだお前~っ!
あまりのことにオレが怯んだところ、ジーナたちや王女まで無理やりしがみついてきた。
まてっ、胸が、胸があたるってばあっ!
オレはわけも分からないまま、女性たちに全身をもみくちゃにされる。
みんなを一度冷静にさせたいが、とはいえ殴るわけにもいかないし、有効な手段を思いつかない。
それにしても、いくらなんでも積極的すぎる。どうなってんだ!?
「予想通りです。思案した結果、腰抜けのマスターならこうすれば逃げられないと判断しました」
レムの悪知恵かあっ!
ぐぬぬっ……だが女性に対して強気に出られないオレの性格を見抜いてる。
とりあえず、この状況をどうにかしなくてはと思い、オレは『身体硬化』を発動してみた。
……全然意味がなかった。
ああよく考えろオレ! なんかもう自分が情けなくて涙が出てきたぞ。
「マスター、ここまで来たら覚悟を決めてください」
「そうだぜリューク! 据え膳食わぬはなんとやら。これ以上女に恥をかかせるもんじゃないぜ」
レムとサクヤが、勝ち誇った表情でそう告げる。
ヤバイ、これ以上はもう……
「リューク!」
「リューク!」
「リューク!」
「リューク!」
「マスター!」
「リューク様!」
「ああああみんな後ろを向いて温泉から出るんだ!」
「えっ!? ちょっ、体が勝手に……!」
全員驚きの声を上げるとともに、回れ右して温泉から上がる。
オレが『魔王の囁き』を発動して命令したからだ。
ちなみに、レムはゴーレムなので毒や麻痺、精神汚染などあらゆる状態異常が無効だが、『魔王の囁き』は精神汚染ではなく強制命令効果なのでレムにも効く。
パニックになっていたとはいえ、こんな簡単なことに気付かなかったなんて……
もしも近くに敵がいて、今の隙を突かれていたら、結構ヤバかったかもしれない。
オレもまだまだ未熟ってことか。
「全員そのままうつぶせになって眠るんだ」
「待って、そんな命令ずる……ぃ…………」
オレの言葉を聞いて、女性陣は裸のまま地面にうつぶせになったあと、寝息を立て始める。
服を着せてから眠らせたかったところだが、モタモタしてると思いもよらない事態が起こりそうなんで、速やかに眠ってもらった。
申し訳ないが、このまま大人しく夜を過ごしてもらおう。
裸でも気温は寒くないが、一応彼女たちには毛布をかけたあと、暖かい結界を張ってあげた。
まったく、アニスがいないと思って無茶するんだから……
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なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…?
2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。
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