勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる

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3巻

3-1

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 第一章 迷宮の調査隊


 1.銀髪の美少女


 幼少時に辺境の侯爵ゲスニクに引き取られ、洗脳されていいようにこき使われていたオレだが、エクストラランクギフト『スマホ』を授かったことで人生が一変した。
『スマホ』にはSSランクギフトを超える最強の能力があったのだ。
 侯爵家を勘当かんどうされたあと冒険者になったオレは、絶体絶命のところを天才剣士アニスに救われる。その恩返しをするため、オレは『スマホ』の力を借りながら必死に自分を鍛え上げた。
 グングンと成長したオレは、信頼できる仲間ジーナ、ユフィオ、キスティーと出会い、力を合わせることでアルマカイン王国のグリムラーゼ王女を救うことができた。その流れで王都に行くことになり、毒に冒されたアルマカイン国王クラヴィス陛下の命を救うため、最強忍び軍『天狼七部衆てんろうしちぶしゅう』とともに解毒剤の素材探しに向かう。
 苦難を乗り越え、クラヴィス陛下の命を無事救ったオレたちだが、同じ頃ゲスニク領にある迷宮ダンジョンで何かの事態が起こり、アニスが窮地に陥っていることを知る。
 アニスを救うため、オレはただ一人故郷の街に急ぐのだった。


「ふーっ、やっと着いたぜ。懐かしの我が故郷ってか」

 オレは馬を走らせながら、遠方から徐々に接近してくるゲスニク領の外壁を眺め、思わず言葉を漏らした。
 この近くにあるダンジョンになんらかの異変が起こり、アニスの消息が分からなくなっていることを知って、オレは慌ててアルマカイン王都を離れてこのゲスニクの街に向かった。
 昨夜から一晩中馬を走らせ、昼過ぎの今、ようやく帰り着いたところだ。

「お前もよく頑張ってくれたな、アレイオン」
「ブヒヒヒーン!(なぁに、こんなの朝飯前のことだ)」

 アレイオンは、アルマカイン王国最強の騎士、ゾンダール将軍からもらった馬の名前だ。馬車なら四日はかかる距離を、アレイオンは一日かからずに走り抜いた。さすがアルマカイン軍馬最速というだけはある。
 実はもっと早く到着することも可能だったが、無理しすぎてアレイオンが壊れたら元も子もないので、しっかり休憩を入れながら走らせた。
 アレイオン自身は、疲れてないから休みなどいらないって言ってたんだけどな。
 ちなみに、『アレイオン』というのは伝説の名馬の名前だ。軍では『ダニエル』と呼ばれていたらしいが、オレが『スマホ』の翻訳機能で聞いてみたら、本当の名前は『アレイオン』だと言ってきた。
 多分コイツが勝手に名乗っているだけな気がするが、下手にツッコんでヘソを曲げられても困るから『アレイオン』と呼んでやってる。

「よしアレイオン、最後のもうひと踏ん張りだ!」
「ブヒヒーン!」

 アレイオンの力強いいななきを聞きながら、オレは通行門目掛けて疾走させた。


 門番たちは久々に帰ってきたオレの姿を見て驚いていたが、特に拒絶されるようなこともなく、無事街に入ることができた。
 場合によっては面倒な展開になることも覚悟していたので、少々拍子抜けしたくらいだ。
 まあ別に、オレはこの街で何も問題とか起こしてないから、出入りできるのは当然と言えば当然なんだがな。
 そのまま真っ先に、オレは冒険者ギルドへと向かう。
 通い慣れた建物に到着し、その重い扉を開けて中に入ると、部屋の中央に三十人ほどの冒険者たちが集まっていた。
 着けているランクプレートを確認すると、全員がAランク以上の実力者で、オレが見たこともないSランクたちも五人ほどいる。オレが王都に行っている間にこの地に来たんだろう。
 その冒険者たちの前には、ギルド長のフォーレントと、そして身なりの良い中年男性が立っていた。

「お……お前はリューク!?」

 フォーレントがオレに気付いて声を上げる。

「久しぶりだなフォーレント、元気そうで何よりだ」
「バカ者っ、ギルド長と呼べ! お前、今までいったいどこにおったのだ!?」
「いやまあ、ちょっとアルマカイン王都に行っててな」


 ここを離れてからオレがしてきたことをどこまで話していいか迷ったので、とりあえず言葉を濁しておく。

「王都だと!? お、お前がグリムラーゼ王女様を救って王都までお送りしたなどという噂があるが、まさかそんなことなどしておらんよな?」
「えっ? 王女を王都に送り届けたのはオレだが? 何かおかしいか!?」
「なっ、なんだとぉ~っ!」

 おわっ、予想以上にフォーレントが驚いている。というか、慌てているような感じだ。
 どうもフォーレントにとって都合が悪いように見えるが、オレが王女を送ったことで何か問題でもあるのか? ここに集まっている冒険者たちも、オレの言葉を聞いてざわついている。

「王女様捜索のあと、何故かお前とジーナたちが戻ってこんから、王女様を救い出して王都に送ったのはお前じゃないかと噂が立っていたが、まさか本当だったとは……だがしかし、ラスティオン様のことはどうやって捕らえたのだ!? お前ごときではあのラスティオン様に勝てるはずがない! 謀反むほんを起こした罪で処刑されたということは聞いているが、この事件には何か裏がある。お前の陰謀じゃないのか!?」

 なんだそりゃ?
 いやまあ確かに、この事件に裏があるのは当たっているが、とんでもない推理だな。
 どうもオレをおとしめたいようなフシを感じるので、正直に話すと難癖をつけられて、かえって状況が悪化しそうだ。フォーレントが納得しそうな話をでっち上げたほうがいいだろう。

「ラスティオンは森で凶悪なモンスターと相打ちになり、弱っていたところを王女専属護衛のヒミカさんが捕らえたんだ。その場にたまたまオレも居合わせてな。王女様の馬車を襲ったのはラスティオンたちだと聞かされたのもそのときだ。そして王女の護衛を手伝って王都まで一緒に行った。何もおかしいことなんてないだろ?」
「な……なるほど、ふむ、そうであったか……。で、では、手柄の褒美も大したものではなかったであろう?」
「褒美なんてもらってねえよ。まあ護衛代はキッチリ払ってくれたけどな」
「ははは、そうかそうか、ま、まあお前ならそんなところだろう。ぐはは、気をんで損をしたわい」

 フォーレントが何言ってるのかよく分かんねーな。
 まあでも、機嫌が良くなってくれたようだからこれでいい。周りにいる冒険者たちも、オレの説明を聞いてなんとなくホッとしている感じだ。上手くごまかせたみたいだし、このまま王都での出来事は黙っていよう。
 とりあえず、ここに来た本題に入るか。

「フォーレ……ギルド長、最近この近くのダンジョンに行った冒険者たちが次々と行方不明になっていると聞いたんだが、現在どうなってる?」
「むっ、どこでそれを聞いた? まだ一般にはしらされていないはずだが?」
「王都でちらりと小耳に挟んだんだ」
「なんと、王都ではもう噂になっているというのですか? 私が遠距離用魔導通信で王都に報せたのは昨日だというのに? まだ内密にしておきたかったのですが、困りましたね……」

 オレの言葉を聞いて、フォーレントの横にいる中年男性が驚きの声を上げる。
 この場に似つかわしくないような気品を感じるが、誰なんだろう?

「ああ失礼しました、私はこの辺りの監査を務める者で、ノモスと言います。ここハイゼンバーグ領で異変が起こりつつあると聞いて、査察に来たのです」

 アルマカイン王国領土内を回る監査官か!
 各地の自治権はその領主にあるとはいえ、王国が管理する領土でもあるので、査察のために定期的に王国領土内を見回ることを仕事としている。今回の事態を聞きつけてやって来たというわけか。
 この人に不審がられてしまうと、このあと動きづらくなる。しっかり自己紹介しておこう。

「オレはここの領主ゲスニク・ハイゼンバーグの元息子のリュークと言います。まあすでに勘当された身ですけどね。ここの異変については……た、たまたま知ることができただけで、王都で噂になっているようなことはありません」
「そうですか……それなら少し安心しました」
「とにかくフォー……ギルド長、何か事故が起こっているならオレが救出に行くから、ダンジョンの場所を教えてくれ!」

『スマホ』のマップ機能では、山や森などの地形は分かっても洞窟やダンジョンの場所までは表示されない。だから『クラティオごけ』を探すときも、地道に一つずつ洞窟を見つけていったわけだが。
 近くまで行けば、マップを拡大して入り口を探すことも可能なんだけどな。

「ふん、確かに帰還が遅れている冒険者たちが多数いるが、事故と決まったわけではない。まだその調査段階で、ここにいる冒険者はその調査をする者たちだ。お前が救出に行く必要などない」
「じゃ、じゃあ、オレもそのメンバーに加えてくれ!」
「ダメだ!」
「なっ、なんでだ!?」

 即答で拒絶され、思わずオレも聞き返す。

「今回の調査のために、わざわざ精鋭のメンバーを集めたのだ。お前が入ることで、和を乱されては困る」
「なら、オレ一人で動くから、ダンジョンの場所だけ教えてくれ!」
「お前が単独で動くなど、なおさら邪魔だ。たとえダンジョンの場所をお前が突き止めたとしても、行くことは許さん! ここでずっと待機していろ」

 コイツ、なんでそんな意地悪するんだ!? もしかして、以前コイツにあげた『アビスウオームの魔石』のことを根に持ってるのか?
 賄賂わいろ代わりに渡したあと、あの魔石を消したからな。あのときは仕方なかったとはいえ、安易にだましたことをオレは少々後悔する。
 もう一度同じ手を使っても、騙されないだろうしな……

「えーと、ノモスさん、このギルド長の指示はいいんですか? 裁量を逸脱しているような気がするんですが?」

 オレはフォーレントの説得を諦め、監査官に伺いを立ててみる。
 冒険者たちにこっそり付いていく手もあるが、のちに大きくトラブっても困る。現在の状況を詳しく知るためにも、なんとかこの調査隊に入れてもらいたいところ。

「申し訳ありませんが、ギルドの方針は私の管轄外ですので、フォーレント殿の判断については何も申し上げられません」
「くっ、そうですか……」

 監査官は査察したことを報告するのが仕事で、その領地で行うことに口を出す権限があるわけじゃないからな。オレから助けを求められても困るか……

「リュークよ、そもそもお前はダンジョンに入ったことはあるのか?」

 戸惑っているオレに、フォーレントが小馬鹿にするように訊いてくる。

「そ、それは……い、一応経験くらいはあるぜ?」
「なら、どこのダンジョンに入ったか言ってみろ」

 くそっ、ウソがバレてる。
 オレはダンジョンに入ったことないし、存在する場所どころか名称すらよく知らない。
 質問に答えられず、思わず言葉を詰まらせていると、フォーレントが勝ち誇ったように笑った。

「それ見ろ。素人がダンジョン探索に来ても邪魔になるだけだ。そもそも、ダンジョンではチームプレイが不可欠だ。ここにいる者たちも全員チームを組んでいる。そうだな、お前もチームを作ってくれば、加入を考えてやってもいいぞ」
「ホントか!? じゃあ誰か、オレをチームに入れてくれ!」

 オレは目の前に集合している冒険者たちに、メンバー加入の打診をする。
 しかし……

「バカ者っ! ここにいる者たちは普段から連携プレイを大事にしているのだ。お前が加入したらそれをぶち壊すだろう。ほかのチームに加入することは許さん。自分だけのメンバーを連れてこない限り、お前の参加は認めんぞ」
「わ、分かった、じゃあ明日まで……いや夕方までにチームメンバーを探してくるから待っててくれ!」
「いいや、今から出発するんでダメだな。言っておくが、このギルドにいる冒険者は全員チーム持ちだ。オレの知らない人間を連れてこい」

 くっそーっ、とことん意地悪しやがって……!
 どうすりゃいいんだ? ジーナたちがここに到着するのはまだまだ先だし、まさか冒険者でもない街の人間を連れていくわけにもいかない。
 ……いや待て、もしかしてこの手ならなんとかなるんじゃないか?

「ギルド長、チームメンバーは何人連れてくればいい?」
「ふむ……あと三人と言いたいところだが、一人で勘弁してやる。ただし、今すぐに連れてこないと認めんぞ。もちろん、実力もちゃんとなければダメだ」

 フォーレントはニヤニヤしながらそう答えた。
 わざと緩めの条件にして、オレに淡い希望を持たせつつ、最終的に挫折させようってつもりか? この地で今すぐ新たな冒険者を見つけるなんて、およそ不可能だからな。
 三人集めろと命令すれば、オレは早々に諦めて違う条件を求めるかもしれない。だから一人でいいと希望を持たせ、オレが必死に駆けずり回る姿をあざ笑いたいってところだろう。
 だが、一人でいいならオレにはアテがある!

「分かった。ちょっとだけ待っててくれ」
「二十分後に出発する。それまでに見つけてこられるかな? ガハハハ!」

 フォーレントの笑い声を聞きながら、オレは急いでギルドを飛び出した。


 ☆


「この辺りでいいだろう」

 ダッシュでギルドから離れ、誰も来ないような裏路地に来たところでオレは足を止める。
 そして『スマホ』を起動し、素材用にストックしてあった写真を一枚ずつ閲覧していく。

「あったあった」

 アダマンタイトの写真を見つけ、コピー出力で次々と実体化させる。
 ある程度の量が溜まったところで、次はゴムの写真を探し、それも次々と出力していく。
 そして水晶などの鉱物やガラスも出力し、材料を一通り揃えたところで、ニグロムという暗殺者からコピーしたギフト『魔導兵主パペットマスター』の発動準備をする。
 そう、オレは魔導で動く人形――つまりゴーレムでチームパートナーを作ることにしたのだ!
 骨格はアダマンタイト、それをゴムで覆って肌にし、髪、爪、歯、眼球はガラスや水晶などで代用。レベルが大きく上がったオレなら、かなり人間に近いゴーレムが作れるはず。
 まあ見た目が多少おかしくても、フルプレートアーマーを着せちまえば、簡単にはバレないだろう。とりあえず、その場しのぎさえできれば問題ない。

「目覚めよ金剛の鋼。空を掻き、地を踏みしめて立ち上がれ。『魔導兵創造クリエイト・ゴーレム』!」

 人間の姿をイメージしながら能力を発動すると、目の前の素材がキラキラ光り出して融合し、ゆっくり盛り上がりつつ人体の形に変化していく。
 そして輝きが消えると、そこには裸の女性……一糸まとわぬ銀髪の美少女が立っていた。

「えっ、女!? なんで!?」

 ちょ、ちょっと待て、一応オレは男の姿をイメージしたつもりなんだが……?
 いくらゴーレムとはいえ、オレが思っていた以上に人間そっくりなものが出来上がったので、素っ裸でいられると恥ずかしくなる。それに、こんなところを誰かに見られでもしたら大変だ。

「こ、こ、これを着るんだ!」

 オレは『スマホ』から慌てて女性物の服を出力し、ゴーレムにそれを着るよう命じる。

「マスター、ワタシはこのままでも構いませんが?」
「おわっ、しゃべれるのか!?」

 オレはゴーレムが言葉を発したことに驚く。そんな機能まで付いてるのか……
 我ながら、ここまで人間に近いものが作れるとは思ってなかった。外見も人間そのものだ。
 肌の質感は人間と変わらないし、腰まで伸びている銀色の髪はガラス繊維で精巧に再現されている。ヘルムで顔を隠さなくても、これをゴーレムと疑う者はいないだろう。
 これならフルプレートアーマーを着けなくても問題なさそうだ。
 とまあそれはともかく、裸のままでは本当にまずい。

「いいから服を着ろって!」
「了解ですマスター」

 ゴーレムは返事をすると、服と装備を身に着けた。
 改めてよく見ると、身長は百六十三センチ程度、スラリとした体や顔つきは、アニスによく似ていた。さながら、銀髪になったアニスといったところだ。
 いや、単純な美しさなら、このゴーレムのほうが文字通り人間離れしているかもしれない。
 うーむ……ひょっとして、アニスを心配するあまり、ゴーレムを作るときにちらりとイメージしてしまったかも。それでコイツができちまったということか?

「マスター、衣類を着てしまっては、男女の営みをするのに邪魔では?」
「……え? なんだって!?」

 コイツ、今なんて言った?

「男女の営みに衣類は邪魔だということです。あ、それとも、マスターは衣類を着たままのほうが好みだと?」
「だ、男女の営み~っ!?」

 なっ……ナニ考えてんだコイツ!?
 っていうか、ゴーレムのくせにそんな知識まであるのか!?

「お、おまっ、オレがゴーレム相手にそんなことするわけないだろう!」
「おや、ワタシはそのために生まれてきたのだと思ってましたが? 女性に全然免疫のないマスターのために、ワタシは色々尽くしますよ」
「そ、そ、そんなことしなくていい! お前はオレとチームを組むために作ったんだ!」

 確かにオレは女性が苦手なところがあるが、ゴーレム相手にそれを直そうなんて思ってねえ!
 まったく、オレはなんつーヤツを作っちまったんだ。
 本当にコイツをメンバーとして連れていっていいものだろうか……?

「…………作り直すか?」
「マスター、ではワタシの胸をもっと大きくしてください」
「そういうことじゃなくて!」

 なんでこんな性格なんだ? オレが最も苦手とするような感じなんだが?
 ゴーレムは一体しか制御できないから、コイツでダメなら解体して作り直すしかないが……いや、もう時間がない!
 一度ゴーレムにした素材は二度と使えないから、作り直すにはもう一度素材を出力するところから始めなくてはならない。さすがにタイムオーバーだ。

「ああもうしょうがない、お前でいいから一緒に来い! ええと、お前の名前は……レムだ」

 名前を考える時間もないので、『ゴーレム』から取ってレムにした。

「イエス、マスター!」

 レムは名前を呼ばれて嬉しそうに返事をする。
 見た目がアニスとそっくりなだけに、その笑顔にドキッとしちまうな。ちょっと複雑な気分だ。
 オレはレムを連れて、急いでギルドに戻った。



 2.腕相撲


「フォー……ギルド長、チームメンバーを連れてきたぞ!」

 オレは勢いよくギルドの扉を開け、室内に入る。
 中を見ると、フォーレントや冒険者たちはまだその場にいた。
 良かった、出発してなかった。

「メンバーを連れてきただと!? 言っておくが、街の人間を連れてきたところで、ダンジョンに挑む力がなければ冒険者とは認め……なっ、なんだその女は!?」

 オレの後ろから現れたレムを見て、フォーレントが驚愕の声を上げる。

「うおおおっ!? ス、ス……スゲー………………絶世の美少女だ!」

 ほかの冒険者たちも、レムの美しさに声を上げたあと、息を呑んだ。

「オレのパートナーだ。まだ冒険者としては未登録だが、実力は折り紙付きだ。疑うなら試してくれても構わないぜ」

 レムの冒険者登録はすぐに終わる。もちろん強さも問題ない。

「バ、バカなっ、この街にこんな冒険者が来ているなんて知らんかったぞ!? これほど目立つ者がいたら、絶対に噂になるはずだ。こんな短時間に、いったいどうやって見つけた?」
「それは内緒だ。とにかく、一人連れてくればいいという約束だったよな? ノモスさんも聞いてましたよね?」
「そうですね。私に決定する権限はありませんが、実力が確かなのでしたら問題ないと思います」

 よし、監査官の言質げんちも取った! これでダンジョンに行ける!

「ぐ、ぐぬぬ……こ、こんなことになろうとは……!」

 思惑通りにならず、フォーレントは怒りで全身を震わせながら、顔を真っ赤に染めた。
 街中に冒険者があふれている王都ならともかく、こんな辺境の地ですぐに新たな冒険者を連れてくるなんてまず無理だ。必死に駆けずり回ったあと絶望するオレを笑い者にしたかったんだろうが、まあご愁傷様しゅうしょうさまである。

「さて、じゃあみんな、出発しようぜ」
「ちょっと待ちな!」

 振り返りながら後方の冒険者たちに声をかけたところ、突然その集団の中から抗議するような声が上がった。
 見ると、身長百九十センチ以上ありそうな巨体の男が、オレを睨みつけながらこっちに歩いてくる。その後ろからも四人、恐らく大男の仲間らしき男たちもぞろぞろと進み出てきた。
 胸のゴールドプレートを見るに、全員Sランクだ。
 オレがこの街にいたときはこんなヤツらはいなかった。恐らく最近来た新顔だろう。
 何やら不機嫌そうな顔をしているが、オレがこの調査隊に入るのが迷惑なのか?

「おい、そこのねーちゃん。アンタのような綺麗な冒険者は見たことも聞いたこともないが、俺たちのチーム『黒鷲くろわしつめ』に入らねえか? そんなチンケな男と組むより、遥かにイイ思いさせてやるぜ?」
「おおっ、そりゃいい! リュークにゃもったいない女だからな」
「リュークなんか来ても邪魔なだけだ。お嬢ちゃんだけオレたちと一緒に来いよ!」
「おい、ちょっと待てよ! この状況でメンバーを引き抜くのはルール違反だろ!」

 大男の提案に、ほかの冒険者たちも悪ノリして盛り上がる。
 せっかくチームを作ったのに、引き抜きなんかされたら水の泡だ。
 まあ、そんなことレムが承諾するわけないが……いや、コイツよく分からない思考してるからな。もしかして、喜んで勧誘に乗るなんてことは……?

「ワタシには嗅覚きゅうかく器官がありませんが、この大きな猿男からはゲスな臭いを感じます。ほかの男たちの体臭も、分泌される臭気成分を分析すると汚臭に近いものですし。全員頭も悪そうですね」

 そんな心配する必要はなかったか……っていうか、人間に対してそんなこと言うな!

「引き抜きにルールなんかねえっ。俺たち冒険者はいつだって実力主義だ。そうだろ、ギルド長?」

 大男がフォーレントに同意を求める。
 すると、呆然と成り行きを眺めていたフォーレントが我に返った。

「は? ……お、おうっ、その通りだ! 有望な者をスカウトするのは当然のこと。引き抜いても問題ないぞ」

 おいおい、どういうイチャモンだ? そうまでしてオレが加入するのを邪魔したいのか?
 まあいい、実力主義というなら、こっちもそれに従うだけだ。あとで揉めるより、ここで力関係を分からせたほうがいい。

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