勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる

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3巻

3-2


「いいだろう。ウチのメンバーを引き抜きたいなら、オレと勝負するんだな。オレに勝ったら、このレムをそっちに譲ってやる」
「お前と勝負? Fランクのお前がSランクのこの俺と? ……ぐはっ、こりゃ笑える。ジャンケンでもするつもりか?」
「ぎゃははは、おいリューク、お前ちょっと王女様の役に立ったくらいで、成長した気分になってるんじゃないのか?」
「ジーナたちにおだてられて、自分の実力を勘違いしてるんだろ?」

 大男につられて、オレのことを知っているほかの冒険者たちも大笑いする。
 オレはまだ白プレートを着けてる初心者ノービスだからな。ナメられるのは当然だが、しかしフォーレントは苦い顔をしている。
 Sランクといえど、そう簡単にはオレに勝てないことを知ってるからだ。

「素直に渡せば惨めな思いをしないで済むというのに、バカな男だ。いいぜ、お前の得意なことで勝負してやるよ」

 大男がオレの提案に乗ってきた。
 よし、上手くいった。あとは適当にオレの力を分からせてやれば問題解決だ。

「そんじゃあ何で勝負しようか……」
「腕相撲だ! 出発前に怪我されても困る。腕相撲にしろ」

 オレが対戦種目を決めようとすると、横からフォーレントが口を挟み、腕相撲を指定してきた。
 表情が少し焦っているように見えるが、それは多分、通常の戦闘勝負をしたらこの大男はオレに負けると思ったんだろう。解析で大男のステータスを見てみたら、レベルは115だった。
 フォーレントが以前オレのステータスを見たとき、オレのレベルは118だったから、実力的にはオレたちのことはほぼ互角と思ってるはず。ただ、あれから時間も経っているし、フォーレントがオレを警戒するのも無理はない。
 だが、単純な力比べなら、勝負はこの大男に分があると考えたわけだ。
 パワータイプの戦士みたいだし、確かに腕相撲は相当強そうだ。

「ぐふっ、俺はそれで構わないぜ。なんなら指一本で相手してやろうか?」
「お気遣いなく。もったいぶらずに全力で来いよ」

 大男の挑発に、オレも少しあおり返す。

「生意気な小僧だな……リュークだったか? Fランクのお前が、なんでそんな口をたたけるのか俺には分からねえ。腕相撲で俺に勝てるわけねえのに、頭がおかしいんじゃねえのか?」
「アハハハその通りだ。腕相撲じゃ勝負になるわけがねえ」
「まあリュークじゃ、どんなことで勝負しようとも勝てるわけないけどな」
「おいリューク、かけっこに変更してもらったほうがいいんじゃねえか? それならお前にもチャンスがあるかもしれねえぜ?」

 周りがわやわやと騒ぐ中、オレと大男はテーブルに移動し、お互い腕を置いて手を組み合う。
 騒ぎを知ったほかの冒険者たちも、野次馬になるためにぞろぞろと集まってきた。

「ああ、マスターがワタシのために戦ってくださるなんて……感激です。勝利したあかつきには、ワタシのキスをその唇に捧げます」
「いや、そういうのいらないから」

 勝負直前にアホなことを言われ、オレの全身から力が抜ける。
『天狼七部衆』のサクヤに不意打ちでキスされたことまで思い出して、少々気が重くなった。
 まったく、負けたらレムおまえのせいだぞ!

「俺はジャビロ。『双大剣グランドツイン』のジャビロだ。名前くらいは聞いたことあるだろ?」
「すまないが、全然知らねえ。一応覚えておくよ」
「ぐふっ、本当に口の減らねえガキだ。お前の腕を破壊して、俺様の名を忘れられないようにしてやる。いくぞ!」

 そう言いながら、大男――ジャビロが腕に力を入れた。
 その巨大な上腕二頭筋が、痙攣けいれんしながらパンパンに膨れ上がる。

「俺様の力を思い知れ…………思いし…………えっ、なんだこりゃ!?」

 ジャビロは腕が震えるほど力を入れているが、オレの腕はビクともしない。
 多分、怪力自慢なんだろうが、この程度なら『天狼七部衆』のカブトマルのほうが遥かにパワーが強かったな。

「な……どうした? 腕相撲はもう始まってるのに、なんで決着がつかねえ?」
「リュークがパワーで勝てるわけないのに!?」
「こりゃ……いったい何が起こってんだ!?」

 ゲラゲラと笑いながら盛り上がっていた周りの連中が、固まったままの腕相撲を見て驚きの声を上げる。その最中も、ジャビロは顔を真っ赤にして必死に力を入れているが、もちろんオレの腕は動かない。
 オレはそのまま、ジャビロの腕をペタンと軽く押し倒して勝つ。

「これで文句ないな?」
「バ……バカなっ、こ、この俺が力で負けるなんて……!?」

 しんとして声も出ないその場の一同。
 ふとフォーレントの顔を見ると、口を大きく開けたまま真っ青になっていた。

「さすがですマスター。脳細胞がトロール以下の男に負けるはずありませんね。さあ約束のキスをお受け取りください」

 腕相撲と脳細胞は関係ないと思うが……?
 と考える間もなくレムはオレの首に抱きつき、無理やりキスを迫ってきた。

「よせ! そんな約束なんてしてないだろ!」

 オレはレムの顔に手を当て、ぐいと力を入れて遠ざけると、ひょっとこみたいな口になっていたレムの顔がグニャリと変形する。それはまるで本物の人間のような感触だった。
 うん、これならゴーレムとバレることはないな。

「ああ、つれないお方……ひょっとして、人前では恥ずかしいのですか? 分かりましたマスター、キスは夜伽よとぎのときまでお預けしますわ」
「お前とそんなことなんて、何があろうともするわけないだろ!」

 外見はアニスそっくりなのに、なんでこんな性格になっちゃったんだ? もしかしてアニスが物静かだから、逆にオレはこういうタイプを無意識に望んでしまったとか……?
 いや、それはないな。レムのような性格は苦手だし。
 となると、ますますこんな性格になった理由が分からん。

「くそっ、リュークのヤツ、こんな美少女とイチャイチャして……!」
「はああ、めちゃくちゃ羨ましい~っ! 羨ましすぎて涙が出てきた」
「こんな美少女冒険者、いったいどこで見つけてきたんだ!?」

 ベタベタひっついてくるレムを見て、周りの冒険者たちがどうやら嫉妬しているみたいだ。
 いや、こいつはゴーレムなんだよ、だから羨ましがる必要なんてないぞ。
 ……と教えてやりたいところだが、言うわけにはいかないし。

「ぐぬぬ、見せつけやがって……もう許さねえっ!」

 腕相撲に負けてショックを受けていたジャビロが、ふざけあうようなオレとレムを見て気を取り直し、怒りをあらわにした。
 そして椅子から立ち上がり、背負っていた二本の大剣を抜く。
 あれほどデカいこと言っておきながら負けたクセに、往生際の悪いヤツだな……

「おいよせ、勝負はもうついただろ。オレが勝ったんだから、約束は守ってもらうぞ」
「いいや、腕相撲はギルド長が勝手に決めた勝負だ。こんなんじゃ俺は納得いかねえ。キッチリ戦闘で白黒つけようじゃねえか!」
「なに言ってやがる。出発前に怪我したら……」
「許す! 戦闘で決着をつけて良い!」

 えっ、なんだって!?
 青い顔で固まっていたフォーレントが、またしてもオレとジャビロの会話に口を挟んできた。
 戦闘で決着って、さすがに問題があるだろ! それに、すでに出発時間を大幅に過ぎてるぞ。
 オレとしても、余計なことに時間を使ってるヒマはないんだが……?

「フォーレ……ギルド長、腕相撲で決着つけたんだからもういいだろ。そもそも怪我したら……」
「いいや、こじれたままでは調査もスムーズには行かぬ。腕相撲などではなく、お前たちの力関係をしっかり確認すべきだ」

 さっきは怪我されたら困るって言ったくせに、コロコロ変えやがって……!
 ただ、通常の戦闘じゃオレに分があると思ったからこそ、フォーレントは腕相撲勝負にしたんだろ? なのに、今さら戦闘で決着つけろだなんて、意味分かんねーな。

「話が分かるぜギルド長。外へ出ろ小僧! お墨付きが出たところで、決闘と行こうじゃねえか」

 ジャビロはもうやる気満々だ。
 仕方ねーな。適当に遊んでやれば、オレの力を知っておとなしくなるだろ。

「んじゃあオレとタイマン……」
「まて、一対一の決闘ではなく、チーム戦で勝負するのだ!」

 オレが決闘を承諾しようとした瞬間、すかさずフォーレントがまた口を挟んできた。
 チーム戦!? ってことは、オレとレムの二人vsジャビロチーム五人で戦うのか?
 なるほど、タイマン勝負はともかく、これならジャビロに分があるってわけだ。とはいえ、フォーレントの思惑は分かるが、チーム戦なんかしたらマジで怪我人が出るぞ?
 オレが上手く手加減できれば問題ないが、曲がりなりにもコイツらSランクチームだからな。果たして、穏便に戦闘を終わらせることができるかどうか……

「フォーレント、いくらなんでもそりゃ危険だ。せめて……」
「ギルド長と呼べ! 元々この調査隊にはチームでの加入を条件とした。だからチーム戦で勝負を決めるのは当然のこと。怖いなら、怪我する前に降参しろ」

 フォーレントのヤツめ……めちゃくちゃなこと言いやがって。
 どうあってもオレの加入は認めたくないようだな。
 それなら仕方ない。あまりオレの力を見せたくなかったが、どうしてもと言うなら力でねじ伏せようじゃないか。
 戦いによる負傷が少し心配だが、身体欠損などの酷い怪我さえさせなければ、一応オレのエリクサーで治療できる。これ以上難癖をつけられる前に、きっちり決着をつけてやろう。

「ぐふっ、お前など俺一人でも叩き潰せるが、ギルド長がチーム戦だというなら俺もそれで構わない。お前はどうする? 女を置いて逃げるか?」
「オレも構わない。ただ、戦うのはオレ一人だ。お前たちを倒すのにレムの力はいらない」
「一人で俺たち『黒鷲の爪』五人を相手にするだと!? ナメやがって……ぶっ殺してやる!」
「小僧、可哀想だから手加減してやろうと思っていたが、撤回だ。二度とそんな口が利けないように痛めつけてやる」
「死にたくなければ今すぐ降参しろ」

 オレの言葉に、ジャビロ以外のメンバーも怒りを燃やす。ちょっと言いすぎたか?
 煽るつもりはなかったんだが、ジャビロの態度やフォーレントの無茶命令にオレも少しムキになってしまった。

「マスター、もしかしてワタシの体を気遣ってくれたのですか? そうですね、ワタシの体が傷付いたら、夜伽のときに悲しい思いをさせますしね。ああマスターの愛を全身で感じます!」

 何を勘違いしてるのか、レムが歓喜しながら身悶みもだえしている。
 別にレムの体なんて気遣ってないのに、思い込みが激しすぎてもう頭が痛い。レムに戦わせるとやりすぎちゃうのが怖いから、オレ一人で戦うってだけなのに……本当に変なゴーレムだ。
 そもそも体が傷付く心配どころか、レムはそこらのSランク冒険者なんて問題にならないほど強いからな。
 何せ、アダマンタイトの骨格を持った超怪力のゴーレムだ。ゾンダール将軍には勝てないと思うが、ラスティオンとは互角以上に戦える気がする。
 ちなみに、レムは人間に似せることを最優先にして作ったが、戦闘力重視で製作したら、ゾンダール将軍より遥かに強いゴーレムも作れるはず。今のところは必要ないが、もしもそういう状況になったら、レムを解体して強力なゴーレムを作ろう。

「マスター、何故かよく分かりませんが、今ワタシとても悲しい気持ちになったのですが……?」

 うっ、コイツまさか、オレの心が読めるとか……?
 そんなわけないか。でもレムは目を潤ませながら、オレをじっと見つめている。
 その瞳の重圧プレッシャーに負けて、オレは思わず目をそらしてしまう。

「マスター、やはりつれないことを考えてますね!? 生まれてから身も心も全てマスターに捧げているのに、ワタシをもてあそぶなんて酷いお方……」
「おまっ、誤解されるような言い方するなっ!」

 何も捧げてもらってないし、弄んでもいないだろ!
 アニスと似ているだけに、妙な罪悪感まで覚えちまうぞ!

「リューク、お前こんな美少女に手を出しやがったのか!?」
「もう許せねえっ、お前なんか『黒鷲の爪』のメンバーにボコボコにされちまえっ!」

 ああもう、どんどん面倒な方向に話が行く。オレはただ、ダンジョンに行きたいだけなのに……
 とりあえず、騒ぐ冒険者たちをなだめながら、オレたちはギルドの裏にある模擬戦用の広場に移動した。



 3.黒鷲の爪


 冒険者ギルドの裏には、剣技や魔法などの練習が可能な施設が存在していて、そこには模擬戦に使う広場も設置されていた。オレとジャビロたち『黒鷲の爪』は、このフィールドでチーム戦を行うことに。
 まあチーム戦といっても、こっちはオレ一人で戦うが。
 戦う前に、一応ジャビロたちの能力を解析する。
 リーダーであるジャビロはレベル115、ギフトはSランクの『戦王せんおう』を持っていて、右手と左手にそれぞれ巨大な剣を持つ二刀流スタイルの戦士だ。『双大剣グランドツイン』という二つ名は、ここから来ていると思われる。
 中肉中背で拳に金属ナックルを着けているのがギーグという男。レベルは109で、Aランクギフトの『拳鬼けんき』を持っている。
 戦闘職は接近戦を得意とする拳闘士けんとうしで、タイプとしてはサクヤに似てるかな。ただ、サクヤは気功術による遠距離攻撃や回復もできるうえ、単純な戦闘力もサクヤのほうが遥かに高いだろう。
 大弓と矢筒を背負っている、細身でスラリと身長の高い男はトト。レベルは108で、Aランクギフトの『弓鬼きゅうき』を持っている。
 弓矢以外にも攻撃魔法を少し使えるようで、つまり彼の戦闘職は『魔導弓士』だ。
 紫色の宝石が付いた杖を手に持つ小柄な男は、魔導士のブルゲン。レベルは112、持っているギフトはSランクの『魔導守護者』で、火、水、土、風、光、無の属性魔法を習得している。
 そして金髪で顔立ちの整った男は、聖属性を扱う神官のエリナス。レベルは107で、Aランクギフトの『大司教』を持っている。
 全員三十歳前後で、戦闘バランスの優れたオーソドックスなチームだ。
 Sランクチームとしては平均よりも強い部類だと思うが、オレのレベルは170なので、ヤツらが五人束になっても力の差は歴然。
 同じ戦闘職で戦った場合、お互いのレベル差が10あると、基本的に上位の者には勝てないと言われている。もちろん、持っているギフトやスキル、戦闘センスによっても多少変わってくるが。
 高レベルになるほど、レベルを一つ上げるのにも多くの経験値が必要で、そしてレベルアップ時のステータスも大きく上昇する。
 つまり、レベル170のオレからすれば、彼らのステータスは問題にならないほど低い。オレは特殊なスキルやギフトを山ほど持っているが、仮にそれらの能力を使わなくても、地力だけでねじ伏せることができるくらい力の差がある。
 問題は、どこまで手加減できるかだな。
 腐ってもSランクチームなだけに、生半可な攻撃では屈しないだろう。それなりに力を入れて叩きのめさないと、恐らくこの戦闘は終わらない。
 なんとか大怪我させないようにしたいところだ。


 オレとジャビロたち『黒鷲の爪』は、お互い戦闘用フィールドの反対側に立って向かい合う。
 フィールドの広さは百メートル四方ほどあるので、オレたちの距離も百メートルくらい離れている状態だ。ちなみにレムは、ほかの冒険者たちと一緒に離れた場所で見物している。

「そんじゃあ始めようじゃねえか」

 ジャビロはそう言うと、両手に持つ二本の剣をぐいっと前に突き出し、そのまま左右に広げて戦闘の構えを取った。ほかのメンバーも戦闘態勢を整え、開始の合図を待つ。

「マスター、勝ったらワタシを好きにしていいですよ! マスターのやる気が出るなら、ワタシはなんでもいたしますわ!」

 レムの言葉に、またしても周囲の冒険者たちがざわつく。
 だからそういうこと大声で言うなって! やる気が一気にえたぞ!
 オレの一番の敵はレムかもしれない……

「では双方戦闘を開始せよ!」

 ギルド長フォーレントの一言で模擬戦が始まった。
 とりあえず、オレはジャビロたちに向かってスピードを抑えつつ駆けていく。
 全力疾走して一気にカタをつけてもいいんだが、まずは様子見だ。どれくらい手加減をしていいか、力加減も分からないしな。
 ジャビロたちはまだその場から動かず、神官のエリナスが聖属性の魔法をメンバーにかけている。
 恐らく、ダメージを減らすための物理防御系のシールドと思われる。魔導士のブルゲンも、なんらかの属性魔法を詠唱している。チーム戦のセオリー通りの行動だ。
 シールドをかけ終わったあと、ジャビロとギーグが飛び出した。
 シールドには魔法防御系のものもあるが、それはかけてないみたいだ。オレは魔法の使えない剣士と思われているので、必要ないと判断したのだろう。
 ジャビロとギーグは、オレと同じくスピードを抑えて接近してくる。前衛同士が行う近接戦の前に、まずは遠距離攻撃の撃ち合いがチームバトルの基本だからだ。
 その基本通り、後方からオレ目掛けて矢が飛んできた。大弓を使う、魔導弓士トトの狙撃だ。
 通常より二回り大きい矢には魔法がかかっていて、雷撃を帯びている。そしてスキル技によって追尾性能も付加されているらしく、弧を描きながらオレに迫ってきた。
 七部衆のマンジも弓矢使いだったが、忍者は対人戦が主体だったので素早さや精密さを重視していたのに対し、冒険者であるトトはモンスター戦がメインなので破壊力重視の攻撃だ。追尾性能があるとはいえ、暗殺者ケプラが使っていた『飛鋭刃ひえいじん』と比べると大雑把おおざっぱな攻撃なので、かわすことは造作もない。
 ……とそのとき、前方の地面から魔力の発生を感知し、オレは慌てて飛び退く。
 直後、地面から土の槍が数十本出現し、オレが通る予定だった場所を針山のように貫いた。
 ブルゲンが放った土魔法の攻撃だ。
 ちょっと待て、オレがけなかったら、死んでもおかしくなかったぞ!? まあオレには火、水、風、土、光、闇の六属性が無効だから、実際にはダメージを受けることはないけど。
 ただ、魔法が効かないということがバレるとまずいから、喰らわないように大げさに避けた。
 そして、飛び退いたオレのところに大矢の追撃が来る。
 一応、難なく避けたが、また次から次へと矢が飛んできて、オレへの狙撃が止まらない。
 さらに、地面からの土槍も間断なくオレを襲ってくる。スキル技の連続魔法を使ってるんだろう。
 オレだから避けられるが、本来ならこんな危険な魔法は禁じ手だ。
 ……何か変だ。彼らの攻撃から殺意を感じるぞ?
 冒険者同士でタイマンしたりチーム戦をすることはたまにあるが、一応暗黙の了解で、相手を殺さないように配慮はする。殺し合いまでしなくても、お互いの実力差はだいたい分かるからだ。
 今回のこの戦いだって、フォーレントからは怪我には注意するように言われている。
 なのにこんな攻撃をするなんて、何考えてんだ!? 嫌な予感がする……
 遠距離攻撃を避けていると、ジャビロとギーグがオレのところまで到着した。
 ここからは接近戦の開始である。

「ぶっ殺してやるぜ!」

 ジャビロがそう言いながら、左右の手に持つ二本の剣でオレを斬りつけてきた。その流れるような連続攻撃を、オレは最小限の動きで躱す。
 ジャビロは怪力を自負するだけあって、両手持ちしなくてはならないような大剣を、それぞれ片手で軽々と操っている。ただの力任せの攻撃ではなく、その剣さばきも鋭くて精密だ。
 なるほど、『双大剣グランドツイン』と言われるだけはあるな。
 それはともかく、コイツ本気で殺しに来てるぞ。いくらオレでも、こんなことされては黙っていられない。

「ジャビロ、これは模擬戦だぞ! 分かってるのか!?」
「ぐふふっ、安心しろ、ちゃんと理解してるぜ」
「なら、なんでこんな危険な攻撃をするんだ!」
「ギルド長から直々に許可をもらってるからだ。事故に見せかけて、お前をここで始末していいとな」

 なんだってーっ!?
 そういやさっき、フォーレントがジャビロと何か話してた。あのとき、オレを殺す許可を与えていたのか!
 フォーレントのヤツが、まさかここまでオレのことを嫌っていたとは……

「くそっ、チョコマカとすばしっこいヤツだ! これでも喰らえっ!」

 ジャビロが左足を強く地面に叩きつけて踏み鳴らす。
 地を伝わる衝撃波で相手の体勢を崩す技だ。戦士系が覚えるスキル技で、オレも持っている。
 幅五メートルほどの衝撃波が、地面をゆがませながら超速でオレに接近するが、それも軽く躱す。
 そこにギーグが飛び込んできた。

「オレに任せろ! スピード勝負なら負けないぜ!」

 ジャビロの攻撃が途切れたところで、すかさず次はギーグがオレに襲いかかる。
 前衛同士、息が合ったコンビネーションだ。
 ギーグは拳で戦う拳闘士だけに、抜群の体術バランスで攻撃してくる。一撃の破壊力はジャビロのほうが遥かに上だが、手数ならギーグが圧倒的だ。
 そしてギーグやジャビロの邪魔をしないようなタイミングで、後方から魔法や矢の援護が来る。
 さすがSランクチーム、ヤツらが繰り出す近接攻撃と遠距離攻撃の連携で、オレは防戦一方の状態だ……とあえて見せている。
 どう対応しようか、考えをまとめるための時間が欲しかったからだ。
 想定外の戦いとなって、オレも少々面食らってしまったが、ジャビロたちがそう来るならオレもそれなりに容赦はしない。
 大怪我させないように気を遣うつもりだったが、遠慮なく反撃させてもらうとしよう。

「ジャビロ、お前たちがそのつもりなら、オレも手加減しない。それでいいんだな?」
「ぐはっ、お前の命はもう風前の灯火ともしびだっつーのに、笑わせるぜ。このまま八つ裂きにしてやる!」

 ジャビロはそう言いながら、さらに激しくオレに斬りかかる。
 ちゃんと警告はした。それでも言うこと聞かないんじゃ、仕方ないな。
 オレはジャビロの斬撃を低い姿勢で避けたあと、神速でその懐に飛び込んだ。

「ぬっ、ヤツが消えやがった!? どこだっ!?」

 オレはジャビロの視角の下に潜り込むと、サクヤからコピーしたギフト『闘力鬼とうりきき』を発動し、至近距離からヤツの腹部、胸部を十発ほどぶん殴る。そしてトドメにアッパーカット――この世界にはない名称だが、それをジャビロの顎にぶち当てた。

「ぐぎぎゃっ……!」

 濁ったうめき声を漏らしながら、ジャビロの体が垂直に十メートル以上打ち上がる。
 殴った感触から、恐らくヤツのあばらと顎の骨は砕かれ、内臓も一部破裂したはず。
 一応、殺さないように配慮はしたが、Sランク戦士であるジャビロはかなり頑丈なだけに、オレもだいぶ力が入ってしまった。
 まあ重傷だが、これくらいしないとおとなしくならないだろうしな。

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