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7、適正
しおりを挟む沈黙したまま固まる俺に、
「適正が二つあるのは珍しいな」
「え? あ、ほんとだ」
自分のショボすぎる数値に気をとられていたせいで、適正部分に目が行ってなかった。
確かに神様の言う通り、適正欄に二つ文字が並んでいる。
でも、これって珍しいの?
MMORPGの普通が、よく分からない。
「そうだな。この世界の適正は、普通は一つだけだ。ただ、適していなくとも好きな職業に就くことは出来るし、あくまで向き不向きを見るための、目安のものだと考えたらいいよ」
そうなんだ。
雁字搦めに決められたものじゃないなら、それでいいんだ。
だってこのショボさで戦う職業なんて、完全に自殺行為にしか思えないもん。
数値の最高がどのくらいかは分からないけど、最弱に近い気がする。
「神様は何で俺に二つも適正をくれたんですか? これもお礼代わり?」
「いや。これは私が与えたものじゃないよ。魂の資質を元に、この世界が自動で選んでいる」
これって自動なんだ。
ん? そういえば弟の話で、こういうゲームは必ず、最初にジョブ選択があるって言ってたかも。
そのゲームモードを神様が改変して、今は自動選択になってるのかな。
でもほんとに何で二つも適正があるんだろう。しかもテイマーと薬草士?
「テイマーがどんなものか分かるかい?」
「たぶん……アレですよね。確か動物を従えて戦う人?」
ファンタジー小説で見た気がする。
「そうだ。ここでは魔獣を使役する事が出来る。この職業だけは適正がないと調教出来ないんだ。だからこの世界でもかなり珍しいスキルなはずだよ」
「何でそんな珍しいスキルをもらえたんでしょう?」
「さぁ。システム側で選んだものだから、としか言えないが。多分、動物好きな魂だったんだろう」
最後、適当すぎじゃない……?
と神様の理由にがっかりしたところで、突然既視感を覚える。
(あ……)
そういえば前世の自分は、大の猫好きだった。
だけど弟が喘息持ちだったために、毛のある生き物を飼うことは禁止されていたのだ。
(そういえば真由が編み物を覚えたのも、元々は猫人形を作りたかったのが始めだったよね。癒し系猫動画もよく見ていたし)
そこでハッとする。
(もしかして今生が猫獣人なのも、前世の真由の影響だったりするんじゃ……!?)
うわ、なんかショックだ。
容姿以外でも、この獣人の見た目のせいで、色々とからかわれたりしているのだ。
(……違った。獣人の見た目で弄られるのは俺だけだった。家族はむしろ村人達に愛されてるし。やっぱり問題は俺の容姿のせいなんだろうな)
ちょっと落ち込むけど、そのために神様が力をくれるっていうんだ。
そこは感謝しなきゃ。
「神様、もう一つのこの『薬草士』ってどういう職業なんですか?」
「これは回復系の職業だと思うが……詳しいことは後でゲーム内のヘルプを見るといい。文字からすると薬草を使った回復職か何かだと思う」
そっか。ヘルプがあるのか。
こういうゲームってよく分からないし、後で詳しく調べてみよう。
出来ればチュートリアルもあるといいんだけど──って、あれ?
テイマーの所にだけ(+)って付いてる?
なにこれ?
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