総理大臣の恐怖スピーチ

萌流球夜

文字の大きさ
2 / 4

其の二 咆哮

しおりを挟む
 オニキモンは少し間を開けた後、唐突に変顔をしながら不気味な声を発した。
「あうーーーーーーーー」

 これが今の日本の総理大臣なのである。そのことは他の卒業生たちも重々承知しているようで、会場全体が失笑し、呆れているようだった。オニキモンが記者会見や国会答弁で奇声を上げるのは日常の風景である。誰も大して気にしていない。

「うへっへっへっへっ」
 オニキモンは気味の悪い下品な笑みを浮かべた。今の「あうー」が会心の出来だったのだろう。たいそうご満悦のようである。
 そう思った直後、オニキモンはカッと目を見開き、
「うりゃうりゃうりゃりゃりゃ、ウホホホーーーーーーーーイッ!!」
とバカでかい奇声を上げた。その様はまるで獣の咆哮である。
 一体このオッサンは何をしに来たのだ。そして、この学校は何でこんな奴を、よりによって卒業式に呼んでしまったのか。会場がそんな空気に包まれている気がした。総理大臣が来たというのに、誰も喜んでいない。オニキモンの不人気ぶりが如実に表れていた。

 続いてオニキモンはゴリラのように自分の胸を叩きながら、
「うおおおおおおーーーーーーーーーーーーー!!!」
と絶叫した。これはオニキモンの得意中の得意のまさに十八番のゴリラのモノマネである。
オニキモンはこのゴリラのモノマネが気に入っているようで、オニキモンの奇怪な言動の中で一番頻度が高いというデータがある。もちろん、そんなデータなどどうでもいいのだが、わざわざ数えて報道している連中がいるということだ。

「ウホッ、ウホホッ!! ウッホッホーーーーイッ!!」
 オニキモンは恍惚の表情を浮かべながらゴリラのモノマネを続けている。ゴリラのような動きで左右に動き回り、胸を叩いたり、ウホウホ言っている。
 オニキモンのことを全く知らない人が見れば、精神異常者に見えるだろうが、これが奴の通常運転なのである。卒業生たちも呆れて見ているだけである。

 オニキモンはひとしきりゴリラのモノマネをし、満足したのか、動きが止まった。そしてまた、会場全体をジロリと見渡し、気怠そうにしている。
「この学校は制服が無いんすかね。お前ら、いろんな服着てるけどさ、こっからぱっと見る限り、なーんかつまんねーんだよなー。どうせなら俺様がスゲーと思うような服着てくりゃーいいのに」
 また挑発してきた。
「そんなもん脱いじゃえよ。あ、男子は別に脱がなくていいです。つーかどうでもいいです。女子は脱いじゃっていいですよ。ふはははははっ」
 下品な笑い声が会場に響く。
「しょうがねーなー、代わりに俺が脱いでやるよ。ふへへへへ」
 オニキモンはそう言うと、上半身だけ脱いでいき、白い袖なしのシャツ一枚のみになった。つまり、上半身だけ下着である。さすがのオニキモンでもこの場で下は脱がない分別はあるらしい。

 オニキモンは自分の上半身に自信があるのか、ボディービルダーのように腕っぷしを見せつけるポーズをとっている。ウットリとした表情を浮かべているので、完全に自己陶酔に陥っているのが分かる。
 しばらくすると、オニキモンはボディービルダーの真似に飽きたようで、今度は急に腕立て伏せをし始めた。
「いーーーっち!! にーーーっ!! さーーーんっ!! しーーーっ!! ごおおおーーーっ!!」と大声で叫びながら続ける。
「じゅうきゅうーーーっ!! にじゅうーーーーーーーーーっ!!!!」
 20回目に一際大きな声で叫ぶと、オニキモンはゆっくりと立ち上がり、力こぶを見せつけるポーズをとった。目を燦然と輝かせ、充実感に満ちた表情をしている。
「どうですか、今の俺様の腕立て伏せは。女子の皆さんは、俺様に惚れちまったんじゃねーの? はっはっはっはっ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

1分で読める怖い話短編集

しょくぱん
ホラー
一分で読める怖い話を定期的に投稿しています。 感想などをいただけると嬉しいです。 応援よろしくお願いします。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純七
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

処理中です...