総理大臣の恐怖スピーチ

萌流球夜

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其の四 鉄槌

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 「さーて、いよいよゲームを始めるんだが、今日はなんと、この俺様がこのゲームの実況をしちゃいまーす。いやっふおおおおおーーーーーーーいっ!!」
 オニキモンは左手にマイクを持ち、右手の拳を斜め前方へ突き出しながら奇声を響かせた。一人だけノリノリである。相変わらず上半身は袖なしシャツのままだ。
「さあそれではー!! 今回のー!! 何人だっけ、えーと72人の高校の卒業生たちがー!! 人生の卒業をするのかー!! それとも、生き残って悠々自適な生活を送るのかー!! ゲームすたあとおおおおおおーーーーーーーーっ!!!!」
 オニキモンの絶叫が会場に轟き、モニターに表示されているタイマーが3時間0分0秒から2時間59分59秒、58秒とカウントダウンを始めた。卒業生たちは皆、硬直したままだ。
 「おいおいおーい!! ゲーム始まってんだぞー。なに座ってんだよ。せめておしくらまんじゅうくらいしろよ。ふへへへへ」
 オニキモンがニヤニヤしながら実況している。

 残りが2時間58分を切ったところで、突然、銃声が響いた。左端で誰かが撃たれたようだ。大型モニターに表示されていた『72』が『71』になった。予告通り、本当に2分に1人を射殺していくようだ。ここで、ようやく卒業生たちにも動きが出て来た。うろつく者、困惑し周りの様子をうかがう者……。もう何人か射殺されたら、一気に動きが出てくるかもしれない。そうなる前に何とかしたい。そのために今日、僕はここにいるのだ。

 このふざけた総理に、そして愚かな日本政府に鉄槌を下す。そのために準備してきた。日本政府がこの学校でデスゲームを行うという情報を得てすぐにこの学校に転入した。自分が所属する組織にはそれが可能なのだ。半年くらい前、学校が夏休みの頃だ。転入後はまず、同じ学年内で組織にスカウトできる人材を探した。今回の任務の成功確率を高めるためだ。ただ、こちらの動きを誰からも不審に思われないように気を付けて行動する必要があった。潜入捜査と似たようなものだ。事前情報で数人の候補がいたが、実際に学校での様子を観察し、直接コンタクトを取ることで、男子1人と女子1人を僕らの組織に引き込むことに成功した。2人とも、僕らの崇高な目的に共感してくれた。70人ほどしかいない中で、2人も組織のメンバーに足り得る人材がいたのは奇跡に近い幸運だった。
 
 卒業生たちが動き出したことで、僕らもやりやすくなった。今、体育館の中で敵は軍人だけだと15人。想定していた中でも楽な方のケースだ。ただ、撮影スタッフが武装していた場合は、想定している中でも高い方の難易度になる。一方、僕らの陣営は3人。でも実際にはこちらは3人ではない。もっといる。体育館の外に組織の仲間が控えている。犠牲者が増える前に、相手の虚を突いて、一気に片を付けたいところだ。

 今回が1回目のデスゲームだが、日本政府は既に2回目と3回目の開催地と開催日時を決めている。こんな非人道的なことを続けさせるわけにはいかない。今回の僕らの任務が成功すれば、とりあえず次回以降は延期か中止になるはずだ。
 でも今日が成功したとしても、それで終わりではない。このデスゲームを見て楽しんでいる奴らにも鉄槌を下さなければならない。

 ――さあ、始めよう。今日が長い戦いの第一歩だ。
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