裁判官、あなたは神様ではありません!!

神代 崇司

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第1章 狂気の家庭生活

第17話 おかあさん、こわい

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 二歳の誕生日が近づくにつれて、娘は二語の単語を使って片言で話すようになっていた。
 保育園から帰ると、妻が帰宅するまでのあいだ、私の両親が娘を見る。妻が帰宅し、祖父母が帰ろうとするのを見て、「かえったら、だめ」と引きとめたり、「おかあさん、バイバイ」と妻に手を振ったりすることがよくあるのだと、父は心配そうに私に話した。
 たまに、私が先に帰ると、すぐに娘は「おじいちゃん、バイバイ」と祖父母に手を振って、早く帰るように促した。私と遊ぶのを邪魔されないようにするためだ。私が両親と話をすると、必ず娘が間に入って邪魔をした。

 仕事で遅くなった夜、まだ娘が寝ていない様子だったので、寝かしつけを手伝おうと思って寝室のドアを開けると、娘が興奮して余計に寝なくなると逆に怒られたことがあった。
 そのため、遅く帰宅した日に、二階の寝室には上がらず、一人静かに風呂に入っていると、妻はものすごい剣幕で風呂のドアを叩きつけるように開けた。
「なかなか寝なくて困っているのは、声を聞けば分かるやろうに、なんで手伝わんのやっ!」
 その場の感情に任せて怒りをぶちまけるだけで、一貫性がないため、こちらはどう対応すればよいのか分からなかった。

 私と娘が入浴し、先に娘を風呂から上がらせて、体を拭いて服を着せるのを妻に任せると、娘が裸のまま泣きながら戻ってくることが頻繁にあった。そういう時は、私が濡れたままの体にトランクスをはいて、一緒にリビングまで行って、体をふき、服を着させた。
 娘を任せたあとで、どうしようもなくなった妻が「いつまでもダラダラ風呂入っとらんと、さっさと上がって手伝いねや!」と、怒って風呂に私を呼びに来ることも度々だった。

 ある日、長い時間お風呂につかり、「もう上がろう」と娘に言うと、「いや」と首を振る。
「なんで。もう上がろうよ」
「ちゃんと体が温かくなったから」
 と言っても、
「いや」
 何を言っても
「いや」
 と繰り返すばかりなので、
「なんで」
 と尋ねたら、
「おかあさん、こわい」
 一言、娘は答えた。
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