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序章
優の決心
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あたしは暁浦優。
今、十二歳で小学校の六年生。
あたしは人間が嫌いだ。
何故かと訊かれるとはっきりと言い切れないけど、根本には両親のことがあるんだと思う。
五歳の時、あたしは実の両親に捨てられた。
それほど驚きはしなかった。
両親があたしを好いていないのになんとなく気づいていたから。
両親は兄の希のことばかり可愛がっていた。
両親は、希が死んでから尚更冷たくなった。
そのころくらいからだろうか、あたしの記憶は不自然に抜けたり飛んだりするようになった。
何をしていたか、どこにいたか、まったく思い出せない。
そんなことが何回も続いた。
いつからか両親はあたしに冷たくすらしなくなり、腫れ物を触るような態度に変わった。
理由は分からなかったけれど、特に母親があたしに怯えていた。
訳もわからず放っておかれることがさらに増え、不気味なものを見る目で見られ。
五歳になってからしばらくした頃、両親は家を出ていったきり帰ってこなくなった。
幸いなことに聖司伯父さんと那乃伯母さんがあたしを引き取ってくれて、今は二人と一緒に暮らしている。
通いたくなかったけど小学校にもきちんと通っている。
両親が何故あたしを捨てたのか、今ならわかる気がする。
多分、手に負えなかったのだ。
あたし自身は、記憶が飛ぶことの多い自分を不安に思っていた。
いわゆる多重人格になっていたせいで記憶が飛んでいたと知ったのは、つい数日前。
あたしの記憶が飛んでいても伯父さんたちはなにも言ってこないから、なにか知っているのだと思ってあたしから話してくれるよう頼んだのだ。
伯父さんたちによれば、あたしの中に『希』の人格がいるとか。
あたしの記憶が飛んでいる間に、死んだはずの希をあたしが名乗っていたとしたら。
両親はあたしを気持ち悪く思っただろう。
人間は未知のものを怖がるみたいだ。
母親と父親は、良くも悪くも普通の人間だった。
だから両親の反応は当然のもので、しょうがないと思うしかない。
それにもう過ぎたことで、今さら言ってもどうにもならない。
伯父さんたちから多重人格のことを聞かされて、あたしの中でなにかがカチリとはまった。
あたしが両親から嫌われていたのは、小学校の雰囲気に馴染めないのは、あたしが『普通』じゃないから。
そう思ったら、納得がいった。
特別な存在になりたいとか、そういうことを思ってるわけじゃない。
ただ人間が嫌いなだけだ。
だから、普通の子が多い小学校は、あたしにとってこれっぽっちも行きたい場所じゃない。
そりゃあちょっとくらいは小学校に期待したりしたけど、すぐにムダだったと悟った。
小学生だろうと人間は人間。記憶がよく飛ぶあたしは、不気味なやつとしてのけ者にされている。
まあのけ者という立場に落ち着くまでにも色々あったんだけど、それは思い出すのもめんどくさいからあとでいい。
自分自身の違和感の正体がやっとわかって、むしろあたしは開き直ることにした。
だって人間嫌いなんだもの。
ちなみに。
つい人間嫌いを二人に言ってしまい、言いすぎたかな?と思っていたけど、伯母さんもあんまり人間好きじゃないらしい。
あたし以外にもそういうひとがいると知って、正直ホッとした。
二人に、友達を作るのは義務なのか聞いてみた。
もし二人が義務だというなら、努力してみようと思っていた。
伯父さんも伯母さんも、あたしによくしてくれるから。まだあたしは小学生だけど、二人があたしに接する態度がほかの大人と比べて優しいことくらいはわかる。
伯母さんは、友達を作ることは義務じゃないと言った。
こうも言っていた。
「友達がいるかどうかより、あなたが楽しく過ごせるかが大事」だと。
伯父さんはなんだかすこし困った感じだったけど、同じように言っていた。
「優の生きる道なのだから自分で決めていい」と。
すごく、嬉しかった。
あたしはあたしが生きる道を、自分で決められる。自分で決めていい。
まあ、はっきり言って、今のあたしの世界に伯父さんと伯母さん以外の人間が必要だとは思っていない。
けれど二人の言葉は、あたしに『可能性』を示した。
どんなこともあたし次第なのだと。
今あたしは、自分がしたいように過ごせている。だから友達は別に欲しくはない。
けれどもし、人間たちの中に、あたしと同じように『普通』じゃない人間がいたら。
そのひととは友達になってみたい。
そしてそのひとが、『普通』じゃないあたしを受け入れてくれたら。
そうなったらいいなと、心の底から思った。
とりあえず、中学校は遠いところに行きたいな…。
自分の部屋の机に肘をついて、あたしはぼんやり考える。
近くの中学だと、どうしても小学校の同級生と一緒になるからだ。
どうしようかな、としばらく考えて、あたしははっと顔を上げた。
そうだ、受験しよう。
私立の、できたら規模が大きいところ。
そして家から遠めのところ。
よし、そうと決めたら伯父さんと伯母さんに頼んでみよう。勉強はどっちかといえば得意だから、そんなにレベルが高くないところだったら受かる気がする。
あたしは小さな決心…捉えようによっては大きな決心…を伯父さんと伯母さんに伝えるため、二人がいるリビングに向かうのだった。
今、十二歳で小学校の六年生。
あたしは人間が嫌いだ。
何故かと訊かれるとはっきりと言い切れないけど、根本には両親のことがあるんだと思う。
五歳の時、あたしは実の両親に捨てられた。
それほど驚きはしなかった。
両親があたしを好いていないのになんとなく気づいていたから。
両親は兄の希のことばかり可愛がっていた。
両親は、希が死んでから尚更冷たくなった。
そのころくらいからだろうか、あたしの記憶は不自然に抜けたり飛んだりするようになった。
何をしていたか、どこにいたか、まったく思い出せない。
そんなことが何回も続いた。
いつからか両親はあたしに冷たくすらしなくなり、腫れ物を触るような態度に変わった。
理由は分からなかったけれど、特に母親があたしに怯えていた。
訳もわからず放っておかれることがさらに増え、不気味なものを見る目で見られ。
五歳になってからしばらくした頃、両親は家を出ていったきり帰ってこなくなった。
幸いなことに聖司伯父さんと那乃伯母さんがあたしを引き取ってくれて、今は二人と一緒に暮らしている。
通いたくなかったけど小学校にもきちんと通っている。
両親が何故あたしを捨てたのか、今ならわかる気がする。
多分、手に負えなかったのだ。
あたし自身は、記憶が飛ぶことの多い自分を不安に思っていた。
いわゆる多重人格になっていたせいで記憶が飛んでいたと知ったのは、つい数日前。
あたしの記憶が飛んでいても伯父さんたちはなにも言ってこないから、なにか知っているのだと思ってあたしから話してくれるよう頼んだのだ。
伯父さんたちによれば、あたしの中に『希』の人格がいるとか。
あたしの記憶が飛んでいる間に、死んだはずの希をあたしが名乗っていたとしたら。
両親はあたしを気持ち悪く思っただろう。
人間は未知のものを怖がるみたいだ。
母親と父親は、良くも悪くも普通の人間だった。
だから両親の反応は当然のもので、しょうがないと思うしかない。
それにもう過ぎたことで、今さら言ってもどうにもならない。
伯父さんたちから多重人格のことを聞かされて、あたしの中でなにかがカチリとはまった。
あたしが両親から嫌われていたのは、小学校の雰囲気に馴染めないのは、あたしが『普通』じゃないから。
そう思ったら、納得がいった。
特別な存在になりたいとか、そういうことを思ってるわけじゃない。
ただ人間が嫌いなだけだ。
だから、普通の子が多い小学校は、あたしにとってこれっぽっちも行きたい場所じゃない。
そりゃあちょっとくらいは小学校に期待したりしたけど、すぐにムダだったと悟った。
小学生だろうと人間は人間。記憶がよく飛ぶあたしは、不気味なやつとしてのけ者にされている。
まあのけ者という立場に落ち着くまでにも色々あったんだけど、それは思い出すのもめんどくさいからあとでいい。
自分自身の違和感の正体がやっとわかって、むしろあたしは開き直ることにした。
だって人間嫌いなんだもの。
ちなみに。
つい人間嫌いを二人に言ってしまい、言いすぎたかな?と思っていたけど、伯母さんもあんまり人間好きじゃないらしい。
あたし以外にもそういうひとがいると知って、正直ホッとした。
二人に、友達を作るのは義務なのか聞いてみた。
もし二人が義務だというなら、努力してみようと思っていた。
伯父さんも伯母さんも、あたしによくしてくれるから。まだあたしは小学生だけど、二人があたしに接する態度がほかの大人と比べて優しいことくらいはわかる。
伯母さんは、友達を作ることは義務じゃないと言った。
こうも言っていた。
「友達がいるかどうかより、あなたが楽しく過ごせるかが大事」だと。
伯父さんはなんだかすこし困った感じだったけど、同じように言っていた。
「優の生きる道なのだから自分で決めていい」と。
すごく、嬉しかった。
あたしはあたしが生きる道を、自分で決められる。自分で決めていい。
まあ、はっきり言って、今のあたしの世界に伯父さんと伯母さん以外の人間が必要だとは思っていない。
けれど二人の言葉は、あたしに『可能性』を示した。
どんなこともあたし次第なのだと。
今あたしは、自分がしたいように過ごせている。だから友達は別に欲しくはない。
けれどもし、人間たちの中に、あたしと同じように『普通』じゃない人間がいたら。
そのひととは友達になってみたい。
そしてそのひとが、『普通』じゃないあたしを受け入れてくれたら。
そうなったらいいなと、心の底から思った。
とりあえず、中学校は遠いところに行きたいな…。
自分の部屋の机に肘をついて、あたしはぼんやり考える。
近くの中学だと、どうしても小学校の同級生と一緒になるからだ。
どうしようかな、としばらく考えて、あたしははっと顔を上げた。
そうだ、受験しよう。
私立の、できたら規模が大きいところ。
そして家から遠めのところ。
よし、そうと決めたら伯父さんと伯母さんに頼んでみよう。勉強はどっちかといえば得意だから、そんなにレベルが高くないところだったら受かる気がする。
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