邪竜と聖竜に懐かれた黒騎士~設定してたイメージとは似て非なる異世界を管理中?~

フィーたら

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第1章 竜人の国

言葉の壁、あったんかい!

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大陸の西方に位置する王国ドラゴネシア。
国民の大半は竜人であり、彼らの信仰対象はエデルガルトという名の古代竜。
現女王であるイングリッドはその血を引く者とされている。


左腕に柔らかさを感じながら長い廊下をリリーと進む。
広い城だが比較的よく行く場所に通じる道はある程度わかるようになってきた。
ある程度と言ったのは、広い城内どこも似たような景色なので、何も考えてなかったり、逆に考え事をしながら歩いていたりすると、まだたまに迷うことがあるからだ。


「おはよう、イングリッドちゃん」
「おはようございま~す」

「おはよう。
それにしても、そなたらは相も変わらず仲が良いのぅ」


食堂に入ると長テーブルの上座にはすでに黒髪の美少女が座っていた。
軽く挨拶を済ませると左腕から柔らかい感触が消えたので、オレも席に着く。

って!
もう食ってんのかよ!
…まぁ、この光景ももう見慣れつつあるけど。

ここに来てからはイングリッド、リリー、オレの3人だけで食事をするのが日課となっている。
もちろんこんな状況を可能にしたのは、絶対的女王の命令によるものだ。
他者は一切入ることができないため、いつも用意された料理は全て予めテーブルの上に並べられている。

なぜそのようなルールを設けたのか?
その理由は初日に遡る。





魔の渓谷からドラゴネシアへ向かう途中、結構な時間空を飛んでいたのだが、その間イングリッドは何も喋ってくれなかった。
と、オレは思っていたのだ。


「ブラッドよ、なぜ我の問いに答えてくれなかったのじゃ?
そなたの機嫌を損なうような内容ではなかったと思うのじゃが…」

これが城の中庭に到着してからオレを下ろした後、人型に戻った時の彼女の第一声であった。


「問い?
問いって何のこと?
寧ろこっちとしては何か喋って欲しかったくらいだったんだけど…」

「…ふむ。
もしや風の音で何も聞こえなんだか?」

「そうなのかな?
そこまで酷くはなかったと思うけど。
…あ!
たまに唸り声みたいなのは聞こえてたけど…もしかして、それ?」

「…なるほどのぅ。
おそらくは言語の問題じゃろうな」

「言語?
ってことは、あれってオレに何か喋りかけてたってこと?」

「ああ、その通りじゃ。
そなたなら理解できると思っていたのじゃが…まぁよい。
じゃが…となると、少し試しておきたいことがある」

「試してみたいこと?
オレにできることなら良いけど…」

「問題ない。
少しばかり簡単な質問をしていくだけじゃから、そなたはそれに答えてくれればよい」

「まぁ、簡単なんだったら…わかったよ」

「では。
そなたの名は?」

「ん?
ブラッドだよ。
ついさっきまでそう呼んでたじゃん…」

「まぁ、気にするでない。
次の質問じゃ。
そなたは男か?それとも女か?」

「男だよ。
確かに鎧で顔とか全然見えてないと思うけど、名前とか声でわかると思うんだけど」

「????????????」

「ん?
ごめん。
何を言ってるのか、さっぱりわからない…」

「やはり、そうじゃったか。
先に調べておいて良かったのかもしれぬな」

「ん?どういうこと?
今の質問で何がわかったの?」

「実は今の質問は全て言語を変えておったのじゃ。
最初の質問はヒューマンの言語で。
次の質問は竜人。
そして、最後の質問はドラゴニュートが使っておる言葉のようなものじゃ」

「え?うそ?
最後の質問以外は普通に喋ってるように聞こえたし、全然違いがわからなかったんだけど」

「ふむ…やはりな。
そなたは人型の骨格を持つ種族、おそらくは人間に分類される種族の言葉は理解できるのじゃろう。
逆に言えば、それ以外の頭部を持つ種族の言語は理解できぬということじゃ。
だから、我がドラゴンの姿になっておる時には、いくら問うても言語だと認識されなんだ。
加え、もう1つ。
そなたが自身で発することができる言語は魔族の言葉のみ、と推論できるのぅ」

え?マジ?
それって凄いような凄くないような…
てか、異世界の言葉って…
全種族共通のご都合主義!じゃなかったのかよ!

いや、ここは一旦冷静になって考えよう。
一応イングリッドちゃんに対しては、オレにとっては普通の日本語が通じているわけだよな。
てことは、今のところは何とかなるだろ。

ただ、この流れだと絶対に文字に関しての問題にもぶち当たるんじゃん!





ということがこの国に着いて早々に発覚した。

竜人の中で魔族の言語を理解できる者はほとんどいないらしい。
なので、理解できない言葉を話して拗らせることを避けるためにオレは極力喋ることを控えているのだ。

ちなみにイングリッドがリリーにも試したみたところ、彼女は魔族、ヒューマン、竜人、ドラゴニュートの4つの言語なら使えることがわかった。
そのため、オレが竜人に何かを伝えたい時は、まずは召喚獣である彼女にテレパシーで伝えてから、それを竜人の言葉に変換して声に出してもらっている。
オレがリリーを専属メイドにし常に傍に置いているのは、彼女を保護すること以外にもそういった意味合いも大きい。

ということで、女王はそういった事情を踏まえてくれて、気兼ねなくオレが直接声を出せる場を城内に2つ作ってくれたのだ。
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