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第1章 竜人の国
実はすでに婚約してたりして
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「ブラッドよ…
その…我と婚約してはもらえぬだろうか?」
それが再び部屋に戻ってきたイングリッドの第一声であった。
「え?」
「いや、そのあれじゃ。
我も婿探しと言って国を10年も空けていた身じゃから、面子を保ちたくてのぅ。
とりあえずは名目だけでも良いのじゃが…」
う~ん…
なんとなくそんな流れになりそうな気はしてたけど…
ただ、体裁を整えるだけって言っても、そんな簡単に婚約なんてして良いもんなのか?
しかも相手は女王様だしなぁ。
でもまぁ、ここで断ってもオレに何のメリットもないだろう。
「別に構わないけど、イングリッドちゃんはそれでいいの?
なんか魔族ってあまり良くない印象みたいだけど、オレ魔族の言葉しか話せないし。
てことは、この国にとってはあまり良くないんじゃ?」
「それに関しては、先程リーゼロッテに使った御業を皆の前で披露すれば問題はなかろう。
あの力の前では言葉の違いなど些細なこと。
それでも尚そなたを神の使徒だと認めぬ輩がおれば我が鉄槌を下してみせようぞ」
「いや…そこまでしなくても…」
でも、それも一理あるかもな。
目立ってしまうのは他の異世界人に感づかれる可能性が高いとは思うけど…
ただ、どこかのタイミングで聖魔法を使った時点でオレが特殊な存在だってことはすぐにバレるだろうからな。
この先、オレが持ってるあれみたいな謎の力を隠し通しながらこの世界で生きていくのはさすがに無理があるだろ。
だったら、もういっそのこと予め周りに知っておいてもらった方が意外と得策かもしれん…
「とりあえずのとこは他の人がいる前では極力喋らないように心がけてみるよ。
で、それはそうと、さっきの魔法をどこで誰に使えばいいの?」
という話の流れがあって彼女に連れて来られたのは城の大広間。
入口の前には先程とは違ったドレスを身に纏ったリーゼロッテがすでに待機していて、イングリッドはオレにしばらくその場で待つよう告げた。
どうやらオレに内緒で彼女と2人で何やら打ち合わせをしているようだ。
ひょっとして、なんかサプライズでも用意されてるのか?
そんなことを思っていると程なくしてイングリッドが隣にやってきてオレの腕を組む。
そして、それを確認したかのようにリーゼロッテが大きな扉を開いた。
この国の女王と一緒に入場したオレの姿をみて会場がざわつく。
だが、そんな状況など気にも留めない様子で相変わらずオレと腕を組みながら歩いているイングリッド。
2人のために用意されているのであろう席の前まで歩みを進めると彼女はその腕をほどいた。
その時にスッとオレの傍にやってきたのはリーゼロッテ。
「ブラッド様、何かあれば私がサポートさせて頂きます」
彼女が耳元でそう囁いてきたので、オレは無言で頷く。
「急な呼びかけにも拘わらずよく集まってくれた。
今宵は我の将来の夫…婚約者である神の使徒様を皆に紹介する」
イングリッドの言葉を聞いて会場が再びざわつく。
「ブラッド様、何か簡単な一言でいいので自己紹介をして下さい」
早速リーゼロッテの囁きが飛んできた。
えー!
いきなり!?
そういうの何も考えてないんですけど!
てか、ついさっきイングリッドちゃんに、できるだけ他人の前では魔族の言葉は使わないようにするって言ったとこだと思うんですけど!
オレはイングリッドとリーゼロッテにどうするべきか?という助けを求めるような視線を送ってみた。
が、2人とも「何か喋れ」と言わんばかりのゴーサインを出してる目をしていた。
いやいや…マジか?
もうどうなってもオレは知らんぞ!
「えー、今ご紹介に預かりましたブラッドと申します」
意を決したオレが挨拶をすると更に会場が騒がしくなる。
「静まれ!」
この時までにオレが聞いてきた中で最も大きな声を出したイングリッドの一言が大広間に響き渡る。
その語気の強い言葉は参加者全員を黙らせるのに十分であったようだ。
「皆思うところはあるじゃろう。
確かに見た目はヒューマンで魔族の言葉を話す。
あと付け加えるならば、闇の魔力も纏っておるのじゃからな。
魔力感知のスキルを有する者であれば、既にその魔力が普通ではないということに気付いておるじゃろう。
だが、そのようなことは大した問題ではない。
…リーゼロッテ」
「はい。
すぐにお連れしますので少々お待ち下さい」
イングリッドの言葉を受けたリーゼロッテは足早に近くにあるドアから出て行った。
と思ったのだが、すぐに老人が座った車椅子を押しながら戻ってきた。
おそらく予め待機させていたのだろう。
彼女が連れてきた男はこの場にいる者達にとっては有名な存在なのだろう。
先程に比べれば静かだが、それでも少しざわついていた。
「神殿長アルフレートよ。
病を押してまでよくぞ来てくれた、感謝する」
「勿体なきお言葉痛み入ります。
我らが信仰する神、エデルガルト様の血を引く女王陛下の命とあらば当然のことでございます」
「うむ。
あまり無理して喋らせるのは我の本意ではない。
早速、本題に移るとしよう。
今宵この場に出向いてもらったのは、敬虔なそなたに使徒様から神の祝福を授けてもらおうと思うてのことじゃ」
「ブラッドよ。
この者に先程の魔法を使ってみてはくれぬか?」
「え!マジで?
いや、使うのは良いんだけどさ…
さっき使った魔法が病気とかに効くかどうか?わからないんだけど…」
「案ずるでない。
仮に病を治せずとも、あの魔法陣を皆に見せるだけでそなたが神の使徒であると認識させるには十分過ぎる程の効果が見込めるからのぅ」
「まぁ、そう言うんであれば。
ただ、何かあった時にはちゃんとフォロー頼むよ」
「無論じゃ」
今回は状況も状況だし…
人差し指で指定するんじゃなくて、なんとなくそれっぽい感じで魔法を使ってみるか。
オレは手のひらを神殿長に向けた状態で『エクストラリカバリー』を発動させてみる。
そのポーズ以外は前回と変わりなく、虹色に光る魔法陣が二重に現れ、やさしい光が彼を包み込んだ後に消えた。
「…こ…これは…」
戸惑いながらそう呟く老人。
何か落ち着かない様子で自分の体を確かめるような動きをした後、ぎこちない感じで車椅子から立ち上がった。
「アルフレートよ。
今の気分はどのようなものじゃ?」
「もう自力で立ち上がることはできないと思っておりましたが…
それに…常に気怠かった全身が…
そればかりか霞んでいた視力まで回復しております」
女王の質問にそこまで答えると彼はオレのほうに目を向け、そして跪き言った。
「これぞまさに奇蹟の行使。
あなた様こそ我らが神、聖竜エデルガルト様が遣わされた使徒様なのでございましょう。
どうか女王陛下と共に我ら竜人をお導き下さい」
称号『聖竜の導き手』を獲得
条件クリアを確認
聖魔法『召喚』が解放されました
その…我と婚約してはもらえぬだろうか?」
それが再び部屋に戻ってきたイングリッドの第一声であった。
「え?」
「いや、そのあれじゃ。
我も婿探しと言って国を10年も空けていた身じゃから、面子を保ちたくてのぅ。
とりあえずは名目だけでも良いのじゃが…」
う~ん…
なんとなくそんな流れになりそうな気はしてたけど…
ただ、体裁を整えるだけって言っても、そんな簡単に婚約なんてして良いもんなのか?
しかも相手は女王様だしなぁ。
でもまぁ、ここで断ってもオレに何のメリットもないだろう。
「別に構わないけど、イングリッドちゃんはそれでいいの?
なんか魔族ってあまり良くない印象みたいだけど、オレ魔族の言葉しか話せないし。
てことは、この国にとってはあまり良くないんじゃ?」
「それに関しては、先程リーゼロッテに使った御業を皆の前で披露すれば問題はなかろう。
あの力の前では言葉の違いなど些細なこと。
それでも尚そなたを神の使徒だと認めぬ輩がおれば我が鉄槌を下してみせようぞ」
「いや…そこまでしなくても…」
でも、それも一理あるかもな。
目立ってしまうのは他の異世界人に感づかれる可能性が高いとは思うけど…
ただ、どこかのタイミングで聖魔法を使った時点でオレが特殊な存在だってことはすぐにバレるだろうからな。
この先、オレが持ってるあれみたいな謎の力を隠し通しながらこの世界で生きていくのはさすがに無理があるだろ。
だったら、もういっそのこと予め周りに知っておいてもらった方が意外と得策かもしれん…
「とりあえずのとこは他の人がいる前では極力喋らないように心がけてみるよ。
で、それはそうと、さっきの魔法をどこで誰に使えばいいの?」
という話の流れがあって彼女に連れて来られたのは城の大広間。
入口の前には先程とは違ったドレスを身に纏ったリーゼロッテがすでに待機していて、イングリッドはオレにしばらくその場で待つよう告げた。
どうやらオレに内緒で彼女と2人で何やら打ち合わせをしているようだ。
ひょっとして、なんかサプライズでも用意されてるのか?
そんなことを思っていると程なくしてイングリッドが隣にやってきてオレの腕を組む。
そして、それを確認したかのようにリーゼロッテが大きな扉を開いた。
この国の女王と一緒に入場したオレの姿をみて会場がざわつく。
だが、そんな状況など気にも留めない様子で相変わらずオレと腕を組みながら歩いているイングリッド。
2人のために用意されているのであろう席の前まで歩みを進めると彼女はその腕をほどいた。
その時にスッとオレの傍にやってきたのはリーゼロッテ。
「ブラッド様、何かあれば私がサポートさせて頂きます」
彼女が耳元でそう囁いてきたので、オレは無言で頷く。
「急な呼びかけにも拘わらずよく集まってくれた。
今宵は我の将来の夫…婚約者である神の使徒様を皆に紹介する」
イングリッドの言葉を聞いて会場が再びざわつく。
「ブラッド様、何か簡単な一言でいいので自己紹介をして下さい」
早速リーゼロッテの囁きが飛んできた。
えー!
いきなり!?
そういうの何も考えてないんですけど!
てか、ついさっきイングリッドちゃんに、できるだけ他人の前では魔族の言葉は使わないようにするって言ったとこだと思うんですけど!
オレはイングリッドとリーゼロッテにどうするべきか?という助けを求めるような視線を送ってみた。
が、2人とも「何か喋れ」と言わんばかりのゴーサインを出してる目をしていた。
いやいや…マジか?
もうどうなってもオレは知らんぞ!
「えー、今ご紹介に預かりましたブラッドと申します」
意を決したオレが挨拶をすると更に会場が騒がしくなる。
「静まれ!」
この時までにオレが聞いてきた中で最も大きな声を出したイングリッドの一言が大広間に響き渡る。
その語気の強い言葉は参加者全員を黙らせるのに十分であったようだ。
「皆思うところはあるじゃろう。
確かに見た目はヒューマンで魔族の言葉を話す。
あと付け加えるならば、闇の魔力も纏っておるのじゃからな。
魔力感知のスキルを有する者であれば、既にその魔力が普通ではないということに気付いておるじゃろう。
だが、そのようなことは大した問題ではない。
…リーゼロッテ」
「はい。
すぐにお連れしますので少々お待ち下さい」
イングリッドの言葉を受けたリーゼロッテは足早に近くにあるドアから出て行った。
と思ったのだが、すぐに老人が座った車椅子を押しながら戻ってきた。
おそらく予め待機させていたのだろう。
彼女が連れてきた男はこの場にいる者達にとっては有名な存在なのだろう。
先程に比べれば静かだが、それでも少しざわついていた。
「神殿長アルフレートよ。
病を押してまでよくぞ来てくれた、感謝する」
「勿体なきお言葉痛み入ります。
我らが信仰する神、エデルガルト様の血を引く女王陛下の命とあらば当然のことでございます」
「うむ。
あまり無理して喋らせるのは我の本意ではない。
早速、本題に移るとしよう。
今宵この場に出向いてもらったのは、敬虔なそなたに使徒様から神の祝福を授けてもらおうと思うてのことじゃ」
「ブラッドよ。
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「え!マジで?
いや、使うのは良いんだけどさ…
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「案ずるでない。
仮に病を治せずとも、あの魔法陣を皆に見せるだけでそなたが神の使徒であると認識させるには十分過ぎる程の効果が見込めるからのぅ」
「まぁ、そう言うんであれば。
ただ、何かあった時にはちゃんとフォロー頼むよ」
「無論じゃ」
今回は状況も状況だし…
人差し指で指定するんじゃなくて、なんとなくそれっぽい感じで魔法を使ってみるか。
オレは手のひらを神殿長に向けた状態で『エクストラリカバリー』を発動させてみる。
そのポーズ以外は前回と変わりなく、虹色に光る魔法陣が二重に現れ、やさしい光が彼を包み込んだ後に消えた。
「…こ…これは…」
戸惑いながらそう呟く老人。
何か落ち着かない様子で自分の体を確かめるような動きをした後、ぎこちない感じで車椅子から立ち上がった。
「アルフレートよ。
今の気分はどのようなものじゃ?」
「もう自力で立ち上がることはできないと思っておりましたが…
それに…常に気怠かった全身が…
そればかりか霞んでいた視力まで回復しております」
女王の質問にそこまで答えると彼はオレのほうに目を向け、そして跪き言った。
「これぞまさに奇蹟の行使。
あなた様こそ我らが神、聖竜エデルガルト様が遣わされた使徒様なのでございましょう。
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