がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ

三柴 ヲト

文字の大きさ
7 / 26
▶︎アン失踪事件

第6話 ミチばあちゃんとオレ

しおりを挟む
 ◇


 下校後、いつものようにばあちゃんの店〝ふしぎ堂〟へ向かうオレ。

 まあ、他に面白い遊び場もないし、オレんちはルカの家と違って勉強第一って感じでもないから暇だしな。

 いつものように楽しいはずの遊び場で、楽しいはずのお宝探しをして、楽しい時間を過ごしていたはずなんだけど……。

 隣にルカがいないせいか、やっぱり、何をしても虚しさしか感じない。

「おや、今日はルカくんと一緒じゃないのかい」

 店の隅っこで細々とお宝探しをしていたそんなオレの背中に、しわがれた声が投げられる。

 振り返ると、さっきまで行きつけの接骨院に出向いていたはずのミチばあちゃんが、細っこい両腕に駄菓子入りの紙袋を抱えて立っていた。

「なんだばあちゃん、帰ってたのか」

「ああ、いま帰ったとこ。店番ご苦労さんだったね」

「おー」

「それで、ルカくんは?」

「……」

「……?」

「アイツとはいま喧嘩中ー」

 追い打ちをかけるように問われ、ぶっきらぼうな声を返すオレ。

 そのままふてくされたようにそっぽを向いてお宝探しを再開していると、ばあちゃんは、

「あらそうかい。ずいぶんと珍しいこともあるもんだねえ」

 そう言いながらもくつくつと笑い、王様イスに座るにゃすけの脇に腰をかけた。

 そして、むっつりしているオレに構わず、腕に抱えていた紙袋の中から大好物のカルメ焼きを取り出し、にゃすけと半分こしている。

「別に珍しくないし。いつだってはっきりモノを言わないルカが悪いんだし、オレなんも悪くないし」

 ふむふむと相槌を打ちながら、にゃすけと一緒にふわふわのカルメ焼きにモサモサとかぶりつくばあちゃん。

「ルカもルカなんだよ……。もし、オレに振り回されるのが迷惑なんだったら『もう遊びたくない』って、正直にそう言ってくれればいいのに……」

「……」

 もさもさもさ。

 ばあちゃんは一方的なオレの言い分に何かを思いを巡らせるよう何も言わない。

 今にもずれ落ちそうなメガネの奥に光るふし色の瞳にはなんでも見透かされちゃうような気がして、どうにもいたたまれない。

 やがて頬張っていたカルメ焼きをごくんと飲み込んだばあちゃんは、再び口を開いた。

「まあ、何があったかはわからないし、あたしが口を挟むようなことじゃないけども……ルカくんは頭のいい子だからねえ。振り回されたくないと思ってるんなら、それこそ何も言わずに、とっくにお前さんから離れてると思うがねえ」

「それは……」

 たしかにそうだけど、と、言いかけて言葉をつぐむ。

 そうであって欲しいと願う気持ちと、いやでもアイツのことだから言えずに付き合ってるだけかもと捻くれる気持ちがせめぎ合って素直に相槌を打てないオレ。

 そんなオレをみて、ばあちゃんはフッと口元を緩めながら、さらに続けた。

「それに、世の中、白黒ハッキリつけなきゃいけないことばっかりじゃないし、ルカくんにハッキリ自己主張できない気の弱さみたいなもんがあったとしても、それはそれで別にいいんじゃないかい」

「え、なんでさ」

「良い部分も悪い部分も、全部ひっくるめてそれがルカくんだろう? そりゃあ何事も腹を割って話せる関係ならそれに越したことはないけども、それができないってんなら、相手の弱さを受け入れてあげるのも〝優しさ〟だとばあちゃんは思うけどねえ」

「……」

 ずしりとのし掛かるその言葉。

 ばあちゃんの言ってることはなんとなくわからないでもなかった。

 オレはいつも、自分の言いたいことやりたいことをやってルカに迷惑をかけているのに、アイツはオレのそういう部分を責めたことがほとんどなかったと思う。

 それなのにオレは……?

 アイツのハッキリしない部分を責めるばっかりで、アイツの忠告を素直に受け入れようともしなければ、アイツの無言の裏に隠された気持ちを理解しようともしていなかった。
 
「ま、喧嘩ができる、意見がぶつかるってことは悪いことじゃない。納得いくまで話し合って、相手の気持ちと向き合うといいさね。そうすりゃいつか、本音で話し合える仲になれるってもんさ」

「……」

 押し黙って考えるオレの頭をポンと撫でたばあちゃんは、駄菓子入りの紙袋を王様イスのそばにおくと、よいしょと立ち上がる。

「……じゃ。戻ってきたばっかりで申し訳ないけど、あたしゃちょっくら買い物に行ってくるよ。ここには子どもの欲しがるおもちゃはあっても夕飯の具材は売ってないからねぇ」

 皺のある顔を歪めてふぇふぇふぇと笑ったばあちゃんは、「また留守番頼むよ、にゃすけ」と、にゃすけの頭を撫で、そのままのそのそと店を出て行った。

 のちに残されたのは、王様イスの上から紙袋に向かって手を伸ばし、大好物のカルメ焼きを奪い取ってさらに食おうとしているにゃすけと、口をへの字に曲げてその場で佇むオレの二人。

「くっそ……ばあちゃんの言いたいこともわからなくはないけどさあ……でも、やっぱり、ハッキリしないってのはなんかモヤるんだよな……。なあ、おまえもそう思うだろ? にゃすけ」

「モヤることがあるなら吾輩ではなく本人に聞けにゃ」

「ぐっ。な、なにさ薄情もの! カルメ焼きばっか食ってるからカルメみたいにまんまるに太っちゃうんだぞ!」

「にゃ、にゃんだとー! おのれ小僧、壁にぶち当たったからって吾輩に八つ当たりしおって!」

 短い腕をぶんぶんと振って王様イスからシャドーパンチを繰り出してくるにゃすけと、腹いせに駄菓子の紙袋を王様イスからうんと離れた入り口付近に置き、さらなるにゃすけの怒りを買うオレ。

 しょうもない男の戦いを繰り広げていると、ふいにオレの背後にある店の戸がガラリと開いて、見覚えのある顔が暖簾をかき分けた。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

処理中です...