喉から猫がいなくなるとき

みつしげ

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10話 謁見②

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城内を迷うことなくエトワールは進み、大きな扉の前で足を止めた。扉の脇には2人の騎士が控えている。彼らはエトワールの姿を見ると、何も言わずに扉を開けた。
 窓から差し込む太陽光のおかげで中は明るい。大量の書類と3つの写真立て、金属ペンとそれにつけるインクに国王印、必要なものだけが置かれている執務机。革張りのソファが、2人掛けが2つと1人掛けが1つ。ソファに囲まれるようにローテーブルがある。執務机の向かいの壁には大きな地図が貼られている。
 扉の音で室内にいた3人はそれぞれ顔を上げる。執務机にいた男が勢いよく立ち上がった。

「エティ!待ってたぞ~!」

 嬉しそうに駆け寄って来た彼はエトワールに抱きついた。抱きついた拍子にずれた王冠をエトワールが慣れたように直す。
 彼はエトワールよりも少し背が高く、体格も彼の方が良く見える。髪は輝く金、瞳はエトワールと同じ深い青。身体に沿ったラインで、落ち着いた緑のスーツには金の刺繍が施されている。

「兄様、相変わらずお元気そうですね」

 首を少し傾け、エトワールも抱きしめ返す。
 彼のことを兄と呼んだが、あまり顔は似ていない。

「なんとかやってるよ~。でも、お前がいたらもっと楽だったろうにな~」

 兄からの嬉しい言葉にエトワールは少しだけ微笑んだ。

「…俺なんかじゃ、お役に立ちませんよ」

 兄は卑下する弟の言葉には何も返さず、ただ背中を叩いた。

「ところで、お前今日はなんだか可愛いな」

 身体を離し、エトワールについた蝶々を撫でる兄にエトワールはぱっと顔を明るくした。

「そうでしょ~」
「うんうん。いつも可愛いが今日はもっと可愛いぞ!」

 ラッブラブな2人に、涼太がどうしていいかわからず立ち尽くしていると、兄と同じくらいの年の男が咳払いをした。男の隣に座っている涼太と同年代の男も呆れたような顔をしている。

「ゴッホン!…陛下、エトワール様と仲睦まじいのは大変よろしいのですが、リョータ・ハタ様がいらっしゃるのですよ」

 たしなめる彼に兄は渋々エトワールから離れ、やっとリョータへ向いた。

「ンン!…えー、挨拶が遅れて申し訳ない。私はこのエクラタン王国の国王でエトワールの兄、シエル・サンティエ・ドゥルールだ。」

 先程とは全く違う様子に困惑しながらも、差し出された手に手を添えた。

「えっと、羽田涼太です」
「リョータ殿、よろしく頼む」

 シエルは固くリョータの手を握り返した。

「これは第一王子で王太子のソレイユと私の側近イヴォンヌ・ギヨームだ」

 ソレイユとイヴォンヌとそれぞれ握手をする。
 ソレイユはシエルと同じ髪と瞳を持ち、服はシエルよりも若さがあるものを着ている。背丈はエトワールと同じくらい。身体つきは鍛えているようでエトワールよりも引き締まっている。
 イヴォンヌは、高価であるのは確実だが、シエルとソレイユよりもシンプルで落ち着いた色のスーツに身を包んでいる。赤毛と緑がかった瞳は暗いスーツとは対照的だ。
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