喉から猫がいなくなるとき

みつしげ

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14話 涼太と悠希、2人の絆②

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 涼太は未だマルクのせいで進めずにいた。
 
「はるッ!」

 点はまっすぐ進んだ先、一番奥にある扉の中を指している。

「リョータ!!」

 そこへようやくエトワールが到着した。エトワールは狂ったように悠希を呼ぶ涼太に困惑しながらも、なんとか落ち着かせようとした。

「リョータ!落ち着くんだ!」

 涼太はエトワールの声に反応を示さず、叫び続けている。

「聖女様は大丈夫だから!」
 
 それを聞いた涼太は、エトワールを振り返った。目が合う。エトワールが息を呑む。

「リョー、タ…ッ」

 瞳孔の開いた瞳は怒り、悲しみ、寂しさ、心配、いくつもの感情が混ざり合って真っ黒だ。そして、その奥からは狂気が覗いている。

「あいつは、聖女様なんかじゃなく”悠希”だ。悠希が大丈夫かどうかは悠希が決めることだ。…お前らに悠希について決める権利はない。俺は、悠希を…」

 そこまで言って涼太は突然意識を失った。倒れそうになったところをエトワールがなんとか受け止めたおかげで怪我はなかった。

「大丈夫ですか!?」

 前触れなく倒れた涼太にマルクは最近で二番目に驚いた。

「ああ、大丈夫だ。ただの魔力切れだ」
「良かった。ただ今回復薬をお持ちします」

 魔力回復薬を取りに行くよう、周りにいた神官に指示しようとしたが、エトワールが遮った。

「いや、大丈夫だ。帰りながら馬車で俺の魔力をやるから」
「ですが…」

 エトワールは涼太を横に抱え直して立ち上がった。腕の中で目を閉ざす涼太に目を落とした。

「すまないが、俺たちはこれで失礼する」

 言葉を返す前に、エトワールは行ってしまった。涼太しか見ていないエトワールの表情は、マルクからは見えなかった。

「マルクッ!」

 騒動が終わった後に駆けつけて来たカンティークに、マルクは疲れがにじむ笑みを返した。

「リョータ様はどうした!?お前は大丈夫か!?」

 大事な異世界からの客人だけでなく、自分のことも後回しにせず心配してくれる友人にマルクは笑った。肩に寄りかかるとさらに心配の言葉をくれた。

「リョータ様はエトワール様が連れて帰られた」
「そうか、良かった。…で、マルクは大丈夫なのか?」
「はは、…ちょっと疲れたよ」

 涼太の力は凄まじい。それに対抗するだけの力をマルクは持ってはいなかった。身体強化の魔法を自身が使える最高レベルまで使い、踏ん張れるように土魔法で足元に工夫もした。
 涼太は訓練もしていなければ、自身の力を知りもしない。それでも涼太の持つ力は凄まじい。今回は彼が冷静を失っていたことに加え、高等魔法使用による疲労で全力が出せずにいた。つまり、彼が持つ全力には程遠い。
 
「あの子は、あの子の力は、とんでもないことになるぞ」

 持てる全力でようやく、全力が出せなかった涼太と対等だった。そのことに、聖女でも勇者でもない彼の持つ力に、彼の将来に、マルクは最近で一番の驚きと少しばかりの恐怖を抱いた。


 涼太が倒れたのとほぼ同時、または少し早いくらい。

「りょうた、ぼくを…」

 悠希も最後まで言い切らずに意識を失い、バスチアンの腕の中に倒れ込んだ。閉じられた目から涙が一筋こぼれた。
 やっと大人しくなった悠希にバスチアンはため息をついた。ベッドまで彼を運び、落ちていたタオルをもう一度冷やして額に戻してやった。悠希は眠りが深いようで、寝息をたてる以外動かない。


 ―涼太と悠希、想い合う二人はそれぞれ阻まれ、互いのそばに行くことは叶わなかった。
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