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届いた訃報
深夜1時を過ぎた頃、亮太の店を出てこれから向かう先はTartaros。巽の店だ。
チカチカと不安定な街灯が照らす人通りの少ない裏路地を歩きながら、寒いと呟いて白い息を吐き出す。
「なんだよ。憬のこと、巽にもまだ知らせてなかったのか」
「巽くんは僕と憬が兄弟なのを知らないからね」
「へえ。修たちのことを兄弟みたいな関係だとは言ってたけど、アイツも知らなかったのか」
「君のことがあっただろう?憬はあの後すっぱり何処とも縁を切ったからね。本人が望まないことは口外できなくて」
「俺にはペラペラ喋ったのにか」
「ふふ。龍弥は僕ら兄弟にとって特別な人だもの」
龍弥の手を取って指を絡めると、分厚い一枚板の扉を開ける。
くぐもったドアベルの音が鳴ると、カウンターに立つ線の細い男性がこちらに顔を向けた。
「よう、二人揃って来るとはな」
可笑しそうに肩を揺らすとカウンターに並んで座った二人を見比べて、揉め事は解決したのかと巽が笑っておしぼりを投げて寄越す。
「投げんなよ」
「はは。その顔は上手くいったってことか」
注文も聞かずにダークラムをグラスに注ぐと、コースターをセットしてそこにグラスを置く。
「一杯奢ってやるよ」
龍弥と修が収まるところに収まったのがよほど嬉しいのか、上機嫌でピクルスの入った小皿をカウンターに置いた。
巽の嬉しそうな顔を一変させたのは、修の口から語られた憬の訃報だ。
「葬式は」
「全部滞りなく終えたよ」
「もっと早く教えろよ、水臭い」
「ごめんね巽くん、憬が決めたことだから仕方なかったんだ」
修が目を伏せると、少し不機嫌だった巽がようやく息を整えて龍弥を見る。
「お前は知ってたんだな?」
「ああ。看取ってはいないが、俺はあの人に会えた」
「そうか……一発でも殴れたか?」
「笑った方が仕返しになるだろ。多分それで良かったんだよ」
龍弥が返事して一気にグラスを空けると、巽はそうだなと呟いた。
龍弥に関わることの仔細を話すと、巽は眉を顰めて俺でもそうするだろうなと溜め息を吐いた。
「あのやり方に肩持つのかよ。鬼畜だな」
「お前だってそうするんじゃないか、龍弥」
巽に言われて龍弥は修を見る。自分はどうするだろう。憬のような決断が出来るだろうか。
「巽くん、あんまり龍弥を虐めないでくれないかい」
「はは、別に意地悪してる訳じゃないよ」
新しいグラスに濃褐色の液体を注ぐと、カランと音を立てて揺れる氷を見ながら、憬を否定したくないだけだと巽が呟いた。
画像の憬を見ると巽は声を詰まらせたが、何枚も続く笑顔の写真にようやく表情を和らげると、鼻を啜って口角を上げた。
「嬉しそうな顔しやがって」
「そうだろう?きっとこの後たくさん泣いたに違いないね」
「アンタ、それ本人にも言ってたな」
「意地悪だって拗ねてたね」
龍弥と修が顔を合わせて笑う様子を眉を下げて見つめると、何かが吹っ切れたように巽が腕まくりをする。
「お前ら、小腹空いたんじゃないか?」
そう言って手際良くツマミを調理し始めると、二人がもう一緒に住むことになったと知って、巽が今日は全部奢ってやるよと改めて笑顔を見せた。
チカチカと不安定な街灯が照らす人通りの少ない裏路地を歩きながら、寒いと呟いて白い息を吐き出す。
「なんだよ。憬のこと、巽にもまだ知らせてなかったのか」
「巽くんは僕と憬が兄弟なのを知らないからね」
「へえ。修たちのことを兄弟みたいな関係だとは言ってたけど、アイツも知らなかったのか」
「君のことがあっただろう?憬はあの後すっぱり何処とも縁を切ったからね。本人が望まないことは口外できなくて」
「俺にはペラペラ喋ったのにか」
「ふふ。龍弥は僕ら兄弟にとって特別な人だもの」
龍弥の手を取って指を絡めると、分厚い一枚板の扉を開ける。
くぐもったドアベルの音が鳴ると、カウンターに立つ線の細い男性がこちらに顔を向けた。
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「投げんなよ」
「はは。その顔は上手くいったってことか」
注文も聞かずにダークラムをグラスに注ぐと、コースターをセットしてそこにグラスを置く。
「一杯奢ってやるよ」
龍弥と修が収まるところに収まったのがよほど嬉しいのか、上機嫌でピクルスの入った小皿をカウンターに置いた。
巽の嬉しそうな顔を一変させたのは、修の口から語られた憬の訃報だ。
「葬式は」
「全部滞りなく終えたよ」
「もっと早く教えろよ、水臭い」
「ごめんね巽くん、憬が決めたことだから仕方なかったんだ」
修が目を伏せると、少し不機嫌だった巽がようやく息を整えて龍弥を見る。
「お前は知ってたんだな?」
「ああ。看取ってはいないが、俺はあの人に会えた」
「そうか……一発でも殴れたか?」
「笑った方が仕返しになるだろ。多分それで良かったんだよ」
龍弥が返事して一気にグラスを空けると、巽はそうだなと呟いた。
龍弥に関わることの仔細を話すと、巽は眉を顰めて俺でもそうするだろうなと溜め息を吐いた。
「あのやり方に肩持つのかよ。鬼畜だな」
「お前だってそうするんじゃないか、龍弥」
巽に言われて龍弥は修を見る。自分はどうするだろう。憬のような決断が出来るだろうか。
「巽くん、あんまり龍弥を虐めないでくれないかい」
「はは、別に意地悪してる訳じゃないよ」
新しいグラスに濃褐色の液体を注ぐと、カランと音を立てて揺れる氷を見ながら、憬を否定したくないだけだと巽が呟いた。
画像の憬を見ると巽は声を詰まらせたが、何枚も続く笑顔の写真にようやく表情を和らげると、鼻を啜って口角を上げた。
「嬉しそうな顔しやがって」
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「意地悪だって拗ねてたね」
龍弥と修が顔を合わせて笑う様子を眉を下げて見つめると、何かが吹っ切れたように巽が腕まくりをする。
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