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龍弥の懸念
今日はちょっとしたトラブルが起こって帰宅が遅れ、龍弥が気配を殺して明け方のベッドに潜り込むと、規則正しい寝息が乱れて不意に名前を呼ばれた。
どうせ寝言だろうと返事はせずに、枕元にそっと腕を差し込んで腕枕をして抱き寄せると、やはり完全には起きていないのか寝惚けた様子でおかえりと呟いて腰の辺りに腕を伸ばすと、修はまた規則的な寝息を立てて眠り込んだ。
「……なんだ。珍しいな」
アラームで目を覚ました龍弥のスマホに、修から漯の家で夕飯を済ませるとメッセージが届いていた。了解と短く返信すると、龍弥はベッドから出てキッチンで水を飲む。
漯は修の遠縁にあたる弟のような存在らしく、現在は彼の仕事のパートナーだと聞いている。家で食事をするくらいだ、きっと普段から仲もいいのだろう。
些細なことで嫉妬を覚える自分が格好悪くて苦笑いを浮かべると、修の帰りが遅いなら食事の事は気にせずに仕事に出掛けられる。
シャワーを浴びて身支度を整えると、少し早いが家を出て、年末の事務仕事が溜まっているだろう事務員が勤務している店舗に顔を出すことにした。
歓楽街の外れにある雑居ビルをエレベーターで5階まで上がると、足元からスポットライトが天井を照らす廊下の先に、看板も何もない鉄の扉とインターホンが見える。
「俺、開けて」
インターホンを押して扉を開けるように伝えると、無機質な鉄の扉が開いてスタッフが顔を出す。
「龍弥さん、アンタ何回言ったら裏から入ってくるんですか」
女性向けマッサージサロン、ステラマリアの店長である悠木賢吾が少し苛立った様子でメガネのブリッジを押さえる。
「いや今日寒いし、階段登りたくなかったんだよ」
早々にフロントを抜けてバックヤードに入ると、事務所の扉を開けて手前のソファーに腰を下ろし、ポケットから取り出したタバコに火を点ける。咄嗟に灰皿を龍弥の前に置くと、そんな龍弥を仁王立ちで睨んで悠木の説教が続く。
「そんなくだらない理由がありますか。ここは女性向けサロンなんですよ。オーナーだからってダメです。次からは開けませんからね」
「まだ時間も早いし、待ちも出も無い時間帯だから別にいいじゃねえかよ。おっかねえな」
「お客様とのバッティングの話だけじゃないですよ。スタッフはみんな規則を守ってるんですから、アンタがルール破ってどうすんですか」
「分かった、分かったよ」
灰が落ちそうなタバコを指に挟んだまま、両手を挙げて降参するポーズを取ると龍弥は眉を顰めてハイハイと繰り返す。そんな龍弥に向かって悠木は聞こえよがしに溜め息を吐き出すと、仕事に戻りますと言い残して事務所を後にした。
龍弥は灰皿にタバコを押し付けると、ソファーから立ち上がってウォーターサーバーで水を汲み、事務所の一番奥のデスクに座るとパソコンを立ち上げる。
合計7店舗の店舗別売り上げを確認すると、別のファイルを開いて損益にも目を通す。
顧客のリピート率をチェックして、イベント実施の有無なども含めた効果をデータで残すように、色々なファイルからデータを引っ張って今月分を更新する。
年末の繁忙期なりに想定内ではあるが今月も安定した水準で営業できている。
続いてメールをチェックすると、昼営業の店のスタッフの出勤状況から集客の動向を集計したデータに目を通し、売り上げに貢献しているスタッフのうち、時給アップの打診があるものを確認してそれぞれの店長に是非を回答する。
「あー疲れた。腹減ったな」
そこまで対応すると集中力が切れて腕時計を覗き込む。この時間に捕まりそうな顔を思い浮かべてスマホを手に取ると電話を掛けた。
もちろん店を出る時は裏の従業員通路から外に出たのだった。
どうせ寝言だろうと返事はせずに、枕元にそっと腕を差し込んで腕枕をして抱き寄せると、やはり完全には起きていないのか寝惚けた様子でおかえりと呟いて腰の辺りに腕を伸ばすと、修はまた規則的な寝息を立てて眠り込んだ。
「……なんだ。珍しいな」
アラームで目を覚ました龍弥のスマホに、修から漯の家で夕飯を済ませるとメッセージが届いていた。了解と短く返信すると、龍弥はベッドから出てキッチンで水を飲む。
漯は修の遠縁にあたる弟のような存在らしく、現在は彼の仕事のパートナーだと聞いている。家で食事をするくらいだ、きっと普段から仲もいいのだろう。
些細なことで嫉妬を覚える自分が格好悪くて苦笑いを浮かべると、修の帰りが遅いなら食事の事は気にせずに仕事に出掛けられる。
シャワーを浴びて身支度を整えると、少し早いが家を出て、年末の事務仕事が溜まっているだろう事務員が勤務している店舗に顔を出すことにした。
歓楽街の外れにある雑居ビルをエレベーターで5階まで上がると、足元からスポットライトが天井を照らす廊下の先に、看板も何もない鉄の扉とインターホンが見える。
「俺、開けて」
インターホンを押して扉を開けるように伝えると、無機質な鉄の扉が開いてスタッフが顔を出す。
「龍弥さん、アンタ何回言ったら裏から入ってくるんですか」
女性向けマッサージサロン、ステラマリアの店長である悠木賢吾が少し苛立った様子でメガネのブリッジを押さえる。
「いや今日寒いし、階段登りたくなかったんだよ」
早々にフロントを抜けてバックヤードに入ると、事務所の扉を開けて手前のソファーに腰を下ろし、ポケットから取り出したタバコに火を点ける。咄嗟に灰皿を龍弥の前に置くと、そんな龍弥を仁王立ちで睨んで悠木の説教が続く。
「そんなくだらない理由がありますか。ここは女性向けサロンなんですよ。オーナーだからってダメです。次からは開けませんからね」
「まだ時間も早いし、待ちも出も無い時間帯だから別にいいじゃねえかよ。おっかねえな」
「お客様とのバッティングの話だけじゃないですよ。スタッフはみんな規則を守ってるんですから、アンタがルール破ってどうすんですか」
「分かった、分かったよ」
灰が落ちそうなタバコを指に挟んだまま、両手を挙げて降参するポーズを取ると龍弥は眉を顰めてハイハイと繰り返す。そんな龍弥に向かって悠木は聞こえよがしに溜め息を吐き出すと、仕事に戻りますと言い残して事務所を後にした。
龍弥は灰皿にタバコを押し付けると、ソファーから立ち上がってウォーターサーバーで水を汲み、事務所の一番奥のデスクに座るとパソコンを立ち上げる。
合計7店舗の店舗別売り上げを確認すると、別のファイルを開いて損益にも目を通す。
顧客のリピート率をチェックして、イベント実施の有無なども含めた効果をデータで残すように、色々なファイルからデータを引っ張って今月分を更新する。
年末の繁忙期なりに想定内ではあるが今月も安定した水準で営業できている。
続いてメールをチェックすると、昼営業の店のスタッフの出勤状況から集客の動向を集計したデータに目を通し、売り上げに貢献しているスタッフのうち、時給アップの打診があるものを確認してそれぞれの店長に是非を回答する。
「あー疲れた。腹減ったな」
そこまで対応すると集中力が切れて腕時計を覗き込む。この時間に捕まりそうな顔を思い浮かべてスマホを手に取ると電話を掛けた。
もちろん店を出る時は裏の従業員通路から外に出たのだった。
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