上 下
4 / 41
生倉 湊

4

しおりを挟む
この週末は、何度も何度もバラード1番を聴いて、一人で泣いていた。
デートのつもりだったから週末はバイトも入れてなくて、思い切り泣くことができた。
これってよかったの?
月曜日の朝、私はまだ少し腫れぼったい目のまま、ラッシュの電車を降りた。
二日も泣き続けたおかげか、涙は止まっていた。
でも、気分は限りなく重たいまま。それに学校に行けば、きっと尚弥とも顔を合わせる。
そんな憂鬱な気分のまま、流れに乗ることもできずトボトボ歩いていると、友達の愛佳がやってきた。
「おはよう!デートどうだった?」
もちろん、そんな話から始まるに決まっている。
土曜の放課後はデートだってずっと喜んでたから。
「う、うん・・・」
口ごもる私。
「ねえ、どこいったの?まさかついに尚弥の部屋とか⁉︎」
次の言葉を期待する眼差しに辟易しながら、私は、愛佳から遅れないように重たい足を必死いに動かした。
「ん?なんか元気ない?」
と愛佳。
「・・・ちょっとね」
素直になれない私。もっともここで素直になろうものなら、また大粒の涙が待っている筈だ。
「ねえ、どうしたのよぉ」
まるで空気を読まない愛佳は、私の腕をブンブン振り回してくる。
「う、うん・・・後で・・・」
やっとの事でそれだけ言った私は、愛佳から逃げるように学校へ向けて走り去った。
「湊、どうしちゃったの?」

逃げるようについた学校で、私は早速針のむしろの上に登ってしまった。
靴を履き替えていると、尚弥と女子高生が目の前にやってきたのだ。
「尚弥ぁ。今日の放課後どこ行こっかぁ」
「ああ。俺んち来るか?」
「・・・いいよ」
私に聞こえるようにこれ見よがしでやってくれてるのだろうか。
そんな二人を見た私は、泣きたい気持ちを必死にこらえながら、トイレに駆け込んでドアを閉めた。

「・・・そういうこと。まあ、良かったんじゃない。あんな男と別れられて」
背の高い綺麗な男子生徒がこんなことを言っているとも知らず。
しおりを挟む

処理中です...