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水沢 美園

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真奈ちゃんと何を約束したのか思い出せず、それはずっと引っかかっていたが、この週末、私の心は落ち着きを取り戻し始めていた。
エチュードは今週も聴き続けた。
それとともに、忘れていた、と言うよりいつの間にか心の奥に封印してしまっていた思い出を、だんだんと思い出していった。
中学生の頃はまだ学校が別々で、週に一度の教室で顔を合わせると、終わった後はずっとおしゃべり。エチュードはこの頃が一番聴いていたかも。イヤホンを片方ずつ耳に入れて聴きながら時間を忘れておしゃべり。帰りが遅くなるのを心配した親たちが、交互に車で迎えに来るようになるくらいずっとおしゃべりしていた。そのままお泊まり、なんてこともよくあっな。

高校は、教室に近いところを受験した。
その高校は私にはちょっとレベルが高く、家族にも先生にも心配されたけど、勉強のできる真奈ちゃんに教えてもらいながら頑張った。
絶対、一緒に通いたかったから。
大変だった受験勉強も、今となっては楽しかった思い出の一つ。
入学してからはそれこそ朝から夜までずっと一緒で、後で知ったのだけど、一時は百合疑惑まであったとか・・・
それくらいに2人でいることが、他の何よりも楽しかった。

思い出してみて改めてわかったのだが、辛かった思い出は大学3年の終わりから卒業までだけで、もちろん時々は喧嘩したこともあったけど、それさえも懐かしい、楽しい思い出だった。

そういえば、いつだったかこんなことを尋ねたこともあった。
「真奈ちゃんは、どうして陶芸始めたの?」
「私ね・・・5年生になってすぐ虐められるようになったの」
「えっ・・・」その瞬間、私も4年生の頃の自分を思い出し、何も言えなくなった。
「親に知られるのが嫌で学校には行くんだけど、どうしても教室には入れなくて・・・
登校するとすぐ保健室に逃げ込んでた。勉強も保健の先生とやってたんだ。
その時なんだよ。私があの曲知ったの。
先生が私に教えてくれたの。
先生ね、元々はピアニスト目指してたんだって・・・
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