上 下
400 / 428
2

47

しおりを挟む
週明け、水曜日の放課後。文芸部部室。
今日は鷹文の書いた台本を部員みんなで見直していた。
台本は週明けに部員(麻希、部長、竹岡)に渡されていて、各自しっかり読み込んできていた。
「で、何かおかしなところはなかったかな?」
鷹文が尋ねた。
「うーん。セリフの言い回しは少し男子っぽいところもあったけど、だいたいこんな感じでいいんじゃない?」
と部長。
「ですよね!やっぱり鷹文先輩です!」
鷹文の隣にしっかり陣取った麻希は、鷹文の腕に手を乗せて横から嬉しそうに鷹文の顔を覗き込んだ。
「竹岡はどうだ?」
「いいと思うけど・・・」
何かが引っかかっているようで、考え込むような表情になった。
「何かあるのか?」
「うん・・・ここの展開なんだけどね」
と竹岡奈帆はパラパラと台本をめくって、あるシーンを指さした。
「・・・これくらいの理由でみんな納得するのかなって。私だったら・・・納得できないかも、なんてね・・・」
奈帆は恥ずかしそうに笑った。
「そうだな・・・実は俺もそのシーン少し気になってたんだ」
「そうなの⁉︎そうだよね、やっぱり!」
鷹文が同意してくれて、指摘した奈帆もホッとした顔で言葉を続けた。
「ああ。指摘してくれてありがとう。でも、どうすればいいかなぁ・・・」
「あ、あのね・・・こんなのいいんじゃないかなって思って・・・」
奈帆はあらかじめ考えてきていた代案を控えめに話し始めた。
「ああ、なるほど!それなら辻褄も合うな」
鷹文の顔がパッと明るくなった。
「本当に⁉︎よかったぁ。実は一昨日台本もらって読んでからずっと考えてたんだ」
自分の意見が理解されて嬉しそうな奈帆。
「ありがとう。で、みんなはそれでいいかな?」
と鷹文は顔を上げてみんなを見た。
「私もそっちの方がいいと思う」
「わ、私も!」
部長がうなずくと、麻希も慌ててそれに続いた。
「じゃあ俺はこれから書き直すから。竹岡、手伝ってもらってもいいか?」
「う、うん!」
鷹文はパソコンデスクに移って作業を始めた。竹岡も椅子を隣に並べて画面を覗き込見ながら楽しそうに会話を始めた。
そんな2人の姿を、麻希は悔しそうに見つめていた。
しおりを挟む

処理中です...